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検索対象: 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5
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1. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

144 えんりよ 「はい 0 それはよろしいですけれど : ・ : ・。何かご用がありましたら、遠慮なくお申しつけ ください すぐ一人で何もかもやってしまいそうなレイムに、サミルはお願いするような目で見つ めて、念を押した。信用がないなと、レイムは笑う。 まどうしさま 「それじゃあ、魔道師様が、写本を送ってくださったそうだから、届いたらすぐに持って きてもらえますか ? 「かしこまりました」 うやうや 恭しく礼をして、サミルは退室した。 ながいす サミルを見送り、うつむいて小さく溜め息を漏らしたレイムは、長椅子に腰を下ろし したく た。すぐに使えるように、支度されているクッションや掛け布を見て、薄く笑う。 どうも、過保護な扱いを受けていると思うのだが。 大切にされているのか、信用がないのか、いまひとつよくわからない。 ひめ ( メイビク姫 : : : ) 生け贄として、に身を捧げたあの姫ならば、世界を守りたいと切望する黒精繿に、 自分の身を差し出すことを、する、かもしれない : せんたく とうとびら ( 僕は、あなたに、死を選択させるために、塔の扉を開くのか : こ′」 おお どうくっ かな レイムは白い雪に覆われ凍えた洞窟の中で、振り返ったメイビク姫の哀しげな菫色の 0 すみれいろ

2. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

168 けいかい 何事かと、少し警戒するルドウィックのほうを向かず、正面を向いて、考えるような顔 で、レイムはロを開く。 「ルドウィックさんなら、どう思われるかと思って : あの、ルドウィックさんが、物 凄く好きになってしまった人がいるとしますね」 「はあ」 仮定での話であるなと、ルドウィックはうなずく。 「それで、ルドウィックさんは物凄く好きなんですけど、その人は別の人を好きになっ りようおも て、両想いになってしまうんです」 つら 「それは : : : 、辛いですね」 「ええ、辛いです。でも、とってもお似合いなんですよ。とても割りこめないような感じ がするくらい」 くろかみたけ ここうしゆらおう のう レイムは、孤高の修羅王を名乗っていた黒髪の猛き若者と、心清らかで優しい聖女を脳 裏に思い浮かべる。 「ルドウィックさんなら、どうします ? 「どうします、って : しまたた ルドウィックは驚いて目を瞬く。そんな質問がくるとは、思っていなかったので、心の まばた 準備ができていなかった。純なルドウィックは、忙しく瞬きしながら、少しうつむく。頬 せわ 0 ほお もの

3. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

230 そんちょう けんじゃとう それでも、サミルは賢者の塔を目指そうというレイムを、尊重した。 まどう しようもうかくご 消耗覚悟で、自ら率先して魔道を用い、レイムの魔道力を温存させた。 寝そべって星空を見上げるなんて、普通のサミルなら、絶対にしなかった。あれは、そ からだ ういう格好で身体を休めることを、不自然に思わせないための、こじつけ。 すべての魔道力を集めても、レイムに襲いかかる巨大な魔道弾を、弾き飛ばせるだけの 魔道力は、今のサミルには残っていなかった。 レイムにできるだけ余分な力を使わせず、サミルがレイムを守るには、自分自身を用い るしか、もう方法は残されていなかった。 ぬ ほうい 濃紺の高級魔道士の法衣に縫いつけられていた、サミルの名と階級を記した銀のメダル だけが、砂の上に落ちた。 さばくりようひぎ 朝日を受けてきらめく銀のメダルを目で追って、レイムは砂漠に両膝をつく。 「サミル、さん しつかりしていなかったから : : : ) ( 僕が : かこく レイムは、こうまでしなければならないほどの、過酷な状態であったサミルに、気づい てあげられなかった 目の前で何が起こったのか、ルドウィックにはわからなかった。理解の域を超えてい のうこん 0 はじ

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しまい、激しく咳きこむ。 大丈夫ですか ? 「ああ、慌てなくてよかったのに : 苦しそうにむせるキーツを助け、レイムがキーツの背をさすった。 「だ、大丈夫だ : : : っ ! 」 キ 1 ツはレイムの手を避けるように腕をあげ、レイムに肥を渡した。 「そうですか ? えんりよ 助けられたくない感じのキーツに、レイムは遠慮する。意地っ張りでひねくれたところ があったから、しつこくしないほうがいいかと思う。 をおさめ、ぜいぜい言ったキーツは、ぐったりとうつむく 「もう少し、飲みますか ? ねたレイムに、咳をおさえるようにロに手をあて、キーツはうつむいたまま、首を振 「・ : ・ : いらねえ : もしもう少し欲しかったと言われても、むせてしまった物より、別の物のほうがいいだ まどう ろう。まだ数本、清涼飲料水の瓶はあるし、魔道で水も呼べる。 「そうですね」 ひとつうなずいて、レイムは残りをいただくべく、瓶に口をつけた。 る。

5. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

飲み終わった空の肥を、レイム同様に魔道で消去し、サミルは腰をあげた。 草原を見渡し、サミルはレイムに相談する。 「結の準備には、どのくらいの規模の魔法陣が適当だと思われますか ? 、 「結界、ですか ? ー しまたた 腰をおろしたままのレイムはサミルを見上げ、目を瞬く。わかっていない様子のレイム に、サミルは少し嫌な顔になる。 けんじゃとう 「賢者の塔を守るためのものです。どんな相手がこようと、結界の内に入れてしまえば、 ししよう とびら レイム様が扉を開くのに支障はないはずです。運悪く、敵が現れて、争うことになりまし ひめさま ても、賢者の塔の中におられるメイビク姫様に、不安を与えることはないでしようし」 「はあ、なるほど」 なっとく そうですねとうなずいて、レイムはサミルの提案を納得した。 若いが抜け目のないサミルに、ルドウィックは感心したが、キーツは眉をひそめる。 者「おい、それって : : : 」 「レイム様、結界に用いられます術具のほうは、どんな物をお持ちですか ? を「えーと、そうですね」 サミルは話しかけようとしたキーツを無視してレイムにね、レイムは荷物に入れて 持ってきた術具を確認する。 けつか、 まゆ

6. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

だめ りくっ もうもの ふんいき ) 0 ゝゝ しいかもしれなし しし雰囲気になれれば儲け物だし、駄目でも、なんとか理屈をつけ て、中から窓を開けてもらえばいい。 居間の窓に近寄って、手をかけたところ、それは運よく開いていた。 ようせい 妖精のカの加護により、飛ぶことのできる今のキ 1 ツでもなければ、傾斜の急なこの屋 根を伝ってくるのは至の業だ。しかもこの建物は、忍びこもうなどと不届きなことを考 かぎ 鍵が開いていても、必ずしも不用心とは言いき えたくなるような、上等なものではない。 れない。 くっぬ 居間の窓を開けたキーツは、街の中を歩いて汚れた靴を脱いで、そ 1 っと居間に足をお ろした。雨ならまだしも、キ 1 ツの靴を汚したのは、血溜まりである。床が汚れてしまう ので、靴の裏が輯くまで、履かないほうがいい 物音をたてないように、注意して靴を置き、窓を閉めたキーツは、ほっと息を吐こうと かべぎわ して、すぐ近くの壁際に置いた椅子に、人影があるのに気づき、どきりとする。 「 : : : スエレン : 驚いてバイオリンを落っことしそうになったキーツは、暗がりで静かに顔をあげた娘 あいそわら をに、愛想笑いする。 かぜ 「どうしたのかな ? そんなとこでうたた寝してると、風邪ひくよ」 うそ よご けいしゃ ゆか

7. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

120 そうさく 第七章捜索 娘の名はスエレン、お兄ちゃんの名前はロプといった。 たいしたものはないと言ったスエレンの一一 = ロ葉どおり、出された料理は、温かく、心がこ もってはいたが、つましいものだった。 なべ 圧力をかけた鍋で、しつかりと煮こまなければ、とても食べられたものではない安い肉 めざとさが を、シチュ 1 の具に目敏く探しあてた少年たちは、極上の食材であるかのように、喜んで きそ 競うように食べていた。 ( 金があるから、豊かなんじゃない : 兄弟も妹もいたが、自分はこんなに楽しそうに、奪いあうかの勢いで、食事をしたこと こうしやくけ があっただろうかと、キ 1 ツは思った。侯爵家に生まれ、何不自由なく育てられたキー ツだが、いつも何か、満たされないものを感じて、しかしそれがはっきりわからず、もど あせ かしさにただ焦っていた。あのころのキーツに比べれば、この小さな少年たちは、ずっと 幸せであるようにみえる

8. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

ある。 まどうしとう 翌日、ルドウィックはレイムが指定した時間より十分早く、魔道士の塔に到着した。 えんりよ まだ時間ではないからと、遠慮するルドウィックを、レイムは魔道師の小部屋に通すよ う、んだ。 もうわけ 「申し訳ありません : ・ 公的な場所に高貴の者を訪ねるときに、少々の時間の余裕をもって、遅れないようにす ま ひか ることは、絶対の常識である。訪問者は控えの間か何かで、時間まで待っているものと、 決まっている。 きようしゆく 時間まえなのに、ずうずうしく押しかけるようなことになってしまってと、恐縮する あおむらさきほうい ルドウィックに、青紫の法衣をマントのようにして肩にかけ、プローチで留めながら、 ままえ レイムは微笑む。 したく 「かまいませんよ。僕ももう支度は終わっていましたから。それに、少しルドウィックさ 者んとお話ししたいなとも、思っていましたし」 カ 「はあ : : : 」 授 を ルドウィックは櫛子をすすめられ、長椅子に腰をおろす。 星 たいして広くはない部屋だったが、あまり大声でするような話でもないと考えて、レイ ムはルドウィックの横に腰をおろす。

9. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

第十二章離別 けんじゃとうかぎ ナイヴァスはレイムの言葉を理解し、賢者の塔の鍵を得るため、レイムを食べることを とりやめた。待っていればいいと教えられたことで、気負いと焦りが消えた。 用事がすんだら帰るかと思ったのだが、ナイヴァスはしばらくじいっとレイムを見つめ ていた 9 ルドウィックやキーツ、サミルは、ぐるりと周りを取り囲んだまま、ナイヴァスをはじ め、しんと静まり返った繿や妖精たちの様子を、息を詰めてうかがっている。 まどうかんち きざ 傷を刻む目的で加えられる攻撃なら、癒しの魔道で完治できるが、生命力を萎えさせる 者ようなことをされた場合、高級魔道士のサミルでも聖魔道士のレイムでも、どうにもなら 緊張した = 一人が、もうこれ以上の緊張にはとても耐えられないと、をあげて絶叫し そうになったころ、レイムは首をげた。 「どうしました ?

10. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

こぞう 「小僧は ? 遠慮ないキ 1 ツのね方に、ルドウィックは周りを行き来するたくさんの魔道士を気に せま して、少し肩身の狭い思いをする。 場所をわきまえろと小声で注意するルドウィックにかまわず、レイムはキーツに陸笑 「少し待ってあげてください。挨拶してから、くるそうですから」 「ふーん」 やっ 抜け目のない奴だと思っていたが、段取りが悪いなと、キーツは嫌な顔をした。 「ああ、そうだ、キ 1 ッさんなら、どう思われますか ? 」 待ち時間にちょうどいいと、レイムはルドウィックにしたのと同じ質問を、キーツにも した。 きしどう ひれつ 者返ってきた答えは、ルドウィックのものと、ほば同じだった。騎士道だの卑劣だのとい カ う一一 = ロ葉が、キーツの口からは出なかったくらいだ。 授 ただ違ったのは 「あと、なんだな、ごちやごちゃ引っかきまわす奴がいれば、話はもっとややこしくなる だろうな」 む。 あいさっ