親分 - みる会図書館


検索対象: 群狼の牙 : 天罰党始末
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1. 群狼の牙 : 天罰党始末

212 と一一 = ロった。 「な、なんですって ? こ 「信用できるかどうか怪しいが、しかし、これが今日、唯一手にすることができた情報だ。す がる価値はあると思うぜ」 「行こう、狩野殿。時間が惜しい」 「わ、わかりました、坊っちゃん ! 私も行きますー 「そう言ってくれると、思っていたぜ」 「それは言えねえ」 ぶぎようしょ 「しかし、それじゃあ、奉行所は人を出してはくれませんぜ ! 」 「仕方もない」 「狩野殿。我ら一一人で十分でござろうー 「待ってくだせえ ! 坊っちゃん、いま少し、いま少しでも、話してはもらえぬので ? こ 「わかったよ、親分」 鷹一朗は文七の耳に口を寄せると、小さな声で、 「 : : : 実はこれはな、あの鴨川で会った、 , 御簾の向こうにいた野郎が、教えてくれた話なの

2. 群狼の牙 : 天罰党始末

176 「しかし親分、会合の場所は毎年変わります。今年の場所を知っているのも、それそれの店の 者でも、わずかなはず : : : どうして連中にわかりましよう 「それは : : : 」 うな 文七は唸った。 「あー 1 そうか ! そういうことか ! 」 「何か気づいたんですか、親分 ? 」 「山杉屋さん、廃屋で見つかったのは、六人なんですよ」 「つまり ? こ 「・ 1 ーひとり、足りないな」 うた・ 文七は、大きく頷いて見せた。 「そうなんですよ、坊っちゃん」 「いなかったのは、誰だい ? こ 「瀬戸屋の、平伍坊です 「ふむ。 : : : 親分は、連中が会合の場所を聞き出すために、平伍を連れ去った : : : そう思うん だね ? 」 ばくち おそらく連中は、平伍坊が博打好きだったのを、知っていたに違いねえ。それで狙い をつけてさらったんだ」 はいおく

3. 群狼の牙 : 天罰党始末

「親分、俺は、嫌な予感がするぜ。だが、いまからじゃあ、聞き込みもできねえ。全ては明日 : だが、もう遅い気がするよ」 「親分、今度のことは、山杉屋だけのことじゃねえという気がする」 「ほかの商家でも、同じようなことが起きていると ? こ 「ああ [ 「わかりました。すぐに人をやって聞いてまわらせましよう」 文七は立ち上がった。 「親分、そっちの方は ? 何かめたのかい ? ー ぶぎようしょ 「残念ながら、何も。志士どもも特に目立った動きをしてはおりません。奉行所では、天罰党 ~ と志士は関係ないかも知れぬ、と思い始めているようです」 始「だと、 しいんだが」 罰 鷹一朗は、つぶやくがごとく言った。 牙 ( 金だけが欲しい連中なら、さらわれた信介が戻る可能性は、まだある ) 狼であった。 群 だがそれならば、すぐに要求があってしかるべぎである。 それがないということは、別の目的があって、さらったと考えるのが正しい

4. 群狼の牙 : 天罰党始末

おかみ 御上のために働く者を、賭椦が受け入れるはずはないのだ。 「ま、か行ってみてもいいが」 「そ、それはいけません ! 」 文七は懾てて止めた。 「もし手入れがあったら、大変でございます。それに、いまは山杉屋のことを第一に考えてく ださいまし」 あだう おじうえ 「それはわかっている。だが、計らずとも、叔父上を助けることが、卯吉さんの仇を討っこと になりそうじゃないか。それに、親分だって、俺を頼ってくれているからこそ、卯吉さんが殺 されたことを、知らせに来てくれたのだろう ? こ 「その、つもりが、あったのかも知れません。つい、甘えがでました」 うれ 「ふ、ふ : : : 何を言っている。頼りにしてくれて嬉しいよ、親分」 「ほ、坊っちゃん・ 「親分の勇敢さも腕も、俺はよく知っている。だが、相手が本当の志士なら、こいつ、少々や つかいだ」 鷹一朗は鼻を鳴らした。 「天下のため、と言えば、それであらゆることが正しくなる、と考えている連中だ。自分に大 ととう 義があると思っている。義を得た武士は強え。それに、徒党を組んだ侍と言うのも、ちょいと ゅうかん たし

5. 群狼の牙 : 天罰党始末

「もういいだろう、親分」 と一 = ロった。 ただの声ではなかった。静かだが気合を込めた声である。その場にいた全員が、はっと、鷹 一朗を振り向いたほど『カ』のある声であった。 「お、お助け・ : : ・」 息も絶え絶えの声でそう言ったのは、河内屋の主であった。 「親分、もういいだろう ? こ 「しかし : ・ 「卯吉さんが死んだのは、この人の罪じゃない。女房を殺され、次は娘だと言われりゃあ、金 もだそうってものさ。・ : ・ : そんなところなんだろう ? 河内屋さん」 うなず ~ 河内屋は激しく頷いた。 始「だがなあ、お前さんは、女房が殺されたとき、奴らのことを親分に話すべきだったぜ。そう おかみ 罰すりゃあ、御上にも手の打ちょうがーーこ しはんとき なきがら 「に、女房の亡骸は、店に届けられたのです ! す、すぐに、四半刻の内に金を三条大橋に置 牙 の かないと、今度は娘を殺すと文が : : : 文がいっしょに : ぎよってん 群「それで仰天して、すぐに金を置きにいった、と言うわけか」 文七が斬りつけるようにいうと、河内屋はがつくりとうなだれた。

6. 群狼の牙 : 天罰党始末

: いいのかい、親分、お勤めの方は ? こ やおや 「なに、八百屋にいくくらいの時間はあります。 : : : それよりも坊っちゃん、その絵は一体な んです ? 」 すそ いって指さしたのは、着物の裾の富士山と茄子である。 「奇妙な取り合わせですねえ」 「めでたいだろう ? こ 「そうですか ? 」 「わからないかい、親分 ? 」 「はあ・ : ・ : 」 「俺の名を思い出してみな」 「わかったかい ? 」 若侍は、いたずらが成功した子供のような得意気な笑みを浮かべたものである。 思わず文七は苦笑した。 「いや、こいつはなんとも : : : くだらねえなあ」 そんな言葉にも、怒る様子もなく、若者はにやにやしながら歩いていった。 ていた。

7. 群狼の牙 : 天罰党始末

ざあっと、月が陰り、辺りはひととき真っ暗になった。 そうして、再び月が顔を出したとき、そこに、子供の姿はなかった。 鷹一朗は舌打ちをすると、部屋に戻ってごろりと横になった。 しばらくすると、また庭で、 ( 狩野 : : : 狩野 : ・ : ・ ) と呼ぶ声がしたが、もはや、打ち捨てておいた。 夜明けには消える、と知っている鷹一朗であった。 「邪魔するぜ」 そう言って、店を開けたばかりの瀬戸屋に入ってきたのは、文七であった。 「これは、仏光寺の親分・ : ・ : ご苦労さまでございますー せいたろう あいさっ おりしも表に出ていた主、清太郎が、そう挨拶をすると、 「平伍坊はいるかい ? こ と聞いたものである。 主の顔色がかわったのを、文七は見逃さなかった。 「親分、平伍がなにか : : : 」 あるじ

8. 群狼の牙 : 天罰党始末

「わかりません。だが、心当たりがないわけじゃありません」 「それはーー」 「卯吉は私の命令で、ある事件を追っておりました。考えられる線は、それしかありません」 「親分、その事件というのはなんだ ? 」 「親分。俺は卯吉さんを友人だと思っていた。それが殺されたと聞いて、どうして黙っていら れるものか」 「 : : : では申し上げます。卯吉は、十日程前に起きた、河内屋の妻女の誘拐と殺しについて、 調べておりました。」 「河内屋だって卩 「坊っちゃん、何か御存知なので ? 」 文七は身を乗り出した。 きよ、つは / 、じしっ 鷹一朗は例の脅迫状を取り出すと、文七に見せた。 「これは : おじうえ 「叔父上のもとに、送りつけられてきたものだ。河内屋にも送られてきたかい ? こ だが、店の連中は何か隠しているようでした。まさか : : : 」 「隠す、ということは、つまりは金を払ったってことだろうな」 ごぞんじ ゅうかい

9. 群狼の牙 : 天罰党始末

庭の木に留まった蝉の声が、うるさいくらいであった。 ひざもと 文七の膝元では、茶が湯気を立てている。それには手をつけず、文七は鷹一朗をじっと見つ めていた。 さば 売れ残りを捌く、風鈴売りの声がどこからか聞こえていた。 「さて」 ゅのみ ややあって、湯呑を置き、鷹一朗は言った。 「親分は、昨夜の事を聞きに来たのだね ? こ 「そのとおりですー 「そうか」 「 : : : 他の事なら、私も何も聞きません。だが、昨夜の事は、川島さま殺しが絡んでおりま おかみ ~ す。御上の御用を与かる以上、放っておくわけには参りません。 : : : 坊っちゃん、あれはいっ 始たいどこの誰です ? 」 罰鷹一朗は腕を袖に入れて組むと、目をすうと細めた。 ~ 「坊っちゃん」 の「知らねえんだよ」 群「ーーー坊っちゃん ! 」 「親分、本当の事なのだ」 そで せみ かわしま

10. 群狼の牙 : 天罰党始末

文七は、そう告げた。 弦衛門の肩ががつくりと落ちるのが、鷹一朗にはわかった。 うめ という、かって聞いたことのない、微かな呻きを捉えたのは、自分の耳だけであってくれれ 、と鷹一朗は考えた。 そしてそれを、決して人にいうつもりはない。 「とにかく、聞いて回るしかねえな」 鷹一朗は言った。 「七人もの人間をさらったんだ。何か手がかりが残っているはずだ」 「私も手伝おう」 ~ 弥四郎が一言った。 始「助かる」 「私も手下を総動員して、探索に当たります」 牙「頼んだ、親分。ーーー皆、手がかりがあったら、すぐに奉行所へ走ってくれ。叔父上も、連中 狼が何か要求をしてきたら、すぐに奉行所の方へ使いを出してください」 わず 群 弦衛門は、僅かに頷いて見せた。 「親分、できたら何人か、ここへ張り付けておいてくれないか。やはりお雪が心配だ」