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検索対象: 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5
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1. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

第二章呪詛 こうもりつ・はさ そうしよくほどこ 金で装飾を施された大きな鏡に映る、蝙蝠の翼をもった黒猫からの報告を聞き、コン けしよう まゆ スタンスは化粧をしていた手を止め、軽く眉をひそめた。 と、つ 「そう : あの荅は、またどこかに移動したのかい」 まどうひ すいしようしよく」い 無識の水晶の燭台に冷たい魔道の灯のともる静かな死の宮殿で、小さく息を吐いて、 一度瞬きして、コンスタンス盟唇にをひく。 「聖魔道士の坊やのほうは ? 」 問われて、コンスタンスの後ろで黒猫は、高く細い声で鳴いた。 者北の地から姿を消してから、まだどこにも現れていないようだ。 どく ほおづえ る カ 毒のある黒蓮で作った香水をつけ、コンスタンスは鏡台に頬杖をつく。 授めんどう を「面倒なもんだね」 やっかいしろもの 世界のどこにあるかわからないと噂される不思議の塔は、なかなか厄介な代物である。 しゅんじ 見つけても見つけても、忽と消え、どこかに行ってしまう。しかも次の場所には、瞬時 0 こくれん じゅそ 」、つすい うわさ きゅうでん くろねこ は

2. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

122 きざ 文句を言わず、夢中で食べる弟に、スエレンは目を丸くした。野菜が全部小さく刻まれ なっとく ているのは、テッドのためであるのかと、キ 1 ツは納得する。 「腹、減ってんだよ。何せ、丸一日、あんな場所でうずくまってたんだから」 おび 怯えて、出てこれなかった小さな少年。 「そうね : テッドが帰ってきて、やっと安心して、自分も食欲の出たスエレンはうなずいた。スエ きのう レンもロプも、昨日の午後からほとんど何も、ロにしていなかった。 幸せのお裾けをもら「ているような、温かい食事をご馳走になりながら、キーツは少 し考える。 街のどこかに、まだテッドのような子どもが、いるかもしれない 弟たちと一緒に食器を片づけたキーツは、荷物を肩に担ぐ。 「どこ行くんだ ? 」 食事まえに教えかけてくれていた、手品の続きをやってくれるものと思っていたロプ しまたた は、出ていこうとするキーツに目を瞬く。 食事をすませて、こんなにすぐに、キーツが出ていくとは思っていなかったスエレン も、流しの前で振り返る。 いっしょ かっ

3. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

娘は男の子を抱き締め、床に座りこんだ。 「よかった、テッド : 無事だったのね : 胸が潰れそうなほどに心配していたのだとわかる面持ちで、安心して泣きじゃくる弟 を、娘は強く抱き締めた。 けっこうな労働だったが、男ばかりで 、ゝ ) かげんうんざりしていたキーツは、やっと 可愛い娘を拝めて、救われた気分になる。ひさびさに間近く耳にした高い声は、可憐な鏘 こ」ち きで心地いし 娘のほかは、もう誰も出てくる様子はなかった。キーツが連れてきた男の子も、この二 人以外を気にする様子がないので、姉と弟一一人の所帯なのだろう。 感激の再会をする姉と弟を、戸口に立ったお兄ちゃんが、くすんと鳴った鼻をこすりな なが がら、眺める。 キ 1 ツは、お兄ちゃんの頭に、ばんと手を置いた。 「よかったな」 頭の上に手を置かれたお兄ちゃんは、キーツに振り返る。 授 を 「悪かったな、わざわざ連れてきてくれてさ。ありがとう」 星 まだ小さいくせに、大人びた口調で礼を言われて、キーツは片目をつぶってみせる。 ゝってことよ。気にすんな」 つぶ ゆか おもも

4. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

とをあまりやってこなかったといっても、人間であることにかわりはない。痛いほど向け ぞうお せいまどうし られる憎悪の視線は、聖魔道士もまったく区別しないということを、はっきりと証明して せいれいようせい 五メートルくらいの距離をおき、姿を現した精霊や妖精たちは、レイムたちを取り巻い ている。いきなり手を出してこないのは、レイムたちには戦うのに十分な力があるはずな のに、まったく無防備で、戦う素振りをみせないからだ。 「 ( ライラ : ・ 小声で名を呼んだレイムに、首の後ろに逃げこんだ妖精は、金の髪を握り締め、強く首 を振る。 「 ( 駄目 ! とても話なんてできない : 何かはなはだしい行き違いがあるようなので、仲立ちを頼みたかったが、妖精はすっか おび いちる り怯えきってしまっていた。妖精ならばと、レイムは一縷の望みをかけたのだが、これだ け多勢に無勢では、全世界の精霊や妖精たちと敵対しているようで、辺の小さな花の妖 精ごときには、とても話しあいはできないようだ。 「 ( 役たたず : : : ! ) 」 えんりよ ・はと、つ 小声だが、遠慮なくキーツが罵倒したが、悔しい思いをしながらも妖精は、何も言い返 ふる せず、レイムの首の後ろで震えていた。 たの

5. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

「レイム様 : のんき きまじめ 呑気なことを言うレイムに、生真面目なサミルは嫌な顔をした。 サミルを気にせず、魔道でを消去したレイムは、草原を見渡す。 「花が咲いていないのが、残念だな」 けいしゃ なだらかに傾斜しながら、どこまでも続く緑の平原。 「そうですね」 のどうるお ひどく優しいものを感じさせるレイムの澄んだ声に、喉を潤して一息ついたルドウィッ と、つ とびら ひめぎみ クは、ここに塔があり、その扉を開いたときに現れる姫君のことを思 ) しさくうなずい 安全な場所で守られるということで、塔に閉じこもったままの姫君に、この広大な草原 は、素晴らしい開放感を与えてくれることだろう。緑の平原もいいが、色鱶やかで、甘い すてき 香を放っ花が咲き乱れていれば、もっと素敵であったのに。 へきえき ロマンチックなレイムとルドウィックに辟易して、はっとキーツは息を吐き捨てた。 「ーーそんな場合かよ」 ねら しゆらば 塔が現れれば、姫君を狙う堵たちも当然、ここに集結する。どんな修羅場になるか知れ たものではないのに、何を腑抜けた夢を見ているのやら。 「まったくです」 は

6. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

172 徹にそう言ったルドウィックに、にこりと微笑んで、レイムは顔を向ける。 「まったく、そのとおりですね。ルドウィックさんとお話しする機会がもてて、とても勉 強になりました。ありがとうございます」 みまちが うるわ 間近い位置でルドウィックに向けられたのは、初対面のとき、美女と見間違えた、麗し えが どきりとし、ルドウィックは荒ててよそを向く。 むずか それに気づかなかったレイムは、難しい顔をして、腕組みする。 「頭のいい人なら、わかるはずなんだけど : : : 」 おとめ なぜキハノは、乙女をあきらめきれなかったのだろうか・ : 時間になってもこない場合は、迎えにいくと手紙に書いておいたところ、キーツは時間 まどうし と、つ びったりに、魔道士の塔の前に姿を見せた。 。し力にもキーツらしい 待つのも嫌だし、待たれるのも嫌、というのよ、 ) ゝ ルドウィックと、塔の外に出てきたレイムは、キーツに微笑む。 「おはようございます、キーツさん」 のうこんほうい にこにこするレイムのそばに、濃紺の法衣をまとう少年魔道士の姿が見えないことに、 まゆ キ 1 ツは眉をひそめる。 むか

7. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

154 「わたしだって、寒かったわ」 お茶の一杯も飲まないままで、眠れるものですかと、スエレンは怒りながら、湯を沸か 1 レッ」ゝっこ 0 文句を言われ、キーツは肩をすくめる。 だんろ 「夜は冷えるってわかってるんだから、暖炉に火を入れりやよかったのに」 「こんなに遅くなるなんて、思わなかったんだもの : ・ 「はいはゝ はだし 裸足のキーツは、スエレンがかけていた椅子を引き寄せ、窓辺にバイオリンと花を置い あぐら て、椅子の背を抱くようにして反対向きに座り、胡座をかく。ついさっきまでスエレンが 座っていた椅子は、背板も座面も温かかった。 なべか スエレンは暖炉の鍋掛けに、水を入れた湯沸かし鍋をかけた。暖炉に火が入れられ、部 屋は明るくなる。 火のそばにスエレンは椅子を運んで腰かけ、キーツも暖炉に近寄った。 「・ : ・ : 街の様子 : : : 、どうだった ? 「昼間と変わらず、だな。まだの運び出しをやってるよ。 「そう : : : 」 視線を落として暖炉の火を見つめていたスエレンとキーツは、目の前の床に突然延びて ゆか

8. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

116 まといっき、キーツに質問を浴びせかける弟に、ようやく小さいのを床におろした娘 が、嫌な顔をする。 「こら、うるさくしないの ! ちょっとどいて」 ゅおけしたく 小さな湯桶を支度して近づいた娘に、めったに客なんて来ないのにという顔で、少年は ゆず とが 口を尖らせながらも、場所を譲った。 「気持ち悪い思いをしたでしよう ? どうぞ、使って」 よご 血溜まりの中を歩いてきたキーツに、汚れを落としてもらおうとして湯桶を置いた娘 は、まったく汚れていないキーツの足一兀を見て、目を丸くする。 窓の下に見える光景は、体が運び去られただけで、ほかには何も変わっていない の建物の階段も、大量の血で汚れていた。避けて歩くのは、どう考えても無理だ。 こんなのはおかしいと、見つめる娘に、キーツは片目をつぶる。 「俺、手品師なんだ」 だから、こ , つい一つことかあってもいし 「あのね、すごいんだよ ! ばあって、こう光ったかなって思ったら、綺麗になってたん 」ト 6 ー じまん 自慢するように、テッドが両手を広げて、姉と兄に大声で教えた。 まどう テッドの言ったそれは、レイムの魔道であって、キーツのカではない。キ 1 ツは苦笑す きれい ゆか こ

9. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

する。 「ずうずうしくて申し訳ないんだが、少し休ませてもらえるかな ? 座って水の一杯でも もらえたら、出ていくから」 「ごめんなさい、気がきかなくて。どうぞ。狭くて汚いところで恥ずかしいけど」 貧しさを少し気にしながら、娘はキーツを快く招き入れた。 驪いで感じたとおり、血で汚れていない室内に安心し、わずかに浮かせていた足を、 ゆか やっとキーツは床につける。 とびら 娘は天窓の横の明るいところに、キーツのために椅子を一脚置いた。部屋の扉を閉めた お兄ちゃんが、肥からいそいそと水を注いで、カップを運んだ。 キーツは肩にかけていた荷物を床におろし、椅子にかけて一息つく。空を踏んで歩くな んて、やり慣れないことをしたので、少し疲れた。 「兄ちゃん、このあたりの人じゃないね」 ひとみ 者キーツにカップを渡しながら、少年はちょっと生意気な口調で言った。薄い色の瞳と日 焼けした感じのしい太陽の光が似合う髪の色。 授 を 「ああ。もっと南のほうで生まれたのさ」 星 ちそう ありがたく水をご馳走になりながら、キーツは微笑む。 「旅の人だよねえ。プランに、何しにきたんだ ? 」 も , フわけ せま ままえ きたな

10. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

飲み終わった空の肥を、レイム同様に魔道で消去し、サミルは腰をあげた。 草原を見渡し、サミルはレイムに相談する。 「結の準備には、どのくらいの規模の魔法陣が適当だと思われますか ? 、 「結界、ですか ? ー しまたた 腰をおろしたままのレイムはサミルを見上げ、目を瞬く。わかっていない様子のレイム に、サミルは少し嫌な顔になる。 けんじゃとう 「賢者の塔を守るためのものです。どんな相手がこようと、結界の内に入れてしまえば、 ししよう とびら レイム様が扉を開くのに支障はないはずです。運悪く、敵が現れて、争うことになりまし ひめさま ても、賢者の塔の中におられるメイビク姫様に、不安を与えることはないでしようし」 「はあ、なるほど」 なっとく そうですねとうなずいて、レイムはサミルの提案を納得した。 若いが抜け目のないサミルに、ルドウィックは感心したが、キーツは眉をひそめる。 者「おい、それって : : : 」 「レイム様、結界に用いられます術具のほうは、どんな物をお持ちですか ? を「えーと、そうですね」 サミルは話しかけようとしたキーツを無視してレイムにね、レイムは荷物に入れて 持ってきた術具を確認する。 けつか、 まゆ