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検索対象: 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2
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1. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

「・・ : = 残学ながら、証拠とされる物件が本物であるのかどうか、魔道士ではない自分には 確認することができません。あなたが魔道を用いて、レイム様の意識を戻されてから、面 あや 識のあるなしがわかるというのも、受け入れ難い条件です。レイム様に何か怪しげなこと をされて、取り返しのつかないことになったら、それこそ一大事です」 信用できないとする理由について、ルドウィックの言葉は反論の余地もないものだっ た。少年魔道士は、ルドウィックを直視する。 「失礼ですが、あなたは ? 少年魔道士にねられ、ルドウィックはまともに少年魔道士を見返して、ロを開く。 つか きゅうてい かしこうるわ トーラス・スカーレン様にお仕えする宮廷兵団第八小隊、 「自分は、賢き麗しの女王、 このえ ルドウィック・ガーナードであります。女王近衛バルドザック隊長、ならびにカルバイン 家のベルク子の研により、供をするよう、レイム様を追って王都からまいりました。若 ごえい きのう 干、事情がおありのようなので、距離をおいて護衛しておりました。レイム様には昨日か ら、同行を許されております」 こちょう レイムとの関係をやや誇張し、ルドウィックは少年魔道士に対して強気に出た。 「許しもなく魔道を用いられるならば、こちらとしてもそれなりの態度に出ることをご覚 悟くださいー じゅもんきざ きぞく つるぎ 生まれ正しい貴族であるところの宮廷兵士の剣には、魔道師による呪文が刻まれてい かん もち がた かく

2. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

もんく す・いと、フ ゅうぜん 何か文句でもあるのかと、空になった水筒を持ったまま、キーツは悠然と胸の前で腕組 しょち みする。単純明快という点において、手持ちの品物でできる最良の処置はこれしかない。 きちょう 旅行者にとって貴重な飲料水を、こんなに気前よく、惜しげもなく提供して、手助けして うしだて やろうというのだ。感謝こそされて、おかしくない。何の後ろ楯もなく、保障もない浮き かぎようからだ 草稼業。身体ひとつで稼ぎながら街から街を渡り歩く旅芸人にとっては、飲み水一滴とい あせけっしよう えど、血と汗の結晶であり、道中での命を繋ぐ大切なものである。そして、たどりつい た次の街の飲み水が、自分に適しているとは、必ずしも限らない。だから街から街へ渡り けいたい っちか 歩く時には必ず、十二分の水を携帯する。キーツがこの暮らしをしながら日々培ってき じようず た、上手に生き抜くための生活の知恵である。 きぞくきゅうてい だが平民の旅芸人と貴族の宮廷兵士とでは、常識が根本的に違っていた。 この時代において、階級制度によって定められた身分は、絶対である。行い正しき貴族 めいよそんげん ふぜい には、自己の名誉と尊厳を死守する行動が正当と認められている。旅芸人風情にこんな目 裔にあわされて、黙っていられるはずがない。正規の手続きをみて、女王から帯刀の許可を ぶれいう の得ている兵士であれば、なおさらだ。今のこの状況は、十分に無礼討ちの対象となりう 代る。 にら ぬのじ 十ロふらち 不埒なる無礼者を真正面から睨みつけたルドウィックは、よく布地のこなれた、どこか るろう たびな そまっ きしかん 芻ら見ても旅慣れた流浪の芸人そのものという粗末な身なりをしたこの若者の顔に、既視感 かせ から まち つな

3. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

第五章散歩 けいかいしんあらわ 警戒心を露にして、キーツを睨んだウリデイケは、マントを握る手に力をこめた。 ようせい うそ 妖精はキーツのことを、嘘つきで信用ならないと言っていた。妖精は気に入らないが、 忠告はありがたくいただいておいたほうが、安全である。 「それ以上近寄らないで ! 女だと思って縣鹿にしないでよ ! なめてかかるとひどい目 にあうんだから ! 」 風はウリデイケの背後から、キーツに向かって吹いている。ウリデイケはマントを握っ こしおびつ こうぶくろ ていないほうの手をマントの内側に入れ、腰帯に吊るしてある香に触れた。身につけ 裔ている香袋は、彼女の身を守る武器である。特別に調合した香は、匂いたっことよりも、 ねんまく どく もち の呼吸器の粘膜から吸収させることをおもな目的とする、毒だ。これを用いれば、一時的に まひ 代相手の意識を失わせたり、感覚を麻痺させたりすることができる。 大声を出すとは言わなかったウリデイケに、キーツは笑う。 すぐそばに何人も男がいる、しかもそのうちの一人は見るからに強そうな宮廷兵士で さんぼ にら きゅうてい

4. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

・ウリテイケ ・キーツ 色の瞳をもっ香使い 街から街へと渡り歩く旅 よそお の娘。じつは、逆境時代にレ芸人。軽率な外見を装って イムが仕えたミルフェ姫。 いるが、実際の身分は : ・ ようせい ・妖精 レイムの持っていたマュ ルスズランの種。人の心を 読む能力をもっている。 ・シャダム・レイン 森に住む東の賢者。自分 のための森を創り、転生の たびに同じ森に住むが : ・ ・コンスタンス 最後の女魔道士。禁断の ひじル 秘呪を扱う魔女。かってキ 八ノに想いを寄せていた。 ・ナアス・トル一ーン くろ ・ルドウィック ・サミル 人を憎み、害を及ぼす黒 はくしやくけ ガーナード伯爵家次男に エル・コレンティによって精謐。ひとつ目の真紅のト はけん して宮廷兵士。レイムの護派遣された魔道士。少年だがカゲを自由に駆使する怪物。 衛を任された実直な男。 高級魔道士の位をもつ。 0 こうつか けいそっ おも

5. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

きついてしまって、気の休まる者は誰もいなかった。食べてもかまわないと用意された林 檎も、近寄って手を出すどころか、そちらに視線を向ける者すらいない。所在なく椅子に だんろ 腰かけたり、暖炉の前に立ったりしながら、ただひたすら、時間が過ぎるのを待ってい る。 「 : : : 感じのよい方のようで、よかったですね」え 宮廷兵士としての、日頃から人種偏見はいけないと自らを律しているルドウ ィックが、無に笑を浮かべて言った。レイムも、ぎごちなく規を緩める。 「ええ、本当に」 料理するために、シャダム・レインが自分と同じ顔をした野鳥を絞めた間を撃し しようげき たことは、少なからぬ衝撃だった。それが殺されたことも驚きならば、それを食べるこ かくご とになると覚悟するのも、かなりの勇気がいる。 もうわけ 「あ、あの、ねえレイム : せつかく用意していただいてるのに、とっても申し訳な いんだけど、わたし、あんまりお腹 : : : 」 「それは、なしにしようぜ」 思いつめた顔で声を出したウリデイケを、キーツが冷ややかに止めた。 もんく したく ) 」とわ 食材に文句をつけ、もてなそうと好意的に支度してくれている食事を断るのは、失礼で そんちょう けんじゃ ある。理想主義であり、相手の気持ちを尊重するレイムは、東の賢者であるシャダム・ ご なか りん

6. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

130 黙ってこっそり出しておくなんて、ちょっとは可愛いところもあるではないか。 ままえ キーツが照れたのだろうと、善意に解釈し、ルドウィックは微笑む。レイムが目覚めの くだもの 果物にもらっていたのも、キーツのオレンジだった。レイムがはっきり目を覚まさないう こ、つけん ちに、キーツが少し早く起きて、ひそかに朝食に貢献しようとしていたのではないかと、 めぐ ルドウィックは考えを巡らせたのである。自分のものではないと言ったが、サミルもウリ デイケも、肉があることを知っていたし。 「いや、その : : : 」 」ま 困った顔をするキーツの言いたいことを先読みし、ルドウィックは微笑む。 「華度のことなら、心配いらんぞ。表面黒焦げで、見た目は悪か「たが、中はまだ血が滴 るくらいに新しかったからな。念のため、さっき一口、食してみた」 ま′」うさぐ こうし どくみ 悪くな「ていないか、レイムが魔道で探「たが、それでも公子に食べさせるなら、、毒靺 は必要とルドウィックは主張した。それによって、この肉は傷んでいない、絶対大丈夫 きゅうてい と、レイムとルドウィックは保証する。聖魔道士様の魔道力で確認され、宮廷兵士に試 とな 食お毒味されたものに、異論を唱えることはできなかった。 齪を振って、調子よく肉に塩コシ , ウしながら、ご機嫌で微笑むルドウィックに、 ほおゆる キーツは、ぎごちなく頬を緩める。 「・ : : ・そうか」

7. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

ィックのもとに走った。力をこめて、ルドウィックを揺り動かす。 「起きて ! お願い ! 起きて : : : っ ! 」 この場合、カ勝負の宮廷兵士よりも、ありがたい聖魔道士様のほうがりになるだろ うと考えたキーツは、レイムのところに走っていた。 「おい ! 起きろー どな まぢか むり 肩を掴んで無理やり引き起こし、間近い位置から怒鳴ったキ 1 ツの声に、レイムはゆっ くりと目を開いた。キーツはほっとし、早ロでまくしたてる。 かいぶつ ばもの 「大変なんだ ! 変な化け物が出たんだよ ! あんな怪物あ、俺でも見たことがねえー やつつけないことには、こっちがやられちまうぜ ! 」 しゃべ 目の前で、勢いこんで喋るキーツに、レイムは目を細めるようにして、にこーっと笑っ た。笑ったまま、ばたっともとの場所に倒れた。にこやかに、目を閉じて寝る。 「おいっ : あま 裔「駄目よ ! レイムは寝起き悪いの ! 起き上がらせたら、何か甘いものを飲ませるとか のして、少し時間かけなきや、完全には目が覚めないのよ ! ゅうもうけんかく 古だからウリデイケは、勇猛な剣客であり頼りにはなるが、手間のかかるレイムより先 に、ルドウィックを起こしにかかったのだ。 したう いまいましげに舌打ちしたキーツは、何かないものかと素早く思いを巡らせる。飲ませ てま

8. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

だめ 「ちょっと、駄目だよ ! 僕にくつつくと、君までたくさん濡れてしまうから : ・ 「いや ! 離れないもの ! 」 まどうし うやま レイムを敬う態度をとる兵士と少年魔道士、レイムを知っているらしい旅芸人と、見比 べてみて、ウリデイケは自分だけが、今のレイムについて何も知らない部外者だと感じて いた。事情は知らないが、せつかくレイムと会えたのに、ここでうかつに引き離された ら、もう一一度とこんな機会は巡ってきそうもない感じがする。 いっしょ 「あたしはね、レイムと一緒にいるの ! ずうっと一緒にいるんだから ! 誰が何て言っ たって、もう決めたんだから ! 」 くちょう 断固とした口調で、ウリデイケはレイムとルドウィックに言いきった。 しんそここま こはくいろひとみ 強固な意志を見せる琥珀色の瞳に、レイムは心底困りきった顔をし、そしてルドウィッ クに教える。 「今朝、あそこを出ようとした時に、大門の手まえで会ったんです : : : 。何でも、お店で まち ほうこ、つ の奉公が明けたので、一緒に街を出る者を待っていたとかで : : : 」 つまりは、何も関係ない、ただの行きずり。つきまとわれているだけ。 「 : ・・ : そうですか」 「そうなんです」 レイムにうなずかれ、ルドウィックはもう一人の人物についてねる。

9. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

まどうし ( この人はレイムの、魔道士 : : : ) きぞく いくら歳若い少年といっても、魔道士を供にできるのは、かなり階級の高い貴族か、魔 道師が認めるほどの、よほどの事情をもつ者だけである。しかもその魔道士は、高級魔道 士を示す色の決衣をまとっている。それだけの魔道士が供になるということは ぬす ウリデイケは、そしてもう一人の者、ルドウィックをこっそり盗み見た。 きゅうてい 宮廷兵士であると自己紹介した彼も、レイムを様と呼んでうやまっている。 ( どうなってるの : : : ? ) レイム一人に、そっと近寄って訊きたくても、べったりとくつついている妖精が邪魔 で、とても話なんてできない。 つまらなそうに、ウリデイケは自分の作ったサンドイッチを、ちびちびとかじる。少し 塩味が強いそれは、いかにも初心者の料理というぎごちなさがあった。 かか 両手で抱え持つようにしてサンドイッチをかじりながら、視線だけでちらりとレイムを 裔見たウリデイケと、レイムの肩の上で寝そべっていた妖精の目があった。ウリデイケの表 じわる の情に、妖精は地悪く笑う。 代「ねえ、レイム、わたし、ちょっとあなたからもらっていい ? 」 . し . し 「え ? ああ。 こころよ 分けてあげると約束したレイムは、快く応じた。 としわか とも ようせい じゃま

10. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

( こいつ、ひょっとして : この場にいる連中の誰にも教えていない、自分の名前を口に出され、キ 1 ツはひくっと 頬をひきつらせる。動揺したらしいキーツに、ち識った顔で妖精が笑った。 うそ むだ 「そうよ ! わたし、心が読めるんだから ! 隠しごとも嘘も、ぜーんぶ無駄よっー 今 しゃべ あんたが何考えてるかだって、喋れるんだからね ! 「だったら何だよ ? それがどうした ? 言いたきや言えよ。それに、俺は芸人だよ。 ひと あっちこっち渡り歩いて、他人に言えないようなこともやってきたし、嘘だって山ほどっ いてるよ。嘘をつくのも商売さ ! 俺が ! 生きてくためだからな ! ぜんぜんまったく 悪かあないね ! 」 見つからなければ犯罪ではない。捕まらなければ犯罪者ではない。キーツのそれは、レ むえん じ、」こうてい イムにはおよそ無縁な、あまりに乱暴な自己肯定理論。 ちつじよしつこうしゃ 世の中に犯罪者、および犯罪者予備軍は、攝いて捨てるほどいる。法と秩序の執行者で きゅうてい たいき ある宮廷兵士のルドウィックは、やれやれと溜め息をつく。こんな考え方をする連中が、 ばっ 世の中には多すぎるのだ。罰せられる犯罪者は、九割が何らかの常習者であり、性質的に 危険な、要注意人物である。 「なあによ ! 開き直るの e: 信じらんないっー 「信じてもらわなくってけっこうー