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検索対象: ラブ・ユー : 初恋レボリューション
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1. ラブ・ユー : 初恋レボリューション

「嵐のキスシーンだけほしいなんて言うからオレ、スタッフさんに編集たのむの、すっげ恥ず かしかったぜ。ちいちゃんへンタイ」 「ふん。好きな男が他者とくり広げる愛欲の場面をこの目に焼きつけ、みずからを痛めつけよ うというこの徴妙な男心。小猿などにはわかるまい」 んなもんわかるもんか。 と言っても始まらないので、とりあえず黙とビデオをセットする佑である。 五〇インチの巨大画面に ( 高藤家ではあととりのワガママはたいてい聞き人れられてい る模様 ) びよよんと現れたのは、地球少年ランのアクションシーン。 そして続いて、プリンセス・ユーとのラブラブキッス。 どうやらスタッフも亜ノリしちゃったらしく、ビデオフィルムはみごとなまでにキスシーン だらけに編集されて、観ている佑もあらためて赤面したりして。 そんなビデオをじっくり観ながら、角度が悪いだの、表情がイマイチだの、千夏はいろいろ 文句をつけて、なかなかに楽しいふんいきが満ちてゆく。 ランとユーのカラミはどうやらクリア。 問題が起こったのは次のシーンであった。 「むむ ? なんだこいつは ? 」

2. ラブ・ユー : 初恋レボリューション

210 くつくと笑っていた光司狼は、相手の思いのほか真剣な表情に、その笑いを止める。 ふたりの少年のあいだに、たちまち訪れた沈黙と緊張の時間。 やがてそれは、光司狼から放たれたきつい視線によってさえぎられた。 ぞくっとするようなその視線の激しさに、嵐は思わず息をのむ。 オオカミがうなるときのように低く、どっから出してんだかわからないような声で光司狼が 言った。 「嵐、いつまでもくだらねえことフカシてんじゃねえよ。そんなことがあるわけねえし、あっ てほしいとも思わねえよ」 「光司狼 : 「佑はおまえの恋人だ。佑自身それを何より望んでるぜ。わかってるはずだろ ? とぼけたこ とぬかすのもいいかげんにしとけよ」 こわね なかばオドシをかけるような声音でそう言って、光司狼は嵐の体から手を放す。 ゃーねーもー、光司狼ったらャサグレちゃってつ。 が、そのヤサグレ度も、この時点ではまだ並程度であったと言える。 この直後、嵐がロにした言葉は、光司狼のヤサグレ度を一気に引きあげることになる。 つまり嵐は、言わなくてもいーことを堂々と言ってのけてしまうのだ・ みなのしゅー聴け。この一一一口葉だッ !

3. ラブ・ユー : 初恋レボリューション

( うそ。か、体に力が人らな・ : ) 数秒が永遠に変わる瞬間。 思いがけないテクニック。 水月はなすすべを失って嵐の腕に抱かれたままになる。 さあっ、こっからスローモーションでいこう ! ゆっくりと伏せてゆくまぶた。 まっげ ほほにかかる長い睫毛。 何もかもが消えてゆく。 音も風景も、自分の属する世界のすべてがかき消されてゆく。 シ 何にも見えない。 ュ 何にも聞こえない。 きっともうここ以外のどこへも行けない。 レ こんなキスは 初めてだった。 ュ その声がふたたび耳に注がれ、無音の世界から現実 ( と引き戻されるまで、水月は自分がど ラ こに立っているのかも忘れていた。 水月は最初、言われた意味がわからなかった。 いだ

4. ラブ・ユー : 初恋レボリューション

230 「ひっ ? 火って」 佑はごくりとツバを飲みこんだ。 凶悪な視線。 その瞳を見ただけで佑は自分の全身が火を噴くかのように感じた。 てぎわ こういうことに関する光司狼の手際はいつだって悪くない。 実際、馴れきっているのである。 その馴れた手つきでさっさとシャッまで脱ぎ捨てて、光司狼はバサリと空中に髪をなびか せた。 輝くような上半身があらわになる。 佑の目はその引き締まった体にくぎづけになった。 ードスケジュールのためだろう。以前よりだいぶやせてしまっているのがわかったけれ ぼうぜん ど、それが光司狼の肉体をより鋭く魅せて、佑は茫然としてしまう。 そうして動けなくなっている佑のそばへ、ギシッと音を立てて光司狼が乗りあげてくる。 近づいてくる野獣の息づかい。 らんらん まるでジャングルのうっそうと茂った木々のあいだから、爛々と目を光らせたジャガーが現 れたかのようだ。 息が吹きかかるほどに近づいてきた光司狼が、佑の耳たぶに歯を立てる。

5. ラブ・ユー : 初恋レボリューション

242 けれど、そうやってどんなにファンが増えても、どんなにみんなにちやほやされても、佑の 心は晴れなかった。 お仕事はお仕事つ。 とわりきってカメラの前では笑顔を作ってみせたけれど、そうやってむりに笑う佑の様子 らんみづき は、そばで見ている嵐や水月の心をすつごく痛くさせるのだった。 視聴者やスタッフはごまかせても、小 さな頃からいっしょに育った幼なじみの目はごまかせ ない。 局のひかえ室で嵐とふたりきりになったとき、水月はほとんどくやしさに半分涙をにじませ そうになりながら嵐に言った。 「あんな佑、見てらんないよ。どうして佑があんな作り物の顔しなくちゃいけないんだ。佑は いつだって本気じゃなきや笑ったりしなかったのに」 けんめい 「ああ。俺も見ててつらいよ。佑は佑なりに一生懸命やってるんだと思うと、なおさら、な」 「ちくしようつ、光司狼のやっ : 水月様らしからぬ乱暴な言葉づかい。 おも けれど嵐には、水月がそれだけ佑のことを想って騎士バージョンになってしまっているのが わかる。 そういう意味では自分だって同じ気持ちだ。 ナイト

6. ラブ・ユー : 初恋レボリューション

198 佑の目の前には今まで深い情熱的なキスを交わしあっていたふたりがいて、そのどちらもが まじまじと自分を見つめていたりして。 ( オレ今なに言ったんだ ? ホンモノのキス : ・ ? ) 佑は自分で自分がわからなくなる。 ( ダメだ。オレめちゃくちやコンランしてる ) 「佑」 嵐がゆっくりと階段を昇りはじめ、自分に近づいてこようとするのがわかる。 佑は反射的に体をひいた。 「佑 ! 」 こた 嵐に呼ばれても応えない。 佑は。ハッと体をひるがえし、もと来た階段を駆け昇ってゆく。 「佑ッ ! 」 嵐は佑の後を追いかけようとして、ハタと足を止めた。 背後には水月が立って、じっと自分を見つめていた。 「水月」 「いいよ、行って。きみのほうが足が速い。僕も佑が心配なんだ。わかるだろ ? 」

7. ラブ・ユー : 初恋レボリューション

224 ひとみ ふと佑の瞳が大きくみひらかれる。 急に強くなった光司狼の腕の力。 ( な、に・ : ? ) すべりこんできた舌の甘さ。 たぐり寄せるように強引に吸いついてくるくちびる。 ( だ、だめ光司狼 ) このままではわからなくなる。 どこに行ってしまうのか。 わからなくなる。 どこへ ? 遠く 教頭先生のどなり声も聞こえなくなるほど。 「ふつ、ふたりとも退学だーツ " こ

8. ラブ・ユー : 初恋レボリューション

みんな、いっかいなくなる。 いつだって人は独りなのだ。 だれも永遠にそばにはいない。 それがあたりまえだ。わかってる。 ( なのに、なんで ) 目隠しの裏が熱く濡れてゆくのがわかる。 ( ばかな。こんなことで泣くもんか。こんな・ : 、ばかばかしい ) それでも、止めようと思ったときにはもう止められなくなっていた。 かな 堰き止められていた哀しみが、あふれる。 そのとき。 「水月をはなせ 天井から降り注いできた少年の声。 その声だけが水月の耳にこだまする。 駆け去ってゆく男たちの足音。 ほかの音はもう聞こえない。

9. ラブ・ユー : 初恋レボリューション

こんなにカンカンになった経験は、佑自身初めてだった。 どーしてこんなに怒りが沸騰して真っ赤なマグマ化してるのか、我ながらわからない。 わからなくてもとにかく腹が立つのだ。 こうしんりよう 真っ赤な香辛料でも飲みこんでるみたく、ドカンドッカン連続爆発。 ぜんぜん、止められない。 こうしろう みづき ( いやっ、理由はわかってる ! あんなの許されねーぜ ! 光司狼の野郎、水月みてーに純情 なやつをもてあそんだんだからなっ ! あんなっ、あんなふーにキスの安売りしやがって ! ) 佑の頭の中で、光司狼と水月のキスシ 1 ンの映像、いきなり再生 ! 佑の目が鬼型 ( ってなんだ ? ) になる。 きちく よくよく考えてみれば、自分だって光司狼の鬼畜野郎にはキスだのなんだのそりやもーイロ イロされているわけなのだが、どうしてか今の佑の頭にはそんなことはカケ一フも思い浮かばな 自分が光司狼にオカされたりしたことはあっても、その光司狼が自分以外の他の誰かとキス 以上に接触している場面には一度もでくわしたことのない佑だった。 ( くっそー、気分は e レックスだぜ ! 光司狼のヤロー、見つけたらげしげし三千回は踏んで やる ! ! ) ※レックス↓テイラノザウルスのこと。佑ちゃんは恐竜ファン。恐竜図鑑も持ってます ふっとう われ

10. ラブ・ユー : 初恋レボリューション

「水月 ? 」 「わからないよ。でも、そうかもしれないー 「ためしてみるか ? 」 「なに ? キス ? 」 「ああ。プロデューサーとしちゃ、女優にはキスシーンのイッコやニコ、軽々とこなしてもら いてえのが本音でね」 「フン。したいならすればいいだろう」 光司狼相手ならいくらでもこんなセリフが言えてしまう。 何をしても、されても、てんで余裕。 心が騒いだりもしない。てんで冷静。 ( なのにどうしてあのとき・ : ) 水月の人生にわからないことが増えていく。 謎。 謎は物語のはじまりだってことを、水月はまだ知らない。 兄弟以上恋人未満な悪徳キスを受け人れながら、水月の目はふとすきまの空いたカーテンの ほうへ向けられ。 「佑に」