6 ー 3 波動の複素数表示 149 és(r ; 朝は / 番目の原子からの寄与であって , 散乱を計算しようとする点の位 置 r だけでなく , ノ番目の原子の位置らにも依存する . Re 新十・・・十気 ] = Re [ ( 1 ] 十・・・ + Re [ 気 ] という性質があるから , ( 6.11 ) を代入すると , ( 6.10 ) は事実 Es(), の = EReCe- ・ wtés(r;rj)] となり , 各原子からの散乱波の重ねあわせである . ( 6. 12 ) 散乱波の形第 1 番目の原子の位置を座標原点にえらび ( ら = 0 ) , この原子か らの散乱波にまず注目しよう . これは原点を中心として四方にひろがる球面波 である . その振幅は原点における入射波の振幅に比例し , また , 原点からの距 離だが波長スより十分大きいとき , だに逆比例することが電磁気学で知られて いる . 式で書くと 2 応苞 2 応 ( 6. 13 ) ⑦ー①十 移すので , ( 6.13 ) のだはからの距離ー朝でおきかえられ , また ( 0 ) が 次に , ノ番目の原子からの散乱波を考えよう . 球面波の中心を原点かららに この積は半径 r に無関係であり , 時間が経って波面がひろがっても不変である . 磁エネルギーは電場 ( 6. 14 ) の 2 乗に領域の体積だ 2 」だを掛けた積に比例し , 波面 r ー = 0 , r ー = 」 r を考える . その間にはさまれた領域にふくまれる電 エネルギー保存則と関連づけて理解できる . 」だを小さな正の数として 2 枚の 光速度 c でひろがる球面である . 球面波の振幅がだに逆比例していることは , これが球面波の実数表示であり , 確かに波面だー = 定数は原点を中心として ReCe-iWtés(), 0 ) ] ( 6.14 ) であり , 絶対値げーと位相伐を使ってア = げ伐と書くと も依存するのであるが , 以下の議論には重要でない . また , 工は一般に複素数 アは比例定数である . 本当は r の方向による ( 散乱波に指向性がある ) し , に らにおける入射波 ( ら ) におきかえられる . 2 た 0 の ) ( 6. 15 )
た 7 調和振動子のエネルギー準位 一方程式 ( 6.54 ) の束縛状態のエネルギーも , 固有関数が原点からの距離だのみ 195 水素原子のエネルギー準位水素原子中の電子にたいするシュレーディンガ 学Ⅱ』で述べる . を量子力学の対象とすることを , 場の量子化とよぶ . これについても『量子力 ことが , プランク理論の成功から逆にわかるわけである . このように , 電磁場 もエネルギー準位に関しては , 後者も前者と同しように量子力学で扱ってよい 原子の振動とちがって , 電磁振動をあらわすものである . しかし , すくなくと 和振動子のハミルトニアンであらわされるが , これは固体比熱を論ずる場合の なお , 空洞放射の場合 , 各固有振動モードのエネルギーは ( 襯 = 1 とした ) 調 あって , その意味で第 4 章の結論は変更する必要がない . 固体や空洞放射の熱的性質 ( 温度依存性 ) に寄与するのはこの励起エネルギーで しかし , 基底状態れ = 0 からの励起エネルギー En ー EO = れカは同しである . 章で使ったプランクの表式と零点運動のエネルギー ( 1 / 2 ) カだけちがう . こでは ( 7.43 ) についてコメントを付けておこう . このエネルギー準位は , 第 4 固有関数の具体的な表式については『量子力学Ⅱ』で述べることにして , 十 1 であり , これを ( 7.44 ) の第 2 式に代入して ( 7.43 ) が得られる . が 2 れに等しく , レとれ十 2 のがすべて 0 になればよいのである . E = 十 1 = 2 れ に , → 0 となって束縛状態が得られる . つまり , れを整数として , ( 7.50 ) のク →土で ( 7.47 ) の exp [ ーミ 2 / 2 ] がどんな多項式の発散よりも急に 0 になるため 唯一の例外は ( 7.49 ) が有限次の多項式となる場合である . このときには , ミ 土になる . ない . 奇関数としても同様で , ミ→士のとき ( ミ ) はミ exp 2 」に比例して ( 7.47 ) は exp 監 2 / 2 ] に比例してとなり , 物理的に意味のある状態をあらわさ であるから , ミ→土で ( 印は exp 2 ] に比例してになる . したがって , exp 2 ] を 62 のベキ級数に展開したときのれ次の項とれ一 1 次の項の係数の比 の関数とすれば の = e ( 7.51 )
3 熱運動の古典論 れる確率は , 一般にポルツマン因子 ( 3.8 ) に比例するのである . これが統計カ 62 ペランは樹脂粒の密度が高さによって指数関数的に変化することを確かめ , ができる . き , その内部で樹脂粒の密度が高さによって変化する様子を直接観察すること ける値がス 10 ー 9 x 105 m = 10 ー 4 m となる . つまり , 溶液の 1 滴を顕微鏡下にお の 109 倍の程度である . スは質量に逆比例するから , 樹脂粒の場合 , 室温にお 大きさであり , 樹脂粒の分子量が 109 程度であるから , 襯 * は気体分子の質量 それぞれ樹脂および水の密度である . いずれにしても , 襯 * と襯は同し程度の アルキメデスの原理により , 有効質量襯 * = 襯 [ 1 ー朝 0 / の ] を代入する . 体は おこなうという違いはある . 水から浮力を受けるから , ( 3.4 ) の襯の代りに 気体分子は真空中で熱運動をおこなうのにたいし , 樹脂粒は水中で熱運動を に比例して高さとともに変化する . う . このために樹脂粒は溶液全体に分布し , その密度はやはりポルツマン因子 であり , まわりの水分子がたえず衝突するので不規則なプラウン運動をおこな 粒の分子量を約 109 にそろえる . 樹脂粒は水分子の間にまぎれこんだ巨大粒子 水に溶かしたコロイド溶液を使った . 遠心分離をくりかえすことによって樹脂 ペランの実験ペランは , 気体の代りに , ( 比重が 1 より大きい ) 樹脂の粒を される . ー →ん一 1 である . これはに無関係で , 分子はどんな高さにも等しい確率で見出 [ 解 ] ( 3.4 ) によりスー , 屓 1 ー exp [ ーんの } →気んの = ん , したがってれな ) 例題 1 ( 3.7 ) で g → 0 の極限を考えよ . か量子力学にしたがうかには無関係に成立する定理である . 学のいちばん基本的な定理であり , ミクロな粒子の運動が古典力学にしたがう こうして決めた NA の値は , ファラデー定数を素電荷の測 ( 3.7 ) と比較することによってポルツマン定数 kB, あるいはアポガドロ数 NA 定値で割った値とよく一致する . / 々 B の値を求めた .
た 5 運動量表示の波動関数 185 そこで , のフーリエ変換のは運動量にたいする確率振幅であると考えるこ とにしよう . 時刻ーに電子の運動量成分を測定した場合 , 測定値がたとた + ゆェの間に見出される確率は 懃 ( た , 02 ェ ( 7. 19 ) に比例するのである . のが ( 7.18 ) のように規格化されていれば , ( 7.19 ) は確率 そのものになる . 例題 1 娵の , 0 ) が波束 ( 7.12 ) で定義されるのの関数であるとき , ( 7.16 ) の関 数の ( た , 0 ) を求めよ . の ( た , 0 ) を〆た ) と書くと 」工 / 2 た ) ー」工 / 2 1 ( 2 応力 ) 1 / 2 ( 2 応力 ) 1 / 2 である . ー [ 解」 イエ ( 2 力 ) 1 / 2 Sin ミ 2 カ ( 7. 20 ) 図た 8 波束の運動量分布 . ミ = ( 」 2 のル . この場合 , い 2 は ( ( sin の劇 2 に比例し , 後者のグラフは図 7 ー 8 のようになる . ( 7. 14 ) の右辺の数係数は多少変わるけれども , 重要なのは 決まると考えれば , 不確定性原理 ( 7.14 ) が得られる . 図 7 ー 8 のグラフのどの幅 図の影をつけたビークの幅去 = によって運動量のゆらぎ」た = ( 2 カ去 / 」ェ ) が を採るかによって ,
108 4 量子論の誕生 固体の比熱アインシュタインが指摘したように , プランクの量子論は固体 の原子振動にも適用できる ( 1907 年 ) . 固体の場合には固有振動のモードは有 限個しかなく , 振動数に上限がある . これをとし , 温度 0D = (hVD/kB) を定 義できる ( デバイ温度 ) . OD 《 T の成立する高温では , すべてのンにたいし kBT 》んであり , ( 4.59 ) は古典論に帰着する . 固体の比熱が高温で古典論と一致す るのは , このためである . T 《 OD では , ん》々 BT を満足するンにたいして ( 4.59 ) は exp { ーんな BT } に 比例して急激に小さくなり , 熱エネルギーに寄与しなくなる . したがって , 上 限ン D の存在を忘れてよい . 低温で問題になるソの小さい振動は , となりあっ た原子の相対変位のきわめて小さい長波長のモードである . 固体を連続体と見 なしてその音波を考えればよく , 振動数と波長の間に ( 4.4 ) が成立する . これ は電磁振動のときと同じ形で , 光速を音速におきかえただけである . 低温における原子振動の熱エネルギーは , 本質的には空洞内の電磁振動のとき と同しように計算され , T4 に比例する . したがって , 比熱は T3 に比例して減 少することになる . このデバイ (). Debye) の T3 法則は実験的によく確かめら れているのである . 光子と光電効果空洞内の電磁波に話をもどそう . 波動べクトルた , 備りの 方向び , 振動数 = ( / 2 訒の固有振動モードに注目する . このモードのエネル ギーが量子化されていて , んの整数倍というとびとびの値に限られるという のが量子論の主張である . したがって , たとえば電磁波が空洞の壁によって吸 収・放出されるときにも , モードのエネルギーは図 4 ー 11 の階段を上下するの であって , エネルギー変化はんを単位にしておこる . アインシュタインはこ の状況をもっと物理的な言葉で表現した . つまり , 固有モードはそれぞれエネ ルギーんんをもっ粒子の集団であり , 空洞の壁がこの粒子を吸収・放出するこ とによってエネルギーが変化するというのである . アインシュタインはこの粒 子を光量子 ( light quantum) とよんだが , 現在では光子 ( ph 。 t 。 n ) という名称が 使われる . 空洞内部は光子の気体がつまっていることになる . ふつうの気体と ちがうところは , 壁によって吸収・放出されるために , 光子の総数が変化しう
1 う 2 6 粒子・波動の 2 重性 また , 上の例題 2 で述べた 1 次元結晶の場合 , 2 は N2 に比例する . がランダムであったら , ドは N に比例することを示せ . 6 ー 4 コンプトン散乱と X 線の粒子性 もし原子の位置 前 2 節で述べたように , 結晶による回折は , X 線の波動性 , つまり重ねあわ せの原理が成立し位相差による干渉を示すことの証拠である . ところが , 同じ x 線が別の場合には粒子性を示すのであって , その代表例がコンプトン ( A. H. Compton) の実験である ( 1923 年 ). 図 6 ー 10 のように , 固体 S によって散乱された X 線を分光器 C にかけ , 散乱 波の強度を波長の関数として測定する . 分光器といっても , 図 6 ー 4 の結晶 C で あり , プラッグ条件を利用して X 線の波長を測定するのである . 日キ 0 つのビークはス 0 より長波長のス : のところにある . 波長の差」ス = 石一石は″→ 0 2 つのビークが現われる . 1 つは入射波と同じ波長石のところにあり , もう 1 れる . これは入射 X 線のスペクトルと見てよい . 〃半 0 のときには散乱強度に 散乱角 0 = 0 のときには , 入射 X 線の波長石のところに 1 つビークが観測さ 図 6 ー 10 トムソン散乱とコンプトン散乱 .
4 ー 5 電磁場の平面波展開 97 なお , 原子的構造を考えに人れると , 振動数と・波長の逆比例関係 ( 4.4 ) も は = 0 の近傍を除き ) 成立しなくなる . この比例関数はそのままにしておいて , モードの総数が原子数の 3 倍に等しいという条件でだけ原子的構造を考えに人 の場合になぞらえて , 1. 区間 0 ミ $ んで連続な 2 つの関数 / ( , 〆の ) の。スカラー積 ' を , 3 次元べクトル 問題 れる近似を , 固体振動のデバイ・モデルとよぶ . ( 4. 18 ) の規格化直交性を証明せよ . で定義し , げ , の = 0 なら工とは直交するといい , げ , の = 1 なら / は規格化されてい るという . たのと同様に , 空洞内の電磁振動も一般に固有振動の重ねあわせとしてあらわ 軸にそれぞれ平行で長さがんであるとする ( 図 4 ー 8 ). 前節で弦について述べ 話を空洞内の電磁振動にもどそう . 空洞は立方形であり , 各辺は軸 , 軸 , 4 ー 5 電磁場の平面波展開 すことができる . 図 4 ー 8 立方形空洞 . まり境界条件によって敏感に影響される . 一方 , 以下考えるのは高温の熱放射 問題になるので , 固有振動数や空洞内での電磁場の強度分布は壁の存在ーーっ マイクロ波回路の場合には , 空洞の寸法んと同程度の波長をもっ電磁波が
6 ー 2 結晶による X 線散乱 145 れ平面上にあ。ての軸と角〃をなすとする . 入射 x 線の波長をス , 振幅をは , 電場を 2 EO ( らの = cos ( 6.1 ) と書こう . 図 6 ー 5 の点 A にある原子と点 O にある原子では , 入射波の位相に 2 応 2 2 so ・ OA cos 0 だけの差があることになる . A ′ 図 6 ー 5 2 次元結晶による回・折 . ( 6.2 ) 原子内電子の強制振動の振幅 , したが。てまた散乱波の振幅は入射波 ( 6.1 ) に比例するから , 2 つの原子からの散乱波は位相差 ( 6.2 ) をもってそれぞれ点 A および点 O を出発するのである . これらの散乱波が観測点 p に達するまでの行程は , A から出発する散乱波の 方が OA ' = イ cos 住 = s ・ OA だけ短い . s は OP 方向の単位べクトル , はこの べクトルと軸のなす角である . この行程差が散乱波の振幅にあたえる効果は , 散乱波の振幅は OP に逆比例するから , d と op の比の程度であり , いまの場 合無視してよい . 一方 , 行程差によって生ずる位相差は 2 —s ・ OA= 2 d COS 夜 ( 6.3 ) いまは 2 と d とが同程度の場合を考えるから であって , これは無視できない . である . 強い散乱波が観測されるためには , 各原子からの散乱波が干渉によ。て強め あうこと , つまり , ( 6.2 ) と ( 6.3 ) の和である全位相差が 2 の整数倍に等しい
4 ー 6 熱放射のエネルギー密度 1 { お 2 ( らの十 c2 お 2 ( らの } ( 4.37 ) 2 をはについて積分したものであるが , ( 4.29 ) , ( 4.30 ) を代入すると , この 積分は , 、ミルトニアン ( 4.36 ) と一致することが証明できるのである ( 節末の問 題 1 , 2 ). つまり , 弦の場合と同様に , 各固有振動モードのエネルギーは調和振 動子の , 、ミルトニアンであらわされ , 電磁振動の全エネルギーは各モードの , 、 ミルトニアンの和であらわされる . したがって , 固体のアインシ = タイン・モデルやデバイ・モデルの場合と同 様に , 平均エネルギー 101 を古典統計力学によって計算すると ″ = kBT ( 4.39 ) 空洞の比熱空洞内部は物質粒子が存在しないという意味では空つほ。の真空 であるが , 電磁場の熱振動による熱エネルギーを蓄えている . 固体に原子振動 による比熱があるのと同様に , 空洞にも電磁振動による比熱が考えられるので しかし , 固体の場合とちがって , 電磁波はいわば真空そのものの振動であり , いくらでも波長の短いモードが考えられる . 空洞の全放射エネルギーは ( 4.38 ) をすべてのたとびとについて加えあわせたものであるから , もし ( 4.39 ) が正し いとすると kBTx となって無限大である . これを温度で微分した比熱も kB X でやはり無限大ということになる . 古典統計力学のこの結論は , もちろん実験事実と一致しない . 実験によれば , 空洞の熱エネルギーは T4 に比例する ( 比熱は T3 に比例する ) 有限な大きさを もっている . この事実はステファン (). Stefan) によって発見された ( 1879 年 ). 空洞放射のスペクトル単位体積あたりの熱放射エネルギーは ( 4.37 ) の平均 値であり , 次のようになる . ( び 2 十 2Q “ ) ( 4.38 )
192 7 量子力学の確立 縛状態 (bound state) とよふ . 古典力学では粒子が静止しているときに最低ェ ネルギー E= 0 が得られるのにたいし , EI > 0 であって , 粒子は基底状態でも 運動していることになる . これを零点運動 (zeropoint motion) とよぶ . 粒子の 運動が有限な大きさ」のの区間にかぎられると ( いまの場合」の % 十 4 ん一 1 ) , 不 確定性原理によって運動量のゆらぎ」カ ~ カ / 」のが生ずるから , 量子力学では粒 子が静止することはありえない . なお , 古典力学では E< UO なら粒子は領域 Ⅱを往復運動するのにたいし , 量子力学ではど ー 2 心ー に比例する確率でが をこえる . E が EI をこえると , 図 7 ー 10 の曲線 ( 4 ) のように , ふたたびの→で→ ーとなり , E が次の固有値 E2 に等しくなったとき , は領域Ⅱで一度 0 に なったのち , 領域Ⅲで応工に比例する . 一般には , 態とそのエネルギーをあらわす離散固有値 EI, E2, なる . 0 こうして何個かの束縛状 ・・を得たのちに E> UO と 図 7 ー 11 連続準位の固有関数 . E> UO なら , E がどんな値でもはすべてのので凹であり , ェ→のとき有 限にとどまる ( 図 7 ー 11 ) . つまり任意の E が固有値としてゆるされる ( 連続固有 値 ). 古典力学では , 粒子が一方の無限遠からとんできて他方の無限遠へとび 去る場合である . 量子力学では , 外力による粒子の散乱を扱うことになるが , これについては『量子力学Ⅱ』で述べることにする . 最後に UO →の極限を考えると , ん→となり , 領域 I , Ⅲでは束縛状態を あらわすは 0 になってしまう . つまり , 領域Ⅱの 一々を叭土の = 0 と