聖が好きだ。 一年前、一志はなんの前触れもなくオレに言った。 中学卒業後、すぐに引っ越してその街の高校に行くことが決まっていたオレと、あと一年中 学生をする一志が、並んで帰る最後の日。 突然の告白に、びつくりして顔を上げたオレを、一志はもの凄く思いつめた表情で見つめて うそじよっだん 嘘や冗談で言ってるんじゃない。直感的にそう思ったとたん、オレは一 = ロ葉が出なくなってし まったんだ。 だって一志とは、オレが中一「一志が中一のときの生徒会で一緒になって以来、お互いに一 跡番の友達だった。 のもちろん、オレも一志も同学年に友達は沢山いる。休み時間とか昼食時間に騒いだり笑った りして過ごすのは、同じクラスのヤッらだ。 ンでも、クラスを離れて誰が一番仲良し ? って聞かれたら、オレは一志って言うし、一志も ムオレの名前を上げる。そんな感じの関係だった。 趣味が合うとか、ノリが一緒っていうんじゃない。一緒に買い物に行っても服の趣味も違う たくさん さわ
す。 複雑な心境になりながら、一志をまじまじと見上げてしまう。 一志が、いぶかしげに眉を寄せて、オレの視線をまともに見返した。オレは慌てて目を逸ら 一志が、軽くため息をついた。 「相変わらず、聖は思ってることが全部顔に出るな。 : ・解ってるんだろ ? 新学期早々、人が いなさそうな場所に呼び出された理由」 「え ? えっと : そむ ロごもりつつ、顔を背けてしまう。 つか 逃げ腰になったオレの肩を、一志が強いカで掴む。無理矢理、向き合う格好にされた。 こく 「一年前、聖の卒業式のとき。俺が告ったの、憶えてるよな」 低い声で言う一志は、怖いくらい真剣な顔をしている。 くちびるか オレは、なんて返事をすればいいのか解らなくて、ぎゅっと唇を噛んだ。 昨日、入学式の後に一志に呼び止められ、この竹林へ呼び出された瞬間から恐れていた一一 = ロ葉 が来てしまった。 これを言い出されるのが怖くて、呼び出し場所の夢まで見てしまうほどプレッシャーだった ことだ。 まゆ かっこう
なる。一志だって、ここ一年まったく連絡を取ってなかった。 それなのに オレは黙り込んだまま、ちらりと目を上げて一志を見た。 遠目で見た時も思ったけど、一志は背が伸びて大人っぽい外見になっている。 もともと、一志の顔つて造形の・ハランスが良すぎて、冷たそうに見えるってタイプで。本人 はめちゃくちゃ嫌がってたけど、中学時代は美少年っていう古風な形容詞がびったりな外見だ それが今はすらりと身長が伸び、キレイな顔立ちとのバランスが完璧になっている。ルック スと年齢が似合ってきた感じだ。 たった一年で、こんなに大人っぽくなっちゃうんだなあ : ・。 かんがい 跡オレは感慨深い気持ちと一緒に、一年経っても中学生の時とほとんど変わらない外見の自分 のを顧みた。 イ 時間が経てば勝手に伸びると思っていた身長は一七〇弱で伸び悩み、カッコイイとは絶対形 どうがん ヴ ン容してもらえない童顔もそのままだ。 ム一年前、似たような外見をしていた一志だけが大人っぽくなって、オレは中学卒業程度っ て、どういうことなんだろ。 か方・
夢の中では、ここに知らない生徒がいたんだよな : ・。 すみ 構える気持ちの隅で、今朝の夢を思い返す。 どうせ呼び出しをされるなら、一志よりまったく知らない人の方が気分的に楽だった。 意気地のないことを考えながら、オレは一志の近くまで行く。 一志が、どう見ても乗り気じゃないオレの顔を見下ろして、軽くため息をついた。 「俺に会いたくなかった、って顔してるな。聖 「そ、・ : いうんじゃないけど 慌てて顔を上げる。だけど、次の言葉が出てこない。 くちびる オレは唇に指をあてて、困惑した気持ちのまま黙り込んだ。 新学期早々、オレをこんな人気の無い場所に呼び出した新入生の高籏一志は、実は都内に住 んでた中学の時代の後輩・ : っていうか、年下の友達ってやつだ。 だけど、そんな中学生の友人関係は、オレが去年、この蒼林学園高等学校に入学して途切れ たと思ってた。だって、この高校とオレ達の通ってた都内の中学は、新幹線で二時間弱離れた 場所にあるんだ。 おんしんふつう 引っ越しを機に、遠くの高校に進学して一年も経ったら、中学の友達はたいてい音信不通に こんわく
今日の変な夢って、絶対これの。フレッシャーだよな : ・。 けいしゃ うな オレは、学校の校舎裏から続く、急な傾斜を必死に登りながら胸の中で唸った。 学校裏の竹林で、知らない誰かに会う夢を見た。その午後に、本物の竹林目指して傾斜を登 っているのは、実に密接で解りやすい関係がある。 そうりん おざわせい 跡オレ、小沢聖は、この蒼林学園高等学校の一一年生。で、今は四月のアタマ、昨日が新入生が のどっとやって来た入学式で、今日からは普通授業という火曜の放課後。 ス あわ イそんな慌ただしい新学期早々、学校裏の竹林へ続く傾斜を登るハメになったのは、新一年生 ~ に呼び出されてしまったせいだ。 もうそうだけ がけ ム この学校裏の竹林は、ほとんど崖って感じの傾斜に沿って、熊笹から孟宗竹までがびっしり と茂っている。 くまざさ
こす 頭上の枝葉が、渡る風を受けて微かに揺れた。さらさらと葉が擦れる音は、水の流れる音に 少し似ている。 ここは学校裏の竹林だ。小山一つが深い竹林になっているこの場所は、昼間でも薄暗くて気 うわさ 味の悪いが絶えない。 そんな場所、普段のオレだったら絶対に近寄らない。臆病だって笑われても、怖い話が大嫌 いなんだ。 だけど、これは夢だから。一人で竹林を歩くことも怖くない。 夢の中のオレは、入ったこともない学校裏の竹林を、勝手知ったるという足取りで歩いてい にお ちかけい 薄暗い竹林を吹き抜ける湿った風の匂いや、枯れ葉や地下茎のせいでふわふわする足元の感 跡触もリアルだ。 奇 の 夢の中のオレは、この竹林で待っ誰かに会いに行くところだった。 ス むか イ迎えに来た、 / を 彼よオレにそう言った。 ヴ 彼は、この満月の夜に元の世界に帰ると言っていた。彼が探していた「月の声を持つ者 - を ン ム連れて、巨大な銀色の月へ帰ると る。 しめ かす か おくびよっ こわ
月の光が眩しい ぐんじよっ オレは目の上に手をかざし、群青色の夜空を見上げた。 すきま 頭上を覆う竹の枝葉の隙間から、巨大な銀色の月が透けている。 夜空に浮かぶ月は、今まで見たこともないほど大きく、強い光を放っていた。 ああ、これって夢なんだ。 オレは巨大な満月を見上げながら思う。 夢だという自覚のある夢。オレの目線で物を見ていても、見ているオレに決定権はない。 ただ、夢の中のオレが勝手に判断し、行動する一部始終を、のドラマのように見ている だけだ。 夢の中のオレは、月の光が降り注ぐ竹林に一人で立っている。 おお まぶ しじゅう
ま .0 ( 佻 A [ T - SER 5 集英社 ー丘市頁アヤ ムーンヴォイスの奇跡 5 0
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卒業式の日、後輩の一志から告白されたまま 引っ越してしまった聖。一年後、まさか一志 が同し高校へ入って来るとは思わなかったー これからど、つつきあっていけばいいんだ・ : ? しかし聖に悩むヒ・マはなかった。一志に呼び 出された竹林に突然現れた男の子・ヒカルを なぜが預かることになってしまったのだが、 ヒカルはど、つやら人間しゃないらしい ファンタスティック・ポーイズラブ D かずし 恋気分いつはいの夢 0 小説誌 ! 朝 t 1 月、 3 月、 5 月、 7 月、 9 月、 11 月の 18 日発売 隔月刊ですの蕉お求めにくし匸ともありま魂 あらかじめ書店にご予約をおすすめしま魂 集英社