唇 - みる会図書館


検索対象: エデン : 明日への翼
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1. エデン : 明日への翼

「サナ : ・ びたりとスザクの頬に両手を当て、サナはスザクの瞳をのそき込んだ。心の底まで見透かす ようなその青い瞳で。 「いてほしいのよ、スザク、あなたに」 「よせ、サナ」 「スザク、お願い」 サナの唇がスザクの唇に近づく。 アダム 「お願い。協力して。私にはあなたしか頼れる聖剣士がいないのよ」 アダム 「はかな。きみには闇の聖剣士がいるはず アダム 「ええ。でもその闇の聖剣士はカナンに夢中なの。私になんか目もくれないわー サナの唇がスザクの唇の端にふれる。 「サナ、やめてくれー の「どうして ? あなたはひどく傷ついていて、心も体も疲れすぎてるわ。私だってそうよ。傷 ついた者どうしなぐさめあうのは必要なことであって悪いことじゃないわ。そうじゃない ? こ 明 「サナ : ・ みわく デ一番好きだった、いや今も一番好きな少女だ。その声はあまりにも魅惑的だった。 エレメント ほんろう たとえ彼女が闇の無幻力を使って自分を翻弄しようとしているのだとわかっても、そこには 抗いがたい魅力があふれているのだった。 あらが ほお

2. エデン : 明日への翼

「の目にはもうきみだけしか映ってないみたいだよ。かわいそうにね。のべッドでは ひど いつも酷い目に遭わされているんだろう ? こ 同情しているようで決してそうではない声。カナンは言い返した。 「—O に何をされても酷いこととは思わない」 「ふうん、そうなの ? hO を愛してるんだ ? 僕の息子より ? 意地の悪い視線がカナンを嬲る。龍司はくすくす笑ったが、それ以上は追及しなかった。 ど、つき ただひとことリュウトのことを持ち出されただけで、カナンの胸は熱くなり、激しい動悸を 打つようになる。 龍司は息が吹きかかるほど近くにいる自分の前で、顔をそむけ、じっと唇を噛んでいるカナ ンの顔を見つめた。 赤ワインで染めたような唇の色。 のどうしようもなく不安定な唇だ。 こじ開けて、この世の悪徳という悪徳を注ぎ込みたくなる。 明 「カナンくん、きみは不思議な存在だね」 ン デ龍司の指はカナンの長い髪の先に触れ、その先にあった腰骨に触れた。 非難めいた相手の声にも布じることはなく、龍司は続けた。 なぶ

3. エデン : 明日への翼

114 長いキスだった。 くちびる この唇が離れたら世界は消えてしまうというかのように。 夢。 ジェイシー のが 「から逃れることはできない」 「唇を放すとろくなことを言わねえな、あんたのロは」 リュウト・ 「おまえが、死んでしまう : ・ おえっ カナンは横たわっているリュウトの胸に顔をうずめた。嗚咽が伝わってくる。 リュウトはカの入らない片腕でカナンの頭を抱いて言った。 「そんなにヤワじゃねえよ。心配すんな、こんくらいの熱なんでもねえ」 リュウトの熱はもう三日以上も続いていた。 X X 4 X X

4. エデン : 明日への翼

284 世界一やさしいキスをして。 闇の剣精の唇は冷たく乾いていたけれど、リ = ウトが触れたら温かくなった。 「カナンー ゆっくりと唇が離れてゆく。閉じていたカナンの瞼が同じようにゆっくりと持ち上がった。 輝く青い瞳が現れる。 カナンの、瞳だった。 「生まれ変わっても・ : キスしようぜ。思いつぎりディープなやっ」 「リュウト : ・」 震える声。この声で名前を呼ばれたい。いつも。 リュウトの指先が最後に触れたのは、涙に濡れたカナンの頬だった。 「カナン、あんたを愛してる : ・永遠に」 永遠に。 いつの時代に生まれ変わっても、きっと出逢って、また、愛し合う。 何も、誰も、さえぎることはできない。 このふたつの光と闇の魂が出逢うことを。 であ まぶた

5. エデン : 明日への翼

ギッと唇を噛んで、やがていつばいにあふれてきたものと一緒にその唇を開いた。 「ショウヤに、何をした ? 「知りたいか ? 「知りてえから訊いてんだろ ! 」 「ならばおまえの父親に訊くがいい」 ざわっとリュウトの背筋が予感に打ち震えた。 記憶の海がざわめく。四年前に自分の記憶から暴力的に消された父親の顔。 もう薄れかけていたはずの記憶がふいに浮上してきて、不安定な水面を揺らした。 生きているはずがない。 生きているはずがないのだ。だが。 翼「それが僕の息子ですか ? うわ。ちょっとオドロキだなあ。もう僕より背が高いんじゃない へ ですか ? 」 明 突然、背後から響いてきた男の声。 振り返ったリュウトは、はっきりとその一 = ロ葉を口にしていた。 「父さん : ・

6. エデン : 明日への翼

( これは、 リュウト。私の男だ。私はこの男と共にここまで逃げてきた ) ろうそく ほの暗い蠍燭の炎がふたりの少年の顔を闇に浮き彫りにしていた。 どちらもまだ若く、頬に青年期の入り口に立ったばかりの幼さを残している。 どちらかといえばリュウトのほうがより少年らしく、親しみの持てる風貌を備えていた。 いさぎよ 濃い色のはっきりした瞳はまっすぐに人を見据える潔さと暖かみにあふれており、人に警戒 心を抱かせない。活発に移り変わる表情は彼がまだ発展途上な少年期にあることを示していた したくちびる が、下唇のほうにやや厚みのある唇からは、すでに微妙な色気が生み出されていた。 ほんばう 陽に焼けた健康的な肌色は見る人に男らしい奔放なイメージを与え、訓練されて無駄な肉を しっそう そぎ落とされた肉体は、常に前を向いて草原を疾走してゆく野生の生き物を想わせる。 リュウト。存在そのものが自由の象徴であるような少年。 そしてカナン。 びぼう 彼は非常に整った造形の持ち主である。彼の美貌を前にすればそれだけで、男女の区別なく 言もが心奪われずにいないだろう。 まゆ 眉の濃さ、頬の高さ、鼻筋の通り方、ロ唇の角度、何もかもが理想的な形を確保している。 不思議なのはその造形が、西洋的にも東洋的にも理想の形に見えることだった。 肌は奇跡のように白く透きとおり、触れた指が吸いっきそうなきめ細やかさに満ちている。 稀有な美貌に恵まれた幸福なる者。 だが同時にそれは、本人にはまったく意味を持たない事実だった。 ひ ほお とも おさな ふうぼう

7. エデン : 明日への翼

「なるほど。そうか」 「そうかってあんたな」 「それではきみも私同様、嫉妬心を感じているということかな」 くちびる の唇がリュウトの唇に重なる。邪悪な闇が滑り込んできた。 「ふふ、きみは存外おもしろい。気に入ったよ」 つかまれた手首に力が入らない。人間の顔をして、やはりこの男は人間ではないのだ。 「人間だよ。きみと同様、ねー ひょっそう 「こうして素肌の一部に接触していれば、きみの表層意識ぐらい読み取れるよ。脳細胞が動く 音がするのでね。きみも訓練次第では可能になるだろう。神ならぬ身だが、そもそも人類は脳 の八〇 % を眠らせたまま進化してきた生き物だ。封印されたままの能力も多い」 「あんたが人類だってのはジョークか ? にらみつけるようにして言ってきたリウトの一言葉は、くっとを笑わせた。 かわい 「ただの無知だろうが、きみが言うと可愛い。なぜだろう ? 」 「知るかよ。可愛い可愛いって、あんた俺をばかにしてんのか ? しかしリュウトは知らないのだ。そうやって相手をにらむ自分の目がどれほど魅力的か。 しっと

8. エデン : 明日への翼

日本人のようにも見えるが、別の遠い国の人間のようにも思えた。 厚い唇と濃い色の肌が彼にエキゾティックな印象をもたらすのだ。 身に着けている衣服はすべて黒い。カナンと同じだ。 」く、つ 黒の意味する虚空。どこにも所属しない者。あるいは、すべての場所に所属している者。 リュウトはこれまでにこんな男には一度も出くわしたことがなかった。 「俺に、何をしたんだ」 ばうぜん 茫然とリ = ウトがつぶやく。 暗闇が溶け、そこはまるで明るい真昼のように白い空間に代わっている。 恐るべき力が行使されたことを知ったが、リ = ウトには彼がそれをどんなふうにして行った のか、さつばり見当がっかなかった。 「あんたは : ・誰だ。カナンを、迎えに来たのか」 声の端が震えていることを、リ = ウトは認めたくなかった。それでも男がほんのわずかに体 を動かすだけでも、思わず唇を噛みしめるほどであることは否めなか 0 た。 へ 「カナンは私のものだよ」 明 あまりにもあっさりと言い切る口調が、一瞬、リ = ウトから一一 = 〕葉を奪ってしまう。 立ち尽くしたリ = ウトの目の前で、男はカナンに手を差しのべて言った。 「さあカナン、来なさい。あなたには今すぐ食事が必要だ」

9. エデン : 明日への翼

彼女の唇がたちまちへの字になる。 『あ、あたし』 少女は真っ赤になってうつむいてしまった。 アダム 剣精の体の中から聖剣を引き出すことができるのは、基本的にはその剣精の認めた聖剣士だ けだ。リ、ウトが今その手に彼女から引き出した光の聖剣を持っているということはすなわ ち、光の剣精である少女自身がそうすることをリュウトに認めたということだった。 これは闇側についた敵、これは裏切り者のリュウト。と思うはしから、心の中に大天使のよ うに大きな翼を広げて降りてくる少年のイメージ。 ( こんなにおそろしいって思ってるのに ) 濃い色の大きな瞳でまっすぐに見つめられれば、心臓が止まりそう。 ( あたし、へん : ・ ) 『返すぜ、 しいか』 の少し端の掠れたリュウトのハスキーヴォイスは、少女のハー 彼女は真っ赤になったまま、小さくうなずいた。 『う、うん』 ン デずぶ。 エレメント 抜き取られた無幻力と共に再び聖剣を受け入れるときには、非常な充足感を伴う。 少女は淡いビンクの唇をきゅっと噛みしめ、顔を横にそむけた。 かす トを震わせる。 ともな

10. エデン : 明日への翼

288 としての意識そのものが揺らぎ、薄れてゆく。 —O は消え去る恐怖に身を捩ろうとしたが、すでにそこに捩るべき肉体は無かった。 リュウトが立ち上がり、現れた聖剣をまっすぐにビルの上に突き立てる。 光と闇と。 すべてが一本の聖剣へと集められ、大地へと伝えられてゆく。 リュウトの唇が開き、微かに動く。 呼びたい名前はひとつだけだった。 「カナン