50 3. 構造解析 応力 弾性体に歪があると , 歪のない状態にもどろうとして , 内部的な力を この力を応力という . 数量的に表すには , 物体内部の微小断面を考え 生ずる . ( 微小断面を介して伝わるカ ) / ( 徴小断面の面積 ) によって表す . 歪と同様に 6 個の成分をもっ . ェ軸方向の伸縮に抵抗するカ y 軸方向の伸縮に抵抗するカ 直応力 2 軸方向の伸縮に抵抗するカ ェーリ平面内の剪断変形に抵抗するカ リー 2 平面内の剪断変形に抵抗するカ 剪断応力 2 ーエ平面内の剪断変形に抵抗するカ 応力は , 普通の「カ」と少し違う . 特に次の点に注意すること . [ 注意 ] ペクトル量 ( 向きと大きさをもっ量 ) ではない・ 向きや符号の意味が異なり , 成分の個数も違う . 座標変換の公式が異なる . 単位面積あたりの値であること . 応力と歪の関係歪があまり大きくならなければ , 応力と歪は比例する , と いうことが知られている . この比例関係の基本になるのは , 図 3.3 のように 一方向だけの一様な応力 状態を与えた場合である . その場合 , その方向の直応力と直歪の関係を び = E 6 剪断応力と剪断歪の関係を て = G r 図 3.3
3 構造解析 有限要素法は構造解析に適しており , そのため構造解析の分野で最も多く 使われている . そこで本章では , 構造解析 ( その中でも基本となる徴小変 形 , 弾性限界内の静的問題 ) への応用について説明する . 有限要素法による構造解析を理解するには , いくつかの重要なポイントが あると思う . すなわち 変位法 方程式の作成を自動化する マトリックスによる定式化 エネルギー法 補間関数 などが基本的であり , これらをきちんと理解することが大切である . は上記の項目を中心に説明する . 3. 1 弾性体の特性 本章で 本論に入る前に , 基本的な用語の意味を説明しておく . 変位というのは , 物体の変形等によって , どの点が , どの向きに 動いたかを表す量で , ( 変位 ) = ( 変形後の位置 ) ー ( 変形前の位置 ) と定義する . どれだけ 変位は , 向きと大きさをもつからペクトル量であり , 座標成分に分けて表す ことができる . 本書では変位を { } で表し t , その座標成分をな , ので表 すことにする . 60 ペ ェ成分が〃 リ成分が 名成分が w ージ参照 . ( 2 ) ↑ 記号 { } は列べクトルを表す .
3.5 マトリックスによる定式化 る線 , すなわち行番号と列番号の等しい成分の並 び ) に関して , 左下と右下を入れかえて得られるマ い ] の転置マトリックスを「ス ] T で表す . 「例 ] 2 8 5 ワ】 8 LO 1 9 、 00 3. 5 マトリックスによる定式化 はじめに簡単な例について考えてみよう . マトリックスを用いると , 56 ページの例題の計算は , 次のように表すことが できる . まず部材ごとの方程式 ( 3.3 節の式 ( 8 ) ) は , 要素 1 要素 2 要素 3 んーんんん 1 んん ん 1 ん 1 んんーん ( 2 ) ( 3 ) これらの式を の形に引き伸ばして , 次のように表すこともできる ( 関係のない所には 0 を人 れておけばよい ). 1 んん 0 0 んん 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ( 2 0 0 ( 4 ) 要素 1
3.7 平面応力問題 ただし , Ⅳは荷重点数 , , 町は点ーにおける変位 , / ぃは点 / にかかる集中荷重のェ成分 , y 成分 マトリックスによる表現以上の関係式を , マトリックスの形で書くと次の ようになる・ 変位 歪 変位と歪の関係マトリックスを用いて表すと次のようになる . Du/Dx Du/DY Dv/Dx Dv/ Dy ( あとで説明する一一式 ( 12 ) ) % で表す . ( 6 ) ペクトル { 6 } 0 1 0 0 0 0 0 1 イ 0 0 0 1 1 0 0 0 6 ただし 応力と歪の関係 6 ( 8 ) vE 2 ( 1 + レ ) この係数マトリックスを [ D ] で表すことにすれば { び } = CD] { 6 } d2 0 0 - ィー 0 しイ・ 0 0 0 ( 1 ーレ ) / 2 0 0 ( 9 ) 2 歪エネルギー ( あとで説明する一一式 ( 25 ) ) 外力のする仕事 { 引 ( 10 )
3. 構 造 解 の係数をまとめて四角に並べたものである . 析 ( 2 ) aml 4 m2 横の並びを行といい , 上から第 1 行 , 第 2 行 , ・・・と呼ぶ . また縦の並びを列と いい , 左から第 1 列 , 第 2 列 , ・・・と呼ぶ . 個々の数値を成分 ( または要素 , 元 , um およびェいェ 2 , ・・・ , も , それぞれ 1 列にまとめ 第ゾ列の要素は添字を付けて表す ( 第 1 添字が行番 など ) といい , 第 / 行 , 号 , 第 2 添字が列番号 ) . 次に , 変数 , 〃 2 , ・ て次のように書くことにする . 式 ( 2 ) , ( 3 ) のん 4 , ェは , ( 3 ) このように数値を縦に 1 列に並べたものを列べクトルと呼ぶことにする . そのマトリックスや列べクトルの名前であり , 記号「 記号 { ] は , マトリックスを表す . } は , 列べクトルを表す . 記号 L 」ま 単一の数 ( 普通の と約束する t. なお , 数値を横に並べたものは行べクトルといい , 数 ) のことをスカラーという・ このような複合的な数 ( マトリックスやペクトル ) に対し , ゆいカ 2 , たは { } T で表す . たとえば 積の定義マトリックスと列べクトルの積を , す数学書では , 法関係の文献では , こういう印をつけないで単にス , , ェなどと書くが , 有限要素 上記のように書くのが普通である・
3 ・ 1 弾性体の特性 で表す . E は縦弾性係数 (Young 率 ), G は剪断弾性係数と呼ばれているす . な お , 弾性体は , ある方向 ( 縦 ) に伸びれば , それと直角な方向 ( 横 ) には縮もうと する . その関係を 横歪 縦歪 で表し , Poisson 比という 一般の場合は , これの組合せであるから , 結局 , 次のようになる . = E ら レびリーレび ~ = E 6 び レび ~ ーレび = E ら レびェーレび び らリ = Gr ェリ G ryz ら = G 乙ェ び , について解いて , 次のように書くこともできる . 式 ( 4 ) をびェ , = イ日 er + d12 % + 必 3 6 = イ幻 + イ % + dB ーイ引 6 , + d32 % + イ 33 6 6 6 たとえばェ方向に引張った場合 ( 4 ) ( 5 ) YZ リエリ ( 6 ) ただし E ( 1 ーレ ) ( 1 + レ ) ( 1 ー 2 レ ) E ン ( 1 + ン ) ( 1 ー 2 レ ) E, G, レは材料に固有の値である . 弾性力学の基礎方程式としては , もうーっ , 弾性体内部における力のつりあ い方程式があるが , 有限要素法ではこれを直接には使わないので省略する . ( / 学力 t G は E とレにより次のように表すことができる . 2 ( 1 十レ
3 ・ 4 マトリックス代数の要点 59 行列 ( マトリックス ) と行列式行列と行列式は名前が似ているし形も 4 町 022 4 1 m2 0 1 m2 と , よく似ているので混同している人が少なくない・普通は ( 高校などで ) 行 列式を先に習うので行列を行列式とまちがえて , たとえば 19 22 43 50 などとやっている答案をよく見かける . 乗算に関しては (detCA] (detCBJ) det ( [ み ] CB ] ) A の行列式の値 B の行列式の値積 AB の行列式の値 という公式があるので余計まぎらわしいが , とにかく最後に = 4 と書くのは , 行 列がわかていない証拠である・行列と行列式の違いは次のように覚えるとよい . 行列式は , その名のとおり、式の一種である・たとえば 6 0 は , 0 ビ / 十 6 工十 dhc ー c e 〃ー 6 d / ー f ん 0 という式を略記したものだと思ってよい . 特別な規則で作られる非常に複雑な式 を , そのもとになる数値を並べて表したものである . 値を計算すれば , ーっの数 ( スカラー ) になる . 行列は , 数を並べたものである・一組の数を特定の規則で扱うための道具 ( 記法 ) である . 1 個の数ではどうしても表せない量を表すための手段である . そのよう なもので , よく知られたものとしてはべクトルがあるが , マトリックスは , トルの間の比例関係を表すもので , べクトルに対する演算子のようなものである . 行列の計算公式と行列式の計算式には似たものもあるが違うものが多いので注 意を要する . たとえば 行列式ならば 行列の場合は となる . ( 行列のスカラー倍は各成分をスカラー倍すること ). 0 であるが
116 4. 実習用プログラム D D L の使用法データ・カードに変数名や式を書くことができる . [ 変数名 ] 英字に始まる英数字 ( 何字でもよいが識別には先頭 3 字のみ有効 ) 値の設定は * L E T 変数名 = 値 による . * LET P I = 3 . 1 4 1 6 1 字以上の空白 [ 例 ] [ 式 ] 変数または数値または = ( 前のカードの同じ欄の値を表す ) を + ー * / または * * ( べき乗を表す ) で結合したもの . ただし , 本書に示すフ。ログラムは 簡略版なので電卓と同じように無条件に左から評価する方式になっている . [ 例 ] * DO I * DO 変数名 = 始値 , 終値 , 増分 カードを生成できる . 書きかたは , [ 反復 ] 「次のカード」に制御変数の値を一定間隔で変えて代人して , 一群の 3 + 6 * 5 は , ( 3 + 6 ) * 5 の形で計算されて 45 となる . [ 例 ] 3 * 6 + 5 は , ( 3 * 6 ) + 5 の形で計算されて 23 となる . I 十 2 3 4 5 は次の 3 枚のカードと同等 1 2 3 2 3 4
3.6 エネルギー法 擦その他の減衰作用のため , 運動のエネルギーはしだいに失なわれ ( 熱エネル ギーとして放散され ) , 最終的にはポテンシャル・エネルギー最小の状態に落 ちっく . そのとき , 力は ( 系のすべての点において ) つりあいの状態にある ( ーーもしもつりあっていない部分があれば , そこに連動を生じてエネルギー を放出しもっとポテンシャル・エネルギーの低い状態に移行できることにな る ). ( a ) ポテンシャル・エネル ギーが高い状態にある と , もっと低い状態に 移ろうとする . ( b ) しばらくの間は最小点 を行きすぎたり , もど ったりしているが・ 図 3. 7 ( c ) 最終的には , ポテンシ ャル・エネルギーの最 小点落ちつく . ーうし、う考 上記の説明を単純に信じられるならば , それでよい ( とにかく , え方を用いれば , 問題がうまく解けるのであるから ). しかし , 上記の説明では 論理的にすっきりしない . もう少しきちんとした説明ができないものか , と思 われるかもしれない . そういう疑問があるならば , エネルギー原理 ( または変 分原理 ) のことを詳しく書いた本があるから読んでみるとよいす . 変分法と エネルギー原理を表す変分の式は つりあい状態を表す徴分方程式と クトル解析の諸定理を用いると , 同等であることを証明できる 学 , 培風館 . のである . すたとえば鷲津久一郎 : エネルギー原理入門 , 培風館あるいはファン : 固体のカ
2 基本的な考え方 24 ( 5 , 7 ) を頂点とする三角形の面積を式 ( 1 ) で計算 ( 6 , 2 ) , [ 例 ] 点 ( 1 , 3 ) , してみよう . 00 ワ / 1 0 1 1 1 = 12 = 24 2 [ 式 ( 1 ) の根拠 ] 行列式の一つの行を他の行から引いても , ・行列式の値は変 らない . 式 ( 1 ) の行列式の第 2 行と第 3 行から第 1 行を引くと 1 0 工 2 ーエーリ 2 ー 1 0 工 3 ーエーリ 3 ーリー ( ェ 2 ーエ 1 ) 朝 3 ー ) ーは 3 ー ) ( リ 2 ー ) これは辺 PI P2 , P 3 を表すべクトル となる . P, P2 = ( 工 2 ーエいリ 2 ー ) PIP3 = ( 工 3 ーエ 1 , リ 3 ー ) の外積 ( べクトル積 ) の 2 成分に等しくす ( ェ成分とリ成分は 0 になる ) , それは ( 0 は両べクトルのなす角 ) 出 P2 国 P3 国 n0 すなわち ( 辺 PlP2 の長さ ) ( 辺 p 3 の長さ ) sin0 = 士 ( 三角形の面積の 2 倍 ) に等しい . 符号は , 点 p ぃ P2 , P3 が上 ( 2 = ) から見て反時計まわりならば 正 , 時計まわりならば負となるが , どちらでもよいように絶対値をとれば s = レ 2 となる . 任意の図形の面積を計算するプログラム廿上記の方法 ( すなわち , 図形を 三角形に分割し , 個々の三角形の面積を計算して加えあわせる , という方法 ) を 用いて , 任意の図形の面積を計算するプログラムを作ってみよう . t もし読者が外積のことを習っていなければ , 初等解析幾何学を用いて垂線の長さ を計算し式 ( 2 ) の値が ( 底辺の長さ ) x ( 垂線の長さ ) になることを証明すればよい . こをとばして先に進んでよい . プログラム作成に関心のない読者は ,