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検索対象: 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5
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1. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

さが 少し高度をとって飛んでも、肉眼でキーツの姿を捜すことはできなかった。レイムは さぐ キーツの気を探る。 五キロ近く離れた場所に、キーツは埋まっていた。 発見して、急いで近寄ったレイムは、わずかにのぞいていた左の肘をみ、キーツを砂 の中から引き起こす。 「キーツさん ! ルドウィックより、砂にめられてできた切り傷の少ない様子のキーツは、落下のと たた まゆ き、頭から砂に叩きつけられて失神していた。乱暴に動かさないほうがいいかと眉をひそ まどう め、レイムは魔道で探ってみたが、ただ意識を失っているだけで、打ちどころが悪いとい うものではなさそうだった。 「レイム ! よかったー ふところ ようせい キーツの懐から飛びだした妖精が、レイムの周りを飛んだ。 「君も無事だったんだね」 レイムは変わらない様子の妖精に、ほ「とする。この広大な砂灘で、た「た「の花の しなんわざ を見つけることは、至難の業だ。乾ききった砂漠に放り出されたら、たとえ種の姿に れつあく つら 戻っていても、妖精は劣悪な環境に、かなり辛い思いをしただろう。 妖精は、レイムに助け起こされてもまったく目覚める様子のないキーツを見下ろし、少 かわ

2. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

女の声と同時に、レイムの頭上を丸太にも似た形の、しなやかな影が飛んだ。 レイムに襲いかかろうとしたナイヴァスに、体長十メートルはあろうかという、大蛇が 絡みついた。 しぶき ざっと音をたてて、進みくるフィギーラの群れに向かって、水のような飛沫が散った。 かをたか 飛沫を浴びたフィギーラが里局い声で鳴き、黒煙をあげて溶け崩れる。 こんなことができるのは 「コンスタンスさんæ: レイムは飛沫の飛んできたほうに、振り返る。 移動の魔道を用い、空中に現れ出た黒い肱の魔女は、身にまとった白い長衣を翻し、軽 さ・はく やかに砂漠へと下りた。 吠蛇に絡みつかれたナイヴァスが、もんどりうって落下する。 縣鹿でかい図をした怪物のために、盛大に舞い上がった砂埃に迷惑そうな顔をして、 者コンスタンスは襟足に手を入れて、長い髪をさばいた。 「何やってんだい ? あんたは」 を 呆れはてたような声で、コンスタンスはレイムにねた。 星 「何するんですか」 みどりひとみ 澄んだ翠の瞳をいからせて、レイムはコンスタンスを非難した。 から えりあし かみ すなぼこりめいわく だいじゃ

3. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

囲だ。あおられて、誰より遠く飛ばされることを覚悟したものだった。しかしこうでもしな ぼうぎよいん ひかくせいよろ、 がんじよう ければ、サミルのように身を守る防御印ももたず、皮革製のにも似た強度のある頑丈 な衣服をまとっているルドウィックでもないキーツは、ひとたまりもなかっただろう。砂 だげきだぼく といっても、恐ろしい勢いで襲われれば、相当の打撃や打撲を覚悟しなければならない。 砌のちょっとした角でも、引「かけられれば、も衣服も引き裂ける。しかもキーツは ようせい 妖精と一緒だ。自分一人の身を守るわナこま ) ゝ 。冫冫し力ない。風に乗って飛んで、軽い砂粒と同 けいしよう じ速さで飛び逃げるよりほかに、軽傷ですませられる方法はなかった。 耳が痛くなるほどの、壮絶な爆発音に、ぎゅっと身を小さくして、きつく目を閉じてい たナイヴァスは 間近で砂を鳴らした音に、はっと目を開けた。 さばくかたひざ 背を向けた金色の長い髪の人間が、片腕を押さえ、砂漠に片膝をついて、上空に浮かぶ 黒い肌の女を見上げていた。 だいじゃ 大蛇に巻きっかれ、身動きできないナイヴァスは、ただ無様に砂漠に転がっていること ぼうかんしゃ しかできない。されるがままの傍観者だ。 かたまり 黒い肌の女は、氷の塊の中に閉じこめられた娘を欲しがる、敵だった。 ならば、この、金色の髪の男は ? いっしょ 0 かくご

4. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

ようせい レイムは銀のスプ 1 ンに蜂蜜を入れて、妖精に与えた。 すてき 「素敵素敵ー まどうひ きげん 魔道の灯に、銀のスプーンと透きとおる蜂蜜がきらきらと光り、妖精はご機嫌で卓のま わりを飛ぶ。輝く光の粉を散らしながら、卓のまわりを飛び遊ぶ妖精に、キーツは面白く ない顔をして、そっぱを向く。 ちそう 「思ってたよりずっと、ご馳走になりましたね。次にゆっくり食事ができるのは、いつに なるかわかりませんから、楽しく食事しましようね」 レイムはにこやかに言って、いただきますと手を合わせた。 ふんいき そまっ レイムから感じられる、おっとりと優しい雰囲気に、半壊したお粗末な小屋での間に合 ばんさん わせの晩餐も、そう悪くないように思われて、ルドウィックとサミルは機嫌よく食事を とった。 おとなしく卓にはついているが、やつばりキーツは、ただ新しい手品を考えていたわけ ではなさそうだった。正面から見ると、あからさまなばかりに不機嫌な顔である。この様 子では、ひょっとして食事をしないのだろうかとルドウィックは目を向けたが、機嫌の悪 い様子でレイムの正面に腰かけたキーツは、黙々と食事を平らげていた。 とが 一人、険のある顔をして、食事をしているキーツに気づいて、妖精が口を尖らせる。 したく 「何よお、キーツ、その顔 ! レイムが支度してくれた物に文句があるなら、あんた、食 はちみつ おもしろ

5. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

うじ うごめ 蛆が、旺盛な生命力をみせて、ざわざわと蠢き、油虫がそこらじゅうを這いまわってい がんか どぶねずみ ものかげかく しんにゆうしゃ る。突然の侵入者に驚いて、物陰に隠れた溝鼠の前で、死体の眼窩から神経の糸を引い はじ こぼ て零れていた眼球が、カない音をたててひとっ弾け、どろりと中身を零した。 ちょうい 息をするのも不快であると顔に表し、コンスタンスは身にまとっていた長衣を脱ぎ捨て さえぎ ひるがえ た。くるりと翻「て、長衣はどこかに消え失せる。遮るものを取りのけられ、使いの魔 女、生命あるものに死を与える女の身体が、甘美に匂いたった。ちりりと火に炙られるか またたま の様子で、黒く変絶して蛆が転げ、宙を飛んでいたものたちは瞬く間にばらばらにな「て 落ちる。不気味に脂ぎ「た肥りかたをしていた溝鼠たちも、胃の内物をすべて吐き出 し、全身から血を噴き出して死んだ。色素だけを残して朽ち消えた黴の覆っていたもの だえき したう に、コンスタンスは舌打ちして唾液を吐き囎てた。黄金をも溶かす強酸性の唾液を受け、 腐れ朽ちた死体の残骸は、どろどろと溶け崩れた。 こわくてきあまかお あくしゅう 胸の悪くなる悪臭も、強烈な毒の蠱惑的な甘い香りに満たされて、かき消えた。 きわ 不潔極まりないものたちがおとなしくなり、ふんとコンスタンスは鼻を鳴らす。 どうにか鑑賞に堪えられるものになっただろうと、コンスタンスは手をあげて指を振 おにび り、魔道の灯をいくつか呼んだ。それまでコンスタンスに明かりを与えていた鬼火は、く こ , つもりつばさ くろねこ るりと翻って背に蝙蝠の翼をもっ黒猫の姿になって、コンスタンスの肩の上にのった。 せいじゃく 生命あるすべてのものに死を与え、静寂をもたらす女。しかしそこでは、それまでと おうせい

6. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

きた自分の影にびつくりする。 月明かりではない。月明かりはキーツたちのいる位置まで、射しこまない。 おおまたまどべ 振り返ったキーツは、椅子をおりて、大股で窓辺に歩み寄っていた。 キーツに遅れて、スエレンも腰をあげる。 また何か起こるのか : ・ おび 怯えながらも、窓辺に近づいたスエレンに、キーツは振り返る。 「心配ない」 ゆず キーツは窓辺の半分をスエレンに譲り、窓を開いた。 無数の、金色の光のが、地表や家々の窓から、天に向かって飛んでい 血の驪いを運び、っていた風が、甘い花の香にも似た、清しいものに変わっていた。 からだ 者気持ちが、ふうっと軽くなる。熱を感じないのに、冷えていた身体が温かくなる。 授 を 「何、これ : ・ どうして : : : 」 星 驚いて目をみはるスエレンに、キ 1 ツは優しい笑みを浮かべる。 せいまどうしさま 「聖魔道士様の魔道だよ」

7. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

112 まゆげ 八つくらいの男の子だった。キーツが抱いている子どもと、髪の色と眉毛の形が同じ 見知らぬ訪問者を訝しげに見上げた少年は、次に、その訪問者が腕に抱いている者に、 目をとめた。 「テッドー 大声で名を呼ばれ、キーツに抱かれて小さくなっていた男の子が、びくりと背中を震わ せ、顔をあげる。 「兄ちゃん ! 」 ひと どうやら、独りばっちという、最悪の事態は避けられたようだ。 この部屋の中からは、血のいがしない 歓声をあげた男の子は、キーツの腕から飛び下りた。 とびら お兄ちゃんは扉を大きく開けながら、奥に叫ぶ。 「姉ちゃん ! テッドが帰ってきた " " 」 出会うのはいかつい兵士か、ちびつこばかりで、ここでまた子どもの顔を拝むのかと、 苦笑したキ 1 ツの前に、歳のころなら十七、八という娘が現れた。 暮らしは貧しいながらも、 ~ 嘔に生きていると思われる、清楚な雰囲気を漂わせた娘 に、キーツの連れてきた男の子は、走って飛びつく いか とし ふる

8. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

ひざ の前で、ライラに触れたレイムが、がくりと膝をついた。 「きゃあ ! やだ、レイムー 「レイム様 ! 飛びつくように、そばに寄ったルドウィックが、腰を落としてレイムを助け起こす。 まどうさぐ 向かおうとしている街がなんという名で、どんな場所なのだろうかと、魔道で探ろうと していたサミルが、ライラの悲鳴に驚いて、振り返る。 「やだやだやだもう、レイム、大丈夫 ? 「やだ、ってお前がやったんだろうがよ」 あき 呆れるキーツを、レイムの顔に近い、低い位置で飛んでいたライラが睨みつける。 誰のせいでこんなことになったのかと、怒ってキーツに飛びかかろうとするライラを、 そっと手をあげてレイムが止める。 「やめて : ・ 、お願いだから」 「だって : ・ キ 1 ツが悪いのよ : とが 拗ねて口を尖らせ、ライラはレイムの右肩の上にのった。 「なあんで俺が悪いんだよ」 勝手に悪者にされたキーツは、大変気分が悪い。 助けて背中を支えてくれているルドウィックに、レイムは顔を向ける。 にら

9. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

「キーツさん : : : ? 「あんた、飛べるんじゃないの ? 「へ ? 」 間の抜けた声を出し、目をばちくりさせたキーツの手を、レイムはばっと放した。 「うわわっー 驚き慌て、手足をばたばたと動かし、真っ逆さまになったキ 1 ツは、しかし、上下が変 わっただけで、レイムの前に浮かんでいた。 「ふうん、あんたにはそんなかたちで現れたんだ」 ようせい 妖精のカの加護。 まどう 魔道のように、発動する力の気を感じさせないものに、襲いかかるものを避けて空中で かが 器用に身を屈めたりしながら、ほうとレイムは感心する。 めいわく 「だったら何だ ! 迷惑だっ ! 」 やけど 者飛来した炎に襲われ、手袋を焼かれたキーツは、火傷に驚いたはずみで手を振ってし どな る まったがために、斜めになって回転しながら、怒鳴った。飛ぶことはできるが、まだまっ をたく要領を得ないキーツを助けて、レイムはその手を掴まえる。 せいれい 普通の人間にはないカで、空にあがったキーツとレイムに、周りを取り囲んでいた精霊 や妖精たちがざわめいた。 さか

10. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

たた 近くに水場はないし、火に包まれてしまったら、カずくで叩いて火を消すか、炎退去の まどう 魔道を用いるしか、助かる方法はない。しかしそれで、何かが変わるわけではない。 せいれいようせい 精霊や妖精たちは、神の末裔たる黒精霊に楯突くものとしてレイムたちをとらえ、敵視 しているらしい ちか 「僕は争いたいんじゃないー ちゃんと話せば、きっとわかりあえる ! 君たちに誓って だから、ナイヴァスと : 人間の一一一一口うことー 信じるな ! レイムの言葉は即座に否定された。 かく いつわ だま ふんがい 何らかの策を隠した偽りで騙そうとしている、さらに許しがたい者たちであると憤慨 するど 者し、炎をもたない小さな妖精も、風を切り、 ' 鋭い刃物か矢のように飛んで、レイムたちに る カ 襲いかかった。 を「どうすれば聞いてもらえるんだ e: 」 精霊や妖精たちは、嘘を見抜く力をもっているはずなのに : ・ 「だって、人間なんだもの ! 」 うそ まっえい たてつ