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検索対象: ジェスの契約 後編
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1. ジェスの契約 後編

《主な登場人物紹介》ま ・讀輝・ ・永・ 大陸最古にして最強の魔術 冥界の女王との不死の契約 師の称号「覆麦」を受け の証「ジェスの刻印」を持つ 青年。魔王を倒そうとする。 継ぐ少女。 1 7 歳。 ・腐王・ ・災・ 亡き永の父親の肉体にとり 魔王の三人目、最後の影法 ついた魔性。強大な魔力を 師。少年の姿をしていて、 持ち、影法師を操る。 水を司る。 こ一もを

2. ジェスの契約 後編

召還して永とともに電華を倒した。そのあとに残されていた剣こそ、唯一魔王を倒すこと のできる、ジェスの影から作られた魔剣「影」だった。 そして、ついに魔王と死力を尽くした闘いが始まった。強大な魔力で深手を負った永を 守るため、瞳輝は自らの血でもって火妖を呼び出し、破夜女の全能力を魔王にぶつける。 その瞬間「影」に嵌めこめられていた黒い宝石が砕け、魔王の眼から血が流れた。魔王 は自らの眼をえぐって「影」の力を封じていたのだ。本来の力を回復した「影」を持ち、 くうな 永は深々と魔王を貫いたー だがそれは、真の魔王ではなかった。「風の空奈」と呼ばれる 影法師ーーー魔王の子供ーーだったのだ。 次に瞳輝と永の前に立ちはだかったのは「地のハ牙巳」という影法師だった。はじめは くすし 栄養失調で倒れた永を助ける薬師として、ふたりに近づいた八牙巳は、コウサの街の元首 わな から地虫退治を依頼された、という名目で地底の罠へ、永と瞳輝を誇ったのだ。 またしても、壮絶な闘いが始まった。地を司る地妖が、ハ牙巳につくか瞳輝につくか。 永を守りたいという瞳輝の激しい想いが、勝利を呼ぶ。八牙巳も魔剣によって倒された。 しれんようド冖もう 本物の魔王を求めてふたりは老魔女・紫蓮の妖征網の力を借りようとした。だが紫蓮の 答えは「魔王はいない。その足跡を知りたくばサナンへ行け」というものだった。 サナンの街についたふたりは領主、可褂の歓迎を受ける。だがそれは、巫女破摩とそ れを操る少年姿の影法師「水の災波」のしかけた罠だったのだ : ・ じむし やがみ

3. ジェスの契約 後編

〈『ジェスの契約』前編のあらすじ〉 世界最大の街リイジャスの南東に位置する交易都市ソウ八。この街に、大陸最古にして とうき 最強の魔術師の称号「破夜女」を受け継ぐ歳の少女、瞳輝が養母の西湖と住んでいた。 だがこの街は近ころ物騒だった。若い魔女や巫女が何者かに襲われるのだ。その下手人 は雷華という女妖。若い女を攫い、さらに瞳輝に襲いかかろうとした時、ひとりの青年戦 士が現れ、女妖を退けた。 一彼の名は永。産い瞳には深い絶望を秘め、額には冥界の女王ジスとの契約の証「ジ = スの刻印」が刻まれていた。目的を果たすまでは死ぬに死ねないおぞましい刻印がー 「を沙へ案内を頼みたい。魔王の綺を破れるのは、おそらく破夜女しかいない : ・ 魔王、という = 葉を聞いて、瞳輝の中に復讐の炎が燃えあがる。魔王こそ、瞳輝の母親 先代の破夜女の輝予螺を殺した妖魔。憎んでも憎みきれない仇だったからだ。 きゅうてき そして永にとっても魔王は仇敵。彼は永の父親の肉体を乗っとったうえに、祖父を殺し たのだ。即ち永は、自分の「父」を殺さぬかきりジェスの契約から解放されない、という おぞましい運命を負いながら、何百年も生きつづけていたのだ。 西湖がとめるのも聞かず、瞳輝は永と不沙山へ向かう。だが、その前に立ちふさがった ・らいト・・フ ふうよう のは、ソウ八で会った女妖の雷華。その背後に雷妖がいることを見破った瞳輝は、風妖を

4. ジェスの契約 後編

190 る 「何を、言うの卩」 ぞうお 親友を殺された憎悪に、西湖の瞳が燃える。 「何をしたの卩おまえは、いったい何をしたの、叉巳に ! 輝予螺ばかりか : : : おまえは何 を考えているの卩」 魔王その人によって、友人を変えられたことを、西湖は信じて疑っていない様子だった。淡 い色の瞳が、強い感情に輝いている。怒りと憎悪に染まった西湖は、これまで見たことがない ほどに強く見えた。 「何もしておらぬさ」 いたずら まゆ 魔王はいかにもおかしそうに答える。眉をひそめるふたりの魔女に、悪戯つ。ほい視線を投げ 「いや、したことは、したな。叉巳 道化師のような衣装に身を包み、顔を隠した魔術師に、魔王は声をかける。 「おまえの素顔を見せてやるがいい」 はず 命じる。そして、叉巳は逆らう気配もなく、すぐに仮面を取り外した。 瞳輝は息を飲む : ・ : ・仮面の下から現れた、その素顔に。人間ではありえない。目も鼻も口も 耳も・ : : ・何もない、のつべらとした顔にー る。 ひとみ さみ

5. ジェスの契約 後編

・ : 母を奪われた憎しみと、魔王の血を引くこの子への恐怖に、私はこの子の心を、癒しよう がないほどに傷つけてしまった」 血の気のない白い肌ーー・頬をつたって、透明なしずくが流れ落ちる。 「この子が私を術にかけ、甘えてきている時、本当にそれだけを求めていたことがわかったの ・ : なぜ、抱いてあげなかったのかしら。もっと早くに : ・ : なぜ」 = んで、破摩は少年の体を抱き寄せる。 「弟なのに・ : ・ : 災波、災波」 おもも 後悔に身をもむ巫女の姿を、永は沈痛な面持ちで見つめた。 災波は : : : あの少年はおそらく、影法師たることに、何の意味も見出してはいなかったの だ。魔王の眠りとともに、自由になった子供は、ただひたすらに肉親の愛情を求めて、この街 に来たのだろう。 破摩は破摩で、その秀でた霊感で、彼の内部にひそむ、魔性の影を見出し、恐れたのだ。 人と人の結びつきの、なんと簡単によじれることか。愛に飢えた少年は、姉を人形に仕立て ることで、やさしさを手に入れ、そして待っていたのだろう : : : 誰かが、自分の命を断ってく れるのを。 運命の皮肉と呼ぶべきなのか ? いい や違う、と永は思う。 魔王さえいなければ、その悲劇は起こらなかった。災波の母親は攫われることもなく瞳輝の はだ ほお さら

6. ジェスの契約 後編

65 ジェスの契約一後編ー 母親もまた、あのような酷い死に方をすることもなかったはずだ。 ましようおさ 魔王よ : : : 父の体を奪い、悲劇の種すらも楽しんで蒔く魔性の長よ。 瞳輝の震える体を抱きしめる腕になおも力をこめながら、永は固く決意した。 じ。ゅばく 必ずおまえを倒してやろう。ジ = スの呪縛からの解放のためだけでなく、おまえのためにこ れ以上不幸な人間が出ないためにも。 目覚めるがいし : ・ : そして、自分の前に姿を現せ。その時こそ、おまえの最期だ : ・ 世界中が、不安に震える。妖霊が騒ぎ、魔術師たちが、突然歪みはじめた世界の気に狼狽す いわむろ かくせい 暗い、今では誰もその場所を知らぬはずの岩室で、魔王が覚醒しようとしていた。 る。 むご ゆが 0 ろうばい

7. ジェスの契約 後編

とても大好きだった母さん。それを、殺した魔王。 復讐の種子が、瞳輝の心にまかれたのは、まさにその瞬間だった。 「西湖、私は魔王を倒すわ : : : 許せない。絶対に、倒すわ」 幼い少女が、きつばりと義母である魔女に言いきる。 かたきう 「母さんの仇を討つの。私、絶対に討つの」 せりふ あの日ロにしたそのままの台詞を、夢の中で、幼い自分がロにする。 その時ーー 声が鏘いた。 「嘘だよ、まだその女は、すべてを語りきってはいないよ」 少年の声だった。夢の中の瞳輝は聞いたこともない、だが今夢を見ている瞳輝は知っている 「教えてあげようか、あなたの母親の死んだ、本当の理由を ? こ 幼い少女が、西湖とその声のする方向を交互に見つめる。 「知りたくはないのかい ? ー どうしよう ? 少女が首をかしげる。 「瞳輝、耳を貸してはだめ ! 」 西湖が悲鳴に近い叫びをあげる。 ふくしゅう

8. ジェスの契約 後編

。ほろりと落ちる。 「気の短い娘だ : : : 話の腰を折るものではない」 あき 呆れたように言って、魔王はさらに続けるーー・皮肉げに、自らの言葉で追い詰められていく 西湖を見つめながら。 もくろみ 「その女は役に立ってくれたよ。おまえを大切に育ててくれた : : : わたしの目論見どおりに。 まさかあの小僧が現れるとは思わなかったが、それでもともに旅することにより、おまえはい うれ よいよ力を強めた。嬉しい誤算というものだな。影法師を皆失ってしまったのは、いささかま をいくらでもつりは来るというものだ。本当 いったが : : : まあ、それでもおまえが手に入れま、 ここまでうまくことが運ぶとは、運命とやらに感謝したいぐらいだよ。女ーー」 最後のひとことは、西湖に向けられた一一 = ロ葉だった。やさしげな美貌の魔女は、びくりと身を 強張らせる。 「褒美をやろう。おまえは、わたしの命に忠実に、この娘をここまで案内してくれたのだから な」 そうはく 残酷な・ : ・ : 残酷な宣告。蒼白な養母の顔に、瞳輝は心臓を鷲みにされたような気がした。 おそらくーー西湖は、何も知らなかったのだ。ただ母を : : : 輝予螺を心配して、それで魔王 の退屈しのぎの罠にかかった。かかってしまったのだ。そして、母が自刃したあと、魔王は別 の興味の対象として、彼女の心を覗きこんだ。その中には、幼い自分のことがあって : : : すぐ こわば ほうび わな のぞ わしづか みずか びばう

9. ジェスの契約 後編

性格ではかちんとくるものだった。 「ま、そうね」 うなずいてはみるが、だからといって、すぐに食事に集中できるものではない。 消えたという西湖 : : : 大切な養母。それから姿を見せなかった紫蓮。 まわ どんどん自分の周りから、大切な人が消えていく。原因がわかれば、捜すことだってできる はずなのに・ : ・ : なのに。手がかりのひとつもない、泣きたくなるような現実。 「そうね」 もう一度つぶやいて、瞳輝は大きく息をついた。 「瞳輝 ? 」 「一度、ソウハに戻りたいの : : : 西湖が消えたというのなら、屋敷に何か手がかりが残ってい るかもしれないし。本当は、魔王をさっさと倒してから、捜そうと思ってたんだけど、そちら 編のほうでは、今のところ何もできることはないし : : : 」 しっそう 一それに、やつばり心配だった。西湖の失踪の原因が何であるかはわからない。わからないが 契ゆえに、心配も募る。 スもしも、自分を捜して彼女が旅をしているのだとしたら、どんな偶然で魔王と係わってしま うかもしれない。そんな危険な目にあわせるわけにはいかない : ・ : かの魔性は、近づく者にと びきりの不幸を撒き散らすから。

10. ジェスの契約 後編

しかし、魔王はそれに対して、ゆっくりと足を進める。両者の距離は、縮まることはあって 、も広がることはなかった。 「嫌よ : : : 誰が・ : ・ : 」 ようやくのことで、そうつぶやく。だが、男は頓着しない。 一歩、一一歩 , ーー近づいてくる。恐ろしい予感に、瞳輝は心臓が凍りつくような気がした。 「いや・ : ・ : 嫌よ ! 来ないで ! 何度もかぶりをふりながら、瞳輝は叫ぶ。あの手に触れてはならないーーそれは直感。 ましよう たましい あの、すべてを無に帰す手に触れてはならない。あれは魔性の手。魂までも奪われる ! 婉と微笑む魔王の手から、瞳輝は逃げる = ・ = ・逃げつづける。 しかし、それはついに終わりを告げた。あとずさる瞳輝の首筋に、生暖かいものが触れたの 編振り返る。 一そして、彼女は見た。闇の鎖に繋がれた、女の姿を ! 契 の ス 「わたしの餌だよ」 男はあっさりと答える。まるで、見られても何のこともないように。 ちそう はら 「人の恐怖は、我らにとって、この上ない馳走 : : : わたしは、孤独にはもう飽きたのだよ。同 0- 」 0 えさ われ とんちゃく こお