見え - みる会図書館


検索対象: 黄金の日々月夜の珈琲館
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1. 黄金の日々月夜の珈琲館

154 後で、理奈は待ってましたとばかりに口を開いた。 「電話くらい欲しかったわ。そしたらあたしだって、こんなとこまで来たりしなかったの に。ねえ、じゃあ、いつなら 「相多さん。ここにはほかのお客様もいらっしやるわ」 すかさず麻子が理奈を制した。 「こんな所じゃなんだから、後日改めて、ということでいいかしら ? ていねい 言葉は丁寧だが、を感じさせる物腰に、さすがの理奈も自分の旗色の悪さを感じ 取ったらしい 「そ、そうね。じゃ、連絡ちょうだい」 「ええ、必ず 「待ってるから。じゃあね、亨 ! 岡野に代わって返事をした麻子に、ムッとした表情でわざとそう答えると、理奈はよう やく立ち去った。 「姉さん : : : 」 ホッとした青木の傍らで、そう呟いたのは岡野だった。 かたわ つぶや はたいろ

2. 黄金の日々月夜の珈琲館

110 一方、浴室では、湯上がりの青木克巳がバスタオルを首にかけたまま髭を剃り冬えたと ころだった。 洗面台は広く、ちょっとしたホテル並みに全面が鏡張りになっている。そこに向かっ ほお て、形のいい手で頬から顎をさすりながら左右交互に剃り残しを確認すると、青木は重た い柄の e 字カミソリを湯で洗い、水けを切ってグラスに立てた。 菊地も青木も、決して毛深いほうではない。男としてはごく普通の部類で、一一人とも普 ーで手軽にすませている。そのほうがずっと能率もよく、手入れも簡単 段は電気シェー だからだが、青木だけは時間に余裕がある限り、こうしてゆっくりとカミソリを当てるほ うを好んだ。 刃物の扱いには慣れているからか、性格に神経質なところがないせいで動作は雑に見え るが、仕上がりはそこそこのプロ並みである。 お湯で温めたフ = イスタオルをり、わずかにシ 1 ビングフォームの残った口元に当 てると、青木は気持ちよさそうに息を吐いた。さすがに当直室に用意された使い捨てのカ ミソリとは使用感が違うせいか、髭剃り後の熱いタオルも格別だ。

3. 黄金の日々月夜の珈琲館

ねえ : : : 青木さん この人 誰ですか ? うちの高校に しましたつけ ?

4. 黄金の日々月夜の珈琲館

志乃・ : : ・だろ ? へえ : ・ 今でも 克ちゃんとつるんで るんだ : ・ いちだんとセクシ 1 に なったね D ↓リ」、つ・も・

5. 黄金の日々月夜の珈琲館

うるさ・ ■■ ■■・■ ( 、あいつにも 》新しい夏がやってきたんだな : ・ 製み■第 耳が弱点なんですってね : ・ ねえ : ・青木さん : ・

6. 黄金の日々月夜の珈琲館

これって : アルバムですね ? ああ : ・まだそんなのが 残ってたのか : ・ あおき へえ・ : 青木さんって 昔つから「青木さん』 なんですねーー可愛い D

7. 黄金の日々月夜の珈琲館

今・ : 青木さんから聞きました だったら言っとくべきかな 僕はね・ : 彼に運命的な 何かを感じてるんですよ そう : 運命的なもの ? ええーー・そうです

8. 黄金の日々月夜の珈琲館

これは大事なイベントなんだ たから青木さんも接待を 引き受けたんた : だけど私の心臓はキリキリと音をたててる くそっー ねえ : ・ あそこにいる菊地先生って 克ちゃんの恋人だろ ? そうでなきや 昔の恋人なんかと 何を : ・

9. 黄金の日々月夜の珈琲館

「見ただろう ? 」 日二人が出ていったのを確認した後で、青木を振り返って津川が言った。痛い部分に触れ 金られたような顔をしている。 「あんなことがあっても、あいつは何も覚えていない。どんなに俺が愛しても、そして追 いつめても、あいつの頭の中では、みんなあんなふうにリセットされてしまうんだ」 「話は改めてしたら ? 車、長くは停めておけないわ」 麻子がためらいがちに口を開いた。 「そうだね」 岡野はまだ何か話したい様子だったが、麻子にそう答えると津川を見て言った。 「岡野亨といいます」 やすゆき 「津川です。津川泰之。図書館の横の総合病院に勤務しているから、連絡はそこに」 「へえ、お医者さんかあ : ・・ : 。、 必ず連絡します ! くったく 屈託なくそう言った後で、津川と青木に軽く礼をすると、岡野は姉を追って店を出て っ・」 0 し十 /

10. 黄金の日々月夜の珈琲館

135 黄金の日々 は豊かで、生気に溢れ、話しているとこちらまで元気になるような気がした。 「それにしても、どうして彼を描こうなんて思ったんだい ? 青木が訊くと、「どうしてって : と困ったようにロごもった後で、岡野は照れくさ そうに髪をかき上げた。 「津川さんって、僕の理想だったんです」 「理想っ ? 」 「あっ ! 理想といっても、鳩れとか、そんな意味じゃありませんよ」 あわ 思わずコーヒーを吹き出しそうになった青木を見て、岡野は慌てて言い添えた。 なんて言うのかな : : : 絵を描くうえで 「もちろん、それに値する人だと思いますけど の理想ってあるんですよ。好みっていうのか」 「好みねえ・ : 「いっからか、自分の中に理想像みたいなのがあったんです。人にもよるんだろうけど、 絵描きとか彫刻家とかって、やつばりどこかに自分なりの理想を持ってるから、それを追 いかけるんじゃないかな」 「君にとっては、それが津川だったというわけか」 「はい。 初めてこの病院で津川先生を見かけた時、自分でもびつくりしました。『探して あふ