気づい - みる会図書館


検索対象: エデン : 少年たちの創世紀
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1. エデン : 少年たちの創世紀

スザクがジロリとチヒロをにらみ、今度は自制の効いた声で携帯に向かった。 「現在状況を報告しろ。どうなっている ? 」 その後、幾つかの質問をしたのち、スザクはその端の垂れた細い目をさらに細くしてわずか な沈黙を作った。決意を固めるまでにはあまり時間は要さなかった。 「わかった。闇の聖剣士が退散したなら西はもういい。 0 班以下は東に戻って負傷者の救済に 当たってくれ。班、班は俺が行くまでその場で待機。五分で行く」 「スザク・ : ! 」 ノートパソコンの蓋を閉じ、脇に抱えて立ち上がったスザクに、チヒロたちが熱い視線を投 げかける。 イヴ スザクはうなずき返し、自分の剣精を目で探す。 ュリカはみんなの邪魔にならないように後ろのほうにひっそりと、なかば隠れるようにして 座っていた。足の悪い自分が役に立てないことを気にしているのだ。 スザクはのしのしとユリカに近づくと、無言のまま空いたほうの腕でほっそりとしたユリカ ンの腰を抱き、グイと引き寄せて立ち上がらせた。 デ ュリカは大きく瞳を見開き、一瞬、泣きそうな顔をしたのだが、スザクはそれには気づかな 、。彼はユリカにノートパソコンを預けると、そのままュリカの軽い体を抱き上げ、勝利の女 神を抱いた戦士のようにみんなの前に立って宣一言した。 ふた わき たいき

2. エデン : 少年たちの創世紀

112 「ハイト ? 」 「そっ。ュリカんちってこの近くなんだ。あたし、ユリカんちでバイトさせてもらってんの。 ね、ユリカ」 「へえ、そうなの ? 」 リュウトに見下ろされて、ユリカがパッとうつむく それでもこくんと小さくうなずいて、ユリカはおずおずと口を開いた。 「う、うち、おばあちゃんとお母さんとで御茶のお店やってるでしよ。でも今日はおばあちゃ けいこ んが日舞のお稽古でいなくって。私がお店番やればいいんだけど、でも私、お客さんの相手も まともにできないし、役立たずだからー 今にも消え入りそうな儚い声だ。 そういえば普段からユリカが大きな声を出すのは聞いたことがないなとリウトは思った しば が、それがスザクと自分の前だけでは、さらに最小にポリュームを絞られているという事実に は気づかなかった。 そもそも細かいところまでは行き届かない傾向にあるリュウトである。 ( そういった繊細な 部分についてはサブリーダーがフォローするのである ) しかしむろんチヒロは気づいている。 ュリカはスザクの関係者には弱いのだ。 はかな せんさい

3. エデン : 少年たちの創世紀

バッと上着を脱いで上半身はだかになると、リュウトは怪物の毛むくじゃらの腹の横に体を 滑り込ませた。 そうしてくの字になった怪物の前脚をなんとか抱え上げ、自分の肩にかけさせると、ほ・ほ真 といき 横に抱き合うような形に並んで横たわり、その獰猛な獣の吐息の前に自分を投げ出す。 「どのへんが吸いやすいんだ ? 腕か ? 頭からむしやむしやってのはやめろよな」 恐怖を感じないわけではない。 この巨大な怪物は食人種なのだ。そこらにいる犬や猫とは訳が違う。 だが何かがリュウトを大胆にさせていた。やめようという意思は働かない。 「わ、おい、く、 首はやめよーぜ。なんか殺されそうな気がする。おまえ今、すっげ腹へって んだろー 狼のよな顔をした怪物がリュウトの目を覗き込み、ゆっくりと首をかしげた。 「いや、だからさ」 青い瞳にじいっと見つめられて、リュウトが絶句する。 「ど、どこでもいいよもう。好きにしな」 ン デ どうやら自分はこの青い瞳に弱いようであると気づく。 みにく その上、この醜い野獣の顔や巨体にも、だいぶ慣れてきてしまっていることにも気づかされ る。

4. エデン : 少年たちの創世紀

25 ェデン 闇への扉がぼっかりと口を開く時刻。 しつば リュウトの前を、すらりとした黒猫がびんと尻尾を立てて横切ってゆく。 聞こえない足音。 見えない影。 月の光も街の中までは届かない。 泥酔した大人たちの間をすり抜けて、リュウトは走り出した。 闇の中で濡れたように光る剣が、彼の右手にしつかりと握られている。 だが、大人たちの中の誰一人としてその剣に気づく者はいない。 ゆかい 何匹かの猫が少年の後を追って駆けてゆくのを、愉快そうに眺める者はいても。 でいすい 少年たちの時間 しっそう 夜が疾走する

5. エデン : 少年たちの創世紀

1 新宿に巣食う闇の存在に、いち早く気づい 少年たち。特殊能力を持っ彼らは、それを駆 彼らの能力 使し闇に対抗すべく集った。 は、彑い」 ~ 。、 ートナーを得ることで最大限に トナーを闇に 力を発揮する。そのため、 さらわれたリーダー ュウトは、充分にカ を使えないでいた。それでも、彼は諦めすに 戦う。闇を櫞い去り、自分たちの未来を擱む ために。光と闇の物語が、今、始まる つど 恋気分いっぱいの夢 0 小説誌 ! 1 月、 3 月、 5 月、 7 月、 9 月、 1 1 月の 18 日発売 隔月刊ですので、お求めにくしにともありま当 あらかじめ書店にご予約をおすすめします 集英社 コ U レト

6. エデン : 少年たちの創世紀

1 新宿に巣食う闇の存在に、いち早く気づい 少年たち。特殊能力を持っ彼らは、それを駆 彼らの能力 使し闇に対抗すべく集った。 は、彑い」 ~ 。、 ートナーを得ることで最大限に トナーを闇に 力を発揮する。そのため、 さらわれたリーダー ュウトは、充分にカ を使えないでいた。それでも、彼は諦めすに 戦う。闇を櫞い去り、自分たちの未来を擱む ために。光と闇の物語が、今、始まる つど 恋気分いっぱいの夢 0 小説誌 ! 1 月、 3 月、 5 月、 7 月、 9 月、 1 1 月の 18 日発売 隔月刊ですので、お求めにくしにともありま当 あらかじめ書店にご予約をおすすめします 集英社 コ U レト

7. エデン : 少年たちの創世紀

「、も、つしし 。寝ろー 「寝ろって・ : 、信じられない ! 何様のつもりよ ! ちょっと ! 待ちなさいよオ ! 」 だがカナンはもう振り返ることもなく、さっさと階段を降りて、玄関ホールを出て行ってし ま一つ。 「なんなのよいったい ! 信じられないわ ! この私をあそこまで怖がらせるなんて ! 踊り場にひとり取り残されたサナが歯ぎしりしてくやしがる。 「今度会ったら殺してやる ! ぜったい殺してやるから ! 」 はあはあと呼吸を乱すくらいにどなった後。 しばたた まっげ 不意にある事実に気づいて、サナは長い睫毛をばちっと瞬かせた。 「え、あいつ、どこに行ったの ? 外出 ? こんな時間に ? だって向こうは真昼よ ? こ 真昼。 闇の剣精には地獄ともいうべき光の時間。 だがそれこそ、カナンの望む時間だったのである。 あの少年の匂いは覚えていた。 にお

8. エデン : 少年たちの創世紀

「血まで青い : ・」 そこまでつぶやいて、チヒロはハッとしたように叫んだ。 「つて見とれてる場合じゃないっての ! 誰か ! そいつをつかまえて ! たぶんそいつが闇 しなしの卩 の連中のリ 1 ダーよ ! ねえちょっと誰かー チヒロはあたりを見回したが、このときにはすでにスザクも他の光の聖剣士も闇の聖剣士と の戦闘に集中している状態で、手が空いている者などいそうになかった。 自分しかいない。チヒロの判断は速かった。 「待ちなさいよ、このつ ! 」 ジャケットのポケットに突っこんでいた本体をつかんで、その男めがけて放り投げる。 一瞬のうちに、チヒロの視界から男の姿が消えていた。 そして闇が。 「ああっ ! 恐るべき闇の無幻力がチヒロを襲う。 青い瞳の男の手に、本来、剣精などが持つはずのない闇の聖剣があることに気づく。 相手を甘く見すぎた。 斬られるー エレメント

9. エデン : 少年たちの創世紀

「カナン」 「カナン ? カナンか。悪くねえな。似合ってるぜ、″カナン〃」 こ、つりん 野獣降臨。 女神アシェラは約束の地に降り立つ。 「れ ? なんだこれ ? ああ忘れてたぜ。カナン、こいつはあんたの忘れもんか ? 」 ふとポケットの中に手を突っ込んだリュウトは、指先に当たったものに気づいて取り出す。 そしてもう一度ライターをつけて、自分の手のひらに乗せたその物体を照らし出した。 長さ四ほどの小さな銀のプラスチック。 いっそやこの下水路で拾った飛行戦闘機の模型だった。 「カナン ? こ 返事がないので、リュウトが横にいるカナンの顔を見上げる。と。 ン次の瞬間、リュウトの目の前には、青い翅を広げたこの世ならぬ妖精か現れていた。 デ「カナンー 工 「来るな ! 違う。私は・ : 、私は」 「カナン卩よせつ ! もう外は夜が明ける時間だ : よ、っせい

10. エデン : 少年たちの創世紀

その夜、闇の城に戻ってから、カナンは驚くべき量の涙を流した。 ン自分の中にこんなにも涙の成分があったのかと疑いたくなるほどの量だった。 ぼうぜん デ始めはそれが涙であるとは気づかず、カナンは茫然と自分の濡れた両手を見つめた。 しずく 工 そうして開いた手のひらの上に、さらにぼた。ほたと雫が落ちてゆく。 カナンには泣いたという記憶がなかったので、泣くという行為がわからなかった。 「次は : ・″な〃だ ! 当たった ? オッケー。それから ? うんうん、″で〃、 リュウトが個を詰まらせた。 「″サナです〃 : ・ ? うそだろ ? こ 真っ黒なリュウトの瞳が明らかな驚異に満ちて怪物を見上げる。 「サナ : ・ ? おまえが ? こ 怪物はゆっくりとうなずき、それから、やはりゆっくりと視線をそらした。 シベリアンハスキーの″シベりん〃がよく似た青い瞳で怪物を見上げてきたが、怪物の視線 うつ は虚ろで、何も捉えていないかのようだった。 カナンはこの日、後悔という感情を知った。 とら