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検索対象: 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5
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1. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

「よく考えてみな。姫さんを狙う敵が、本当に俺たちが見ただけ、知られているだけっ て、決まってるわけじゃない。一番強い奴がやられていなくなっちまったら、その次に強 たた い奴が、欲にかられてやってくるのが、自然の法則ってやつだ。叩いても叩いても、敵は けんじゃとう やってくるかもしれない。そんなのに、ゝ しつまでもっきあえるか ? 賢者の塔なんて、 願ってもないものがあるんだ。わざわざ姫さんを連れ出して、危険にさらすより、あの塔 かしこ に任すのが、賢いんじゃないのか ? 」 レイムとの同行を余儀なくされたからこそ、キーツはここで初めて疑問に思っていたこ なっとく かわい とを、全部ぶつけた。納得できないまま、行動をともにしてくれるほど、キ 1 ツは可愛ら しい性格ではなかった。 キーツのこの言葉には、ルドウィックもさすがに口を閉ざした。 サミルはちらりと、レイムをうかがい見る。キーツが言うように、どんな理由があって 塔に連れ去られたのかわからないメイビク姫である。メイビク姫を賢者の塔から出すこと まどうしばっ とが 者をあきらめて、王都に戻ったとしても、レイムがそれを咎められ、魔道師に罰せられるこ る とはないはずだ。 ようせい を思い詰めたような顔で視線を落とすレイムの肩に、妖精がのって、小さな手をレイムの 星ほお 頬にあてる。 自分が公子であるとわかったから、レイムは一刻も早く、メイビク姫のところに行きた ひめ ねら やっ

2. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

ようせい キーツの言ったことに、三人と妖精はきよとんとして、大きく目を見開いた。 いつ。はく 一拍置いて、ばっとレイムの顔が真っ赤になる。 「なっ、何言ってるんですか 声の裏返ったレイムに、キーツは爆笑した。 すなお レイムは反応が素直で、とてつもなくわかりやすい 「ーー私情で動いてらっしやったのですかーー ? 」 呆れたようにサミルがレイムに = ) ねた。レイムは真「赤な顔をしたまま、慌てて首を振 「違います ! そんなのじゃありません ! 」 せいまどうし 聖魔道士などと特別扱いされ、魔道師エル・コレンテイや、高級魔道士のサミルまで巻 いろこいざた ちみち ふめいよきわ きこんで、結局は色恋沙汰に血道をあげていたなんて、不名誉極まりない。 けんめ、 懸に否定するが、根っから正直なレイムは、キーツに図星を指されたのだと、はっき まちが むだ りわかる。突きつめればそれに間違いはなく、何を言おうと無駄なのにと、レイムの心を 読むことのできる妖精は、軽く肩をすくめた。 「い 1 んじゃねえの ? 惚れた女の顔が見たいっての、何より説得力あるぜ」 りくっ どんな理屈をこねまわすより、理解しやすい る。

3. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

ナイヴァスを背後にって傷つきながら、黒いの女と、反発しているようだ。 なぜ : : : ? どうして人間に庇い守られねばならないのか、ナイヴァスにはさつばりわけがわからな かった。 あの金色の髪の人間は、食われたくないからと、ナイヴァスに逆らった。逆らう者はナ イヴァスにとって、許すことのできない者である。 許すことのできない者が、ナイヴァスのために何かするはずはない、のに : だいじやかまくび 微かに首を動かしたナイヴァスに、びくりと身を震わせて大蛇が鎌首をもたげた。 だいだいいろひとみ からだ 大蛇は上空のコンスタンスとレイムを、その橙色の瞳で見、そして素早く身体をくね らせると、砂の中に逃げこんだ。 から くろせいれい 絡めとった黒精霊はいいであったが、この状況では命がいくつあっても足りない と、恐れをなしたらしい さく すなぼこり 砂埃をあげて砂に没した大蛇に気づいて、レイムが振り返る。 つばさ ひふ 翼は折れ、折れた骨が皮膚を突き破っているという、ひどい格好ではあったが、とにか ままえ く大蛇に解放されたナイヴァスを見て、レイムは優しい顔で微笑んだ。 おのれ 人間の顔の判別すら、ナイヴァスは満足にできない。己に表情と呼べるほどのものがな かす ふる さか

4. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

同じように、耳を塞ぎたくなる恐ろしい悲鳴があげ続けられていた。 ざま 「いい態じゃないかいー むざん コンスタンスは、見るも無惨な格好になったゼグ・ダを笑った。 どくろ すいしようきゅう 髑髏の台座に水晶球を置き、血で赤黒く染めたビロードのかかる卓の向こうに、ゼ グ・ダはいた。 折れた骨が肺に突き刺さったまま、肉片交じりのを吐きながら、ゼグ・ダは身もる 悲鳴をあげ続けている。鎖骨が折れて肩がはずれ、指のけた両手ががくがくと振り動か ちしぶき されるたびに、血飛沫が飛ぶ。血で真っ赤に染まった右目と左目は、それぞれに別のもの ひふ を追っているように、ちぐはぐに動いていた。折れ出た骨が、肉と皮膚を突き破って白く こ・は けもの のぞき、体液と血を零しながら、まだ傷口を爆ぜさせようとしている。獣の食い残しのほ きれい うが、このゼグ・ダよりもずっと上品でお綺麗だ。 レイムとの戦いに敗れたゼグ・ダは、それまでと同じように、自分の店に戻っていた。 者自分の店で、自分の椅子に腰かけて、客を待っている。違うのは、絶命して不思議はない りようあし るおおけが 大怪我を負いながら、何もせずに死ぬことはなく、失ったはずの両脚があり、何かに憑 むしば をかれて精神を蝕まれているということだ。 「お前なんかの出る幕じゃなかったのさ」 あぎわら 身のほど知らずとゼグ・ダを嘲笑い、コンスタンスは肩をすくめた。 ふさ

5. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

うじ うごめ 蛆が、旺盛な生命力をみせて、ざわざわと蠢き、油虫がそこらじゅうを這いまわってい がんか どぶねずみ ものかげかく しんにゆうしゃ る。突然の侵入者に驚いて、物陰に隠れた溝鼠の前で、死体の眼窩から神経の糸を引い はじ こぼ て零れていた眼球が、カない音をたててひとっ弾け、どろりと中身を零した。 ちょうい 息をするのも不快であると顔に表し、コンスタンスは身にまとっていた長衣を脱ぎ捨て さえぎ ひるがえ た。くるりと翻「て、長衣はどこかに消え失せる。遮るものを取りのけられ、使いの魔 女、生命あるものに死を与える女の身体が、甘美に匂いたった。ちりりと火に炙られるか またたま の様子で、黒く変絶して蛆が転げ、宙を飛んでいたものたちは瞬く間にばらばらにな「て 落ちる。不気味に脂ぎ「た肥りかたをしていた溝鼠たちも、胃の内物をすべて吐き出 し、全身から血を噴き出して死んだ。色素だけを残して朽ち消えた黴の覆っていたもの だえき したう に、コンスタンスは舌打ちして唾液を吐き囎てた。黄金をも溶かす強酸性の唾液を受け、 腐れ朽ちた死体の残骸は、どろどろと溶け崩れた。 こわくてきあまかお あくしゅう 胸の悪くなる悪臭も、強烈な毒の蠱惑的な甘い香りに満たされて、かき消えた。 きわ 不潔極まりないものたちがおとなしくなり、ふんとコンスタンスは鼻を鳴らす。 どうにか鑑賞に堪えられるものになっただろうと、コンスタンスは手をあげて指を振 おにび り、魔道の灯をいくつか呼んだ。それまでコンスタンスに明かりを与えていた鬼火は、く こ , つもりつばさ くろねこ るりと翻って背に蝙蝠の翼をもっ黒猫の姿になって、コンスタンスの肩の上にのった。 せいじゃく 生命あるすべてのものに死を与え、静寂をもたらす女。しかしそこでは、それまでと おうせい

6. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

強い調子で言うサミルに、レイムは微笑む。 「決めたんですー かいだく 決められても、ルドウィックも快諾できない。 まどうし レイムはプラン市の一件で、魔道師と話をし、整理できたことを話す。 「かの琥瑯を欲して然るべき理由が、黒精霊にもあったんです。それが世界にとっても よ、っせい とても重要なことだったから、精霊や妖精たちも、黒精霊を支援して、僕たちに攻撃を加 えてきたんです。僕は、世界を守ろうとしている黒精霊の力になってあげたい。そしてで きることなら、琥珀姫を傷つけることなく、すませたい。だから、そう考えているって、 話して、わかってもらおうと思うんです」 「しかし : : : ! 」 あまりにも危険だ。 渋るサミルから順に、レイムは三人の顔を見た。 者「ほかに方法はありません」 かレイムはあっさりと言いきった。 そしてほかの方法はとねられても、文句をつけた者が、何か考えてたわけではない。 しりめ それでもまだ何か言いたそうにしているサミルやルドウィックを尻目に、キーツは肩に 荷物を担ぐ。 かっ ままえ

7. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

ようせい びくんと震え、妖精は素早くレイムの襟足に逃げこむ。 まどう いや サミルから癒しの魔道をもらっていたレイムが、キ 1 ツの声に、はっと目を開けた。 術の中断を願うレイムより早く、サミルは一気に魔道力をレイムに送った。 「すみません・ : レイムはルドウィックとサミルに礼を一 = ロい 、立ち上がった。 よろ ) 「織と剣は ? みじたく どな 身支度ができていないと、怒鳴るキーツに、レイムは首を振る。 「戦うのじゃありません。話をするんです」 けいかし きぜん レイムは毅然と顔をあげ、キーツが警戒している方向に向けて、歩き出した。 「皆さんはここにいてください」 「そんな : ・ とても一人で行かせられないと、あとを追おうとするサミルとルドウィックにかまわ 者ず、レイムは襟足に逃げこんだ妖精に声をかける。 「ライラ、君もここにいて」 授 優しい声に、姿を現してレイムの肩の上にのった妖精は、泣きだしそうな顔でレイムを 見る。 「でも : ・ ふる えりあし

8. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

に軋む古い階段を上りながら、耳を澄ましたが、どの階の部屋からも、何の物音も聞こえ なかった。血のいは、ここでも濃い とびらたた 自分で扉を叩くかと、キ 1 ツは男の子を見たが、男の子は震えたまま、顔をあげなかっ 返事があることをあまり期待せず、キーツは扉を叩く。 「こんにちはあー こんな小さな子どもが一晩家を空け、そして街がこんなことになっていれば、家人は心 配で眠れなかったはずだ。出てくるものなら、飛んで出てくるはず。 少しけだるげに出したキーツの声は、どこか轗な鏘きを含んでいるので、とても兵士 の訪問とは思われないだろう。当然、見知った近所の者でもない。 だめ 少しそのまま待ったキーツは、駄目なら、せめて部屋の中を確かめてきてやろうと、扉 とって の把手に手を伸ばした。 者キーツが掴もうとした扉の把手が、指が触れそうになったとき、少しだけ遠くなった。 建てつけが悪くて、閉まりきっていなかった扉が、キ 1 ツの体重で動いたか 授 くさ まみ を 古いうえに、これだけ血に塗れれば、板が腐って落ちるのも時間の問題だろうと予測し 星 すきま たキーツは、細く開いた扉の隙間、低い位置から見上げてくる視線に気がついて、目を しまたた つか ふる

9. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

半分ほど飲んだレイムは、キーツの顔を見、仕方ない人だなと笑って、肥をおろした。 「いいですよ、どうぞ まどう レイムは魔道で水を呼べる。何か不都合があるわけではまったくないが、魔道士ではな いキーツは、魔道で呼んだ水より、普通に店で売ってる清涼飲料水のほうが、ロにするの に好ましいだろう。 わり 「悪いな」 暑い南の地で育ったキーツは、水分代謝がよく、たくさんの水分を欲しがる。あちこち 旅をしてまわり、多くの者たちと接してきたキーツは、自分が他人より繁にの渇きを 感じることを知っている。 ゆず 快く譲ってくれたレイムに照れ笑いし、キーツは今度は静かに瓶を傾け、ゆっくりと喉 うるお を潤すようにして飲む。 かく けいたいよう サミルが手を貸し、瓶の栓を魔道ではずした。ルドウィックは隠しに入れていた携帯用 者コップに、自分の分を注ぎ分け、瓶をサミルに渡した。自分より位の高い者にはこんな場 きゅうてい る 合、コップのほうを渡すのだが、ルドウィックとサミルとでは、宮廷兵士と魔道士とい つか をうことで比較できず、ルドウィックが気を遣う必要はない。 コップを使って瓶の中身を分けたルドウィックの姿を見て、はっとキーツは目を見開い た。いきなり思い出したことに一。気を取られたキ 1 ツは、気管に飲料水を流しこんで せん たいしゃ かたむ

10. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

239 あとがき 出来がいいのさ D の言葉に誘われて、クリアしたゲームの画面を見せてもらった。 仕事で何時間もワープロの画面を見つめているし、わざわざ遊びでまでテレビ画面を見 きら つめる気がおきなくて、わたしはほとんどゲームってやってない。嫌いではないけど、好 ロールプレイイングゲーム きとは一一 = ロえないかも。時間がかかるから、に対して、興味がない。まともに なが 眺めるの画面っていうのは、それが初めてだったのだけど : まほ、つ 「マシンガンを持ってる相手を、何で魔法でやつつけるの ? 殺す必要あるの ? しんにゆうしゃ 「そのドラゴンって悪者 ? 侵入者は、そっちの勇者様のほうだよ。勝手にやってき じゃま ひど おんびん て、邪魔だから殺すのは酷いよ。ほかに方法ないの ? もっとこう、穏便に : : : 」 びれい ゲーム画面としては美麗なグラフィックも、わたしにはその価値がわからない。 文句、山ほどほざいたわたしに返ってきたのは、これはこういうものなのという一一 = ロ葉。 なっとく 「納得できなーいー さつりくしゃ りやくだっしゃ 正義という肩書きを借りた略奪者であり、非情の殺戮者である、勇者様ご一行。神様 よご だろうが、相手の都合を考えず呼びだしてこき使う。自分の代わりに、手を汚させる。 なんか、やだな 1 。まさしく人間のエゴって感じがして。あくまで人間中心の世界みた めいわく いで。すつごい迷惑。こんな勇者様の世界なんて、滅びればいいのに。 「納得しなよ」 うーん : 。やつばりこれは、わたしの遊びたいゲームではなさそうだ。 さそ