炎 - みる会図書館


検索対象: 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1
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1. 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1

竜舎を焦がし燃え盛っている炎よりも、矢のように素早く鮮やかに飛竜を捕らえた火炎の ごうしゃ ほうが、ひときわ豪奢な炎であったとレイムには見えた。 炎の飲んでいる温度が高い。 その確固たる 1 に 炎をり逃げ惑う男たちが必死の蹣もむなしく、あっけないほど簡単に燃え崩れている ではないか。 あしな かたまり 足萎えて、炎の塊となって倒れ伏す。 矼にできていた赤い雨の血溜まりが塊となった炎に焦がされる。 蒸発した血溜まりが瞬時にして水蒸気になった。 揺らめきたった赤い霧に周囲はもうもうと煙る。 ひるけは ) おびただしい血で濡れた場所にも、炎はまったく怯む気配もなかった。 まるで屑のように、ひとの体も剣も何もかも、炎に舐められ燃え尽きてゆく。 喚 まどう 招魔道による炎ではない。 女 このようなな炎を扱える『火』の魔道士を、レイムは知らない。 聖 けま、 しかもこの炎からは聖の魔道の気配も邪の気配も、全然感じられない。 魔道人格が臭わない こ

2. 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1

174 それなのに。 それを観察していられる自分に、気がついた。 ( もしかすると、もう死んでしまっているのかもしれない ) 恐ろしい疑惑に襲われ、シルヴィンはぎくりと顔をあげる。 ほうえ 炎に飲まれていない、深緑色の法衣が見えた。 纃の炎の色に染まる中に屹立する揺るぎない色。 一人の青年。 信じられないものを見る配撥ちで、シルヴィンは目をしばたたく。 第一印象で軟弱者られていた彼は、今シルヴィンの及びもっかない不思議を駆使し て、溿く炎と戦っていた。 目を凝らしてよく見ると、彼とシルヴィンの体を、薄い光の膜のような物が覆っている。 圧力を感じているのは、この光の保護膜が炎を受けているからだ。 成すもなく炎に巻かれ死に絶えていく者たちの中で、二人だけが無傷でいる。 まどう 場所そのものを区切って封陣とする魔道を、レイムはまだ知らなかった。 選出した特定のものに働きかける、規模として小さなそれを使えるだけだ。 微かに首を背けたによって、完全な直撃を避けていたことが幸運だった。 こ

3. 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1

第八章虜 纃の炎がの上で乱戦する者たちの上に降り注いだ。 たあい くつきよう 木の葉のように他愛なく、屈強な男たちの体が火をまとう。 石畳でさえ火を吹くほどの激しい火力に、炎の散った一帯が火の海となって燃えあがる。 健いの娘に群がり寄っていた男たちは、炎を被って燃え崩れた。 近くにいながら直撃を角れた者たちは、火炎渦巻くそこから、蜘蛛の子を散らすように逃 げ去る。 ・ハンは顔を覆った。 眼下で繰り広げられた光景に悲鳴をあげて、ファラ 喚 招ディーノは声をあげ、高らかに笑った。 女 ハンは、きっと睨みつける。 征服者たるに酔いしれるディーノを、ファラ・ 聖 たた 辛辣な口調でディーノに言葉を叩きつけた。 しんらっ とりこ にら

4. 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1

184 だ 0 しようもう くし まどう 大きな魔道を幾度も駆使しているために、老魔道師の消耗も激しい。落下する乙女を炎 から守りながら引き寄せての法陣に導くより、防護膜を使いお互いの身を炎から守 りながら自分が動いて受け止めることのほうが楽な行動だった。 こうみよう いかに高名な大魔道師エル・コレンティであっても、限界はある。 レイムとともに炎かられ、振り返って仇敵とするディーノを見あげたシルヴィンは。 ひりゅう 飛竜から飛び降りた乙女の姿に悲鳴をあげた。 きようがく 視線を追ったレイムも、死に急ぐかに見えるそれに驚愕する。 我を取り戻したディーノは色をなして腕を伸ばした。 飛竜の緒を引いた。 追いすがった。 全身の血が凍るかと思える恐怖を感じた。 自分以外の。 ただ一人の女が。 自ら命を投げ捨てようとしているのを阻止しようとした。 捕虜だからではなかった。 ほりよ おとめ

5. 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1

とびらかぎはじ ひとに許された領域を示す、固く閉ざされていた扉の鍵が弾け散った。 とめどもなく体の淵を通じて溢れくる力を感じた。 魔道というこの世で最大の不思議が、レイムという一人の男を孃として形を成した。 レイムの足元に倒れこんだシルヴィンは。 たまぎ 腕を突いて顔を起こし、迫りくる火炎を目にして魂消る悲鳴をあげた。 綿の袋に身を隠して、浅い火傷を負いながら、同じ炎かられてきたばかりだ。 あの火炎がどのくらい凄まじい威力を持っているのかは、熟知している。 炎の直撃を受けた者のれようもない末路を、間近く見て知っている。 そむ 思わず顔を背けてうつむいたシルヴィンに、吹きつけられる火炎の圧力が襲いかかった。 骨をも残さず身を焦がす炎を浴びて、シルヴィンたちの周囲にいた男たちが火柱となって 燃えあがった。火を吹き、音を立てながら崩れ落ちた。 喚 かたまり 招ばたばたと、炭化し、それがなんであったのか定かでなくなった塊が地に落ちた。 女 固を握りしめ、下を向いていたシルヴィン。 聖 彼女は、燃え崩れるものを感じ、いまだに優雅に恐怖している自分に不意に気がついた。 かえんじごくようそうてい 周囲はあまねく火の海となり、火炎地獄の様相を呈している。

6. 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1

飛竜の吐く火炎はあらゆる物を焼きつくす。 唯一の例外である、石綿を除いて。 石綿の袋の中で息を殺したシルヴィンを残し、そこにあったものは間近い火炎放射をまと もに食らい、一瞬にして燃えあがった。 選り抜きの飛竜の吐く火炎である。 金属も人体も石も仲間の飛竜も、何もひとたまりもなかった。 うと燃え盛る炎の齣敲の中、・を炎で射抜き、ディーノは楽々と飛竜を地って、 うずま 火炎渦巻く竜舎を後にした。 シルヴィンは、それを確かめ、ある程度の物が燃え崩れるのを待った。 待ってから。 確かめておいた出入り口のほうに転がった。 ほんろう いもむし 翻弄される芋虫のように進んだ。 喚 招あの飛竜の火炎を受けたなら、木でできた単純な作りの飼料樽なんかは、簡単に燃えて、 聖跡形も残さずなくなってしまうはずだ。 袋の中からは周囲がどうなっているのか、まったく見えない。 音を頼りに行動するしかない。

7. 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1

124 戸惑うこともなく雲に突っ走ることなど、レイムにはできない。 だから。 レイムは今にも泣きだしそうに表情をめ、ンルヴィンを振り返った。 シルヴィンは魔道の径にいたレイムの存在など夢にも知らず、真新しい炎渦巻くの中 を矢のように駆けていく。 生まれて初めて聖地にくからと、精いつばいのおをしたいと母親に頼んで選んでも が ) とう らった服は、外套のあいだから飛び入った火の粉で、あちこち小さく焼けていた。炎を吹く 柱の横の通り際に火にかすめられ、きちんと切り揃えたばかりの毛先も焦げていた。自慢の 美しい髪だったが、そんなものにかまけている場合ではなかった。 上空を行くディーノの姿だけをひたと睨みえ、必死に追いかけるシルヴィン。 シルヴィンを振り返ったレイム。 シルヴィンを無分別だと判断できる分だけ、レイムのほうが冷静に状況に対処していた。 怒りなどという激しい熱情に突き動かされていないだけ、視野が広かった。 広かったからこそ。 シルヴィンが、ディーノが目指す祭事場の方角、広がりいく火の手を見つけて何ごとかあ ものみ ぼうと らんと群がり寄る物見高い暴徒たちの姿を発見することができた。 こ

8. 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1

122 シルヴィンは必死で燃え盛る建物からの脱出を試みた。 転がり、あるいは這い進む彼女を、する 1 叫のや柱などの重い構築物が襲わな かったのは、奇跡にも近い幸運だった。 通りのはずれまで転がりでたシルヴィンは、そこでやっと袋のロを握っていた手を解い ろう きつく握りしめていた手は、かちかちにこわばり、蠑のように白くなっていた。 そうっとき見た外の様子は、シルヴィンの想像していたものよりも、数段凄惨だった。 火を避けるなどとてもできない火炎地獄だ。 が ) とう シルヴィンは袋の内側から繊維に沿って剣の刃を当て、袋を外套となるように切り裂い 靴底に防火耐熱処理をしておくことは、火山地帯に近い場所に居を構える彼女たちの種族 の常識となっている。炎に熱く焦げる地面に触れる時間を短くするように、素早く走れば足 こころもと はどうにか問題ないだろうが、頭や服が心許ないのだ。 間に合わせだがな身支度はすぐに整った。 瞳に復讐の炎を燃えあがらせたシルヴィンは、彼女から兄と同胞たちを奪い去った を追った。

9. 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1

153 炎か 早 く 防か あか に息 移 。だ 突時 を、ノ、 い飲 で相 し 弾手 た んた 大こ た金 シ ル た剣 ウ。 ル用 イ張ヴ意 し竜 ン て使 を 狙 シ腕 、火 に剣 つ 散で た なた 切レ擱は 、ム で女 険オ を察 聖女の招喚 素横あ さ、 ま よ く つ ら た 修飛 す行竜 にの よロ りか れ研とら ぎ 澄すち お刃い打 っ と 動勢をす遅 だ を 御 る め 0 こ しゝ た り し も 耳二 側甚が に を と っ て い の の い け 火 花 を 眼 月リ ら せ カゞ は と 顔 を 上 げ て 上 空 を 望 ん だ ち か る の を 同 じ く 受 け レ は 飛 せ カゞ ロ土 い フ ア フ ン が 然 の 声・ に 驚 き わ ず か に イ ノ の 姿 勢 た れ 崩 の同火 に 起 っ た シ イ ン の レ イ ム ま さ 、れ向 た が に ヴ降迸与 り か がか間 る 危 し だ ら に か い がほ るし 瞬 だ つ 。切 り 声 で 叫 ん だ 刃ぃヴ はばイ 空くン をがが つイ たム 。の 足 兀 に 倒 れ む ルを嫣 : シ身炎 套与ノレ は 今 引 き よ せ た ん彼同 の に い イ ン じ く 上顔を な上知 げ

10. 聖女の召喚 プラパ・ゼータ 1

聖光に照らされて。 ′」う′」う うずま 轟々と渦巻いていた火の海が消失した。 叫争いを続けている者たちの動きが凍てついた。 ほんの一瞬の出来事。 。た聖なる。 光の消失したその後には。 燃え盛る炎は悪夢ででもあったかのようになくなっていた。 争っていた者たちは戦意と意識を失ってその場に頽れた。 成り行きをただ見守っていた女王たちは、瞬時にして起こった奇跡を前に驚くばかりであ 喚 ろうまどうし 招偉大なる老魔道師エル・コレンティですら、何が起こったのか、即座に理解できなかっ 女 すべての奇跡の 1 として。