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検索対象: 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5
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1. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

ゆが に移動をするのではなく、適当に時間をつぶしながら姿を消してから、現れる。空間を歪 まどう くし めたり、魔道で門を開いたりというものでないので、どんな術を駆使しても、現れてから でなければ、場所の知りようはない。 けんじゃとう 賢者の塔も聖魔道士も、居所をつかむのにひどく苦労させられる。世界各地に使いを 放ってはいるが、知らせを受けてから行動を起こすコンスタンスは、いつもいくらか出遅 こはくひめ れてしまう。琥珀姫メイビクが、賢者の塔から出てくれたほうが都合のよかったコンスタ とびら しゅんかん ンスは、レイムが塔の扉を開き、自由になった瞬間が出番と思っていたので、それも甘 受していたが ( 魔道王クシュファ : ・ あの得体の知れない魔道士に、後れをとることはできない。 コンスタンスはキハノのため、今だけは聖魔道士の側につき、クシュフアと完全敵対す あま ることを決めたのだ。あの甘っちょろいところのある聖魔道士の坊やなら、クシュファ くろせいれい ほうむ すき と、黒精霊ナイヴァス・トルティーンを葬った後、じっくりと隙をうかがってから殺せば ようせい あお おろ いくら世界でただ一人の聖魔道士でも、妖精に助力を仰ぐような愚か者だ、メイビ ク姫を救い出したと油断しているときを狙えば、寝首を掻くことぐらいわけもない。 きれい あなたは、とても綺麗だから、信じます。 じゅ ねら かん

2. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

せいまどうし レイムが聖魔道士であることは、魔道士なら誰でも知っている。そこに誰かいるなら さぐ ば、まず気を探って、それが誰なのか調べるという作業が、ごく日常的に常識として行わ れる。相手も確かめずに、攻撃魔道をしかけるなんてことは、考えられない。 はけん 派遣されている土地の実力者のム哭であっても、魔道士は魔道士としての階級組織のほ うを、優先するはずだ。世界でただ一人の聖魔道士であるレイムに対して、攻撃をするこ とが許されるはずがない。そんなム哭が出せるのは、王都にいる魔道師だけだ : 聖魔道士を守りたくとも、攻撃魔道で相手を止めることはできない。 おもも わけがわからず、悲痛な面持ちで、サミルは懇願した。 さばく かたひざ 砂漠に両手と片膝をつき、金色の髪を乱したレイムを、駆け寄ったルドウィックが助け 起こす。 「大丈夫ですかレイム様 . と、つ 「平気です = = = 。ちょ「と、驚いただけで。塔は ? 」 「損壊はありません。爆風による影響も、何とか免れたようです」 報告を受け、レイムはほっとする。 授 「よかった : : : 」 とびら せつかく扉を開いたのこ、 ) 冫しきなり驚かせ、怖い思いをさせるところだった。 せま とりあえず、ほっとしたレイムは、凄まじい勢いで迫りくる気を感じて、はっと目をあ すさ こんがん こわ

3. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

156 街を浄化する、優しく温かな不思議の力。普通の魔道士の力とは違うと、ルと心で、感 じられる。こんなことをやってのけるのは、レイム以外にありえない。 「この、街に : 世界救済の英雄が。世界でただ一人しかいない聖魔道士が、この街のために、力を使っ てくれているというのか。 ひざまず スエレンは静かに跪き、聖魔道士に感謝の祈りを捧げた。 ( レイム : : : ) かみ キーツは街のどこかにいる、金色の髪の青年の姿を思い浮かべ、月を振り仰ぐ。 そしてまた、別の場所でも。足元から湧きたった金色の光に包まれるようにして、兵士 たちと作業を続けながら、ルドウィックがレイムを思い出して、顔をあげていた。 レ」、つ レイムは魔道士の塔の屋上に立ち、両手を広げて魔道力を贈る。 ( 僕にできる、ことを : : : ) ささ あお

4. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

138 まどうし どうやらこの一件は、普通の魔道士にも、聖魔道士であるレイムにも、手も足も出ない ものであるようだ。 「ライラ、魔道師様にご相談しても ) しいかな ? 僕たちでは、手に負えないみたいだか ら。魔道師様なら、何か策を講じられるかもしれないー たいぐう さ・んぼ、つ 聖魔道士と、特別待遇を受けていても、レイムは魔道士階級において、参謀としての権 限を与えられているわけではない。 「そうね : : : 」 「魔道師様なら、魔道士への協力をお願いできるかもしれないし」 「そうね ! 」 ようせい 妖精は、精霊たちとの行き違いも、これでなんとかできるかもしれないと、ばあっと顔 えりあしかく を輝かせた。レイムを急かして、妖精は襟足に隠れる。 したく とびらたた 飲み物を支度して戻ってきたサミルが、扉を叩こうと足を止めたとき、小部屋から出よ つか うとしたレイムが、扉を開いた。びつくりするサミルに、レイムは気を遣ってくれた礼を 言い、魔道師との連絡をとるため、階下に下りた。

5. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

ばかようせい 「この馬鹿妖精 ! 何だかわかんないって、何だよ ? 「だってわかんないんだから、仕方ないじゃない ! 」 「役たたずがー 「役たたずって何よ、失礼ねえっ ! 」 あお キーツの物言いに憤慨し、蒼ざめて震えながら叫ぶ妖精を守るように、手を出して自分 みちび の肩へと導き、レイムは眉をひそめる。 せいれい 「精霊や妖精が、どうして : : : 」 かつやく せいまどうし レイムは聖選によって聖魔道士となり、神のカの代行者として活躍し、世界を滅亡の危 機から救った者だ。自然を破滅から救った英雄が、自然なるものたちに敵視されるはずが 「どなたか、行いの悪い人がいるんじゃありませんか ? 」 背中を向けたまま、サミルがロ走ったことに、キーツはかちんとくる。 者「心当たりがあるなら、はっきり言えー る 「喞単しないでくださいー をそんな場合ではないとレイムに止められ、むっとしながらもサミルとキーツはロをつぐ んだ。 「 : : : 来ます ! ふんがい まゆ ふる

6. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

せいまどうし だが、こんな不可思議な事件が起こっているのなら、世界を守る聖魔道士として、レイ ムは黙っているわけにはいか 「ですが : ひど かなり酷い状態であると聞いているサミルは、そんなところにレイムを向かわせること に、少し気の進まない様子をする。聖魔道士であることもさることながら、高貴の身分に ある公子であることも、こんな汚れ仕事に向かわせるのを好ましくないと感じる要因だ。 金色の髪に白い、姫君のように見目麗しく、細身のレイムである。またレイムは、見る からに低血圧だとわかるので、きっと貧血を起こすにちがいないと予想される。 「ルドウィックさんもキーツさんも、この街で自由に動いてもらっています。サミルさん も、好きにしてくれていいですよ」 サミルにはサミルで、やらなければならないこともあるだろう。 けんじゃとう サミルが魔道師エル・コレンテイから命じられているのは、賢者の塔からメイビク姫を 者解放し、メイビク姫を狙うものと戦おうとするレイムを助けることだ。こんな寄り道にま りちぎ で、律儀につきあうことはない。 「同行します」 がんこ 頑固な性格であるように、サミルはきつばりと言いきった。 きょてん かがみ 魔道士の鑑のようなサミルなら、この塔を拠点にして働く魔道士の手伝いをするかと ねら よご ひんけっ

7. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

192 どな ようせい もうこれは黙っていられないと、キーツの襟足から出て、妖精が怒鳴った。 「レイムにはレイムの考えってものがあるのよっー 甲高い声で怒鳴った、光り輝く小さな、のある少女に、コンスタンスはぎよっとす 「なっ、なな、何だい e: それは ! 」 「それって何よっ ! 」 ふんがい 憤慨する妖精に、キーツは苦笑する。 せいまどうし 「いや、見たとおりの、妖精サンなんだな。聖魔道士サマおっきの」 みぎほお 教えられ、ひくっとコンスタンスは右頬を引きつらせた。 妖精まで味方につけるとは、聖魔道士様の清らかなのは、まったく筋金入りである。 「レイムを縣鹿にすると、許さないんだから ! 」 おど 翅を動かすたびに、きらきら、光の粉を振りまきながら、小さな指を突きつけて脅す妖 精に、コンスタンスは複雑な表情になった。人間や、ナイヴァスのような化け物相手な かくう たいしょ ら、敵対してもやりあえるが、課の生き物と思っていたこんなのが相手では、対処の仕 方がわからない。小さいからと侮ると、とんでもなく厄飛なことになりそうで、できるな ら関わりたくない。 きげん 妖精の機嫌をこれ以上損ねないように、どう言おうかと考え、コンスタンスは溜め息を そこ えりあし すじがね

8. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

158 せいまどうし 街の中を欧き抜けていく風から重苦しさがなくなり、眠りについていて、聖魔道士のカ の発動を目撃しなかった者たちも、混迷の不安による悪夢から脱け出し、寝顔を安らげ 気休めにしかすぎなくてもと、魔道を使ったレイムの力は、彼自身が思っているより ずっと大きな効果を、たくさんの人にもたらしていた。 聖なる不思議の力に、それが聖魔道士のものだとは知らない者たちも、それぞれの場所 いの から感謝の祈りを捧げていた。心からの祈りは優しい気となって、レイムへと向かう。 大がかりな魔道を使ったわりに、レイムは気が充実していた。 からだ 魔道を使ったあとのほうが、身体が楽になった感じがして、少しは協力できたのか、そ れとも何もできなかったのか、レイムにはよくわからない。 優しさを贈る者は、優しい心を返される。 じようか と、つ 街が浄化されたおかげで、姿を現すことができるようになった妖精は、魔道士の塔の屋 ささや 上に立っレイムの肩に腰かけ、囁く 「たとえどんな相手だって、レイムがわかってもらえないなんてこと、絶対ないわ」 ここち ほお 優しい気がレイムに集まってくるのを感じ、その心地よさに包まれて、妖精は微かに頬 を上気させていた。 ままえ レイムは小さくうなずき、微笑む。 ささ ようせい かす

9. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

レイムの髪に必死でしがみついたライラが、泣きそうな声で叫んだ。 はぐく 「人間だって、この世界に育まれた生命のひとつなのに・ : 自然を守り、世界を破滅から救うため、聖魔道士であるレイムはに魔物と戦った。 せいれいようせい そのレイムですら、人間であるからと、精霊や妖精たちに信じてもらえない。 みちび 「世界を破滅に導いたのも、人間でしよう」 レイムの心を読んだライラが、辛辣に言った。 ぎせい 世界を破滅に導いたのは、人間。世界を救うのは、人間には当然のこと。自己犠牲すら 厭わず、どんなにレイムが努力しようと、認めてはもらえない 「ごめん : ・ まゆ 人間の罪深さを忘れ、利己的になっていた自分に気づき、苦しげに眉を寄せたレイムは くちびるか 唇を噛んだ。 はね この者こそが黒精霊ナイヴァスの敵と、翅のある小さな妖精が、目にも見えない速さで 襲いかかり、かわし損ねたレイムの頬と左の上腕部を剃刀のように鱶やかに切り裂いた。 ちしぶき ばっと勢いよく散った血飛沫に、サミルとルドウィックが驚く。 「レイム様 ! 」 「縣鹿郎 ! 何やってんだ」 ばとう 聖魔道士ともあろう者が、何という体たらくだと、キ 1 ツはレイムを罵倒する。 しんらっ 0

10. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

まほう あわだ のど 喉の奥で血が泡立っ音にも似た、不快なはずのナイヴァスの声が、不思議な夜の魔法に みみざわ かかったように、今だけはなぜか、そう耳障りには感じられなかった。 ほまえ くろせいれい ようやく話をしてくれるらしい黒精霊に、ふんわりとレイムは微笑む。 せいまどうし 「僕は、聖魔道士。神様に選ばれて、不思議な力を使うことを、許された人間です」 「神様、ニ : 「はい 微笑んでうなずいたレイムに、考えこむように、ナイヴァスは押し黙った。 うそ レイムの言葉が嘘ではないことは、精霊特有の能力で、わかった。 きら 人間は、嫌いだ。すぐに暴力をふるい、傷つけようとするから。たくさん集まってどん なに楽しそうにしていても、ナイヴァスは、絶対に仲間に入れてくれないから。 人間でも別格として、ナイヴァスが認識しているのは、神様から自然なるものを守るよ もり う、力を与えられた精霊守だけだ。精霊守はナイヴァスに暴力をふるわず、傷つけない。 せいりゅうおう 者優しくしてくれる。精龍王は、神龍になるから、ナイヴァスとよく似ている。 ふんいき 聖魔道士であると言ったこの男は、よく見ると精霊守に、何だか雰囲気が似ていた。 レイムはナイヴァスに話しかける。 「精龍王が、いなくなってしまったのですね」 世界、壊レル : 「精霊守モ、イナイ・ : ダカラ、オレ、カ、イル :