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検索対象: エデン : 少年たちの創世紀
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1. エデン : 少年たちの創世紀

208 落ちる 闇の聖剣がリュウトの光の聖剣を圧倒し、リュウトは塔の端でかろうじて自分の体を支えて いた足を滑らせたことを知る。 敵の長い髪が上空に舞い上がり、細い月の面を隠すのがわかる。 鷹の広げた翼が一瞬、目の端に映る。 ナスカは闇の結界には入れない。あれは結界の外側の光景だ。 リュウトの体は傾き、その手から光の聖剣が離れてゆく。 リュウトの視界の中で、すべてはゆっくりとスローモーションの速度で流れていった。 ナスカ リュウトの体が先に相手の塔へと移動していた。 え

2. エデン : 少年たちの創世紀

イヴ 「貴様はすでにニューヨークにおいて闇の剣精を得ている。この新宿にも愛人が欲しかったの かどちが だとしたらお門違いだったな。私に食われぬうちに去るがいい」 まず 「フ・ : フ、闇の者など食っても不味かろう。むろん貴方に食われるなら本望だが、まあそうも エデン エレメントはげ ゆくまい。貴方の無幻力は烈しすぎる。これでは俺も動けない。貴方のほうから聖剣を退いて くだされば、すごすごと退場できるが」 グレイ将軍が言い終わるか終わらないかのうちに、カナンが聖剣の構えをスッと解く。 たくばっ そのあまりのさりげなさに、グレイ将軍はまたもや相手の卓抜した技量を思い知らされ、あ ぜんとなった。 ( だがそれもここまで。男の身とはいえ、しよせん貴方は剣精。戦いには向かない方だ ) カナンが聖剣を引き下げた一瞬の隙をついて ( ついたつもりだった ) 、グレイ将軍がカナン の体に体当たりを食らわせる。 相手よりは幅のある自分の体驅の下に押さえ込み、カナンの動きを封じる予定であった。 、刀 次の瞬間、グレイ将軍は自分の首が噛み裂かれ、人間としての肉体に致命傷を負わされたこ とを知ることになる。 「カナンどの : 首筋と口から大量の血を噴き、ダグラス・グレイの大きな体が倒れてゆく。 ヾ、 0 たいく

3. エデン : 少年たちの創世紀

ただよ 一種独特の浮世離れした存在感を漂わせるスザクの立ち姿は、デザイナーがもくろんだ軍人 ティストを十分すぎるほど引き出していた。 「礼を言うそ、チヒロ。おかげで俺はようやく自分の聖剣で戦える」 アダム そう言うと、スザクは襲いかかってきた闇の聖剣士たちの攻撃を鮮やかな宙返りでかわし て、自分の剣精の元へと駆け出した。 「ユリカ ! 」 スザクの長い腕がユリカの細い体を横抱きにすくい取る。 ュリカの体はスザクの体の線に沿うようにして柔らかく弓なりにのけぞり、ふたりは目と目 を見交わした。 やっと迎えに来てくれた。 ュリカの目は柔らかくとろけてゆく。 ほんのわずかな時間に心が透きとおって、つながる。 光る風が起こる。 ふたりの周囲だけ、奇跡のように闇が晴れてゆくのをチヒロは見守った。 イヴ 聖剣士は剣精に。 イヴァダム 剣精は聖剣士に。

4. エデン : 少年たちの創世紀

33 ェデン 足の悪いユリカの体を横で支えることができたからだ。 チビのくせに太くてぼっちやりした自分のキュー。ヒー人形体型が男の子たちのからかいの種 になっているのは知っていたし、ダイエットメニューの情報は誰よりも早くキャッチしている 自信もある。だが、それも案外必要なかったかもしれないと今なら思えた。 チヒロは人の役に立っことが何よりも好きだった。ついでに美少女も大好きだ。 きれい イヴ ( ほんと、ユリカってば、こんなときでもめちゃくちゃ綺麗。さっすがサ。フリーダーの剣精っ てだけあるよねー ) わたらせゆりか ュリカ 渡瀬百合花、一七歳。 白くて薄い素材のワンビースがその華奢でかぼそい体にひらひらとまとわりついて、名前の ようせい とおり百合の妖精のようだとチヒロは思う。 ュリカのような儚げな美少女の役に立てるなら、このチビッケな体もそう悪くはない。 チヒロはユリカの青白い顔を見上げて、ひそひそとささやいた。 「さっきヒメの携帯にメール送っといたから ! ね、もーすこしの辛抱だよ。スザクが来たら みんなやつつけてくれるって ! 」 「ううん、だめよ」 ュリカがぶるぶると首を横に振る。 「スザクはほんとは私のことなんか好きじゃないもの。きっと来てはくれないわー はかな しんぼう たね

5. エデン : 少年たちの創世紀

。工アン 「リュウトー 「リュウト ! 」 暗い公園の四方八方でリュウトの名を叫ぶ声が拡がってゆく。 じゅもん リュウトの名は勝利の呪文だ。 アダム リュウトは彼ら光の聖剣士たちの最強のリーダーであり、希望であり、闇を貫く勇気そのも のだ。 おおかみ リュウトは襲いかかってきた闇の聖剣士を光の聖剣でまっぷたつに斬り裂き、満月の下で狼 のごとく吼えた。 「戦え ! 俺たちの聖剣で闇を封印するんだ ! 」 輝く光がリュウトの体を包み込む。 まるで体じゅうからオーラを発しているような幼なじみのその姿に、スザクは一瞬惚れ・ほれ と見入ってしまう。 、とふり向いたリュウトと視線が絡む。 リュウトが反射的にニッと笑い返してきた。 この笑顔。 この瞳。 スザクは自分が救われた過去を思わずにいられない。 から ひろ つらぬ

6. エデン : 少年たちの創世紀

164 だが、その前に。 「なによ ? なんでそんなにじっと見るの ? 無言で自分を見上げてくる相手に戸惑って、サナが顔をしかめる。 「私に何か言いたいことがあるんならハッキリ言えば ? こ いらだ 苛立ったようなサナの口調にも、カナンが動じる様子はなかった。 かし カナンの体が傾ぎ、右足がゆっくりと上の段へ持ち上がる。と。 次の瞬間には、カナンはもうサナのすぐそばに立っていた。 「な、なに」 りんぶん 大きく胸の空いた赤いサテンのスリッブドレスの上で、青い鱗粉がパラバラと煌めく。 「は」 サナが小さく引きつったような悲鳴をあげた。 カナンの手がいきなりサナの頸に触れてきたからだ。 ( 殺される・ : ! ) みは サナは目を瞠ったが、カナンはそのまま手すりとの間にサナの体を閉じこめただけで、それ 以上は何もしてこなかった。 ただ、じっとサナの顔を見おろしてくる。 そうして見つめてくるカナンの瞳はそっとするほど青かった。 きら

7. エデン : 少年たちの創世紀

224 激しい動揺を示したカナンにはしかし、リュウトの声は届かなかった。 青い翅がカナンの体を浮かし、天井のマンホールへと急上昇させてゆく。 エレメント 闇の無幻力によって開かれたマンホールのすき間から、朝日がひと筋、恐るべき勢いで差し 込んできた。 イヴ 闇の剣精の体はまるで罪の雷光のごとくに太陽の光に貫かれ、飛翔する力を失う。 「ああッ ! 」 「カナン ! カナ どさりと大きな音を立てて落下してきたのは、かの野獣の巨体だった。 真っ黒な体毛がカナンの全身を被っている。 「カナンっ ! しつかりしろ ! カナンー かす 巨大な下水トンネルの中をリュウト - の掠れた声が響き渡る。 地上は光に満ちあふれ、人々は夜の闇を忘れ去ってゆく。 光と闇のエデン。 それは青く透きとおったカナーンの地に約東されている。 自分が大いなる謎の渦に巻き込まれようとしていることを、リュウトはこの時まだ知らずに いたのだった。 おお つらぬ ひしよう

8. エデン : 少年たちの創世紀

しゅうねん 倒れる間際、グレイの執念はその手にカナンの黒いコートの裾をつかませ、カナンからそれ を引き剥がして自分のものとしてしまったが、カナンが動じることはなかった。 カナンの注目は別の場所に在る。カナンは目を細めた。 質量感のある人間の血液が地上にあふれてゆく。 人間の体を乗っ取って動く闇の聖剣士の血液は、当然、赤い。 イヴ 同じ闇に属する者でも剣精とは造りが異なるのだ。 につかい カナンは倒れたグレイの肉塊を見下ろしながら、しみじみとその赤い血液に見入った。 イヴ なぜ、闇の剣精の血液だけが青く変色しなければならないのか。 そもそも闇の剣精とはいかなる生き物なのか。 遠くから人の声が聞こえてくる。 人間の可聴範囲の三倍の距離を超えて音を捉える自分の聴覚。 これもまた闇の剣精だけに特徴的な感覚だ。 とうやらそれ以上頭を悩ませる しばしグレイの体をどうしようかと悩んだカナンだったが、、 ン デ必要はなかった。 じゅんかん いったんアスファルトの上に流れ出したはずの血液が、循環のための道へと戻されてゆくの を目にしたからだ。 とら すそ

9. エデン : 少年たちの創世紀

チヒロがその白くてぼっちやりした頬をポッと染め、両手で押さえる。 「わ、やだっ。リーダーにホメられちゃった ) エレメント 聖剣に秘められた根元的な無幻力は、基本的に剣精の生命エネルギーに準じるとされている ので、リュウトのホメ一言葉は当然と言えたが。 ーダー。こんなチビスケのことなんか気にしないで 「まーたまた。ムリしなくていんすよ、リ ください」 チヒロがしゃべると横から必ず茶々を入れてくる男がいる。ヒメである。 チヒロももう慣れたもので、手をひらひらさせて言い返す。 「ハイハイ、どーせあたしはちっちゃいですよ。ちっこくてハ、、ハ広だからチ・ヒ・ロ。チビス ケはプーツ。だいたいあたしがチビスケってんなら、あんたはただのスケベじゃない」 「おつ、男がスケベで悪いかよっ ? 」 「ハイハイ、全人類全ケモノ類、みいんなオスはスっケベなのよね。ほらどいてジャマだよ。 お待ちかねの夜食だよーん ! 」 みんなに店から差し入れ持ってぎたの。みんなあー どおんと体当たりなどされて憤然と抗議してくるヒメを、チヒロがまたこれ以上はないほど 適当にいなしてしまう。 体の小さなチヒロに、背も高くてスタイル抜群な金髪の美少年がついてまわっては、キャン キャン吼え立てる。

10. エデン : 少年たちの創世紀

しふく アイスプルーの瞳に囚われる至福に少女は酔った。 今この瞳を独占しているのは自分だけだ。自分は他の女たちとは違うのだという強烈な自負 が彼女を大胆にさせる。 「あたしのこと好きにしていいよ。あんたの女にしてくれるんなら、他でウリやってもいい。 あんたに稼がせてやるよ」 うわごとのように少女の唇からほとばしり出た言葉は、最後までは音にならなかった。 男がいきなり彼女の唇を奪ったからだ。 わし 長くカールした金髪を片手で鷲づかみにされて、少女の体は大きくのけそらされる。 乱暴なキスは彼女を恍惚とさせ、その体は男の腕の中でくねくねと撓った。 「ん・ : っ : ・う・ : つ」 艷めいた喘ぎ声が閉じた空間の中で波音のように満ちてゆく。 しかしそれもそう長いことは続かなかった。 「ぐぎゅ・ : っー 一瞬、少女の咽の奥で詰まるような音がしたかと思うと、次の瞬間にはそれは凄まじい悲鳴 ン デに変わった。 だが男はまるで動じることなく、青い瞳を見開いたまま少女のロをふさぎ続けている。 少女の目に恐怖の色が浮かび、その唇の端から赤い鮮血が噴き出し始める。 つや かせ あえ のど とら こうこっ しな すさ