少女 - みる会図書館


検索対象: 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝
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1. 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝

本当に美味しそうに最後の一滴まで飲み干し、安堵したような息を洩らしたのだ。 なにが違うのだろう その瞬間、強烈な嫉妬が胸の奧に広がった。 苦しむレンバルトを知りながら、自分はなにもできなかった。 のぞ なのに、夢の中に出てきた自分より少しはかり年上の少女は難なく彼の苦痛を取り除いたの 彼女は誰 ? 胸が掻きむしられるように痛くなった。 青みがかった銀の髪を結うことなく背中に流した美しい少女ーー勝ち気そうな薄茶の瞳に、 限りない愛おしみの色をたたえていたあのひとは。 らく 扉間いただしたくて仕方なかった。彼女が誰なのか、どうしてレンバルトが楽になれる水の作 夢 けれど同時に決して尋ねてはならないのだとも思ったのだ。 り方を知っていたのか 呪レンバルトはきっと、あのひとのことを知っているから : : : 自分の夢に出てきて、この水の 葉ことを教えてくれたことを話したら、もしかしたら彼女のもとへ行ってしまうかもしれない しいや、きっと行ってしま、つー だって、レンバルトはいまでも言の葉姫を想っているからー しっと あんど

2. 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝

いらだ けれど、そのためになにをすればいいのかもわからす、リエンカはすっと苛立ちを抱え続け ていたのだ。 ・ : だが、不思議な感しのする夢の中 その苛立ちから解放されたのは、あの悪夢とは違う : おもざ で、自分より三つ四つ上の、どこか亡き母に似た面差しの少女に出会ったおかげだ。 『彼を苦しみから解き放ちたいのなら、南の井戸から汲んだ水を一度火にかけたあとに冷まし てあげることよ』 少女が誰なのか、またなぜそんなことを識っているのか , ーー気にはなったけれど、そのとき は日に日に元気がなくなるレンバルトをどうにかしたくて彼女の言葉にただ従った。 ふっとう ューライカの南の外れの井戸から水を汲み、それを一度沸騰させて冷ましたものを悪夢に苦 しめられたであろう日の朝、レンバルトに差し出したのだ。 おっくう 扉悪夢を見た翌日、いつも水を億劫そうに受け取る彼が、その朝だけは少し違った様子を見せ ふう しぶしぶ 呪最初はいつもと同じく、渋々といった風にリエンカの差し出した水を受け取ったのだが、そ わん 葉の椀に口をつけもしないで、はっと驚いたように息を呑んだのだ。 ・ : : これは・ こはくそ、つぼう どうしたのだと、その琥珀の双眸が問いかけていた。 し の

3. 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝

ぶしよう なのだ。無精なのかその手の才能に欠けているのか、どんなにコツを教えても切り花を三日と 保たせたことがない、花好きとしては少々思うところがある相手とはいえ、大事な客であるこ とに変わりはないのだ。 「ごめんよ、この花を届けたら、店に戻るつもりだったんだよ、まさか留守の間に君が来てく れるなんて思わなかったんだ」 本当のところは、うまく打ち解けられたら戻らずラエスリールと過ごすつもりだったのだ が、さすがに馬鹿正直に言えることではない。 はる うそへた しかし、エンランドは自分で思っているより遙かに : : : 嘘が下手だった。 「嘘つき , まなざ 冷ややかな少女の眼差しに射貫かれ、彼はなぜか背筋に冷たいものを感じた。 なせだ ? 相手は小さな女の子だというのに卩 そんなエンランドの心境に気づいたかのように、スターリアがにつこりと微笑んだ。 葉 のそして、その瞬間 の ア 「エンランドさんっ ! 」 なぜ ラエスリールの声が、何故か足下から聞こえて来て、思わすそちらに目を向けた彼は、あま ほほえ

4. 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝

結ばれては ならない一一人を 両親に持っ少女は、 はしょ , っ . けールーし 長じて浮城の破妖剣士 となり、 となる 魔性の敵 その手にあるのは、最強の破妖刀『紅蓮姫』 その傍らに立つのは、深紅の髪と瞳を持っ あんしゅ 美貌の護り手、間主 世にも稀なる 運命を背負った少女の名はラエスリール 愛と戦いの物語が今、再び始まる : ・ 4 、い第的 0 0 み、れんき 0 0

5. 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝

110 「無礼な ! 」 思わす怒鳴りつけたものの、相手は意に介した様子もなく背後の少女を振り返り「違うの か ? 」と間い返す始末だ。 「我々はその少女に協力を要請しただけで : 「はい、 人さらいです」 男の声と少女のそれははとんど同時だった。 女がちらりと視線を投げかけてくるーーその時初めて男は彼女の双眸が違う色彩をたたえて いることに気づいた ヤ」は′、 しんく 右の琥珀に左の深紅 : : : 一度目にすれば決して忘れられない印象的な組み合わせであるにも 拘わらす、なぜすぐに気づけなかったのか。 みずか うずま その理由を、男は自らの胸中に渦巻く感情によって知った。 じんじよう かれつ せいれつ そこに浮かぶ光は、到底尋常の者がたたえ得るものではなかった。苛烈にして清冽な : : : そ がた れでいて直視することを耐え難く思うほどに強烈な輝き。 ひとみ よく似た輝きを放っ瞳を持つひとを、男はひとりだけ知っていた。 その人の瞳は薄茶だ。色彩は全然違う。 しかし、浮かぶ光はあまりにも似ており、男は知らす畏怖したのだーー言の葉姫と同じ強さ そ、つぼう

6. 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝

) ) 0 又 『お前がいっか、救いを求める気になったら、わたしの妹を護ってみるとしし もこの〔呪〕を解くことはかなわぬが : ・ : ・あの子なら、できるかもしれない』 たやす ・ : 調べるのは容易かった。 来焔が死なせた言の葉姫の生家は特に隠されてもいなかったのだから。 遠目に目にした言の葉姫の妺ーーリエンカは、あの不可思議にして強大な言霊を操る少女の 妹とは思えぬほどに平凡に見えた。 なにがし そもそも言の葉姫の力は血で受け継がれるものではないーーー実の姉妺だからといって、某か の異能を妹である少女が持っているとは限らない。 それでも、言の葉姫の紡いだ言葉だ。無視もできす、さりとていまだ十になるかならずの少 うカカ 女に救いを求める気にもなれす、ただ遠くから様子を窺っている内に、大火が彼女たち家族を 襲った。 ただの炎だーーー炎を操る来焔にとっては消すことなど造作もなかった。いや、そのはすだっ 言の葉姫が遺した唯一の救いをもたらす少女の命がかかっているーー・来焔は即座に炎を消す がくぜん べく力を揮おうとして : ・・ : 愕然とした。 せつな 彼のなかに集った死者たちの魂が、彼が力を発現させようとした気配に気づいた刹那、恐怖 ふる のこ 早わたしに

7. 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝

たず なせ、そんなことを尋ねられるのかリエンカにはわからなかったけれど、夢の少女のことは ともかくーー母も美しいひとだったが、夢の中の少女は母以上に美しかったからレンバルトに 話したくなかったのだーー・他に隠すことはないと判断し、素直に答えた。 なま 『湯冷まし : : : レン、最近あんまり体調がよくなさそうだから、生水より一度熱を通した水の ほ、つがいい力と田 5 って : : : 』 水のはうかいいようなら、汲み直してくるけど ? そう問うた彼女に、レンバルトは「いいや」とかぶりを振った。 もら 『いいや、これを貰おう : : : ありがとう、世話をかけてしまったな』 ほほえ ふわりと柔らかく微笑み、水を口にした彼の顔をリエンカは忘れられない。 たび それまで何度も目覚めの水を自分が持って行く度、レンバルトは本当に気が進まない様子で グラスを口に運んでいたのだ。 きづか ひとみ 自分を気遣ってか、決して表には出そうとはしなかったけれど、ロに含んだ一瞬、その瞳に 浮かぶ苦痛の色はリエンカの心に抜けない棘のように突き刺さったものだ。 どこの水を運んでも同じーーー南の井戸の水だって、汲んできたのはその日が初めてではなか なのに、その日に限って : : : 夢に出てきた少女の言葉に従って差し出した水に限って、彼は

8. 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝

こレ」 ~ ま わが 『言の葉に強き力をこめて、我言の葉姫が言霊に命すーー』 『いやよ ! レンが死ぬのはいや ! 』 こえ 三者の声と思念が交わる間にも、強大な炎は迫ってくる。 「リエンカ ! 」 『炎は、水には剋てない ! 』 言の葉姫の言霊は、しかしこの場に水がないがために効果を発揮できなかった。 まなざ その時、リエンカがなにを思ったか、真剣な眼差しを言の葉姫に向けて叫んだ。 『もう一度、言って ! 』 『リエンカ ? 』 『いいからもう一度、同しことを言って ! 』 ノ鬼気迫る勢いの少女の言葉に、死者たる少女がうなすいた。 夢 『炎はーーー』 縛 つむ 呪 リエンカがぎゅっと目を瞑った 強く何かを今しるよ、つに。 ノ 葉 そ、つして、続く言葉をともにロにしながら、彼女は 『『水には剋てない ! 』』 ・ : 奇跡を起こしたのだ。 言 161 はっき

9. 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝

144 新生マヤフを担うと自負する男たちは、期待で胸がはち切れんばかりの心境だった。 なぜなら、ついに悲願がかなう日が来たからだーー少なくとも彼らはそうだと心から信して ゅめまくら ューライカ郊外の小高い丘 : : : そこに彼らは集められた。夢枕に現れた美しい銀髪の少女に よって。 彼女はーーー伝えられる前の言の葉姫そのものの姿を持っ少女は、今日のこの時刻に、この場 ごうまん 所に来るよう夢のなかで傲慢なまでの誇り高い口調で告げたのだ。 となれば、考えられるのは彼女の復活としか考えられない いよいよ言の葉姫が復活なさるのだ。そして自分は栄えあるその証人に選ばれたのだー ど、つほう いたーーそこには見知った同胞のほ 胸躍らせながら指定された丘に向かった彼らは一様に驚 指定した待ち合わせの場所である郊外の丘には、すでに複数の人影があった。 どこかで見たような顔ばかり : 内なる死霊の冷ややかな声に「そうか」と答えて彼は足を進めた。

10. 言ノ葉は呪縛する : 破妖の剣外伝

りのことに絶句した。 えりくびつか エンランドの体は宙に浮いていたのだーー十歳の少女に襟首を擱まれた格好でー かっこう