オレたち - みる会図書館


検索対象: 全寮制男子校物語! 蜜月篇
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1. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

ひとみ 双子の弟の瞳が同意を示してくるのを受け取って、レキがくつくっ笑った。 なかじよう 「オレさ、 リクが中条といちゃっいてるとこ見んのも好きだったりすんだよな。わかる ? 」 レキの手は弟の腕をさすり、ふたたび同意を求める 「たぶんさ、あいつの色ってオレたちといっしよなんだ。な、槙ならわかるだろ ? ほこさき 槙の同意の合図に満足して、レキの思考の矛先は別の人間のほうへと移された。 レキは槙のつぶらな瞳を見つめて言った。 「菱田はさ、落ちこんでるぜ。あいつはなんも言わねえけど、オレにはわかるんだ。あれから ずっと元気がねえからな」 はなさきがわ えのもときようや ふけ 菱田の物思いに耽る横顔を想うとき、レキは花咲川の土手で榎本京夜の細い体を支えていた 篇ときの菱田の顔を思い出さすにいられない。 と、槙の瞳に動きを認めて、レキが頭を振った。 「オレ ? オレはべつに元気じゃん」 うそ 物 ごゞ、真に嘘は通じない。レキは簡単に見破られた自分の嘘の破片をシーツの奥に沈めた。 校オカ , オ あいっ 男「だって、和士には他にだいしなャツがいるんだ」 おさな 寮そうつぶやくと、レキは幼い頃すっとそうしていたように、槙の体のそばで丸くなる。 周囲はレキが槙の面倒をみていると思っているが、レキ自身はそうとは思っていなかった。 本当は逆なのだ。こんなふうに槙に甘えていると、なおさらその思いが強くなる。 まき

2. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

「ごめん。でもたぶん俺がこうなるの、おまえに対してだけだ」 中条が目を丸くして見つめてきたので、理久は度肝を抜かれそうになりながら ( だってなん キレイめ て綺麗な瞳なんだ ) 、もう一度くり返した。 「えっと、たん。ほんとだよ」 よろこ 「おまえさ、なんでそんなにオレを歓ばせんのが得意なの ? 「え」 中条の声は聞き取れないほど小さかったので、理久は聞き返そうとする。 だがそれを一一一一口うためのくちびるはあっという間にふさがれて動かせなくなった。 こご感動的に甘かった。 篇中条からのそのキスには、セクシャルな色合いは一切なく、オオ 蜜 くちびるの先を押しつけて、ほんの少しだけ出した舌で理久のうわくちびるをなぞる。 やがて名残惜しげにそこを離れた中条のくちびるは、愛を告げるための言葉を形にした。 校告白の呪文だ。 男「アイラヴュー」 寮一瞬、英語には聞こえない。 妖精語なのかしらと、理久はばかみたいにばかんとして思った。 「夏目 .

3. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

138 「和士」 今、自分がいるのはすばらしく居心地のいい和士のひざの上で、ここではその話題がふさわ しくないことは知っている。 だが他にどんな機会があろうと、それは今、持ち出すしかなかった。たった今、家族のこと を考えてしまったからだ。レキが誰よりも、何よりも、愛さずにいられない家族のことを。 そしてレキはそれを訊いた 「オレ、 いつまでここにいられんの ? 「いつまででも」 「オレが望むかぎり ? しや、オレが望まなくなったら ? レキは前を向いたまま、今にも反抗してこようとする自分の体のどこかの部分を押さえつけ て言った。 「あんたはオレをこっから出す気あるわけ ? 」 沈黙は答えと同しだ。この一週間、レキ自身、何度も想像をめぐらした答えだ。 「オレをここに閉じこめてえ ? レキは訊いた。それは質問ではあったけれど、答えは知っていた。だから答えが返ってくる 前に続けた。

4. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

230 「おいおい、オレはあんたたちの人質だぜ ? なに考えてんだよ」 「きみを向こうに渡す気はないが、万が一ということもある。そばにいてもらうほうが安心で きる」 「和士 ? なが 探るように和士の顔を眺めていたレキだが、しき相手の意思を読み取ると、たちまち不機嫌 こよっこ。 いくらなんでも、桜花の兵隊になって 「よせよな。オレがここにいるのはオレの意志だけど、 あんたに協力する気はねえぜ」 「どうかな」 「んなことさせてみろよ。オレぜってえ戦闘の途中で逃げるぜ」 「私から逃げられると本気で思っているのか ? 」 おど 「脅したってムダだって。オレはギリギリんとこであんたを選んでるんだ。あいつらの顔見た ら向こうに転ぶに決まってんだよ」 「あいつら ? 菜の花東の戦闘員か ? 「ああ 「そのときは私がこの手できみを殺して、私も共に死のう」 「バカ言ってんじゃねえよ。ったくワガママだな」

5. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

284 「やつべー。オレ知んなかった」 「だろうな。もう夏目にキスしたりするなよ」 「あーうん、気イつける。けどよ、最初にオレにキスしてきたの、リクのほうだったんだぜ。 あれって浮気じゃねえの ? オレ傷ついちゃおっかな ? 」 から 「夏目はおまえのパワーにアテられただけだろう。卵の殻から出てきたばかりのヒョコが最初 に目にしたのがおまえだったんだ、レキ」 「ふん。オレはリクのママかっての 「近いな。おまえも夏目を見ると母性本能がくすぐられるんしゃないか ? 「言ってろ」 と、レキがシと人さし指をくちびるに当てる。 菱田以下、レキについてきていた戦闘員の間にたちまち緊張が走る。 それまで、フるさいほどだった虫の音が止まっていた。レキが低くうなる。 「桜花のやつらだ。近くにいるぜ」 「ああ。どうするポス。仕掛けるか ? 「当然」 おたけ 次の瞬間、菜の花東高校の生徒会長は少年たちの腹に響くような雄叫びと共に叫んでいた。 「リク ! オレたちの花姫を守れ

6. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

独りでいたかった。 だからそうしたのに。 誰も心の中に踏みこんでこないように。体だけを寄りかからせて。 大木の幹に背を預け、国府田の肩に頭を預けて、中条はばんやりとつぶやい 「最初つから勝ち目ねーんだよ。ちゃんとわかってる」 「寝たのか ? 彼と」 「ふふ、オレを誰だと思ってんの ? 中条は笑った。国府田にどこか皮肉めいた笑いだと感しさせるような笑い方で。 「あいつはなんも知んねーの。オレとやったのも勢いだって思ってる。けどほんとは、オレの 篇ほうが先にあいつのこと好きになってたし、今だってどうしていいかわかんねーくらいあいっ はのことしか頭にねーよ。今さらあきらめろったって、ムリだよな」 しゃべりすぎたと思ったのか、中条は居心地悪そうに視線の角度を変えて続ける。 校「でもオレこのままでもいいんだ。今死んだらきっとオレ幸せだよ。こんなに幸せだったこと 男って今までないんだ。あいつは、知んねーけどさ」 トーン 寮沈みがちな声の調子に気づく。中条はあわてて明るくつけ加えた。 「べつに、知ってもらえなくてもいーし」 やどっや 言葉と裏腹にそのはおに宿る艶めいた影。 ひと

7. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

しことだねと言ってやりたかったが、中条自身も いろんな表情が出せるよ、フになったのはい ) とまどいの多い頃だろうと思い、国府田は黙っていることにする。 中条が不満そうに口を突き出して ( それも国府田には初めて見せる表情だったが ) 言った。 「ちえ。 ) ーさ。ガッコーなんか頼りにしねーよ」 「そんなに後藤くんを取り戻したいのか ? 妬けるねと言いながら国府田が訊く。 中条は最後の言葉はやんわり無視すると、少しばかりためらってから、まわりくどい説明を 返した。 しいけど、生徒会のやつらは桜花 篇「レキはうちの象徴みてーなもんだからな。オレはどーでも ) はの連中にフクシューしようと思うだろーな。そうなると今の二年がオレを頼ってくんのは時間 の問題だぜ。あいつら、オレとレキの昔の関係知ってるし、オレは面倒なのはごめんなんだ」 校「面倒ね」 男ふと国府田が考えるそりを見せる。中条が見上げると、国府田はうっすらと微笑み返して 寮一一一口った。 全 「面倒なことは一度で片づけるべきしゃないかな」 「え ? 」 ほほえ

8. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

174 レキがあわてて首を横に振る。 抱きしめてきた和士の腕をぎゅっと両手でつかんでレキは言った。 「オレ、あんたのそばにいてえよ」 「それは知っている。だが、きみはそれだけではいられないんだろう」 「どういう意味 ? 「さあ。私にもよくわからないよ」 和士はそう言ってやさしくレキのほおにキスすると、レキから手を放した。 風が自分のそばを通り過ぎていったような感じだった。 ふた レキは黙ってピアノの蓋を閉める。 「オレ、あんたといっしょにいるって決めてここに来たんだけどさ」 どうしてもいっしょにいたかったから。 その気持ちは今も少しも変わってはいない。でも。 「でも、ここに来てからのオレって、自分しゃなんも決めてねえんだよな」 和士の目が自分を見つめているのがわかる。 だが和士は何も言わなかった。 レキは時々、和士は何もかもわかっていて何も言わないのじゃないかと思う。

9. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

「ジョークだよ。なにふたりとも真剣な顔してるんだい ? 僕が中条くんを自分のバーに引き 抜くとでも思った ? 」 「 ! ひでえや静さん」 そんなふうに理久たちがレキの父親との会話を楽しんでいるときだった。 「オレ、オレやつば、あんたのとこ戻りたくねえ : いきなり大きな音がして、理久たちの視線を引き戻す。 倒れた白い椅子を立てなおそうとしているのは西ノ宮和士で、その前で固まったように立ち つくしているのがレキだった。 「レキ ? どうしたんだ」 服「や、やだ。オレ」 近づいてきた父親と、そばに立っ和士の両方からしりしりと後すさり、病室のべッドのない 片隅へと逃げこむ。 校「なに、どうしたんすか、レキ先輩 ? 男理久はわけがわからなくて、ばかんとしてレキのほうを見つめた。 ついさっきまで幸せな恋人どうしのように槙にべたべたしてみせていたレキはどこに行った のだろう ? と、ふいにレキの瞳の焦点が理久に合わさった。

10. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

202 ( え ) 一瞬、何が起きたかさえわからなかった。 両手を翼のように広げて駆け寄ってきた金色の天使。 くちびるをかすめるようにしてふれた熱いもの。 それがキスだとい、 2 言葉にたどり着くまで時間がかかる 「オレ : ・つ レキは理久の首に必死で両腕を回してしがみついたかと思うと、次の瞬間には涙をいつばい にためた目で理久を見上げて叫んでいた。 「オレのこと助けて、リク