☆Ⅱ☆そして愛の試練プリース 光司狼と佑がハグすることはおろか、ロをきくことさえできなくなって一週間 もうかなり、ふたりともいつばいいつばい。 せがわ 世間はあいかわらず十代の天才脚本家瀬川光司狼のスキャンダルでさわいでるし、学校側は ン 光司狼の自主退学を受け人れる方向で動いてるし、佑も校長室の一件で現在停学中。 、一光司狼はあれつきり自宅にも戻らなくなってしまい ( どうやら局に泊まりこんでいるら しい ) 、ふたりにはすれちがいの日々が続いている。 亠そんな矢先、局は・ハーチャルアイドル由宇の特集をすることを決め、由宇のあとを 初カメラが追いかけ始めた。 メイク中の由宇ちゃん、局のエレベーターの前でピースする由宇ちゃん、ひかえ室でお ュ などなど プ菓子をほおばっている由宇ちゃん。 はっきりゆってめためたカワュイ D だから何 ? こうしろうゆう ュウ
女副社長、黒ハート連発でせまる。 「でもね、あなたは若すぎて業界じゃまだ信用がないでしょ ? 今は『。ハーチャルプリンセ ス・ユー』のヒットに乗じて、由宇の人気を最大限に利用することが大事よ。ほら、このリス トを見てちょうだい。あたしのコネで由宇の仕事、いつばい取ってきてあげたのよ学」 女副社長、こびこび恩を売る。 「ねっすごいでしょ ? あなただって由宇を売り込みたいって思ってるのよね ? うふ、ぜえ んぶあなたのためよ、光司狼クン学」 そこで光司狼、けっこうグサリなひとこと。 「いえ。悪いんですけど、俺は由宇にこれ以上仕事させる気はありません。ただでさえあいっ シ追っかけなんかも増えてて、プライベ 1 トな時間がなくなって気の毒なんですよ。それに俺 、は、あいつのためにもあんまり無茶な仕事はさせたくないんです」 レ 女副社長、顔色が変わる。 一あーやばいかなあ、と思いつつ、光司狼にも退けない理由があり。 しかもこの男、そもそもあんまり相手にゆずるタイプでもなく。 「由宇は俺が作ったの中じや一番のデキですし、できれば大事に育ててやりたいんです よ、俺」
「ら、らん、嵐 どすっ ! ↑佑、嵐のハラ突撃 ! がんっ ! 个ー 嵐、後頭部、壁に激突 ! 「いてつ。由宇 ? いったいどうしたんだ ? 」 嵐のやさしい言葉にも、佑はぶるぶる首を横にふるだけで答えない。 由宇ちゃんモードになってる佑の小さな頭は嵐のレザージャケットの内側に隠されて、もは あまいわと や天の岩戸におこもり中の天照大神状態。 そうやって顔をあげようとしない佑を抱きしめたまま、嵐は光司狼のほうへと視線を移す。 ン「光司狼 ? 由宇になんかしたのか ? 」 シ「したかもな」 ュ へろっと一一一口うなへろっと ! 嵐の後ろから出てきたプリンセス・。ハールな水月も顔色変えている。 レ 机「何をしたんだよ光司狼撮影前の由宇をこんなに興奮させて ! 」 一由宇のマネージャーとしては当然の言葉である。 嵐はそれ以上問いつめたりするようなことはしなかったが、それでもこういう場面では長男 らしい一面が出てきて。 「責任を取れないようなことはするなよ、光司狼。プロデューサーだろう ? 」 アマテフスオオミカミ
134 しかも佑は気がついていなかったけれど。 「あれー、由宇ちゃんじゃない。なに泣いてんの ? ( え ) 泣いてる ? 佑は思わずほおに手をやる。 濡れた指先が信じられなくて、ぼうぜんとそこで手を止めてしまう。 「うわ、かわいそう。どうしたの ? 誰かにいじめられた ? 」 「芸能界だもん。人気者はしんどいよね。でもいつも元気な由宇ちゃんが泣くなんてよっぽど だね」 少年たちが五人、いや六人 ? どの顔もそれなりに見られる顔。芸能人だ。 そうしてワラワラと寄ってきた若い男の子集団が、あっというまに由宇を囲んでしまう。 ( えっと。だれだっけ、こいつら ? ) ちょっとのあいだ記憶喪失。 しかし佑がそれ以上悩む必要はなかった。ぽかんとして彼らを見あげた由宇の様子に、少年 たちのほうから名乗ってきたからだ。 まえ 「あれ、ボクたちのこと覚えてない ? 以前に歌番組で一緒だったでしよ」 ぬ そうしつ
監督の大声がスタジオ内に響きわたって、撮影が中断される。 「由宇ちゃん、表情カタイよ、、どうしたの 5 ? いつもの調子で由宇ちゃんスマイルたのむ 「あ、はいツ、ごめんなさい。ハピッ ! 」 撮影スタッフからの注文に、佑がいきおいよく頭をさげる。 「大丈夫かい ? 由宇 ? 」 王子様衣装を着けたステキ嵐が、心配そうな目で佑を見おろしてくる。 「ん、ヘーき D ごめんねツ。せつかくうまく踊れてたのに、あたしのせいでリティクになっ ンちゃった D 」 、一由宇ちゃんのハート付きしゃべりも、もはや堂に人っている佑である。 おだ ュ そして今日もその愛くるしさに目を細めつつ、嵐は穏やかにほほえみ返した。 ル「俺は何回踊ってもかまわないよ。ダンスはキ一フィじゃないみたいだ」 初「あ、オレも D 」 「☆」 ュ 面食らったような嵐の顔に、佑があわてて言いなおした。 「えと、あたしもっ D 」 ュウ いしよう
190 にこ D とお花のような笑顔、ふつかつ。 「あっ、いいねいいね ! その笑顔 ! 」 「それだよ、由宇ちゃん ! 」 スタッフ騒然 ! 「よっしゃ ! もう一回いくぞー ! 」 監督もノリノリ。 そうして撮影は無事に再スタートしそうになったのだが。 「わっⅣ。、ールさんッ ! 」 「水月」 そーだ ! ラブストーリーはこーこなくっちゃ ! ( ひそひそ ) いきなり駆けだしてスタジオを飛びだしていった水月を、嵐がほとんど反射的に後を追う。 」あす . がんフォワード ! 反応速いぜ ! 一方、取り残されたスタッフと由宇ちゃん、ぼーぜん。 「えっと」 しばらくほっぺをポリポリしてみたりした由宇ちゃんだったが。
「へえーえ、なあんだか妬けちゃうわねえ。そおんなに由宇のことが大事なのお ? そう言え ばあの子の 0 って実在の少女をモデルにして作ったんですってね。案外、光司狼クンのカノ ジョだったりして ? 」 ふきげん 女社長、もはや核心にふれずにいられないくらい、けっこー不機嫌。 しかしそこは光司狼。 スポンサーといえば、番組 ( この場合、現在、由宇が出演中の『バーチャルプリンセス・ユ ー』を指す ) にとっては神様にも等しい存在。 怒らせては元も子もないのである。ので。 「ハハ、まさか。由宇は嵐兄貴のカノジョなんですよ」 「そりや自分の作品ですからかわいいとは思いますけど、実際はああいうガキくさいタイプは 苦手ですよ、俺」 「あらっ学」 おーい、宇宙一のタラシく、ん。 女副社長の目はすでに銀河系の星を詰め込んでキラキラである。 そこで光司狼、もうひと押し。 「カノジョにすんなら、どう考えても、美砂さんのほうが理想だな」 らん
「由宇、準備は終わった ? 」 「嵐ッ ! 」 一方、ひかえ室に人っていった嵐は、声をかけるなり全速力で駆け寄ってきた佑にびつくり させられることになる。 「な、なんだい由宇 ? どうかしたの ? 」 「ううん ! なんでもねーんだ ! なんでもねーんだっ ! 」 ばたんと閉じた扉を背に、水月は硬直して立ちつくす。 ふるえるくちびるを両手でおおった。 ( なんでこうなるんだよ ! なんで : ・ ! ) くずれてくバランス ゆらいでくトランス 自分で自分がわからない はじめてのエモーション
136 でもって佑の背後は、お約束のように誰もいないスタジオの重たい銀色の扉。 ( に、逃げなきや ) 「あのつ、いーです、あたし、もう涙止まったし ! 」 「えー ? そう ? まだ止まってないでしょ ? 」 じり : 由宇を取り囲んでいた少年たちの輪がせまくなる。 「と、止まったもん」 「どうかなー」 じり : : X 2 。 「あ、あたし帰る」 「そう ? 」 わーサイアク。 佑は押しつけられた少年たちの体に抵抗できず、そのまま無人のスタジオの中に押しこめら れてしまう。 いきなり腕をつかんできた少年の手をふりはらって、由宇はスタジオの中に駆けこむ。 「なにすんだよ ! 帰るって言ってんだろ、ちきしよう ! 」
あ、だめだこりや。 こうなるともう由宇ぶってなんていられない佑である。 天下の美少女アイドルがロ汚くののしる、の図。 「そこどけよッ ! 帰るんだからッ ! 」 「だーめ」 「そ。ボクらは由宇ちゃんをなぐさめたいんだ」 「いらねーよ ! よけーなおせわだ ! 」 佑、すでにファイティング・ポーズ。 ンしかし相手は六人だ。 →勝算はあるのか、佑に ュ ( くっそー、ひとがなやんでるときにジャマしやがってツ。ゆっるさねーぜッ ! ) レ フツ。 恋 初心配ご無用。 おざき ここで明かされる尾崎佑のヒミッ 1 ! ュ プ佑はちびっちゃいし、一見きやしやだし、そりやもーすぐにも押し倒されそうなタイプでは あるんだけど ( そして実際、あるふらちな野郎には押し倒されているんだけど ) 、これで実は あんがいバトル慣れしてるのである。