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検索対象: ありさの「虐待日記」
100件見つかりました。

1. ありさの「虐待日記」

投稿者はさんという。さんが触れているのは、「掲示板ーがまるで関係 のない書き込みでいつばいになっている状況のことだ。「虐待」について真剣に考えよ うとしているひとにとって、他人への中傷や非難の言葉で溢れかえっている状態の「掲 示板は、おそらくひどくショックだったに違いない。この投稿者は、だから『あり さの虐待日記』だけを残しておいたらどうか、と提案している。そうして、虐待の問 題を考える手がかりにしてはど、つか、と 二〇〇〇年一月一四日、山田氏のミラーサイトへの書き込みは一二〇〇を超えた。 そして、訪れたひとの数を示す力ウントは二万を超えている・この数字が何を意味し ているのか、じっくり考えてみる必要があるだろう。『ありさの虐待日記』をめぐる物 語は、まだ始まったばかりだ。

2. ありさの「虐待日記」

〈罪悪感を持っ〉 ひとが多いからです。でも、それは自分自身を受け入れられないという困難のためで す。だから、自己肯定感を持ってもらうために、あなたは、罪悪感を払拭する闘いに 乗り出したのだと思うのですが、あなたの言葉の真意が伝わる前に世間は蓋をしてし まいました。 あなたの本当にいいたかったことに耳を傾けたい。そうして、虐待について考えて くれるひとみんなに、あなたの真意を伝えたいと思うのです》 おおよそ、こういった内容である なぜ虐待してしまうのか、なぜ自分で分かっていながら虐待を止められないのか、 虐待されて育った子どもはどのようにすれば救えるのか、社会はこうした親たちのた めに何ができるのか、虐待を防ぐ方法はないのか、虐待に気づいたとき社会は何をす じればよいのか : 『ありさの虐待日記』を軸に考えてみた。 ふっしよく ふた

3. ありさの「虐待日記」

150 それを楽しんでいるかのような印象を与えたことも、また、否めないのではないか。 さらに悪いことには、そうした論調が、虐待してしまうことで苦しんでいる親たち をひどく傷つけ、苦しめた。その自覚さえマスコミにはない。 「おそらく、亜里沙さんは辛かったと思います。『虐待について自分の考えていること を発一言すれば、世間はよってたかって攻撃してくるだろう』という彼女の思いは深ま ったと思います。やつばりね、という気持ちでしようね。ますます、孤立感を強めて いったと思いますよ」 佐藤心理士の危惧は、いまだに解消されていない だれかが、ちょっと待って、よく考えてみよう、といえば、亜里沙さんも救われる 可能性があったかもしれないのに。 砂粒のピラミッド 佐藤心理士の声は、低く、温かく耳に快い。ゆっくりした話し方をする。きっと相 談者は落ち着いてじっくり話を聞いてもらえると感じることだろう。大学生と高校生

4. ありさの「虐待日記」

226 書いてきたことがある 《実はありささん、例のサイトを作った直後 ? または直前あたりから「王ロバ」に 出入りしていました。 その時のログは残って無いんですけど、 あ『ありさ』 * 子供を愛せないのは変 ? い『いかいか』 * あなたはどうしたいの ? アタシは愛せてるかわからないけど それなりに愛情を伝えようって思ってるよ というようなスレッド ( やりとり ) かでき、最後に 「じゃあ私は子供がキライだってメッセージを伝えて行く」って書き込み ( 未公開 ) があって、どーも怪しいと思い、彼女のに行って見たら あんなだった訳です。それでスレッドごと削除しました》 全くのボランティアとして、いかいかさんは虐待について考えるホームペ 1 ジ「王

5. ありさの「虐待日記」

102 受けた女性たちがどれほど苦しんで生きてこなければならなかったか、それを思いや る感性がこの国の為政者にはない。 肥田議員の言葉を最後に引こう。 「虐待の問題は、子どもの側から見なければならないんですね。大人の側からいわせ れば″しつけ〃だと考えていることだって、子どもにとっては虐待に当たることがあ るんです。〃しつけ〃が子どもに不安や脅威を与えているとすれば、そのこと自体が虐 待であることを、みんなに理解してもらわなければならない。だから、虐待防止法は 子どもの側から見たものでなければならないんです」

6. ありさの「虐待日記」

一カ月、『ありさの虐待日記』を持って歩いた。たくさんのひとに会った。ひとりひ とりが亜里沙さんのために考えてくれた。児童相談所職員、厚生省児童福祉専門官、 、ト児科医、セラピスト : 国会議員、弁護士、臨床心理士、ソーシャルワーカ 1 たくさんのひとが子どもへの虐待を防ごうと努力している。虐待された子どもを救お うと苦しんでいる。虐待してしまう母親や父親を救おうとして悩んでいる。そのこと を亜里沙さんに伝えたい。 『ありさの虐待日記』と題したミラーサイトに投書した。 《大西亜里沙様 ム ホ 日毎に寒くなってきました。 突然のメールで失礼します。小学館文庫の企画をしています、白石と申します。 一〇月ニ五日から新聞などのマスコミで大騒ぎになってしまった『ありさの虐待日ま 記』について、本を出せないかと考えています あのような順末になって、はジオシティーズの手で閉鎖されてしまって、あな内 たのいいたかったことの大部分は伝わらす、「圧殺」されてしまったのではないでしょ 一ニ月一四日

7. ありさの「虐待日記」

妻の状能がよくないことに気づいていても、夫が何も手を差し伸べないのであれば、 それは妻に対する虐待、一種のネグレクトだとはいえないだろうか 空っぽの自己 「私が一番最初に担当したケ 1 スは、子どもを虐待してしまった育児ノイロ 1 ゼのお 母さんでした。それで、子どもを保育所に入れてお母さんがパ 1 トで働き始めたら、 力すごく変わったんですね。働くことで自己実現を手にできた。もちろん働くことがス トレスになるひともいますので、一概にはいえないのだけれど、何かをしてみれば何 ワ かが変わってよくなるかもしれないんです。自分の生活を変えることが、虐待から抜 シ け出すチャンスになるかもしれませんしね」 ただ、亜里沙さんの求めている自己、実現したい自己が、『ありさの虐待日記』から 七は見えてこない、と法主任ソーシャルワーカーは考える 第 大手生保の総合職、不動産会社の取引業務という「仕事の名前」は書いてあるが、 亜里沙さんがやりたかったのがそういう「会社員ーであるのかどうか。《経済的に独立

8. ありさの「虐待日記」

194 親は、書いてある症状に思い当たることがあれば、「大変な病気ではないかーと慌てて しまうだろう。初めての子育てで精一杯の親は、とかく大げさに考えがちだ。だから、 なのだろ、つと思、つ 少子化が進んでくると、子育ての経験がない親が増える。親自身に兄弟姉妹が少な いから、小さなフニヤフニヤした赤ちゃんに触ったこともない。知らないから恐怖が 掻きたてられる。 最初からべテランの母親はいない。それは、大昔から変わらない。だが、昔はおば あちゃんやおばさんが一緒だった。近所にはお節介なおばさんもいた。そういうひと たす が、よってたかって子育てを援けてくれたものだ。ところが、現在はほとんどの母親 がたったひとりで、孤立して子育てをしている。だれにも不安や心配や悩みを聞いて もらえない。自分の子育てが「正しいか否か」相談できない。そんな育児環境の変化 が、子育て不安症候群とでもいえそうな、家族の機能不全に表れているといえまいか ひたい たとえば、夜中に熱が出る。額に触ればひどく熱い。赤ちゃんは火がついたように 泣く。どこか悪いに違いない。泣いて、ミルクを吐く。育児書には恐ろしい病気がた くさん書いてあるが、子どもの病気の理由は判断しかねる。疲れている夫はなかなか 起きない。母親のパニックは募る。だから、救急外来に飛び込んでしまう。眠くて不

9. ありさの「虐待日記」

171 第七章ソシャルワーカー があり、虐待の問題はこのとき既におおっぴらに語られ始めていた。 「あの本を読んだとき、ああ、新しい告白のスタイルなのかな、と思いましたね。あ の本の場合は、投書という、やはり匿名が保障される形式でしたね。もしかしたら、 インターネットは、そのもっと手軽な形態なのかもしれませんねー たしかにインターネットなら、夜中でも昼間でも好き勝手なときに書けるし、電話 をするには気が重い、相談に出かけるには遠すぎる、というときに気楽に使える道具 なのだ。 ただ、インターネットの場合は、コントロールを、つまくできるのかど、つかか心配た、 と法主任はいう。インターネットでの相談のあとで、もう少し人間的な触れ合いを求 める方向に進めればいいのだが、とソーシャルワーカーは考えている。 「インターネットが、虐待相談の入り口になれれば有効でしようね。とくにプライド 一や抵抗感があって、なかなか病院や児童相談所の窓口に行くことができないというひ とにとっては」

10. ありさの「虐待日記」

亜里沙さんへの呼ひかけ そうは思う。だが、なんとか本人に連絡して、真意を確認しようと考え、無駄かも しれないとは思いながら『ありさの虐待日記』のミラ 1 サイトに書き込みをした。激 しい「嵐 / 荒らし」が横行しているホームページの掲示板で、そのような呼びかけを することにどれだけの効果があるのかは全く分からない。だが、亜里沙さんがこうし た掲示板を気にしている可能性はゼロとはいえない。しかも、この掲示板には現在も 多くの書き込みが続いている。もしも亜里沙さんが自分の主張に対して幾分かの心残 理りを感じていたとしたら、ひょっとするとこの掲示板への書き込みを読んでくれるか 床もしれないと思ったのだ。 臨 章 この書き込みに対して、掲示板上でかなりの反発があった。せつかくみんなで楽し 第 く傷つけあって遊んでいたのに、真面目な顔をした変なャツが入ってきて邪魔しやが った、と思ったひともいたに違いない。なかには「を送りつけてやれ」など