日 - みる会図書館


検索対象: エデン : 明日への翼
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1. エデン : 明日への翼

204 「ティカル遺跡はマヤ文明最大にして最古の遺跡だよ。そういえば最近うちの息子がティカル げきど のオー パーツを中和して、 h(.-) を激怒させていたな」 リ = ウトの話を持ち出せば、カナンはすぐに冷静でいられなくなる。相手の関心を引くこと に成功して、龍司はくすっと笑って続けた。 イヴ 「あれを中和されたのはさすがに痛かったね。まあきっと今頃はまた *--.o の剣積が闇に染める ために向かっていると思うけど、おかげで″最期の日〃の到来が延びちゃったよ」 「″最期の日〃 ? こ 「古代マヤ人のメッセージさ。彼らは数字に関して非常に高い技能を身につけていてね。現代 人には理解できない単位で物事を考える力を持っていたんだ。たとえば二〇年が一カトウン、 二〇カトウンが一バクトウン、なんていう大きな時間の計算もできたらしい。そんな彼らだか こよみ カレンダ . ー ら暦もそうとう特殊でね。その暦の中に″最期の日〃が記されていたんだよ。それがちょう ど今年なんじゃないかっていう説があるわけ」 「″最期の日〃には何が起こる ? 」 かなん 「さあ。でも昔、華南先輩が言っていたことをもう少し真剣に取り合っていればよかったなっ エレメント て今なら思うよ。あの頃は無幻力なんて大きな力のことはかけらも知らなかったからねえ」 今はもうその華南大介もこの世にはいな、。 叔父さんだった大介の体をに与えたのはきみだったねえ、と昔のことなど持ち出して、 龍司がその手をするりとカナンの二の腕に這わせた。

2. エデン : 明日への翼

「なあスザク、俺って異常 ? こ 赤ん坊を抱いて近所の桜の木の下を歩きながら、リウトがそんなふうに訊く。 ぶぜん 一緒に歩いていたスザクは憮然として返してきた。 「カナンとのことを訊いているなら俺は知らんそ。あの日のカナンのことは結局おまえにしか わからんし、俺は別におまえが一生その子以外の人間を愛さなくとも責めはせん」 「フツ、そりや助かるぜ」 「どうせ俺も同類項だ。共犯者だと思えばなんでもない」 「ハハ、似たもん同士かよ。悪くねえな」 リ = ウトはスザクがユリカの魂を忘れられないままでいるのを知っている。 あの運命の日、スザクもまた、ひとつの運命をその手につかんでいた。 「俺、最近、あのオー ーツって、実は通信機なんじゃなかったかって思うんだよな」 の「通信機 ? こ スザクが聞き返して、リュウトが軽く肩をすくめた。 明 「ああ、宇宙人との通信装置。想像だぜソ 1 ゾー。けど考えれば考えるほど他に思いっかなく ン デなる」 「つまり ? 」 うなが スザクが先を促す。わずかにためらっていたリ = ウトが笑い返して続けた。

3. エデン : 明日への翼

136 カナンがふたたび病院を訪れたのは、五日後、陽が落ちて夜になってからだった。 ティカルからほど近い湖の島フローレスは人口約二千人の小さな町で、ティカルへの観光拠 点となるため、リゾート型のホテルが多い。この小さな病院も古びてはいたが、外観は優雅な しゃれ バルコニー付きで、コロニアル風の洒落た造りになっていた。湖を眺めることができる中庭に は、背の高いハイビスカスが幾つも並んで大きな花を咲かせている。 この地方は日中の温度差が大きく、夜はかなり冷え込んでいたが、リ = ウトは夕食のトレイ をバルコニーに持ち出して外で食事中だった。 もう熱はすっかり下がっていた。それでも破れたジーンズの上にシャッ一枚というラフな 姿は今の時間にはかなり無防備と言える。 フ = ンスの上に腰かけて夜の湖を眺めているリウトに、背後から現れた手がそっと厚手の カーディガンをはおらせた。 リュウトは振り向かず、黙って湖を眺め続けている。 空には大きな月がかかって、白い光を湖上に投げかけていた。 X X 6 X X おレ・ なが

4. エデン : 明日への翼

ジャングル どうくっ イヴひ グアテマラの深い密林の奥に見つけた洞窟は闇の剣精を陽の光から保護したが、病人の治 療のためにはあまり良い環境とは言えなかった。 . ~ . をし、刀子 / しいっスし それでもリュウトが完全に動けるようになるまではここを出るわけこま、 おそ の追っ手に襲われるかわからないからだ。 た けつべっ と訣別したあの日から早ひと月近くが経とうとしていたが、カナンにとってもリュウト にとっても時間はあまりに高速に過ぎてゆき、日数を数えることも難しいほどだった。 エレメント 都市は遠く、人の多い街はすでに闇の無幻力に支配されていて立ち寄るには危険すぎた。 ジャングル ふたりは結局、人のいない場所を選んで移動するよりほかなかったが、熱帯の密林を抜け ともな てゆくことは、想像した以上の困難を伴う重労働だった。 カナンのことを考えれば夜間に行動するよりほかなかった上、昼間は光を避けられる洞窟や 地下に眠れる場所を探さなければならなかった。 エレメント そういう場所では昼間でも恐るべき吸血性の虫たちが体じゅうを這うため、無幻力でガード のしなければ眠れなかった。 エレメント 日 一度ベルーからグアテマラまでをカナンの闇の無幻力を使って転移したが、降り立った地で アダム 明 闇の聖剣士の大群に襲われてからはその能力を使うのもやめにした。 ン エレメント きせき デ不用意に大きな無幻力を使えば、軌跡をたどられる。 一定期間以上ひとつの場所にとどまれば、ふたりのそれそれの無幻力が居場所を知らせる。 逃げても逃げても彼らは追ってきた。 エレメント は

5. エデン : 明日への翼

114 長いキスだった。 くちびる この唇が離れたら世界は消えてしまうというかのように。 夢。 ジェイシー のが 「から逃れることはできない」 「唇を放すとろくなことを言わねえな、あんたのロは」 リュウト・ 「おまえが、死んでしまう : ・ おえっ カナンは横たわっているリュウトの胸に顔をうずめた。嗚咽が伝わってくる。 リュウトはカの入らない片腕でカナンの頭を抱いて言った。 「そんなにヤワじゃねえよ。心配すんな、こんくらいの熱なんでもねえ」 リュウトの熱はもう三日以上も続いていた。 X X 4 X X

6. エデン : 明日への翼

270 この髪も、この腕もこの足も、闇の聖剣を動かし戦うことのできる体驅のすべての部分が、 それを生かすために浅ましく摂食してきた人々の肉でできている。 すべて、ただこの日のためだけに生き続けてきた。 約束したとおりに。 ( リュウト ) 風が匂いを運んでくる。 さっき一三階で感じたのと同じだ。近づいてくる光の聖剣士の歩幅も歩数も、呼吸の数も、 カナンには読めてしまう。 けれど、もうカナンが迷うことはなかった。 ( おまえは戻ってきた ) 約束どおり。 ( 戦うために ) 風が舞う。 時が満ちてゆくのが目に見えるようだった。 「来たぜ ! どこにいる卩」 にお せっしよく たいく

7. エデン : 明日への翼

カナンが食べさせようとした食事も受けつけず、気絶するように眠っていたリ = ウトの熱 は、次の晩になってさらに上がった。 つぶや リュウトはうわごとを呟き続け、カナンはひとつの決意を固める。 次に目覚めたときリ = ウトが目にしたのは、洞窟の岩壁ではなく人工の塗り壁だった。 の小さな町医者の家の一室で、リュウトはたったひとりで目覚めたのだ。 日もっとも怖れていたことが本当になろうとしていた。 明 「リュウト」 「俺たちのやってることなんて、なん・ : も・ : なんねえ・ : じゃ : 「リュウト : リュウトの体が支える力を失う。 そのままカナンの両腕に倒れ込んできたリュウトの体は、火のように熱かった。

8. エデン : 明日への翼

かい・さくら 2 月 15 日生まれ。福岡県北九州市出身。水瓶座。 A 型。 1993 年スー バーファンタジー文庫「戒ー KAI ー」でデビュー。情熱をテーマにセ ンセーショナルな旋風を巻き起こす。同文庫に、く少年たちのハイバ ーロマン〉、くトキオ・ヘヴン〉、く戦国のヴァンバイア〉、く倭ー YAMATO—〉、く地球 ( ホーム ) 〉、く緋 ( あか ) 〉などのシリーズがあ る。コバルト文庫ではくきみがほしい〉、くリプロデュース・クラシッ ク〉、く蒼 ( あお ) 〉、くラブュー > 、くエデン > の各シリーズの他、一孵 化」、「蜜柑」などがある。現在、血統書付きのベルシャ猫シンと共に 東京在住。縄文人のように船で大洋を渡り、イースター島へ到着し てモアイ像を調査、ムー大陸の痕跡を探るのが夢。 公式ホームページ【沙漫沙】 http : //www.sakura-kai.com/ 《明日への翼》 COBALT-SERIES 2002 年 6 月 10 日 第 1 刷発行 著者 発行者 発行所 ☆定価はカバーに表 示してあります 花衣沙久羅 谷山尚義 株式 集英社 会社 〒 101 8050 東京都千代田区ーツ橋 2 ー 5 ー 10 ( 3230 ) 6 2 6 8 ( 編集 ) 電話東京 ( 3230 ) 6 3 9 3 ( 販売 ) 印刷所 ◎ SAKURA KAI 2002 ( 3230 ) 6 0 8 0 ( 制作 ) 中央精版印刷株式会社 株式会社美松堂 Printed in Japan 本書の一部あるいは全部を無断で複写複製することは、法律で認め られた場合を除き、著作権の侵害となります。 造本には十分注意しておりますが、乱丁・落丁 ( 本のべージ順序の 間違いや抜け落ち ) の場合はお取り替え致します。購入された書店 名を明記して小社制作部宛にお送り下さい。 送料は小社負担でお取り替え致します。但し、古書店で購入したも のについてはお取り替え出来ません。 I S B N 4 - 0 8 -6 0 01 2 0 - 9 C 01 9 5

9. エデン : 明日への翼

月が雲間に隠れる。 しんじゅく 新宿に真の闇が訪れようとしていた。 「チヒロー チヒロの胸から闇の聖剣を引き出そうとしていた闇の聖剣士を、ヒメが素手で殴りつける。 しかし、それだけでは済まなかった。 の「ちょっと ! 勝手にひとのムネさわんないでよね、えっちーツー イヴ 日 横から思いぎり回し蹴りを食らわせるあたり、やはり新宿バビロン一強力な光の剣精はただ 明 ものではない。 ン かぶきちょう デ新宿歌舞伎町地下サ・フナード。 チヒロとヒメは光の剣精たちを引き連れ、新宿を出てゆくべく移動中だったが、地上出口は どこも闇の聖剣士たちに封じられて、地下に閉じ込められた状態になっていた。 X X X X なぐ

10. エデン : 明日への翼

″ぜったいに生きてろ。最後に俺に会うために〃 翼 の へ 日ザアアアアツー 闇の聖剣が振り払われ、展望室のすべての窓が溶かされる。 ン すさ イヴェデン デ凄まじい風の中で、ひとりの闇の剣精が聖剣を構え、敵が来るのを待っていた。 に命じられたからではなく、みずから望んだ最後の決戦のために。 長い髪が風に引かれてゆく。 おさな 駆け出してゆく幼なじみの背中に翅はなかったけれど、もっと大きな白い翼が生えたように 見えたのは、もう雌豚になってこの目が腐りかけているからだろうか。 ″おまえの話を聞くほうが先だ″ 彼はそう言った。 ″おまえの話ぜんぶ聞くから〃 空っぽだった器に何かが満たされてゆく。 サナは頬を押さえた。 指先が濡れていた。