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検索対象: 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5
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1. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

に溢れ出し、赤と黒の波となってレイムのほうを目指す。 「レイム様 ! 」 来る・ : ルドウィックに教えられ、レイムは身構え、叫ぶ。 「ナイヴァス ! 」 つばさ 清らかな声と同時に、翼もっ巨大なものが黒い霧の真っ只中より、天に向かって飛ん 太陽を遮って空に浮かんだ、醜悪なる怪物の影を見上げ、急をむキ 1 ツの襟足に、 ようせい 悲鳴をあげて妖精が逃げこんだ。 「ナイヴァス ! 」 しんく くろせいれい 大声で名を呼ぶ者を、黒精霊は真紅の単眼で睨んだ。 「オレ、オ前、食ウ : ・ 「ナイヴァス ! 僕の話を : ・ けんめい カ 懸命にレイムは叫んだが、もとより話しあいなどできるような、高等な輩ではなかっ 授 きば だえき 恐ろしい牙の生えたロを開け、唾液をまき散らしながら、黒精霊ナイヴァス・トル ティーンはレイム目指して一直線に飛んだ。 あふ にら きり やから

2. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

204 レイムは慌てて、ルドウィックのもとに駆け寄る。心配して横にしやがみこんだレイム ゆが を見て、ルドウィックはどうにか顔を笑いの形に歪めた。 「自分は、なんとか、大丈夫です : : : 」 だぼく 打撲で全身がきりきりと痛むが、変になっているようではない。 ほかの者は、と首を動かすルドウィックの肩に、そこでじっとしていてくれと、レイム は手を置いて、腰をあげた。 遥か向こうで、震わせるように小さな砂山を動かし、銀色のものが持ち上がる。 「サミルさんー まどう 名を呼んで、レイムはサミルのところまで、一気に魔道で飛んだ。 近づいたレイムに、顔をあげないままサミルはロを開く。 「 : : : わたしは、魔道で、身を守りましたから : : : 、平気です。ほかの方は : : : ? 」 「キ 1 ッさんが、まだ : : : 。捜します」 砂を巻きあげないよう、着地せずにサミルに近づいたレイムは、高級魔道士であるサミ ルならば心配はいらないだろうと、そのまま、キーツを捜すために飛んだ。 レイムが十分に離れるまで待ってから、サミルは精も根も尽きはてたように、どさりと あお 砂の上に倒れ、蒼い顔で浅い呼吸をした。 はる ふる さが

3. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

で、小屋に背を向け、ひたすらにどこか遠くを睨んでいる。怒ったようにレイムを呼び捨 どく きげん てにして、小さく毒づいてから、キーツはずっと機嫌が悪い。何が原因で、キーツはいっ もくさっ たいどうしたのだろうと、ルドウィックは気になるのだが、レイムはそれをきれいに黙殺 しているし、サミルはまったく知らんぶりである。 じゃまもの 足手まといの邪魔者としか、キーツを認識していないサミルはともかく、レイムまでが 見て見ぬふりとあっては、気にはなってもルドウィックには、キーツにかける言葉が見つ つか しか からない。ただの旅芸人なのだから、気を遣って然るべきはキーツのほうであり、ルドウ めざわ ィックが気にするいわれはない。不機嫌な様子でいられて、目障りだと文句を言うこと きゅうてい も、宮廷兵士という身分のあるルドウィックならできるのだ。しかしなぜだか、ルドウ ィックにはそれができない。 「焦げるわよ」 ようせい 小屋の外に出てきたレイムについてきた妖精に、突然に耳の真横で声をかけられ、ル ドウィックは飛びあがらんばかりに驚いた。 きもっ 肝を潰したルドウィックに、何をやっているのだかと、呆れたように腰に手をあてた妖 精は鼻を鳴らし、レイムの肩の上に飛び戻る。 妖精に教えられたルドウィックは、慌てて肉を裏返す。ば 1 っとしていたあいだに、 なりいい具合に火が通っていたようだ。 にら あき

4. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

ようせい れた妖精は、ルドウィックと同じように遥か彼方に目をやり、とする。 「やだ、やだやだ ! 何なのよ、これつ はが 金切り声で叫んだ妖精に、キーツはぎりつと歯噛みする。 目の前で、きらきらと光の粉を散らしながら飛ぶ妖精に、レイムは幸ねる。 「ライラ、いったい何が起ころうとしているんだい ? 」 問われて、肩をいからせて興奮したまま、くるりと妖精がレイムに振り返った。 「皆が来るの ! わたしたち目指して、やってくる ! 「皆って誰だー どな さつばり要領を得ないと、キーツは妖精に怒鳴った。 じだんだ 何て物わかりが悪いのかと、地団駄を踏むように、妖精はじたばたして叫ぶ。 せいれい 「自然なるもの ! 精霊とか妖精よっー 妖精のカの加護をもらったルドウィックは、普通では聞こえない音を聞き分けられるよ うになっていたらしい。妖精や精霊は、世界じゅうの自然の一部であるため、その存在だ まどう けを切り離してしまうことはできない。魔道でいくら気を探っても、感知することはでき 力し 「何だかわかんないけど、すつごく怒ってる、皆、わたしたちを敵だと思っているみた はるかなた

5. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

せいりゅうおう 精龍王が絶対に止めてたはずなのに " " おかしいの ! 世界が変なのよ ! 精龍王の気 か、どこにも感じられないー が来てくれない : 泣きじゃくりながら叫ぶライラの一一 = ロ葉の意味は、精霊守も精龍王も知らないレイムには 理解できない。だが、何かが狂っているらしいことだけは、わかる からだ ひどく驚いた叫び声をあげ、キーツの身体が突然に高くあがった。 見えない手につまみあげられたかのようなキーツの姿に、声を追って顔をあげたレイム は目をむく。 「キーツさん ! 」 自分の身に何が起こったのかわからず、高くあがっていきながら、じたばたと暴れる ようせい キーツに、レイムを切り裂いたのと同じ力をもった妖精が襲いかかり、血がしぶいた。 ひしよういん 名を叫んだと同時に、レイムは飛翔印を用いて地を蹴っていた。一直線に飛んだレイ ムは、あっという間に十数箇所を切り裂かれたキーツの腕を掴まえる。 あやま 傷口を掴まれたキーツが、顔をしかめた。レイムは短く謝って、別の部分に触れる。 レイムが掴まえ、上昇するのを引き止めたキーツは、空の高みに身を置きながら、不思 かんしよう 議と落下する気配はなかった。しかし、風の精霊か何かが、干渉しているらしい様子は くる つか

6. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

182 まゆ びれい ふきんしん 緑の炎に包まれ、苦しげに眉を寄せた美麗なる青年の姿は、不謹慎であったが、ひどく 妖艶で、思わず息をむほど魅力的だ「た。長い睫毛を震わせて、レイムはよろめき倒 ひざ れるように、膝を折った。 助け起こしたいのはやまやまだが、レイムに止められているし、ああいう格好になるの えんりよ も、怖いので遠慮したい。い つまで続くものかと、息を止めるようにして見守っていた三 人の目の前で、たつぶりと五分も、レイムは緑色の炎に包まれていた。 ろうそく 緑色の炎は、ふっと蠑燭の火が風に揺れたような感じで、揺らいだかとみえた次の 、消失した。 カ尽きたように、レイムが砂の上に倒れる。 「レイム ! レイムレイム ! 大丈夫っ ようせい キーツの手の中から、妖精が姿を現し、レイム目がけて一直線に飛んだ。 駆け寄ったルドウィックが、砂に突っこむようにして倒れたレイムを抱き起こした。 「しつかりなさってください、レイム様ー 「レイム、レイムう : のぞ 妖精は泣き声で名を呼びながら、レイムの顔を覗きこむ。 精も根も尽きはてた感じで、ぐったりとルドウィックに抱かれて、大きく胸を上下させ て呼吸していたレイムは、薄く目を開ける。 かん 日 こわ

7. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

「コンスタンスさん ! 上空のコンスタンスを見上げたレイムの激しい声を耳にしながら、そのほかの者たち は、次にくるだろう大爆発を予測して、身構えた。 どな コンスタンスはレイムに怒鳴る。 「おどき ! 」 「嫌ですリ」 レイムが己の意志を曲げて従うことは、絶対にありえなかった。 まどう いり・よ′、 さばくしんかん さっきの爆発よりも、数段威力を増した攻撃魔道が、砂漠を震撼させて爆裂した。 ふところ ようせいっか 砂の上に伏せていたルドウィックもサミルも、妖精を掴んで懐に突っこんだキーツも、 凄まじい爆風に舞い上げられ、大量の砂と一緒に吹き飛ばされた。 もぐ 砂のかなり奥深くまで潜りこんだ、無数のフィギーラでさえ、砂漠をえぐるかの勢いで カ 巻き起こった爆風のため、掘り返されるようにして吹き飛ばされた。 授 を 砂に巻かれて打ちすえられ、息もできない状態に襲われたこのとき、キーツはとっさ 星 に、飛ぶことを選んでいた。妖精の力によって、飛ぶことができるようになっていたキー 网ツは、身体にかかるあらゆる負を軽減するため、爆風にのって、自分の意志で飛んだの すさ や おのれ いっしょ ばくれつ

8. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

136 た 椅子にかけて、レイムはやれやれと溜め息をつく。 「戻ってこられてよかったわよ」 ようせい レイムのほかに誰もいなくなり、姿を現した妖精が、レイムの前に飛びながら、腰に手 をあてた。レイムは視線を落とす。 「そうだね : ・・ : 」 せいまどうし 聖魔道士であると、気負っていたのだが、結局レイムは役にたてなかった。 おのれ 己の無力さを噛みしめて、しょんばりするレイムに、妖精はびつくりする。 「レイムが悪いわけじゃないわ ! 」 「うん : なぐさ ほまえ 慰めてくれてありがとうと、薄く微笑むレイムの顔の前で、妖精は飛ぶ。 「レイム、あれ、精魔道よ」 「精霊、魔道 ? しまたた 聞いたこともない魔道の名に、レイムは目を瞬く。妖精は大きくうなずいた。 「世界最古の魔道のひとつ。精霊守だけが使う魔道よ。さっきのあれには、精霊魔道士が 関係してるわ」 ( そうならば : ・・ : ) もり

9. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

自分たちばかりにかまっていないでと、ルドウィックに心配され、レイムは視線を落と 「そうですね : ・・ : 」 ほお うつむくレイムの頬に、ライラが小さな手をあてる。 「元気、出して。レイムは何も悪くないもの」 「ーー僕だって、悪いんだよ : ・ 人間なのだから 「そんなに自分を責めないでよ」 ーじゃん 「悲劇の主人公きどってんだから、 ほうっておけば。 かまうからいい気になるんだといわんばかりのキーツを、ライラが睨んだ。 「あんたみたいな人間に、レイムの気持ち、わかんないわよ ! 」 者「はっ ! そんなもの、わかりたくもないね」 えんりよ る こんな無神経で遠慮のない人間がいるから、レイムまで嫌な思いをするのだと、怒った をライラは、レイムの肩の上から飛んだ。 さっき 痛い目にあわせてやると、殺気だって飛んだライラに気づき、驚いたレイムは、ライラ の行き先に慌てて手を出す。突然手を出してきたレイムにびつくりし、身を退いたキ 1 ッ す。 にら

10. 星を授かる者 プラパ・ゼータ外伝 金色の魔道公子 5

218 ようせい 周りを、翅のある小さな妖精が、光の粉を振りまきながら舞い飛んだ。レイムに隠れてい じまん た妖精は、自慢するようにレイムの周りで飛ぶ。 うたげ にぎ せいれい 砂の夜は、精霊や妖精たちの宴で、華やかに賑わう しまたた からだ あおむらさきいろ キーツは青紫色になっている空に、はっと目を瞬いて、身体を起こした。いつの間 にか眠ってしまっていたらしい ルドウィックとサミルも、近くで横になって眠っていた。 ( 夢・・ : : 、見てたのか : 昨夜の、あれは : ・ 起き上がったキーツに気づき、レイムが振り返る。 「もう少し、・寝てたほうがいいですよ。日が高くなると、とても眠れたものじゃないで しようから」 声をかけられたキーツは、顔を向けてレイムを見る。 うすもや たてごとかか 薄靄の中、少し眠そうに目をこすっていたが、竪琴を抱えるレイムは、とても爽やかな 顔をしていた。あの妖精はに戻って、レイムの髪にくつついている。 「・ : : ・黒精霊は : 、つ 夢か現実なのか。夢なら笑われること覚悟で、砂に少し埋まりかけたバイオリンと弓を はね 0 はな かくご 0 さわ