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検索対象: 全寮制男子校物語! 蜜月篇
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1. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

こうじ だが、菱田浩一一が桜花学院高校の校長室までたどり着くことはなかった。 学校経営は生徒の意思などとはまったく関係がないとしている桜花学院の海彦校長は、コン タクトを取ろうとしてきた菱田に、あっさり門前払いを食わせたからだ。 高いレンガ塀に囲まれた桜花学院高校の門の前で、仁王立ちになって立ちつくしていた菱田 を迎えたのは、桜花学院高校の副会長だった。 蜜「そんなところにいつまでも立っていられては迷惑ですよ。そろそろお引き取りになっていた だけませんか ? 」 語 物無礼なまでにていねいな口調はあいかわらずだ。 ひび 子背後から響いてきたその声に、菱田はゆっくりと振り返った。 するど 今にも人を切り裂きそうな鋭さは、初めて遭った夜から少しも変わらない。 マスクおお 全 海賊の夜には銀の仮面に覆われていた瞳が、今、菱田を見つめている。 その琥珀色の瞳に心を奪われた記憶が菱田を苦しめることを、彼は知らない。 山彦校長は上背のある彼の顔を見上げ、ロをへの字に結んでうなずき返した。 「よろしいでしよう。菱田くん、行ってくれますか、菜の花東の生徒代表として ! 」

2. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

「マジかよ : ・ 「冗談しゃねえぞ ! ひとんちの生徒会長かっさらう気かよ ! 」 とんでもないことを口にした山彦校長に、生徒会役員らの非難の視線が集中する。 山彦校長はなるべく彼らを刺激しないように、トーンダウンして続けた。 「実はあちらでは今度、古くなった音楽堂を再建する計画があるそうなんですが、レキくんは 新しくなった音楽堂にふさわしい演奏家でもあるということで」 「ちょ、ちょっと待ってください校長先生。レキは専科の生徒ですよ ? 今さら普通科になん か行けるはすないじゃないですか」 きのした いの一番に抵抗を示してきたのは、専科でも音楽専攻の木下だ。彼が持ち歩くチェロはこの 引生徒会室の隅に常に立てかけて置かれたので、その黒くて大きなチェロケースが見当たらない と、生徒会役員たちはなんとなく落ち着かなく感じるほどだった。 ひとみ 細い銀縁の眼鏡の奥の瞳は黒々として大きく、少し神経質そうだ。 物木下は眼鏡を押し上げてさらに主張した。 子「桜花学院は学力一辺倒の進学校でしよう ? そりやレキは天才肌だから模試でもたまにいい センいきますけど、でも、あのレキがピアノをやめるなんて考えられません。彼ずっと、絶対 全 にピアニストになるんだって僕にも言ってたんですから 「む」

3. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

全寮制男子校物語 生徒会副会長はミい とてもうまい瀑い当い レキのあっかいカ、ミ、 菜の花東高校 2 年、い ミゞ、、ヾゞ戔 京夜に微妙なド、、、、 にしのみやかずし 西ノ宮和士 \ 全国模試で 桜花学院 2 年。 、、、ま、トップクラスを誇る 感情を抱いている 6 , ゞゞゞ第、 スキャンダルに苦しむ ミ仏生徒会会長。 ドゞドゞ、一、 ` 、ゞベ いい、、、、、ミ、超工リート体質の なかじようあっし 中条陸 菜の花東高校 1 年」 えのもどミ、きようや、 榎本京夜 花学院 2 年ハ ゞドゞゞドゞゞ、いゞ、、 在ど自認してい、 和士にどって特別な存 生徒会副会長、、 物静かでスタイ以ッジュな ゞゞドゞゞ 、、レキを学院に かくまうが・・・ 理久のルエムメイト。 ー理久を好きになるが ! 理久がまい レキを好きだと思い込んでいる唹

4. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

ごとうれき 「後藤暦のことは職員室でも問題になっている。なにしろ生徒会長だからな。しかもピアノ科 ではトップの生徒だ。期待の星と言ってもいし 。もちろんうちの校長は、自分の生徒を学校の 売名行為に使うつもりなどこれつばっちもないけどね」 おうか 「それで ? やつばレキは桜花学院の寮に拉致られてるわけ ? 」 「拉致ね。きみたちはすぐそれだ。桜花学院のほうは後藤暦が望んで滞在中だと言っている」 「んなのウソに決まってんだろ。レキをこっちに返さねー気なんだ」 「どうかな。後藤くんがマスコミに追い回されているのは事実だからね。こちらとしても、今 彼に戻ってこられても保護できるかどうか保証はできないんだよ」 「だからってあっちに行きつばなしでいーのかよ ? キヨーイクを受ける権利は ? レキは向 こうの生徒しゃねーぞ」 「まだ、ね」 「先生卩」 「向こうからは編入手続きのための書類を用意してほしいと言ってきているようだ」 「サイテー」 ぶぜん 中条が憮然としてくちびるをへの字に結ぶ。中条のそんな顔を見るのは初めてで、国府田は 思わず笑ってしまった。 「なんだよ ?

5. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

はなひがし こうも見事な花に囲まれて立っていると、どうにも落ち着かない。菜の花東高校の副会長・ ひしだこうじ 菱田浩一一はむせ返るような花の香りの中で自分の後から温室に入ってきた少年に目をやった。 おうか えのもときようや 桜花学院高校副会長・榎本京夜。 たた 歴代の副会長の中でも、特に芸術面に秀でた優雅さを讃えられる存在だと聞く。 カイザ 1 にしのみやかずし 〃皇帝〃の異名を取るスー エリートたる生徒会長・西ノ宮和士の下にあって、その絶対君 主を完全にサポートする影。榎本京夜の名が表に出ることはめったにないが、裏でささやかれ ることは少なくない うみひこ どうしても桜花学院の海彦校長と話をするまでは帰らないと言い張る菱田を、今この温室に 連れてきたのはその影の存在、京夜だった。 「あまりむきにならないほうがいいのではないですか ? 」 所せましと並べられた洋蘭の鉢植えに気を取られていた菱田は、京夜のその声にハッと我に 返る。 # 0 0 ワ」 0 、 な

6. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

272 と、そのとき、森の暗がりから響いてくる声があった。 「おやおや、菜の花東の兵隊は仲間割れか ? ぎくりとしてふたりの体は動きを止める。不吉な予感はあっさりと的中した。 あっし 「おっと、これはこれは。中条陸しゃないか ? 「花姫だぞ ! 菜の花東の花姫を見つけた ! 」 木々の裏からバラバラと現れてきたのは桜花学院の戦闘員たちだ。 ド 1 ルズ・ガーディアン 理久は中条の体を背中でかばい、大声で音楽堂の中にいるはすの花姫守備隊を呼んだ。 みしま 「沢田 ! 三島 ! 敵だ だが答えはなかった。代わりに手を縄でつながれた少年たちが音楽堂から出てきて、理久は あぜんとしてしまう。彼らはすでに桜花学院側の手に落ちていた。 ドールズ・ガーディアン 絶体絶命だ。花姫守備隊はもはや隊長以外には誰も残されていなかった。 後ろに伸びた理久の手が中条の手をぎゅっと握る。 「夏目 : ・ 中条は理久の手のあまりの力に、振りほどくタイミングを逃してしまった。 いや、本当はタイミングのせい、なんかではなかったかもしれないけれど。 ドール ド 1 ル

7. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

実のところ、すでに何個か、この部屋に備え付けられていた貴重品を残骸に変えてしまって いるレキだった。 ぶつぶっと自分をののしる一言葉を吐きながら、なんとか片付けようとし始める。とりあえず 絨毯に染みこんでゆく水をなんとかしたかったが、この部屋にあるものときたら、タオルから なにから汚すのは申しわけないようなものばかりで、レキはついうつかり自分のパジャマ ( こ れも和士から与えられたものだったが ) を絨毯に押しつけてしまっていた。新しいものよりは まだ使った後のもののほうがマシな気がしたからだ。 そのときふいに背後に人の気配を感して、レキはハッと後ろを振り向いた。 篇白いカッターシャツに薄いべージュのベスト、同じく薄いべージュのズボン。桜花学院には 蜜二種類の制服が用意されていたが、その少年が着けているのは和士とは別の制服だった。 ヤ」は′、 ひとみ 微妙な色の制服が彼の薄茶色の髪にはよく似合う。瞳の色も独特な琥珀の色。着やせして見 語 物えるほっそりとした体つきは、見る者を惹きつけずにおかない魅力で満ちている。 子 レキには見覚えのある少年だった。この寮に着いたその晩のうちに紹介されたからだ。 男 えのもときようや 贐彼の名は榎本京夜。桜花学院高校の生徒会副会長だというその少年を、和士は自分だと思っ 全て頼ってくれていいとまで言って紹介したのだった。 「手伝いましよ、フか ? ざんがい

8. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

一時期、両親が川をはさんで東西に屋敷を構えて別居したときも、兄は母親に、弟は父親に ついてゆき、ふたりは実に十年近くに及んでひとことも交わさずに過ごしていた。 兄は一流大学を首席で卒業し、弟は、兄に言わせれば〃四流大学〃を中途で退学している。 広大な土地を所有する地主であった父亡き後、海彦は山に面した東の土地を欲しがったが、 父の遺言ではそうはなっておらず、川より西の森の土地が兄のものとなった。 はなさきがわ 四季折々に多種多様な花が見られるせいか、川の名は花咲川という。 この花咲川をはさんで、ほば隣り合った敷地内に先祖代々からの古い屋敷が建てられていた というわけだが、 兄弟それぞれの手に渡った結果、それらの古き良き時代の建造物は異なる道 をたどった。 山彦が継いで菜の花東高校となった建物は、資金のなさから老朽化の一途をたどる。 海彦が継いで桜花学院高校となった建物は、生徒の親からの多額の寄付金によって最新の設 備を施されて生まれ変わった。 その際、優美で芸術的な内観外観を残すことは忘れなかった。 ゆいしょ 以降、海彦が管理する由緒ある建物はことあるごとに最先端の技術によって補強され、今日 では全館冷暖房完備の快適な学習環境を生徒に提供することが可能となっている。 「その、どうも兄はレキくんの優秀さを知っているようで、なんならこのまま桜花学院のほう へ編入してきてはどうかなどと一一一一口うんですよ」

9. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

196 三人の視線がドアのほうへ集中する。そこに彼らが見たものは。 「え こんわく 最初は誰もが困惑した。そこには車椅子に乗った長い三つ編みの少女と、それを押してきた らしい少年の姿しかなかったからだ。 だが理久は、車椅子を押している少年の顔には見覚えがあった。 にしのみやかずし おうか 西ノ宮和士だ。桜花学院高校の生徒会長。ということは。 理久の瞳はみるみるうちに大きくなった。 「レッ、レキ先輩卩」 「ええっ 周囲の動揺をものともせす、車椅子の少女はレースがいつばいのひらひらふりふりのドレス のすそをひるがえして立ち上がると、三つ編みのヘアウィッグを放り出して駆け出した。 「槙ィッ ! 槙、槙、槙 ! オレ槙に会いたかったー まき

10. 全寮制男子校物語! 蜜月篇

「ここにいろ」 レキの体を腕の中に閉じこめたまま、和士が低くっやいた。・ 「すっとここにいればいい。不自由はさせない。私がきみを守る」 「和士 : ・」 レキの体からカが抜けてゆくのがわかる。 和士の胸を背もたれ代わりにして、レキはしばらくは何も言わす、窓の向こうをばんやりと 見つめていた。 ウス 桜花学院高校の寄宿舎は一一棟あって、部屋はすべて個室だ。スイート仕立てになった和士の フラワ 1 部屋は花咲寮の三階中央にあり、広いバルコニーまでついた豪華な造りになっている。 そのとき自分たちの関係は終わるだろう。ここで今自分に笑いかけているレキは、自分の前 から永遠にいなくなるに違いない。 知られてはならない。 レキの輝く瞳を見つめ返して、和士は胸に誓った。 後藤暦 彼にだけは、自分のこの激しい贈しみを知られてはならない。 ハウス