虹色の粉が降り注いだ。 澄んだ透明なが謎う。 「選ばれし清きものたちに聖なる御カ護をー ディーノたちの飛竜をあいだに挟み、氷壁をきシルヴィンとレイムが合流した。 レイムはディーノたちに向かって飛竜の火炎を浴びせかけようとしているシルヴィンの気 ナつか ) 配を感じ、慌てて魔道の粉を用いて綺兆を強化させたのだ。 。ひとつほどの薄さしかない二枚の氷の壁を隔て、シルヴィンとレイムは斌峙していたの 穏やかに最小限に焔の威力を押さえたレイムに対し、シルヴィンは壁の向こうがそんなこ とになっていようとは、思いもかけていなかった。 立ちふさがる鴉魔者など一掃してしまえとばかりに、過激に突っこんでいくだけだ。 迷三人の姿を目にし、中途半端に腕をあげたまま、シルヴィンはきよとんと目を丸くする。 色レイムはにつこりと笑んだ。 玻「間にあったね」 涼しい声が同士討ちにならなかったことを喜ぶ。 勘よく停止したディーノの飛竜であったが、い にじいろ くらファラ・ ハンの結界があるといえ、そ
驚いて身動きかなわないまま瞳を向けたディーノと眼下のルージェスに、素早く視線をめ うるわ ・ハンは、困惑するように麗しい瞳をかげらせる。 ぐらせたファラ 「わたしに用があり、おそばまでと望まれるのなら伺いますわ。世界を救おうという方が増 えるのは、喜ばしいことなのではないのですか ? 事態がまるつきりわかっていない ひょうしぬ 拍子抜けし、シルヴィンが目をしばたたく。 「それは正規の聖戦士の話でしよう ? 聖選を受けた者だけよ」 その他の者は、いても足手まといになる。だから世界じゅうから集まった選りすぐりの有 能者の多い王都にあってさえ、彼ら四人以外の者の同行は遠慮されたのだ。 こにく ましてや。こんないけ好かない、小憎らしい娘が聖戦士であるはずがない。 「気持ちは大切にしなければならないわ」 まゆ ・ハンは少し引く。 形のいい眉をひそめ、ファラ 宮シルヴィンの言わんとしていることが、正しいことであるかもしれないと感じた。 まもの 気味の悪い魔物と戦ったり、怖い思いをしたり危険に向かうのは、できれば少ないほうが 璃 いいたろうから。 ハンとしては自分一人 それが彼女がこの世界に招かれた理由であったのだから、ファラ・ で世界救済をしなければならないとしても、和う識していたことだろうと思う。 こんわく
生まれながらに与えられた宿命は、決してメイビクを解放しはしない。 「仕方ない , にべもなくディーノは吐き捨てる。 レイムは強第を噛んで耐える。このようなことが起こっても不自然ではない。むしろメ イビクならま、 ) ーしつか解き放たれることの決まっている彼女であるならば、こうなっても望 みがあるのだ。他の者なら、絶望でしかない。 声もなく沈みこむレイムを見、シルヴィンはもどかしげに手を動かして手緒をさばいてみ たりする。 「あの・ : 、ねえ。よくやったわよ、魔法使いは。こういうときもちょっとはあるわよ」 失敗なんて、誰にでも : ・ 思いもかけないことを言われて、きよとんとしてレイムは顔をあげる。 シルヴィンは、顎をあげてそっぱを向いた。 迷「次にれば、いいじゃない ! 」 色とんだ当いであったが。励ましていた。 玻真っ赤になって横を向くシルヴィンに、レイムは笑う。 「すみません」 礼を述べた。
から抜けでた。 ハンを見る。 過敏な反応にとして、シルヴィンとディーノがファラ・ ・ハンは、彼らの様子から自 ここで初めて視界にシルヴィンや小さな飛竜を入れたファラ 分の反応があまりに唐突で過激なものであったことを知って恥じいる。 あ - り - 力と , っ・ : ・ : ごめんなさい : 「あの : ・ 金色の鈴を転がすような可な部で、消えいりそうに小さく言「た。 ハンはうつむいた。 ますます真っ赤になりながら、ファラ・ ハンの膝にすがる。 小さな飛竜は甘えるようにファラ・ おもしろ あんな反応をされるなどとは思いもかけず、少しばかり面白くない表情でディーノはわざ とらしく髪をきあげ、そっほを向く。 シルヴィンは安心し、頬をゆるめた。 「よかった。みんな無事ね」 迷気楽に言い放った言葉に、ファラ 色「レイムはどこ ? 玻耳を打った名前に。 は、とばかりにシルヴィンは目を和いた ・ハンは瞳をめぐらせる。
いかに無敵のディーノといえど、無傷でいられるとは思えない。 もろ・とろ・ 肉の一欠けであろうと、こんなところで魔物に食らわれてやるつもりなど毛頭ない。 下等でおぞましい下な輩など、同じ場に存在することすらディーノには許しがたい。 「驪は ? どな ・ハンに怒鳴った。 りつけるようにファラ 「はい ! 」 うなが ・ハンは本来の目的に立ち戻る。 声荒く促され、ファラ ほうぎよく ひとみ 透きとおる青い宝玉ににた瞳を閉じ、神秘なる感覚を研ぎすます。 ディーノが急かさせた理由が、実感となってひしひしと感じられる。 ぼうだい ひそ 息を殺し密やかに機を待って蠢いている膨大な魔物の放っ気が濃くなり、空気中でざわめ く静電気のようにちりちりとを刺激していた。 宮びくんと背筋を震搬させ、シルヴィンが姿勢を正す。 「ただのかしだと思うのか ? 」 璃相手にされず業を煮やしたルージスが、上げた右手で作ったを気わせた。 「矢を : ・ ルージェスが一一一一口いかけたその時。 うごめ
ふる 震えわなないていた。 「ふざけるなっ ! 」 ・ハンはディーノの腕をきゅっと抱きしめる。 金切り声にびつくりして、ファラ ハンを睨みつけ、すっと右手をあげる。 ルージェスはのような瞳でファラ・ 「矢をつがえ ! 」 かっちゅう っせいに弓矢を構えた。 自動人形のように、黒い甲胄をまとった兵士たちが、い 場所柄を考えぬ行動に、シルヴィンが色をなす。 ここをどこだと思ってるのよ ! 」 「ちょっと、あんたー 悲鳴のようなシルヴィンの声に、ルージ = スはにやりと唇をめる。 「ホーン・クレインであろう。よく知っている。すみやかにその女を引き渡すというのな ら、考えてやらぬでもないー おとめ 世界最後の楽園ホーン・クレインと、翼ある乙女ファラ・ 宮それらを穰にかけ、どちらかを選択しろと迫っている。 ほお きようはく のあまりにふざけた脅迫に、ひくっとシルヴィンの頬が引きつった。 璃ルージェスには自分こそが世界を救う者であるのだというはなはだしい思いあがりがあ る。だからファラ ハンよりも、世界の宝であるホーン・クレインにおのずから軍配があが る にら
そのディーノの目から見て、 なま 眼下で見あげてくるくそ生気な小娘など、言葉を耳に入れてやることすら値しないほど ぐしゃ に、魅力のない愚者に見えた。 どのように異様な軍勢を指揮していようとも、畏怖するに及ばない。 シルヴィンはにつままれたような顔をして、娘を見つめた。 つい昨日、時の驪を手に入れた場所の近くの森で、ゲルゼルという虫に追われていた娘 だ。世界じゅうのあらゆるところ、ひとの生活圏ならどこであれ、身近に存在する虫の特性 さえ知らず、それかられようと懸命になっていた常識知らずの娘に間違いない。 世間知らずなのは、あれでわかっていたが。まさかこのディーノにまで、このような口を きくとは。愚かをとおりこし『狂気』である。とても正気のかではない。 しようヂき 娘の発した命令の意味よりも、その行為にシルヴィンは大きな衝撃を感じていた。 宮あきれ返って、泓めがもれた。 の 色 、、ノ・十 0 璃そしてファラ・ 「お掫はなかったのですね ? よかった」 見覚えのある娘に対し、案じていた先日のことがに終わってし、ほっとん
194 「どのような魔ですの ? ・ハンがシルヴィンに問いかける。 背後からファラ シルヴィンは少し後ろを振りかえるよう体をひねり、ファラ・ ハンに顔を向ける。 「私の里でそう呼んでいたのは精霊みたいな、目に見えないもののことだったわ。谷のあい だを抜けて吹き下りてくる、すごく冷たい風。遠くに降った雪もさらって連れてくる、強 くって冷たい風のことをそう呼んだわ」 飃花を伴って吹き下りてくる風。突風のように、あるとき固まって吹き下りてくるそれ かたまり は、真っ白に凍えた巨大な寒気の塊に見える。 その形を模して、 1 叫という呼び名をもつ。 「雪竜は思いもかけないところに大きな吹き溜まりを作るわ。小さな子供や、ときには大人 だって、その吹き溜まりに埋もれて見つからなくなって亡くなった。雪竜が「ひとを食ら う』とかいうのは、そんな感じのたとえ話なのだけれど」 形持っ魔物とはなりえないか。 とな ディーノもレイムも異論を唱えないところを見ると、それは世界じゅうの者がそうと知 る、共通のものであったらしい 「それでも - 思案するシルヴィンに、こわい顔でレイムが言う。
76 振ぎ突表何 レ長 レ目両 卑ひ干ひつ目めま 劣かぶ障ーた 情かイい よ然 に手海 り イ 落ん回 にム呪ム 見のの を ならや り そ と頭明触の文 え指上 企をびく と う と の さ勢し るれ脳を 呪ぬ を らたくよ なで に た裏り繰文はか残 く み唇う いた れき 。し 。に つ をがるに ばる そ よ り は る ら 浮か天かめた 恥 顔 に動 え をな カゝ レ じに いそけ て 駆高印イ るい放のの な い を ぶす あ ち時実 った レけみをム こし ) げ に結は 、よカ た飛 あ のイ とっ ムが浮ひ 闇は 黽 た イ なと レ・ い引色 の り レ メ か 、ぶ上 愉ゆかの 今 イ ム ジ道魔 悦れ 魔ま も グロ は レ ム の 、イ 道 ; がは法の がた の の レ 喘ム 乗 、陣 、い魔 咽 士し イ を古じ法 ぐ そ は 0 ) か ム ・つ のえ陣 よ腰 の 目 ら 笑 た に 魔の う が 飛 ま指 零 は しゝ 鞍を に ます道影 れ の な 腕カ が 念 よ雲 を ら た 泳滑す ロ 0 ) つの 触 て上 カゞ つ 手 存し せた を と 在落 指 め 先 し 続す た て て く . 魔 い呪 れ 法 る文 た 陣 も を の唱昃 を 捜 を え 必 す た 死 で くちもとゆ
冷たく凍てついた肉体は、それでも少しも硬そうには見えない。 花びらのように厚みを感じさせない薄いクリスタルの向こうで、まるで今にも祈りを終え て目を開くかとも思われるほどに。 その乙女は、つい先ほどレイムが目にし、声を聞いた乙女に間違いはない。風にさらわれ 、まぼろし たはかない幻の姫君だ。レイムが夢中で追い求めた存在だ。 間近く目にしたものが信じられず、ちすくんだレイムは、青ざめながら必死で気を取り しよ、つげ・き なおし、足を踏みだす。思いもかけないほど強く襲いきた衝撃に打ちのめされ、全身から のうひんけっ 血がひいていた。軽い脳貧血を起こし、押し寄せてくる眩暈と吐き気を懸命にこらえる。 ひと足でも早く歩を運び、ディーノに、ファラ ・ハンたちに追いっこうとする。 氷壁の奥には、乙女のほかにもたくさんの生命たちが閉じこめられていた。 ひとも動物もなんの分け隔てもなく、時を奪われ閉ざされている。 凍てついて、そこにいる。 迷恐怖も識めもしみも、みな一様に押し黙り、ひそやかに佇んでいる。 色ただひしひしと冷気から染みだし、溢れて、思いのたけを告げている。 玻さきほど乙女に促され、レイムが目にしたものと同じものが、場所をえてそこにある。 目を奪われ、ごくりとを鳴らしたシルヴィンが、溜め息混じりにつぶやく。