Ⅷ「それじゃあ、どんな話が似合うと思う ? 」 「そうねえ : : : 」 かし ルーナは小首を傾げて考え込み、グーリアスはそんな恋人の様子を眺めながら紅茶を酒を飲 むかのように飲んだ。 月い目が、嬉しげに、優しげに、輝いている。 のろ 「そうだ ! 未来の話をしましようよ。ええと : : : グーリアスは、呪いが解けたら何がした 「 : ・・ : そうだな : ・・ : あらたまって聞かれると困るが : ・・ : そう、森に帰りたいな」 「森って : : : 人知らずの森 ? 」 いっかく 「ああ。君が許してくれれば、森の一画に両親と妹の墓を立てて弔いたいんだ」 「いいわよ。それから」 「もうないの ? 」 「ねえ、グーリアスったら : : : 」 「子供が、欲しいな」 「えっ ? 」 とむら なが
本当にありがとうございました。 そして。 ルーナを応援してくれたあなた。 本当にありがとうございました。 いまは、感謝でいつばいです。 かわいいイラストをいくつも送ってくれたあなた。最後のルーナの絵もぜひ送ってください ね。 物語はこれで幕を閉じましたが、心の片隅にでも、ルーナたちのことをとどめておいてもら えれば、とても嬉しいです。 さてさて。 近況などを少し。 相変わらずゲーム大好き人間な私がいま ( 四月現在 ) はまっているゲームは : : : 『ヴァ〇パ とイア・ハ〇ター』 あ もつばら《フォ〇ス》を使って、古のモンスターたちと戦いを繰り広げていきます。 最近は女の人のプレーヤーも増えてきたので、知っている人もいるかもしれませんね。
リィーンーーーゴオーン : リィーンーーーゴオーン : 城のどこかで、鐘が鳴った。 二人の影が、部屋の壁に、長く : : : 長く伸びている。 陽はもう、この世界に、ひとかけらを残すばかりである。 柄を握りしめた、小さなルーナの手の上に、グーリアスは、自分の手をかぶせた。 体を寄せ、彼はその切っ先を己が胸に押し当てた。 痛みはない、と『全てを知る者』は言っていた。 それが真実であればいし とルーナは思った。 「ルーナ」 「はい 「私の本当の名は、ウイゼッティアと言うんだ」 「ウイゼッティア : ・・ : 」 「そうだ。だが、 この名は、今この時をもって捨てる」 「私はグーリアス。他の何者でもない。人知らずの森の、グーリアスだ」 ルーナは頷いた。 おの
274 次世代ゲーム機はしつかり持っているので、前作の『ヴァ〇バイア』が発売されるのが楽し みですーーものすご ~ く , そうそうー この一月に、ついに私の部屋にも、ファックスがついたんですよー 仕事のためにつけたんですけどねー おもしろ いや面白い面白い 友人とファックスのやりとりをしまくってます。 、 ) うそく 絵が入れられるのと、手紙と同じで拘束されないのがいいですーーー電話代も安く上がるし。 もら それに、元々手紙は書くのも貰うのも好きなので、私にはびったりです。 ええと : : : 次のお話ですけれど : まだ、決めていないんです、はい。 なるべく早くお届けしたいとは思っているのですが : もしまた本屋で、私の本を見かけたら、手にとってやってください。 それでは、ルーナとは本当にこれでお別れです。
頬を染めた彼女がグーリアスを見やると、空を映した青い瞳が呼んでいた。 たきびはさ いまだに少しくすぶっている焚火を挟んで、引き寄せられるかのように、ゆっくりと二人は 近づいていった。 「 : : : グーリアス : : : 」 優しく、熱く、二人のくちびるが重なった。 ああ : : : 空が高い : 再び夜が巡り来た。 陽が暮れるとすぐに、廃船は幽霊船に化けた。 午後のうちに、・、 オートは船の上に上げておいた。おそらくこの場所から移動するだろうと思 いそうしたのだが、正解だった。 『案内人』は船を東に向けて走らせた。 にお 「奴はすでに亡者どもの臭いを嗅ぎつけている」 「どこに行くの ? 」 もぐ 「水深の浅いところだ。深く潜られては手も足もでなくなってしまうからな。近くに島があ
目を覚ました二人は、目前の光景に声もなかった。 このよ , つなことがありえよ , っとは思いもしなかった。ばかばかしいとさ , ん田 5 えた。 二人が見たものー , ーそれは、昨日沈んだ場所から昇る、太陽の姿だった。 「これ : : : ど , つい , っこと : 「気のせいじゃなかったということだろう。これで、はっきりした。この島はおかしい。 城いや、この辺り一帯の空間そのものがおかしいのか : : とにかく早くここから出たほうがい の て 果 の「そ、そうね : : : 」 世「でも、異変がルーナが元気になった後でよかった。そうでなかったら、それこそ途方にくれ 的てしまうところだったよ」 る。 「きっと疲れているのよ。船を作り始めてから、ろくに寝ていないのでしよう ? 」 ーカ 「そうだな : : : 疲れているんだな。すまない、馬鹿なことを言って。気にしないでくれ」 ルーナは頷いた。 だが、その翌朝には、彼の言葉を裏打ちするような出来事が二人を待ち受けていたのであ
にこやかに言った少年が白猫の頭を撫でると、猫は喉を鳴らした。 「今ひとつ新しく気づいたことがありましてね。これはしかし、あなたがたにとっても、喜ば しいことだと思うのですが : ・・ : 」 「私たちにとっても喜ばしいこと : 「ええ : : : わかりませんか、ルーナ ? 」 あと 呼びかけられ、涙の痕もくつきりと残った顔を上げたルーナは、首を振った。 「そうですね : : : 気づくにはまだ早いですか」 「いったい、何が言いたいのですか、賢者様 ? 」 『全てを知るもの』はにつこりとした。 「いいですか、グーリアス。あなたの血はこれからの時代に残りますよ」 「わかりませんか ? 」 城「謎かけはいいかげん , ーー」 て グーリアスがそう言いかけたとき、ルーナはハッとして賢者の顔を見た。 果 界ひょっとして : : : まさか : うなず 世 少年は、微笑み、頷いた。 「そうですよ、ルーナ。あなたのお腹には、子供が宿っています
おうまとき 『世界の果て』はまだ逢魔が時で、陽は暮れてはいなかった。 ばんさん グーリアスが湯を使っている間に、ルーナは晩餐の準備をし始めた。 賢者は食事を用意するといってくれたのだが ( 聞いたこともないような料理の名前を、賢者 られつ は羅列して聞かせてくれた ) 、ルーナは自分の作った料理を食べさせたかったので、断った。 ちゅうばう 厨房は与えられた部屋についている扉のひとっから行くことができる。 こまねずみ 大きさは人知らすの森の厨房より少し狭いぐらいだが、それでも十人の人間が独楽鼠のよう に動き回っても、十分余裕のある広さだ。 なべ 実はすでに、かまどでは大きな鍋がぐっぐっ煮えている。昼食を作るときに、準備しておい て出かけたのだ。 鍋の中では、湯の中で鳥が煮えている。鴨をまるごと二羽、ほうり込んでおいたのである。 湯の表面に浮いた灰汁をきれいに取り、鴨を取り出すと、塩で味を整え、荒切りの野菜を入 たまねぎ れた。じゃがいも、人参、玉葱 : : : どれもこれも新鮮で、生のままかじったとしても、とても おいしい。それをじっくりと煮る。 その間にパンを焼く。 次は鳥料理。腹の中に詰め物をした七面鳥をじっくりと焼くのである。中に詰めるのは、各 ひも 種野菜、殻のままのうずらの卵などだ。それらを詰めた後で七面鳥を紐でぐるぐるに縛り上 げ、甘いたれをたつぶりと塗って焼き上げるのである。 から かも
「凄かったな、今のは」 「ええ。山が噴火したのかと思ったわ」 「私もさ。せつかくあつめた果物を、放り出してしまったよ」 「わたしも、ほら、縫っていた途中の袋を放り出してしまったわ。あんまり恐ろしかったか ら」 「ああ。驚いた。だが、噴火ではなかったな。海水が吹き出しただけだった」 「 : : : グーリアス、まさかあなた、あの穴に降りてみようなどとは思ってはいないでしよう 「まさか」 「本当に ? 」 「当たり前だろう ? まあ、多少興味はそそられるけれどね」 そう言って笑った彼の笑顔は、まるで子供のようであった。 ねずみ 「ああ、もう、今日の探検は中止だ。このように濡れ鼠になっては、しかも海水に浸かったと あっては、気持ちわるいったらない。 そうだ、水浴びにいこう、ルーナ」 「水浴び ? 」 たきつば 「この先に、滝壺を見つけたんだ。滝と言ってもそんなに大きな物じゃないから、危険はな い。それほど深くもないしね。どうせ、この島には私たち二人しかいないのだから、誰の目も
むぎんこわ 目の前に船がある。見るも無惨に壊れ、もはや生き返ることもなかろう船が。 半身を起こしてその風景に見入っていたルーナが考えたことは、自分がなぜこんなところに しるのかということだった。 憶えているのは、誰もいない砂浜。沈みゆくタ陽。 , ーーそして、なくなってしまったわたし の《カ》。 ルーナは体の底のほうから込み上げてくる震えを抑えるために、かけてあった帆布を強く握 りしめた。 城そ , っ : ・《カ》がなくなってしまったのだわ : て丸裸でまったく知らない土地に投げ出されたような気分だった。いままで、どこへいって のも、どんな状況になっても、こんな気持ちになったことはなかった。何とか切り抜けられる、 世 大丈夫、と意識はしなくても自信があったように思う。 だめ でも、いまは駄目。なにもできる気がしない しいえ、なにひとつできない気がする。 3 無人島