41 ェデン ただひとり 剣精の心臓をつかみ、この世に聖剣をもたらすことを許されるのは、剣精に選ばれた唯一人 の聖剣士のみ。 帰還せよ。 光へ。 スザクの手がユリカの胸に吸い込まれてゆくように見えた。 いや、まさにその通りのことが実際に行われている。 たいく ュリカの華奢な体驅はそのまま剣を収める鞘であり、剣精の許しを得た聖剣士はその鞘から 一本の偉大なる剣を引き出すことができるのである。 一瞬ののち。 エデン 光り輝く聖剣がスザクの手の中に在った。 「チヒロー ヒメは無事だ ! おまえを待っている ! ここは俺たちにまかせて、その子たち を連れて早く逃げろ ! 」 「うんっ ! あ、ユリカは ? 」 スザクの足もとで動けなくなっている少女の頼りない姿に、チヒロはわかっていながらつい 訊いてしまう。スザクがニッと笑って答えた。 「彼女は俺の剣精だそー さや
81 ェデン 同年代のメン・ハーに助けられることが恥だとは思いもしない。そういうところにプライドを かけたりはしない質らしい そうしている間も、ヒメはスザクの肩に手を回したままだ。 これもまたヒメの質だった。スキンシップによって感情の高ぶりを抑えるのだ。 この猫のような性質はヒメの特徴でもある。 ひとな 開放された外見と人馴れしたイメージがヒメの本質ではないことを、リュウトは早くから見 抜いていた。 生まれてすぐ実の両親を亡くしたヒメを引き取ったのは、二人のゲイだった。 むじゅん 二人の父親のもとで育ったヒメにとって、いわれなき人生の矛盾は幼い頃からつぎあい慣れ た影法師のようなもので、もはや自分からは切っても切り離せないものなのであった。 であ 出逢った頃のヒメが、他人に愛想よく接しながら、同時にどれほどの防波堤を自分の周囲に 張り巡らせていたか、あっさり指摘したのはリュウトだけだった。 きれい いちず リュウトはこの、男にしては綺麗な顔をした、純粋で一途な仲間がとても好きなのだった。 そしてまた、。 とうやらこの金髪の少年のほうでもリュウトは特別な存在である。 「ヒメ、おまえの聖剣だ。早くチヒロに返してやってくれ。チヒロ、貸してくれてありがと う。いい聖剣だな。チヒロらしい力を感じたよ」 エデン さや たた ヒメに光の聖剣を手渡しながら、リュウトは鞘であるチヒロに向かってその力を讃える。 タチ おさ
232 心を破ってあふれだす涙。あのあふれる感じがすごく好き。 であ 使い古された言葉かもしんないけど、出逢いは奇跡。 アダムはイヴに出逢ってニンゲンになるのです。そしてエデン追放。 幸せは一瞬。 でも愛は永遠。 私も行けるとこまで行ってみよーと思います。 この文庫の新シリーズと並行して、雑誌コバルトではビュア。ヒ = アハートがテーマソングな 『ラブ D ュー』の新連載が始まってます。 その名も『ラブ D ュー初恋レポリーション』 エデンとはまったく違ったティストで ( たぶん漢字も少ない : •) ビュアラブポンバーしてる ので、こちらも機会があって楽しんでいただけるとうれしーです。 さて、夜もふけてまいりました。 みつげつ リュウトとカナン。ふたりの蜜月は果たしてあるのかないのか。 来月また、新宿でお逢いしましよう・ : ) 二〇〇一年八月 しんじゅく 花衣沙久羅
228 ーロミオとジュリエット が書きたかった。 でも蓋を開けてみたらなんか、 " 美女と野獣。だ 0 た か いさくら こんにちは、花衣沙久羅です。 エデンの幕開けです。なんてたって創世記 ! 第一巻ー なのにキスシーンも x x シーンもイツツッコも入ってません ! ( 舐めてるケド ) 花衣沙久羅、史上最大の不覚 ! 今まで花衣が書いてきた本の中でキスシーンが一回も入ってない本って、はたして存在した でしょーか ? ・ ? ・ おお、ないー ないではありませんかー こっ、これこそ創世記 ! まさに新しい大型。ヒュアラヴロマンスの創まりでありますー : ってふざけてる場合じゃありませんね。 すいません、今めちやめちやスケジュール詰まっててハイなんです。 ふた あどか医、 な
エレメント 最強の闇の剣精か、最強の光の聖剣士と、その持てる無幻力を競う。 エレメント ふたりの肉体はすでに地上の制限を解かれ、光と闇の無幻力の中で最大限の力を発揮する。 戦士たちは都庁第一本庁舎の一一本の対立する壁を驚異的なジャンプをくり返しながら上昇 し、やがて屋上へとたどり着いた。 ぶんき 二本に分岐したそれそれの塔の上に立ち、それそれの聖剣を構えて相手をにらみつける。 エレメント ふたりの無幻力は互角だった。 アダム しかし屋上には他にも闇の聖剣士が待機していた上、リュウトの光の聖剣は借り物で、本来 エデン の自分のパワ 1 を発揮できる聖剣ではない。 ン 命運を分けるとすれば、その事実が起因するだろうことはリュウトにもわかっていた。 デ決断を下さなければならない。 工 自分の頭の中に逃げるという単語がひとつもないのは、こういうときにはちょっと不便か な、と思ったのが最後だった。 「望むところよ ! 」
224 激しい動揺を示したカナンにはしかし、リュウトの声は届かなかった。 青い翅がカナンの体を浮かし、天井のマンホールへと急上昇させてゆく。 エレメント 闇の無幻力によって開かれたマンホールのすき間から、朝日がひと筋、恐るべき勢いで差し 込んできた。 イヴ 闇の剣精の体はまるで罪の雷光のごとくに太陽の光に貫かれ、飛翔する力を失う。 「ああッ ! 」 「カナン ! カナ どさりと大きな音を立てて落下してきたのは、かの野獣の巨体だった。 真っ黒な体毛がカナンの全身を被っている。 「カナンっ ! しつかりしろ ! カナンー かす 巨大な下水トンネルの中をリュウト - の掠れた声が響き渡る。 地上は光に満ちあふれ、人々は夜の闇を忘れ去ってゆく。 光と闇のエデン。 それは青く透きとおったカナーンの地に約東されている。 自分が大いなる謎の渦に巻き込まれようとしていることを、リュウトはこの時まだ知らずに いたのだった。 おお つらぬ ひしよう
230 リーダーなのでみんなの前じやカッコつけなきゃいけないし、スザクみたいにラヴ全開の人 ふよう もいるから期待を裏切っちゃいけないし、メイハー含めて扶養家族盛りだくさんで頼られまく りだし、ああ、なんかとっても気の毒な星の下に生まれてる人だ。 そんなにタイへンなのに、何を好きこのんでまたカナンみたいなメンドクサイ相手を助けて しまうんだか。その上なんだかフクザッになっかれて。 ながせりゅうと やつばり気の毒な人です。永瀬龍斗。 でも男はメンドクサイ相手を好きになるものなのです。それでハッピーラッキーなのです。 そういう習性の生ぎ物だから。 で、この世でもっともメンドクサイ相手と最果てまで堕ちてゆく、と。 次の巻はそんなかんじです ) ( どんなかんじだっ ? •) この次の巻と雑誌の原稿のおかげサマで現在マジ夜も眠れません。死ぬ。うきー と一行だけグチらせてもらいましたが、幸せは幸せです。書いてりやマイラヴポイハ エデン次巻はなんと来月 ! ソッコー出ますー そこではキスシーンも x x シーンもついでに x x x もあるにちがいないっ ! ( ほんとか卩 ) き、期待してて・ : ください : 。 ( あえてコメントは避ける花衣 ) なんか今ふと気づいたんですが、このページカタカナ多いですねー
でもビュアラヴロマンスってのはウソではありません。本気です。純愛です。 ″ロミ & ジュリーにも″ビューティ & ビースト〃にも、花衣の究極の好みと言っていい純愛の 原型が在るわけですが、このエデンもそういう愛の究極のカタチってナンだっけ ? って自分 に問うところから書き始めました。 愛の裏には憎しみが在ります。愛と憎しみは表裏一体、ワンセット。 書いているあいだじゅう、この感覚が離れてくれなくて困ってました。 困ってたというか、苦しいんです。愛してるから憎んでしまうとか、愛してるのに憎まなく ちゃいけない現実が。 ひとみ 愛してるから殺すでしよう。迷いもなく、ただの相手の瞳を見つめながら。 そして食べちゃう。 食べるって行為は色つぼいです。究極の愛情表現だとすら思ってます。 きばちめいしよう カナンになら食べられたい ! 黒もじゃの怪物の顔でいーんです。牙で致命傷にならないと ころから引き裂かれてじわじわ殺されてしまうのです。 ( う、やつば花衣オカシイ ? ウウ•) カナンは・ : とてもとても哀れな人なのですが ( 人なんですよー、漢字の名前もあるんです ) となんかこの巻ではなんも考えてませんね。次の巻ではたぶん、もっとなんも考えてくれないで あ しよう ( 笑 ) 。でも無敵です。夜は無敵に美人で、昼は無敵に怪物。 ( ぷ ) リュウトはもっともっと哀れな人ですが、この人は考える人なのでタイへンです。 きゅ、つきよく
196 ひるがえ いったん言い出せば意見を翻すリュウトではない。 スザクは黙ってうなずき、リウトはすぐさまヒメを振り返って言った。 イヴ 「おいヒメ、剣精たちはぜったい西にやるんじゃねえぞ。やつら、東を集中攻撃してやがる。 俺たちを西に集める罠だろうが、そう簡単にいくかよ。こっちの剣精は一人も渡さねえそー エデン リュウトが最年少の仲間から借りた光の聖剣をつかんで立ち上がる。 アダム 「聖剣士たちは全員チームに分散しながら西に移動しろ ! やつらが誘うなら乗ってやるー 俺たちをパーティに招待しちまったこと、死ぬほど後悔させてやるぜ ! 行くそー 「お手柄だな、カナンどの」 横に立たせた女の胸から一一本目の聖剣を取り出しながら、グレイ将軍が言った。 この闇の将軍は自分の聖剣を使い捨てにする。 エレメント エレメント より新鮮で強い無幻力を得るためだったが、そのために闇の無幻力を失った状態で放置され けねん た闇の剣精がどういう運命をたどるかは、彼の懸念するところではない。 えさ 飢えた他の剣精たちの餌になろうと、光の聖剣士に見つかって斬られようと、ダグラス・グ レイの心を動かす事物はそこにはなかった。 わな
剏もう一度自分に言い聞かせて、リ = ウトはナスカを見上げた。 ゅうび 真っ赤なタ陽が、飛行する鷹の優美な姿をこの上もなく鮮やかに染め上げている。 しらは 彼女はひとつのマンホールに白羽の矢を立てると、それを目指してサアッと急降下した。 おうめ 青梅街道から一本奥に入ったその細い道路は、ちょうど人通りが絶えたところだった。 「そこか。オッケー、ナスカ。誰か来ねえか見張っててくれ」 ふた エレメント 聖剣の先から光の無幻力を発射して、重たいマンホールの蓋を持ち上げる。 足掛け金物と呼ばれるポリプロビレン被覆の昇降梯子を下り、地下の下水道施設へとたどり 中は真っ暗だった。 にお 真新しい金属の匂いがつんと鼻を突いてくる。 光の聖剣の持ち手を強くつかむと、光量が増し、周囲を見渡せるようになった。 「うつへ、カッキー」 大小のパイプを組んで巨大なアーチを作っているその空間に立って、リュウトがビュウとロ 笛を鳴らす。 「未来型タイムトンネルみてえじゃん。気に入ったぜ。今度からここで寝よっと」 ダクタイルセグメントによる大口径の下水道トンネルである。 上下横幅共に広く、一一階建ての家が一軒すっぽり入りそうな大きさだった。 エデン あざ