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検索対象: 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]
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1. 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]

6 粒子・波動の 2 重性 142 まず X 線の発生法について簡単に触れておこう . 制動放射図 6 ー 1 のように , フィラメント F から蒸発した電子を 103 ~ 104 V の電圧で加速し , 対陰極とよばれる固体 T に衝突させると , 波長 1 ~ 10 Åの電 磁波が T から放出される . これが X 線であり , 透過力の強いふしぎな放射線 としてレントゲン ( W. K. Röntgen ) が発見した ( 1895 年 ). 線 104V 図 6 ー 1 X 線管 . 固体に衝突した電子の大部分は , 固体中の原子と非弾性衝突を何回もくり返 して運動エネルギーを失い , 固体を暖める ( だから対陰極の冷却が必要である ). しかし , 少数ではあるが , ただ 1 回の衝突で運動エネルギーのほとんどすべて を失ってしまう電子がある . この場合 , 電子にはものすごいプレーキがかかる わけで , この ( 負の ) 加速度運動にともなって X 線が放射されるのである . この メカニズムを制動放射 ( ドイツ語で Bremsstrahlung) とよぶ . 放出される X 線 の振動数は連続スペクトルをもっている . このほかに , 前章でモーズレイの法則として述べたように , 入射電子が固体 中の原子の K 電子をはねとばし , 同じ原子内の他の電子がその空席に遷移して X 線を放出するというメカニズムがある . この場合の X 線は対陰極物質特有 の線スペクトルを示すので , 特性 X 線とよばれる . X 線が電子の制動放射による非常に波長の短い電磁波だろうという予想は発 見直後からあった . 不完全ながら x 線の回折実験もおこなわれ , 波長が 1 Å付 近にあることもわかった . しかし , X 線の波動性を確立したのは , ラウェ (M.

2. 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]

1 う 2 6 粒子・波動の 2 重性 また , 上の例題 2 で述べた 1 次元結晶の場合 , 2 は N2 に比例する . がランダムであったら , ドは N に比例することを示せ . 6 ー 4 コンプトン散乱と X 線の粒子性 もし原子の位置 前 2 節で述べたように , 結晶による回折は , X 線の波動性 , つまり重ねあわ せの原理が成立し位相差による干渉を示すことの証拠である . ところが , 同じ x 線が別の場合には粒子性を示すのであって , その代表例がコンプトン ( A. H. Compton) の実験である ( 1923 年 ). 図 6 ー 10 のように , 固体 S によって散乱された X 線を分光器 C にかけ , 散乱 波の強度を波長の関数として測定する . 分光器といっても , 図 6 ー 4 の結晶 C で あり , プラッグ条件を利用して X 線の波長を測定するのである . 日キ 0 つのビークはス 0 より長波長のス : のところにある . 波長の差」ス = 石一石は″→ 0 2 つのビークが現われる . 1 つは入射波と同じ波長石のところにあり , もう 1 れる . これは入射 X 線のスペクトルと見てよい . 〃半 0 のときには散乱強度に 散乱角 0 = 0 のときには , 入射 X 線の波長石のところに 1 つビークが観測さ 図 6 ー 10 トムソン散乱とコンプトン散乱 .

3. 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]

144 0 Na ・ . Na 〇 : 0 図 6 ー 3 食塩の結品 . さて , 第 1 章で述べたように , X 線が原子に入射すると原子内の電子が強制 振動をはしめ , 入射 X 線と同一振動数の電磁波を放出する . これが散乱波であ る . 散乱波は放出した原子を中心として四方にひろがる球面波であり , 振幅は 中心からの距離に逆比例して小さくなる . 図 6 ー 4 のように , 結晶 C に X 線を入射させ , 結晶からの距離が結晶自身の大 きさよりはるかに大きい点 P で散乱波を観測するものとしよう . 正確にいえ ば , 結晶内の各原子から散乱されてくる散乱波の重ねあわせを点 P で観測する のである . 各原子からの散乱波の間には位相差があるために , 重ねあわせたと きに干渉がおこる . 以下述べる特別の条件を満足する方向以外では , 散乱波が ほとんど完全に打ち消しあってしまうのである . はじめ , 図 6 ー 5 のように , 同種原子が xv 平面上に周期イでならんでいる場 合を考える . 入射 X 線の方向を単位べクトル so であらわすことにし , これは X 線散乱 . 図 6 ー 4 結晶による

4. 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]

147 2 図 6 ー 7 結晶による プラッグ反射 . 図 6 ー 6 では , 結晶をえ軸に垂直な網平面 ( 2 次元結晶 ) の積み重ねと見たので あるが , 網平面のえらび方は実は無数にある . 同し結晶をの軸に垂直な網平面 の積み重ねと見ることもできるし , の平面と 45 。の角をなす網平面の積み重ね と見ることもできる ( 図 6-8 ) . 連続スペクトルの X 線が入射した場合には , そ れぞれの網平面について ,. プラッグ条件を満足する波長の X 線が , あたかもそ の網平面が鏡であるように , 反射されてくるのである . 図 6 ー 8 結晶の網平面 . 問題 1. 104V の電圧で加速された電子がテレビの画面に衝突するとき , 制動放射で発生す る X 線の最短波長を求めよ . ヒント : 電子の運動エネルギーが完全に光子のエネルギーに変わるとせよ . 2. 食塩の結晶 ( 図 6 ー 3 ) でイ = 2.82A とし , の軸に垂直な網平面についてプラッグ条 件 ( 6.7 ) が = 15 。で満足されたという . X 線の波長はいくらか ?

5. 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]

176 7 量子力学の確立 いして電子は粒子性をあらわすからである . 計数管というのは , 荷電粒子が入射すると管内の気体分子がイオン化して放 電がおこり , 電気的なパルスを発生する装置である . ただし入射粒子の運動ェ ネルギーは気体分子のイオン化エネルギーより大きいことが必要であるが , そ うであれば 1 個の粒子が入射してもパルスを発生し , 粒子を 1 個 1 個かぞえる ことができる . 図 7 ー 5 で陰極 C と陽極 A の間の加速電圧を一定に保ちながら電子線のはこぶ 電流値を下げる . かりに電子を古典的な粒子と考えるなら , 標的 P に入射する 電子の運動エネルギーは一定で , 毎秒入射する電子数が減少することになる . 当然電子線のはこぶエネルギー , つまり , 1 個の電子の運動エネルギーと毎秒 入射する電子数の積も小さくなる . しかし , 電子が粒子であるなら , 図 7 ー 5 の F に 2 個以上の電子が同時に到着することはないほど電子線を弱くしても , ど れかの計数管に放電がおこるはずである . 実験結果はまさにその通りになるのであるが , これを電子が古典的な波動で あるとして説明することはできない . 波動関数は標的 P によって回折をお こし , F に到達したときには F の全面にひろがっている . したがって , が電 子波そのものをあらわすとすると , 電子線の強度がある程度以下になれば計数 管 1 本あたりの入射エネルギーは気体分子のイオン化エネルギーより小さく , 放電はおこりえない . この事情は , 光を波動と考えて光電効果を説明しようと する場合の困難とよく似ている . では , すくなくとも弱い電子線の場合 , 電子 を古典的粒子と見てよいかというと , 以下詳しく述べるように , 答はノーであ る . 粒子・波動の 2 重性と確率振幅としての図 7 ー 5 の各計数管に発生する電 気的なパルスをテレビのプラウン管の画面に輝点として表示させ , 電子がどの 計数管に入射するかをテレビ画像として観察する . 電子線は弱くて , 同時に 2 個以上の輝点が画面に現われることはないとしよう . 銃で標的をめくら撃ちす るのと同様に , 輝点はテレビ画面のあちこちにランダムに現われては消える . テレビ画面を写真に撮れば , 射撃成績を示す標的の弾痕のように , 露出時間

6. 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]

索引 立体の数字は 5 巻『量子力学 I 』の , 斜体の 数字は 6 巻「量子力学Ⅱ』のページ数を示す ウィーンの放射式 104 運動量をあらわす演算子 209 278 アイソ・スビン アインシュタイン の光量子論 イ 7 び 182 イ 0 / 運動量空間 運動量表示 永年方程式 71 238 184 , 186 , 232 の式 アインシュタイン一ド・プロ 157 アインシュタイ アクセプター アポガドロ数 伐線 13 153 10 , 14 39 イ ン・モデル ーイの式 80 S 行列 328 , 329 n 型半導体 X 線散乱 エネルギー・ギャップ引イ 39 イ 141 , 143 106 エネルギーの量子化 エネルギー準位 107 , 189 , 193 , 195 エネルギー 工ミッタンス MO 法 378 380 85 線散乱 112 アンサンプル イオン 10 イオン化エネルギー イオン結合 10 異常ゼーマン効果 位相因子 223 位置をあらわす演算子 1 粒子近似 3 井戸型ポテンシャル 陰極線 11 ウィーンの変位則 2 7 7 54 128 , 352 106 189 幻 8 LCAO 法 379 ット演算子 235 工ルミ ット共役演算子 236 ト性 23 イ 演算子 99 , 186 , 278 , 237 と定数の積 の固有値 の和と積 2 / 9 222 2 / 9 遠心、カボテンシャル 黄金則 32 / , 323 288

7. 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]

2 ー 7 原子発光の振動子モデル 47 なら図 2 ー 14 のようにとびとびに並ぶ . この図を見ると , 線スペクトルという 名称のふさわしいことがわかる . なお , この図は水素原子の発光スペクトルの 一部を示すものであって , 詳しい説明は第 5 章で述べる . 線スペクトルの場合の輝線の並び方には , 原子の種類によって異なる規則性 があるので , 線スペクトルを原子の ID カードとして利用することができる . このようにスペクトルによって原子 ( または分子 ) の同定をおこなうことを分光 分析と呼ぶ . 物理学者キルヒホッフ ( G. R. Kirchh 。幵 ) が化学者プンゼン ( R. w. Bunsen) と協力して確立した方法である ( 1860 年 ). この方法によれば , 遠 い星の送ってくる光のスペクトルから , その星に存在する原子や分子の種類を 知ることができる . 有名な実例はヘリウム原子である . 地球上で発見されるよ り以前に , 太陽光線のスペクトルから太陽に新元素の存在することがわかり , 太陽を意味するギリシャ語のヘリオスにちなんでヘリウムと命名された . 1. 1884 年 , 高校の数学教師であったバルマー ( J. J. Balmer) は , 図 2 ー 14 に示した水 素原子のスペクトル線の波長が 〃 = 3 , 4 , 5 , ・ 例題 1 放出される電磁波の角振動数明を真空中の波長スであらわし , ス = 同し角振動数の電磁波がまわりの空間に放出される . その角振動数を明とすると , 原子内には角振動数明で振動する電流が流れ , 内で電子が振動していると仮定することである ( ローレンツの振動子モデル ). 原子の電磁波放出を古典論で論じようとする場合 , 一番簡単なモデルは原子 2 ー / 原子発光の振動子モデル 4340.5A と比較してみよ . このなの値を上の公式に代入してえられる石 , 25 の値を観測値石 = 4861.3 Å , 25 = とあらわされることを発見した . 観測値 23 = 6562.8 A を使って定数なの値を求めよ .

8. 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]

148 6 粒子・波動の 2 重性 6 ー 3 波動の複素数表示 すこし数学的に扱ってみよう . ちょうど好い機会であるから , 波動の複素数表 波動の扱いに慣れるために , 前節でやや直観的に述べた散乱波の干渉をもう 波動の複素数表示入射 X 線の電場をあらわす ( 6.1 ) を例にとると , るための便法にすぎないが , 量子力学ではこれが本質的なものになるのである . 示を使うことにする . 古典論の場合の複素数表示は振動の位相を簡潔に表現す EO ( らの = Re [ に研 ( r ) ] ( 6.8 ) と書くことができる . 0 ) = ( 2 応 ) は X 線の角振動数 , Re [ ( ] は複素数 ( の実数 部分にを実数部分ミと虚数部分りとにわけて ( = ミ十と書くと Re 監十 = 印 , 40(r) は入射波の空間座標に関係する部分であって , 2 例題 1 ( 6.8 ) が ( 6.1 ) に等しいことを確かめよ . [ 解 ] 2 応を 2 2 Es(), の = Re [ にの s ( r ) ] 同様に散乱波の電場も次の形に書くことができる . の実数部分は ( 6. 1 ) に等しい . ー COS ( so ・ r ーけ ) 十 sin ー - ・ ( so ・ r ( 6.9 ) ( 6. 10 ) 入射 X 線にくらべると , 一度原子によって散乱された X 線の振幅は小さいの で , これがさらに原子によって散乱される多重散乱 (multiple scattering) を無 視する . すると , 結晶は rl, r2, ・・・ , rx という位置に N 個の原子をふくむとして , の s はこれらの原子からの散乱波の重ねあわせとして次の形に書ける . Øs(r) = Eés(r ; ら ) ( 6. 11 )

9. 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]

46 2 荷電粒子の弾道論 その波長は 50 ~ 280A の間に連続的に分布していて , この波長領域における 強力な光源として利用されている . 原子の発光スペクトル以上はマクロなひろがりをもっ空間における電子の 運動とこれにともなう電磁波の放出であるが , 原子内部に電子が存在し , しか も運動しているならば , やはり電磁波を放出するはずである . つまり , 原子は ミクロな大きさのアンテナだということになる . 実際 , 原子が特有の光 ( 紫外 線をふくむ ) を放出することは , 19 世紀後半から知られていた . 一般に電磁波はさまざまな振動数の単色波の重ねあわせであり , その振動数 分布をスペクトル (spectrum) と呼ぶ . 振動数が連続的に分布していれば連続ス ペクトル (continuousspectrum) であり , とびとびの値をとるなら離散スペクト ル (discrete spectrum, または線スペクトル line spectrum) であるという . 上に 述べたシンクロトロン放射は連続スペクトルの例である . 他方 , 原子の放出す る電磁波は各原子に特徴的な線スペクトルを示す . 原子の発光スペクトルを観測するには , たとえば高温の蒸気の発する光を , 図 2 ー 13 のようにスリット S を通してから分光器 P に入れると , 振動数の大小 に応じて光の進路がわかれ ( 分散 ) , フィルム F に多数のスリット像が輝線とし て撮影される . 輝線は , 連続スペクトルなら連続的に分布し , 離散スペクトル 分光計 . 図 2-13 4340.5 Å 4101.7 Å 6562.8 Å 図 2 ー 14 4861.3 Å 水素原子の線スペク トル ( バルマ ー系列 ) .

10. 量子力学 Ⅰ[物理入門コース 5]

2 ー 3 磁場による運動制御 」ぉ 火 2 59 ( 2. 19 ) トムソンの実験トムソン自身は ( 2.19 ) を測定する代りに , 電場と磁場とを 同時に PP ′ ( 図 2 ー 3 ) の部分に加え , 電子線の偏向が 0 になるように磁場の強さ を調節した . このとき , 電子力切軸方向の偏極電場から受ける力 E は磁場か ら受けるローレンツカ et'AB と釣り合っているのであるから , t'A =Ey/B によっ て電子の入射速度の大きさ t'A を求めることができる . この値を ( 2.7 ) に代入し た理論値を , 電場のみが存在するときの電子線の偏向」の観測値と比較する ことによって , トムソンは比電荷と呼ばれる定数の襯 e を求めることができた . こうして求めた比電荷の値が , 陰極や残留気体の種類に無関係であることから , すべての物質に共通な構成粒子としての電子の存在を結論したのである . 現在使われているプラウン管も , 原理はトムソンの実験装置と同しである . ただし 2 組の偏向電場 ( または偏向磁場 ) を使い , 私たちの座標系のえらび方で いえば , 軸および軸方向に電子線を偏向させ , 蛍光面 ( 面に平行な面 ) 上 の任意の点に輝点を作ることができる . 水平偏向板 ー→電子線 鉛直偏向板 図 2 ー 7 1. 軸に平行で一様な磁場召の中を運動する電子の軌道は , 一般に軸を軸とする ラセンであることを示せ . 時刻 t = 0 における電子の位置座標がの = = = 0 , 速度成分