化粧品に使う薬品の皮膚への刺激 や毒性を試験するため、毛を剃ら れ身体に薬品を塗られるウサギ。 肌はただれ、中には骨まで見えて しまうウサキもいる。 PhOtO by PETA
2 化粧品に使う配合成分に関する具体的な ら与える場合、注射器の先についた管を 規制「化粧品基準」を設け、公表してい 使って喉から胃まで試験物質を入れられ る。その基準リストに新たな原料を加え たラットなどは、痙攣や発作、ロからの ナし場合には、その要請時に、に種類の 出血、内臓の破裂などを起こすこともあ つつし」 . い一フ - 毒性試験をしなければならないし、その うちのⅡの試験で動物実験が求められて シャンプーの影響など、目への刺激や いる。薬用化粧品の場合にも、新しい添損傷をみるための実験では、薬品を、首 加物を配合する商品を製造販売する場合 を固定したウサギの目に点眼するドレイ には、動物実験が必要だ ズ法が広く採用されている。この試験は、 化粧品や薬用化粧品の原料としてすで 目の充血や出血、失明などさまざまな症 に安全性が確認され、広く世界で使用さ状が現れ、ウサギはあまりの痛さに暴れ れているものは膨大に存在する。にも関 たり死んたりすることもあることから、 わらず、企業は新たな成分の開発を進め 近年では麻酔の使用が義務付けられるな る。開発には莫大な予算と多くの実験動 ど試験法の「改善」も行われているとい 物が必要だか、商品になれば、その利益 うが、前述の化粧品基準のリストに新た もまた大きいからだ。 に追加申請する場合には、この試験が求 められている 動物実験、 では、日本では年間にどのぐらいの動 第′ , 何がされている ? 物が使われ、殺されているのか 化粧品のための動物実験ではどのよう の東さんによると、「その数は正直、よく なことがおこなわれているのか わからないというのが実態」という。な によると、代表的なものは、皮膚のアレ せか化粧品だけでなくさまざまな分野 ルギー反応や、皮膚への刺激・損傷を試 の動物実験において、日本では、何の動 験するための試験だという。これは、モ物をどのぐらい使ったのかというような ルモットやマウス、ウサギの毛を剃り、 報告が義務付けられているわけではない 皮膚の表面に試薬を塗ったり、皮膚の下 力、らたし」い一フたた 東さんは「化粧品 に注入したりしてその反応を試験するも と医薬部外品で仮に年間加件の申請 ( 新 の。美白、カットといった薬用化粧成分を使う場合の申請 ) が国に対してあ 品のために使われることが多い ると想定すると、 1 物質に 4000 匹で その他、物質の毒性を調べるために、 計算して、年間約 8 万匹程度ではないか」 どれだけの量の物質を口から投与すると と推測している 動物が一定の期間で死亡するかを調べる ちなみに、動物実験の中には 1930 試験もあるし、ロからではなく、皮膚に 年代に確立された方法もあり、科学的な 塗ってその毒性をみる試験もある。口か信頼性を疑問視する声があるのも事実 薬品の目への刺激を試験するため に薬品を入れられたウサギ。化粧 品のための動物実験は、これらの 写真か世に出たことで反対の声が あがった。それがイ庄品業界を動 かし、さまざまな国や土戓で廃止 されてきている。 Photo by PETA
にくモ 中 - どた・・ 背つ o か 4 な第 c 、」、れこ旧 一つ 、の水た「 ロれだ c 毒塗きに ロゅ・エ」 ・薬薬なル うねりとなり、化粧品のために動物実験 その化粧品、 をしないという選択は、今やもう世界的 どうやって作られる ? なスタンダードになりつつある 私はいま、動物実験がされているかど 例えは、加盟国か国では 201 うか分からない化粧品やシャンプーを使 3 年 3 月で化粧品のための動物実験、さ っていない。川年ほど前、町を歩いてい らには動物実験をした成分を含んだ化粧 た時、首を板のようなもので固定され、 品の販売や輸入が法律で禁止された。イ 目を真っ赤に腫らしたウサギがずらっと ンド、イスラエルでも同様に禁止されて 並んでいる写真パネル ( ちょうど表紙の いる。ニュ 1 ジーランドでは輸入規制ま ような ) を持ち「化粧品の動物実験廃止 ではいかないが、化粧品のための動物実 をー」と声をあげている人たちがいた 験禁止。韓国、トルコでは部分的に禁止 化粧品の動物実験でウサギ ? と思い その他、アルゼンチンやオ 1 ストラリア、 調べ、化粧品を作るためには、さまざま 、フラジル、カナダ、アメリカ、台湾など な動物で実験がされていることを知っ 多くの国や地域で、実験を禁止するため た。私が見た、板に首を挟まれているウ の法案審議が次々と進められている ( 2 サギは、目に薬品を入れられ、その毒性 016 年 8 月時点 ) 。 や安全性をみるために使われる ( ドレイ 巨大なマーケットを持っでの全廃 ズ試験という ) 実験動物だった。その事は確実に世界のコスメ業界、さらには政 実がショックで、それがきっかけで、自府や法を動かし、各国で禁止に向けた審 分で使うものを選択するようになった。 議が重ねられている。先進国ではここ、 とはいえ、私たちにとって自分たちの 日本を除いて 身体に使ったり入れたりする物の安全を での全廃と 求めることは「当たり前」だ。化粧品だ 日本の場合 けでなく、あらゆる医薬品や薬品、スー に並んでいる化学物質や添加物を使 大きなきっかけは 19 8 0 年、ニュ った多くの食品が、動物を使った安全性ヨーク・タイムズ紙に掲載された意見広 試験を経て市場に出ている。ウサギ、モ 告だった。その広告は、動物福祉運動の ルモット、ネスミ、サル、大・ : : ・様々 活動家だったアメリカのヘンリ 1 ・スピ な動物が、人間の「安全」のために日々 ラさんという男性が、当時動物実験をし く目 実験に使われ、ク廃棄されてい ていた大手化粧品会社を名指しし、実験 には見えにくいか、それが現実た の廃止を求めて出したものだったが、紙 しかし、こと化粧品に限っては「美し面に印刷されたウサギの写真とメッセ】 さのための犠牲はいらない」 という声か ジ ( 左小さい写真 ) は、化粧品のために ここ年で世界的に大きくなり、それは 動物実験がなされている事実を世に伝
を 悪名高いウサギのドレイズ試験の代替 だ。それに、人間と動物では、化学物質事、亀倉弘美さんによると、「実は、化粧 に対する感度も異なり、動物実験では人品の動物実験のすべての項目で、動物を法も、ヒトの角膜モデルを用いた試験法 の などが開発され、第三者評価の最中、も 間へのリスクを過小評価してしまう恐れ使わない代替法が確立しているわけでは しくはテストカイドライン化を待ってい ない」のだという。「しかし、代替法があ も指摘されている。 るし、完全に動物を使わないとまではい るなしに関わらず、倫理的に判断しても 動物を用いない かないが、食用として殺された牛から摘 フいい加減、化粧品の動物実験は止めま る 試験法 出した角膜を用いる法などが使 しようというのがの心意気だったん よ 用可能になっている です」 そもそも〈フはも一フ 1930 年代ではな デ < 「動物実験をすれば、実験動物を仕入れ、 動物実験に代わるひとつの代替法が広 いし、近年のバイオテクノロジ 1 はすさ 当 ~ モ > LL.I く利用されるまでには、研究開発、その維持するためのコストや人件費がかかる まじい進化を遂げている。では、動物実 験に変わる代替法にはどんなものがある研究が妥当であるかという評価、第三者し、そもそも動物と人間の間にある『種 こ 0 ナ , のだろうか 差』の問題がある。一方で代替法は、試 機関による査定、行政の受け入れなどい 養 第培法 験管の中でおこなう実験のため、経費も くつもの段階を経て、場合によっては川 まず、動物実験の代替法とは、国際標 を 準とされて久しい「 ( 動物実験の ) の年近くかかることもある。とはいえ、動時間も圧倒的に削除できるし、そもそも ヒトの細胞を使ってヒトへの安全性を調 物実験に反対する世論に後押しされ、世 皮一 原則」にの「と「て開発、実施されてい のた べることができます」と亀倉さん。とは る実験のことをいう。とは、実験動界中でその研究は日々着実に進められて いえ、日本では、欧米に比べると代替法 いる。亀倉さんによると、「化粧品の動物 物を削減すること (Reduction) 、実験動 の研究開発に対する予算も研究者も少な 実験には化学物質の毒性を調べる試験と 物の苦痛を軽減すること (Refinement) 、 こ いのが現状だという 有効性を調べる試験があるが、毒性試験 動物を使わない実験に置き換えること 行 さて、動物実験を止めるということは では人の皮膚の培養細胞などを利用した (Replacement) の頭文字をとったもの。 モ 0 代替法というと私たちは「完全に動物実試験法の開発が次々に進められている」当然、これまで誰も使ったことのない新 0 と一一一卩フ。 規成分を配合する化粧品は作らない、 数の削減 0- 験をしない」と思いかちだが、 いうことを意味する。デメリットや反対 ウサギを使っておこなわれる皮膚試験 や苦痛の軽減につながるものも「代替法」 0 0 の声はないのか。亀倉さんは、「日本で と呼ばれている。つまり本当の意味での の代替法としては、ヒトの皮膚細胞を三 2 は、医薬部外品だと商品の効能が謳えま 次元で培養した人工皮膚モデルが開発さ 動物実験代替法とは、このうちの RepIa すから、化粧品業界は ( 動物実験をして れて広く実用化されているし、モルモッ 施定 cement を指し、それには一 n vitro ( イン・ 実决 トを使った光毒性試験 ( 化学物質が紫外新しい成分を開発することを ) 死守した ヴィトロⅱ試験管の中でおこなう試験の いんです。だから、禁止にしたら経済的 意味 ) や、一 = = 。。 ( イン・シリコ = コ線を吸収した時に皮膚にダメージを与え に損失だ、企業のイノベ 1 ションが後退 ンピュ 1 タシミュレーションによる毒性るかみる試験 ) の代替法としては、マウ 0 するという声もあります。でも、それら ス由来の培養細胞を複数の穴が空いたプ 評価 ) などの方法がある レ 1 ート」一 の商品はや多くの世界で流通できな ( 入れ、それぞれの穴に量を変え 1986 年に日本で誕生し、動物実験 いし、世界的な動物実験反対の流れの中 た試験物質を注入、一定時間後に生き残 の廃止を求める活動や代替法の普及啓発 手、 大 活動などを続けている「法人動物 った細胞数を測定することで毒性を調べ で、動物実験をしていることで企業イメ る方法が実用化されている。 イの実験の廃止を求める会」の理 1 ジを悪くすることの方が損失になるの 本でい品の を廃止よう以
イ庄品に使う薬品の目への刺激を 試験するために目に薬品を入れ ーられたマウス。目は腫れ上がり、 周辺はただれ、このマウスは失明 した。日本では通常、目への刺激 試験にはウサギが使われる。 PhOtO by PETA 日本での「化粧品」とは、ファンデーシ ョンや口紅、シャンプ 1 やリンス、化粧 水など、身体に対して使用されるもので = 一人体に対する作用が緩和なものをい ( 一方で、美白用品やカット用品、育 一毛剤、薬用歯磨きなど効能を謳うものは 「薬用化粧品」と呼ばれ、それは「医薬 部外品」に分類され、差別化されている しかし、では「化粧ロ聞」といえば、 え、それは瞬く間に全米に広がり、実際日本でいう「化粧品」と「薬用化粧品」の に多くの企業が実験廃止に追い込まれ両方を指す。 実は日本でも、いわゆる「化粧品」を製 たそれだけでなく、動物を用いないイ 造・販売する場合には、動物実験はとく 替法の研究が進められるための大きな一 2001 年の旧薬 に求められていない 歩にもなった。その動きはすぐにヨーロ ッパにも広がり、 1993 年、は事法改正までは、過去に日本で使われた ことのない成分を使う場合には動物実験 域内での化粧品の動物実験を全廃する が義務づけられてきたが、改正を機に、そ ことを決定した。そして、さまざまな段 の判断は各企業にゆだねられることにな 階を経て 2 013 年、いよいよ、例外な ったからだ。の動物実験全廃以降、 しでの全廃が実現されたのだ 日本でも動物実験をしないという選択 では日本ではどうか世界中で「 Be シフトした化粧品会社は多い℃しかし一 Cruelty-Free 思いやりのある美しさ」キ ャンペ 1 ンを展開している世界最大規模方で、義務付けされていないにも関わら ず、いまだに「安全性を確保するため」 の動物福祉団体ヒュ 1 メイン・ソサイエ として、長年続けてきた実験を続けてい ティ 1 ・インタ 1 ナショナル ( ) の るプランドも根強く存在するという。自 日本コミュニケ 1 ション・コンサルタン 社では動物実験をしていなくても、原料 トの山﨑佐季子さんと、同団体の日本に おける政策提言コンサルタントである東調達先の企業が実験を実施しているケー さちこさんによると、日本の場合には「動スもある。さらに、中国を主なマ 1 ケッ トに入れている企業では、中国国内で流 物実験をするかしないか、動物実験を伴 う原料を使用するかしないかの判断が各通する化粧品は動物実験を避けられない ため、「だから動物実験が必要だ」と主 企業にゆだねられていることが、動物実 張するケ 1 スもあるという。 験をク野放しツにしている」と指摘する。 ます、日本でいう「化粧品」と、 また、日本では、動物実験が明確に義 2 務づけられている分野もある。厚労省は、 でいう「化粧品」の定義は少し異なる
DAYS 从々の尊厳が奪われている場所、そこを沃間の戦場クと呼ぶ」発行人広河隆一 2016 / 10 0ct Vol.13 NO. 10 10 月号 Follow Me DAYS JAPAN 公式 facebook www.facebook.com/daysj apan ・ net DAYS JAPAN 公式 twitter @DAYS_JAPAN 広河隆一公式 twitter @RyuichiHirokawa J A P A N 00 な町 4 あっゐつ′ ~ 写真 / 吉野雄輔 6 トビックス 地中海・イタリア目指す移民数千人 リヒア沖で NGO が救出 写真 / 工ミリオ・モレナッティ / AP / アフロ 8 フランス・女性イスラム教徒向け水着 浜辺で警官らが脱衣強制か 写真 /Bestlmage/ アフロ 相対的貧困率の高さは 先進国としての恥 ! 文 / 斎藤美奈子 37 〔 PAYS7 ォロアップ DAYS は今日も営業中 38 小児甲状腺がんを追う 3 特集 を チェルノブイリ 小児甲状腺がんの「虚偽と真実」 1 0 EU では全廃、 話 / ミコラ・トロンコ 日本は禁止規制なし ( ウクライナ内分泌代謝研究所所長 ) 写真・インタビューまとめ / 広ラ可隆一 化粧品の コメント / 崎山比早子 ( 3 ・ 1 1 甲状腺がん子ども基金代表理事、元国会事故調査委員会委員 ) 丸井春 (DAYS JAPAN) 48 定期購読のご案内 ための 話 / 東さちこ、山崎佐季子 ( 共に 49 バックナンバー等のお知らせ ヒューメイン・ソサイエティ・インターナショナル ) 、 亀倉弘美 ( NPO 動物実験の廃止を求める 動物実験 50 アイヌ返還遺骨を再埋葬 小山大作、丸田千果 ( 共にラッ 神への祈りと先祖供養 シュシャ / ヾン ) 写真 / ブライアン・ガン (IAAPEA ) 、 People fo 「 the Ethical Treatment of Animals (PETA) 、ラッシュシャパン 写真・文 / 宇井眞起子 18 生体実験されて捨てられて 56 [ 営みの地球]@ 雨林に生きる精霊 ひとりほっちの 写真 / ホール・ニックレン ポンゾ 文 / ブルース・バルコット 62 編集後記 PubIished by DAYS JAPANInc. 狙われる日本人 302 Takeuchi Bldg. , 1-37-19 Matsubara, Setagaya, Tokyo 156-0043 JAPAN Tel: + 81 ( 0 ) 3-3322-0233 ( Sa s ) + 81 ( 0 ) 3-3322-4133 (Editorial) + 81 ( 0 ) 3-3322-4150 (Planning Section) Web site: http://www.daysjapan.net 谷山専史 ( 日本国際ホランティアセンター代表理事 ) E-mail: info@daysjapan.net まとめ / 松本裕樹 ( DAYS JAPAN) Chairman & PubIisher: Ryuichi H 旧 OKAWA 写真 / 朝日新聞 / ゲッテイイメージズ、時事通信フォト、 AP Editor-in-Chief: Haru MARUI DAYS JAPAN 2016 年 9 月 20 日発売 VOL13 No. 10 ( 通巻 152 号 ) 10 月号 フィリビン麻薬戦争 発行所・株式会社ティズジャ / ヾン 〒 156-0043 東京都世田谷区松原 1 -37-19 武内ビル 302 発行人・広河隆一編集長・丸井春 文 / 工ズラ・アカヤン アートディレクター・川島進 編集・石田温香松本裕樹小島亜佳莉 写真 / ロイター / アフロ、工ズラ・アカヤン / ヌルフォト 営業・根本美樹田村美奈三浦枝里子国本智枝富岡美也子野口弘美 / ゲッテイイメージズ、 AFP = 時事 編集協力・野口みどり田村栄治柳雪子藤原まこと大田仁美大野真 協力・守屋祐生子土屋右ニ 32 やラ Z-C 編集委員「おしどりマゴサンの実際とつなの ! ? DTP 制作・月・姫株式会社 デザイン・川島進デザイン室 「知る権利」で得た汚染土壌「新基準」のカラクリ お問し、合わせ先・営業 03 ( 3322 ) 0233 編集 03 ( 3322 ) 4133 企画 03 ( 3322 ) 4150 FAX03 ( 3322 ) 03 ホームページ https://www.daysjapan.net メールアドレス info@daysjapan.net 世界フォトジャーナリズム祭Ⅵ SA 現地ルポ 印刷・製本・凸版印刷株式会社 製版責任者・佐々木緑男 荒波のメアで生きる 技術協力・株式会社堀内カラー * 無断転載・複製・複写 ( コピー ) を禁じます - フォトジャーナリストの眼差し 表紙 : 化粧品に使う成分の目への刺激や毒性を調べるため、首 / 宮下羊ー ( 在仏ジャーナリスト ) 文 を固定され試験薬を点眼される実験ウサギ。この写真は秘密で 撮影されたため、撮影場所と撮影日は明かされていない。 写真 / 広河隆一 を hoto by Brian GUNN 6 写真 / マーティン・ブルームフィールド、 SOS PONSO 22 / アフロ、 ZUMA Press/ アフロ 28 34