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検索対象: 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2
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1. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

しゅんかん つるぎ じゅう クは、目を開いた瞬間から元気な様子で、立ち上がると剣とマントと上着をとって、柔 なんたいそう 軟体操などをはじめた。日課であるらしく、慣れた様子で行われるそれを、レイムはばん とうぶん やりした顔で観賞した。糖分が吸収されていくにしたがって、頭がしだいにはっきりして くる なが 健康的で快活なルドウィックを眺めながら、毎度のことではあるのだが、一日の初め むだ ひと に、無駄な時間を他人よりかけなければならない厄介な体質に、レイムは嫌気がさして溜 とくちょう こうとうまどうしゅうとく め息をついた。それが彼を構成する特徴のひとつであるのだから、高等魔道を修得して ていけつあっ も、低血圧の体質改善まではできないようである。 たつぶり時間をかけて、ルドウィックが柔軟体操を終わらせても、サミルたち三人は、 まだぐっすり眠っていた。 さが 「明るくなりましたから水を探して、何か食事の支度しますか ? うるさくないよう、いつもより声量をおさえて問いかけたルドウィックは、顔に乱れか かる金色の髪をそっと手でき上げるレイムの姿に、どきりとして口をつぐんだ。 まだ完全に覚めきっていないレイムは、物憂げでどこか妖で、それが男とわかってい みりよく びれい ても美麗で、意識させずにおかない圧倒的な魅力を放っている。 「 : : : そうですね : まっげ ままた 長い睫を動かしてゆっくりと瞬きし、レイムは考える。荷物の中に残っていた食料は、 やっかい したく

2. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

134 キーツとサミルが、昨夜見た人間の顔をもつ大きなに似た、毛むくじゃらのものにつ しんけん いて話した。予想していたとおり、レイムは驚きながら真剣な目で話を聞き、ルドウィッ 、つさん′、さ しようこ クは夢でも見たのではないかと、胡散臭そうに鼻を鳴らした。信じろと言うのなら、証拠 うんぬん 云々と持ちだされ、キ 1 ツもサミルも、嫌な顔をする。その大事な証拠物品は、今現在ル ドウィックの腹の中で、消化されているところである。 「でも、わたしも見ましたわ。一一人とも、ぐっすり眠ってて、いくら起こしても起きない んですもの : ・ すねたような顔でウリデイケに言われ、さすがにこれにはルドウィックも冗と太刀 、つ い′」こち 打ちできない様子で、居心地悪そうに頭を下げた。寝起きが悪いので、そういうことなら たいき いくらあってもおかしくはないレイムは、溜め息をつく。 「とにかく、無事でよかったですね : 攤認は、レイムを起こそうとして提供した、キーツのオレンジ一個である。

3. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

110 後ろから、手を握ろうとしているのか。むっとして、ウリデイケは振り返る。 「ちょっと : 怒ったウリデイケに、きよとんとキーツは目を瞬く。 「何だ ? 」 斜め後ろを歩きながらねたキーツは、ウリデイケの右側にいた。 はじ 声が聞こえた方向にウリデイケは驚き、弾かれるようにキーツのほうに向き直る。 だ柄なルドウィックが歩いてもさしつかえないほど、キーツとは距離が開いていた。こ れではとても、ウリデイケの手に触れられるはずはない。 かんしよく だがウリデイケの左手には、さっき触れたものの感触が残っている。柔らかいだけで かかったのだ。自分が身につけた衣服などの、勘いとは思えない。 ウリデイケはうろたえ、おろおろしながら胸の前で手を握りしめる。 ろうばい 狼狽するウリデイケの様子に、キーツは眉をひそめる。 「何だ ? いったいどうした ? 何かあったのか ? 」 「何か : : : 、手にあたったの」 「虫じゃねえのか ? 」 ひざたけ 足もとの雑草は、だいたいが足首の高さだが、丈の高い種の物ならウリデイケの膝丈く まゆ またた たけ しゅ

4. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

こま 「これは : : : 、困ったな : ・ レイムは眉をひそめて、タオルで水気を吸わせてみたが、草花のの薄い表皮は、すっ かわ かりふやけてしまっていた。種子とはいえ、植物を火で乾かすわけにはいか 自分の出番かと、サミルがレイムに手助けを申し出る。 まどう 「魔道で元に戻しましようか ? だめ 「いえ、これは駄目です。これには、術をかけるわけにはいか 「ねえ、それって何かしい植物の種なの ? 」 興味たつぶりという表情のウリデイケに質問され、レイムは苦笑する。 「マュルスズランなんですが : みちまた かれん 可憐な花を咲かせるが、ありふれた道端の雑草である。 、あの」 思い出して、サミルはうなずいた。一度レイムの魔道で種子に戻したものだ。重ねて術 をせば、が絡む虞かある。 たかが雑草の種「に、真剣な顔で考えこんでいるレイムに、キ 1 ツは辟易した様子で は 息を吐き捨てる。 かんきよう 「ふやかしちまったんなら、植えれば ? ここ、これだけ草ぼうばうなんだから、環境 しいんじゃないの ? きっとよく育つよ」

5. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

246 たいき キ 1 ツは、仕方ないというように、小さく溜め息をついた。さっきは勢いでレイムに怒 鳴ってしまったが、なにもレイムが悪いわけではなかった。頭を十分に冷やしてから、も う一度と出直したのだが、少しばかり遅かったか。 こうし キ 1 ツが公子に用事というのは、ルドウィックにはどうにも解せない。どんな用があっ たのか、問おうとしたルドウィックより先に、視線を逸らし横を向いたまま、キ 1 ツがロ を開いた。 だんな 「ーー旦那あ、変なもの、見なかったか ? 」 「変なもの ? 「見なかったんなら、べつにいいんだけどさ : : : 」 しいと言うわりには、キーツの態度は何だか、おかしい。 「何か見たのか ? 」 「・ : ・ : ちょっとね、気になることがあっただけで。つまらないことだろうけど」 「なあに ? 」 様子のおかしいことに気がついて、ウリデイケも会話に参加する。 こうやってねてくるのなら、ウリデイケは何も見ていないのだと、キーツは判断し ぶきみ しんく た。一つ目の真紅のトカゲ。不可解で不気味なもの。あれを見ていれば、とてもこんなに まどうし けつか、 平然としていられない。安全域となる結をつくることのできる魔道士たちは、それをす

6. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

224 「疲れたかい ? 」 やさ みどりひとみ 優しく声をかけながら、翠の瞳で見つめられ、ウリデイケははにかむように笑う。 だいじようぶ 「少しだけね。でも大丈夫註 らだこくし 歩き疲れただけで、特別に身体を酷使したわけではない。慣れないことをしたため、精 ふたん 神的に少し負担がかかっただけだ。だがそれも、レイムがそばにいてくれるなら、すぐに 癒される。レイムの存在は、ウリデイケにとって絶対だ。 レイムに対し、やや強がっているようにも見えるウリデイケに、サミルが進み出る。 まどう 「魔道をさしあげます」 えんりよ ウリデイケは遠慮したが、レイムにサミルから癒しの魔道を受け取るように言われ、こ れに従った。 すが 癒しの魔道が与えられ、ウリデイケは身体から疲れが消え、全身が清しく軽くなるのを 感じた。癒しと同時に、清めも与えられていたらしく、汗をかいていた身体も汚れていた ここちょ 衣服も、さつばりと心地好くなる。 ようしゃ 「・・・・ : これで、ご容赦願えますか・・・・ : ? 」 魔道力を放出したためだろう、少し息があがった様子で、サミルは静かに印を解く。 「ええ。十分だわ。どうもありがとう」 礼を言ったウリデイケに、サミルは薄く笑う。 あせ いんと よご

7. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

150 八方に伸ばした根を足のように使って、ゆっくりと。 木が歩くことによって、土が掘り返されて轣らかくなる。ひっきりなしに掘り返されて あしあと いるので、ついた足跡もすぐに消えていくのだ。 どうり けものみち 森の中にどんな生物がいようとも、獣道などないのは道理。 立ち止まって、落ち着いてみて、はじめてその事実がわかった。 「そんな : ・ じゃあレイムの證った木・ : 目の前で起こったことに驚き、茫然としたウリデイケは、。一前までそこになかっ た、土のあいだから出たばかりの木の根につまずいて転んだ。 「動かないでください ! 」 ひめい どな 悲鳴のような声でサミルが怒鳴ったが、すでに全員動いてしまった後だった。 どっちから来たのか、わからなくなっていた。 そして周囲の樹木は、様子をうい、視線が逸らされるのを待って、動いているのだ。よ そ見した瞬間に、移動したり、横を向いていたりして、同じ形でとどまることをしない 人が大きく一歩動くように、素早く移動している。 さが ウリデイケは転んだまま、さっきの木を探したが、一度目を離してしまった木を見つけ ることは、不可能だった。 だいじようぶ 「大丈夫です ! レイム様なら、必ず見つけます : : : ! 」 ころ

8. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

まどうさぐ ただちに魔道で探りましようと、言いかけたレイムの目の前で、金色の光が弾けた。 ( あ : : : っ ! ) 目を見開いたまま、レイムがびくんと震えた。かすかにうつむいて、レイムは顔に片手 をあてる。網膜にくつきりと残像が残るほど強烈な、一。の光。 「どうしたの ? レイム」 レイムのに小さな手をあてて、心配して妖糯がねた。 「レイム ? 言葉を切ったレイムに、何かあったかと、ウリデイケが足早に近寄る。 「レイム様、どうなさいましたか ? 」 ルドウィックの足音も、レイムの背後に近づいた。 目をかばうようなレイムの様子に、キーツは眉をひそめる。 「ーー目、どうかしたのか ? 裔「あ : ・ ままた のレイムは顔に手をあてたまま、ばちばちと瞬きを繰り返す。 代あれだけ強烈な光だったのだから、ほかの者も、何ごとかと騒いでも不思議はない。そ れなのに、皆のこの反応から察するに、自分以外にそれを見た者はいないらしい。一人だ けに見えた光。内側にあって、まるでレイムにだけ、働きかけるもののように ふる まゆ さわ はじ

9. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

いきなり身動きした二人に、レイムはきよとんとする。 「 ? どうかしましたか ? 」 何かあったのかとねられ、べつにと答えてキーツは横を向き、ルドウィックは黙って 顔をうつむけた。 レイムから視線を逸らしたことで、よそに目をやることになったキーツは、ぼーっと見 まわ ちょうじゅうるい とれていたあいだに、温泉の周りに花が咲き乱れ、そっと夜行性の鳥獣類が集まってい たことに気づいて驚く。 ( な、何だ : ・ 声を出そうにも、周りの圧倒的な数に気をのまれ、咽が干あがってしまった。に類す るものにだけ形が写される植物をき、全部シャダム・レインの顔というのも、壮絶なも のがある。 不自然におとなしくなったキーツに気づき、レイムとルドウィックも、周りの様子を知 ぎようこ 裔る。うっと、ルドウィックは声にならないものをもらして凝固し、レイムは目を瞬く。 「ーー込んできたみたいですね」 代 自分がそれらを惹き寄せているなどとは夢にもおもわず、集まっている鳥獣たちに、レ 古 イムは単純にそう判断した。いい温泉だから、利用したいものも多いのだろう。草花まで いるのは、ちょっとよくわからないが、なにしろシャダム・レインの森の植物である。多 またた

10. 古代神の末裔 プラパ・ゼータ外伝 金色の摩道公子 2

思い出したときこそ、別れの間であることを、ウリデイケの心の深み、冥い部分だ けが知っている つるぎ 目の端で、黒いものが動いた気がして、剣を構えたルドウィックが弾かれるように振り 返った。 小型の動物のものらしい黒色の細長い尻尾が、する「と木のの後ろに隠れる。 すうっとルドウィックは目を細める。 シャダム・レインにそっくりの顔を持っていれば問題ないが、奇形の変種だった場合、 すき こうげきてききようぼう 攻撃的で凶暴だ。隙を見せた瞬間に飛びかかられる。顔面を確認しないことには、小 ゆだん 物であっても油断できない。 さっきおさ 殺気を抑え、忍び寄るルドウィックは、木の幹の後ろに、まだその小動物が潜んでいる 裔ことを感じる。 たたわ いちげき の攻撃を仕かけてくるようなら、一撃で頭から叩き割る さつりくしゃ 古非情の殺戮者となって、そっと近づくルドウィックに気づかぬ様子で、幹の後ろに隠れ だいじゃ ろしゆっ たものが移動する。土から露出し、大蛇の腹にも似た格好をした根のところへ。 黒い尻尾の動物は、何か、地面を素早く逾うものを追っているらしい。 はじ ひそ