瞬間移動 - みる会図書館


検索対象: 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜
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1. 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜

118 しようまじゅっし ( イスマイールは生の魔術師。で、あたしや、時の魔鳥 ) 「魔鳥にも、種類があるんですね ? 」 ( だから、時の魔術師に仕えてたんじゃないか ) 「じゃ、時の術とかもできるんですか ? 」 じくう ( ま、時空を超えるまではできないがね。あたしだって、瞬間移動くらいなら、むかしは : ・ ) ャヤは、ふいに一言葉を止める。 「・ : むかしは ? 」 ということは、年老いて、今は瞬間移動する力が消えてしまったということ ? だとしたら、魔術師を捜す力はどうなのだろう ? その力も衰えて、イスマイールの気配を感しることができないのかも知れないし、とした ら、はんと、つに、フリツツを捜すことかできるのだろ、つか ? 急に不安になってそんな目を向けたら、ヤヤは堂々と見て見ぬふりで話を戻してしまった。 ( ま、とにかく、あたしや時の魔鳥。他種の魔術師の気配なんざ感し取ったりしないのさ ) ャヤの一言うことを伝えたら、サイラムは黙ってうなずいた。 サイラムは知っていたのだ。知らなかったら、とっくにイスマイールを捜すようャヤに頼ん でいたはすだった。 ャヤの力を疑ったことを反省する和花の頭の上で、彼女が足を動かした。少し立ち止まって こ だま

2. 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜

のところ、部屋にとしこもりきりでしたし : ・。で、あなたの方はどうです ? だいぶ慣れたよ うに見えますが ? 」 とりは 「・ : そうかも。なんか、鳥肌も立ってないー : とは言っても、やつばり、クチバシは恐怖だけど : 「よかったです。では、紫の石、あるいは、時の亡者を捜す手立てを探りましよう」 かたひざ サイラムは、立てた片膝の上にゆったりと腕をもたせたまま、まぶたを閉した。 ふち ぞうげいろ ちやかっしよく さらさらの髪と同じ茶褐色のまっげが、象牙色の肌にきれいな三日月型の縁を作っている。 ・・何をしても、きれい = 一和花はうっとり見とれて、ハッと、こんな時にわたしのバカ ! と気づき、サイラムと同じ 師ように目をつぶって考えはじめた。 しゅご 魔ャヤの話では、ゾラーとグレコの対決は千年もむかしのことで、紫の石は、その時、守護が ゆくえし 紫持ち去ったきり行方知れずだという。 夜一方、時の亡者は瞬間移動で姿をくらましてしまった。彼も時の魔術師。さっきは瞬間移動 夜だったけど、その後、時空を超えたとも考えられなくはない。 いくら考えても、手がかりなんて、どちらもまるつきり浮かんでこなかった。 京 東が、サイラムの方は何か思いついたらしい 「一つ、手がかりになるものが :

3. 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜

「それで、あの占い師のおばあちゃん、フリツツを見た時すごく驚いてたのかなあ ? 何年も 経ってるのに、むかしのまんまだったとかって : ・」 ( まあ、知り合いが生きてたってことは、何百年もむかしのことしゃないってことさ。数年 か、あるいは数十年ってところか。こっちの世では長い時には違いないがね ) ャヤがクチバシをカチッとする。 「いずれにせよ占い師からファルカンと聞いてすぐに、出かけようとしたということですか ら、フリツツは早々にこちらに向かうつもりでしよう。・ : そして、〈移動の術〉で来るとした ら、姿を現すのは街である可能性が高いかも知れません」 「なんで ? 」 けつかい 「イスマイールの結界が弱まったようなので、他の魔術師たちにも結界を張るよう頼んだので みやこじゅう いた す。が、みなで力を寄せても、都中を張り巡らすまでには至らないと聞いています。効き目 にかかわらず、街にはほとんど届かないと : ・」 「そっか。でもどうやって捕まえるの ? フリツツは瞬間移動できるし : ・」 「ええ。そうさせないよう近くまでしのび寄って取り押さえればよいでしよう。が、ヤヤ、念 ふう のため、何かあの者の〈移動の術〉を封しる手立てはありますか ? 」 ( それならは、目をふさいでしまえばよいのです。が、このヤヤにお任せ下さい。フリツツご ときの魔術師ならば、封しるのは難なきことにございます ) カチッ。 まち まか

4. 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜

108 この状況では占い師のおばあさんが、ガーガー眠るフリツツに水をかせてたたぎ起こした としか考えられない。 そうしてきっと、フリツツはびしょ濡れになったマントを残し、瞬間移動したのだ。 ファルカンへと : 「消えて ! 」 和花はケープの記憶の中から抜け出し、今、見て来たことをサイラムに話した。 こうしている瞬間にも、フリツツはもう、ファルカンのどこかにいるに違いない 「でも、どうしよう ? フリツツ、マント脱いしやったから、都のどこに来たか、たしかめら れなくなっちゃったよ」 あたふたする和花を横目に、椅子の上に止まるヤヤがキリリとサイラムを向く。 ( あとは、私がフリツツを捜しましよう。お任せ下さいませ ) つな 「では、ヤヤを頼みの綱に、さっそく時の亡者を捜しに行きましよう」 りん サイラムが凜とうなずき、ヤヤを腕に呼ぶ。 : どうかフリツツを連れて来られますように : そして、《トピラ》が開きますように : 和花は、祖父の作ってくれたペンダントをギュッとにぎりしめた。

5. 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜

ねん 「念のためです」 : そう、念のため。サイラムは、キデルなんかに負けないー が、もしも、もしも、もしもの時は、ラウラの石像とともに《無限流》に落ちょ、つ。 ラウラをキデルの元に残すことだけは、どうしてもしたくないのだ。 和花がサイラムにうなすくと、後ろから、フリツツが声をかけた。 「しゃあな」 くちびる と、瞳を薄紫に染め、ニカッと唇を引き上げて、次の瞬間、姿を消す。 のそして : ・、すぐに、ホールの中から声を響かせた。 三「ゲッ、まじかよ」 「どうしたの ? 」 術 魔和花は急いで、風窓をのぞき、玄関ホールの中を見た。 おり 紫 フリツツは、檻の後ろにいるキデルから少し離れた所に立っている。一一人の間を隔てるもの 一は何もない。 千瞬間移動に失敗したのだ。やはり、まだ、カが回復してなかったのだろう。 もうじゃ 京「思か者、それはど時の亡者となりたいか ? いや、今度は : 東 キデルが突き出したのは、銀の石ー 紫の石と同し形で、また同様に、見たこともない美しい銀色を輝かせている。

6. 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜

200 フリツツはキデルに恐いほど真剣な声を飛ばした後、和花を通り越して、サイラムに目を向 「俺、今から、〈移動の術〉でキデルの背に回り込むわ。で、石を使えねえようにすっから、 あとは頼んだぜ」 「・ : わかりました」 と、うなすくのに間があったのは、サイラムも和花と同じ心配をして、でも、今の勢いで は、フリツツは何を言っても聞かないと考えたのかも知れなかった。 おさ それでも、和花は、やつばり不安が抑えられない。 ・ : 瞬間移動って・ : 。ちゃんと回復したの ? と心配な目を向けたら、フリツツはおどけたような笑みを浮かべ、すぐにホールに目を戻し てしまった。 「つつーか、どうなっても、元の世界に帰ってくれよな」 そんな別れの言葉みたいなことを言って風窓をのぞき、キデルの位置を最終確認する。 「和花、私が玄関ホールに入ったら、あなたは隠し扉から逃げて下さい」 サイラムの一言う隠し扉は、バラの花園の中央に開いた空門、 日ラウラの石像を置いたタイルの 地面に入り口を開く。それは地下通路につながって、高い白塀の外に出るのだという。 戸口の中に視線を戻していたサイラムが、応えを迷った和花にスッと目を向けた。

7. 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜

フリツツは金髪をバサッと振り上げ、力強く床を踏みしめた。 まっすぐ前を向いた顔に、きりりとかたい決意が浮かぶ。 サイラムの一一一一口う使命感のようなものかも知れない、と感じて和花はフリツツを見直した。 ) 、ごナしゃないんだね ? : 調子ししオ ( 「なんだよ ? 」 「なんでもない , とが 和花はフリツツの尖った目から視線をそらし、つい立の陰に移動したサイラムに習って、窓 のの外をのぞき見た。 はなぞの = 一背の高いバラがびっしり植わった真四角の花園には、赤い花が咲き乱れ、その周りを囲む白 いタイルの道には一一人の見張りの姿がある。 術 魔 この真四角の中庭は、サイコロ型の建物の内側をすつばりくりぬいたような空間にあたるら の 一和花がいたのは一一階。中庭を歩いていた見張りの一人は、窓から大きくせり出した石のバル 千コニーの下に入って見えなくなった。 ☆ 京 : だけど、これからどうなるの ? 東 フリツツが目を回してから占い師のおばあさんに水をかけられて目覚めるまで、さほど時間 剏は経ってなかったし、あれからすぐにファルカンに瞬間移動して来たから、本人が言うよう

8. 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜

四章女神の石像 こうしもよう ごうしゃ じようへき みやづか 宮仕えの人々の住む街は第一と第一一の城壁の間に、豪奢な家々が格子模様を広げるように建 ち並ぶ一帯だった。 さいしようてい ていたくがい の宰相邸は、その邸宅街のまん中辺りに位置すると言い、サイラムの寝室のバルコニーから 三目にす・ることはできない 「ちくしよう、俺、まん中へんに出たはずだぜ」 術 きんばっ 魔それなのに、さっきは宰相邸を見つけられす、邸宅街をうろうろしていたフリツツが、金髪 紫 をくしやくしやかきむしりながら瞳を薄紫に染め、移動の扉を呼び出した。 かっこう わか 一旅商人の格好を整え直した和花とサイラム、ヤヤを連れて瞬間移動したのは、バルコニーか 千らひと気がないのを確認できた邸宅街の路地の上。 東 京オレン→色の地面に伸びる三人と一羽の影は、さ「き邸宅街に」た時よりも、確実に長くな っている 時間が飛ぶように過ぎていくのを感しながら和花は肩にヤヤを止め、サイラムとフリツッと

9. 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜

この風景は、彼の着けたマントの見ているものだから、ごく近くにいるはずだった。 金髪とモスグリーンのマントを目印に視線を巡らせたら、それはすぐ背後にー おおかみ 金色の狼みたいな髪を風にそよがせた涼しげな横顔は、のん気にロ笛なんか吹いている。 ・ : あんたのせいで、元の世界に戻れないんしゃないー ほお 和花は、少年の頬にエイツとこぶしを突き出した。 ちゅう が、それも宙をかいたた ( すそ と同時に、少年が山積みのリンゴに手を伸ばした。マントの裾をつかんで、袋がわりにポイ ポイ投げ込んでいく。 おはさんがそれに気づいて怒声を響かせ、ダッと少年にかけ寄った。 とー うすむらさき 少年の青い瞳が、ゆらっと、薄紫に染まった。 ・瞬間移動しちゃう ! そう思った時にはスッと視界がまっ白になり、次の瞬間には、和花はもうさっきとは違う場 所に立っていた。 ろじ 両側に石の建物が迫るしめった感じの路地で、やせたのら大がうようよしている。 建物の上に、さっきと同じ巨大な石門が見えるから、青空市場からさほど離れた所ではない

10. 紫の魔術師と三つの石 : 東京 千夜一夜

「では、フリツツに〈移動の術〉を頼みましよう」 サイラムは、紫の石を持っ宰相が一人眠る寝室へ瞬間移動するという前提のもと、様々な状 さく 況を考えて策を立てた。 ひとみうすむらさき そうして打ち合わせが終わるや否や、フリツツは瞳を薄紫に染め、目前にトビラを開いた 和花の目に、そのトピラが少しねしれて見えるのは、息苦しいほどに熱い空気のせいだろう カ ? ・ 「よし、行くぞ ! 」 のフリツツが一声かけてトビラの中に入り、その後にヤヤを肩に止めた和花とサイラムがそっ 三と足を踏み入れた。宰相の寝室に出た時に、物音を立てないように : と ! 一瞬、まっ白な光に包まれた後、すぐに目の前が開けた。 魔三人が足をひそめて抜け出したのは、薄暗い部屋の中。 紫 みな一様に、サッと室内を見回す。 一人の気配はない。すぐに目に止まった寝台にも : 千寝台は、黒いカバーに覆われて、無機質にたたすんでいるだけなのだ。 じゅうたん 京部屋は教室ほどの広さで、床に敷きつめた絨毯も、片側の壁にかかる重そうな垂れ慕も、窓 たて ひょ 東 際に立つ日除けのつい立も、すべて黒。 だからだろう、窓の外は強烈な陽光が降り注いでいるのに、暗い感じがするのは : ・。 ぜんてい たまく