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検索対象: 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣
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1. 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣

人と組んで、ミゼルの使徒として最初の活動をする。そのうえで、続けていけるかどうか ぐうぜん を判断することになる。ミゼルの使徒として活動している回国の途中で、偶然出会った者 と意気投合し、次には新しく組んで回国しようと、約束を交わして聖地で再会することも ある。 けいじばん 紹介を受ければ、簡単に仲間が見つかると思っていたリンゼは、掲示板の数十枚の登録 しぶ 票に目を通した段階で、渋い顔になった。同行者として求められている項目にも、たくさ ん問題がある。女性ではないので、そのことについては最初から問題外だが、年齢もリン ゼよりもずっと上を募集するものばかりだ。リンゼが持っている教師の資格よりも、医者 や看護婦などの医療関係者、土地を開墾したり治水の技術と知識のある技師、農耕や牧畜 に関する専門知識を持つ者を、仲間として求めている登録票が多い。 だめ ( もっと勉強しなくちゃ、駄目なのかなあ : : : ) かてい リンゼのように一般教育課程を修了しただけの使徒は、ほとんどいないようだ。 しぼ みあふ さっきまで希望に燃え、自信に満ち溢れていたリンゼは、気持ちがしゅうっと萎んでい くのを感じる。 しょむしゅうどうじよ しんかん 事務処理の終わった書類を届けに受付に向かった庶務の修道女は、書類を神官に受け 渡して帰ろうとしたとき、受付の卓の足元に落ちていた健箋らしき紙片を見つけた。便箋 しと

2. 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣

「はい 荷物を持ったまま、ばんやりしていても仕方ない。 部屋の隅に荷物を置き、リンゼは帽子を取ってライトコ 1 トを脱いだ。下に食事をしに しと いくのに、ミゼルの使徒の制服を着ていく必要もない。ライトコートを壁にかけ、帽子置 だな き棚に帽子をのせたリンゼは、重たい荷物から解放された肩を軽く揉みほぐしながら、こ れで準備ができたとジェイに振り返った。 かわ ジェイが左手にはめている黒い革の手袋は、肘のあたりまである長いもので、腕よりも 少しばかり太めになっているそれは、腕を守る籠手のような防具を連想させた。脱いだ ふきげん コートを椅子の背にかけたジェイは、腕組みし、不機嫌そうな顔でリンゼを見つめる。 ( う : 躰るような目つきでジ = イに見つめられ、肩を揉みながら中途半端な笑顔を浮かべて、 リンゼは固まる。いつでもなんだか怒っているようで、ロ数の少ないジェイと二人になる のは、ものすごく気まずい うなが 肩を揉んでいるリンゼを見つめ、ジェイは促すように寝台を指さして命じた。 「脱げ」 「は ? ひじ こて

3. 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣

152 「おはよう、ジェイ」 ささや 耳元で囁くようなルミの声で目を開けたジェイは、左腕を伸ばしてルミの首を捕らえて 引き寄せた。目を閉じて、ルミの顔に自分の頬を触れ合わせ、手袋をしていない右手で、 さこっ 男性にしては細いルミの首から鎖骨のあたりをゆっくりと撫でる。 真後ろにある窓から射しこむ光で、二人の金色の髪が輝き、後光が射すかのような光景 に目を奪われて、リンゼは思わず息をむ。聖地の使徒の家で、初めて二人の姿を見たと きと、それはとてもよく似ていて 惚けたようにリンゼが見つめていたのは、ほんの五秒ほどのことだ。首にかけた左手を ジェイが解き、ルミはリンゼに振り返る。 「はい、次の患者さん」 ほまえ につこり微笑んで、ルミは腰を上げてそこから退いた。 ふかみどりいろひとみ しりもち ジェイの深緑色の瞳に見つめられ、まだ尻餅をついて座りこんだまま、リンゼはどき ふきげん んとする。深緑の瞳で躰るようにリンゼを見つめ、不機嫌な顔でジェイは言った。 「ーー足は、痛むか : ジェイのところからやってきたルミは、リンゼの頭の上に、ばんと手を置き、犬にでも ほお

4. 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣

そうはく と喉を鳴らしたリンゼは、蒼白になって口を押さえる。 な びちゃびちゃと血を舐める音、肉を食いちぎる音の奥から、喉の奥をごばごばと鳴らし あわだ かす て泡立たせ、微かに人間の声が聞こえた。 「祈りで助かる者などいない」 くろせいれい にくかい 黒精霊に食らわれ、次第に小さくなってゆく肉塊を見つめたジェイは、息を吐き捨て、 背を向けた。 「行くよ、リンゼ」 「は、はい・ たた ルミに肩を叩かれ、リンゼはがくがくと頷いた。 うなず

5. 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣

身動きできない男たちは、泣き笑いのような形に顔を歪める。 「こんなに、一度に : : : 」 こくれん 使ってしまわなくともいいのにと、黒蓮の香りに酔いしれながら呟く男たちを、ジェイ は冷ややかに見つめ返す。 ぞわり やみ そうけだ 闇の底で蠢くモノの気配を感じ取り、リンゼは総毛立つのを感じた。かちかちと奥歯が 音を立てそうな、いたたまれない何かに襲われる。 不安でたまらない表情のリンゼに、ジェイは言う。 しと かご 「ミゼルの使徒は、神の加護を受けている」 囚 おか 虜「よく見ておくといい。 これが、禁を犯すということだ」 蓮 隠れて風上にいるニキたちにも聞こえるように言い、ルミは妖艶に微笑む。 黒 チイチイチイチイ、キイ : ・ うごめ ゆが ようえんほまえ つぶや

6. 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣

61 黒蓮の虜囚 て、リンゼは慌てる。 「あ、あの : ・ 一階に下りたジェイは、そのまままっすぐ受付に歩いていき、ルミはホールにある大き かっこう きれい な姿見の前に立ち、自分の格好が綺麗に整っているか、確認する。 誰もいない受付に向かったジェイは、白墨を取ると、部屋番号の横に書かれていた自分 たちの名前を、一一本線を引いて消した。 ぼうぜん かっ 荷物を担いで階段を下りてきたリンゼは、呆然としてジェイの行動を見つめる。どこか ふかみどりいろひとみにら ふきげん 眠そうな、不機嫌な顔をして振り向いたジェイは、リンゼを深緑色の瞳で睨みつけるよ うにして言った。 「行くぞ」 あわ

7. 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣

んでいたリンゼには、考えっかなかったことだ。 少し落ち着いたリンゼに、小袋を見せてジェイは尋ねる。 「これはなんだ ? 」 「ーーーお守りです」 素直な声音で答えたリンゼを、じっとジェイは見つめる。 「それだけか ? 「袋の中身は、元気の出る呪い粉です。ひとみを燭の火に振りかけると、ほんの少し せいれい だけ香りがするんだって教えてもらいました。その香りは精霊が好む香りなんだそうで す。お守りだから、効果が消えないように、誰にも見られないようにつて、言われたんだ リンゼは言いながら、少しむくれる。質問しているジェイとルミの様子を見、ジェイが 持っている小袋を見て、はっとハッシュとエレインは顔色を変えた。 「おい、ジェイ : 囚 虜「まさかそれ : したた 蓮 顔色を変えた二人の様子に、リンゼはきよとんとして目を瞬く。 うなず ジェイはハッシュとエレインに頷いた。 こくれん 「黒蓮だ」

8. 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣

244 しばたた 意見しようとしたリンゼは、唐突に言ったジェイの言葉を耳にして、目を瞬く。 ジェイは眼球だけを動かして、リンゼを見、指をさした。 「ーー・垂らすと、殺す」 ジェイが指さしていたのは、リンゼではなく、梁のハンガーに掛け置かれた白いコート 」っ一」 0 よだれ ジェイの白いコートを見つめて、リンゼは考える。涎を垂らすなと言われたのは、この 町に来る乗り合いトカゲ車でのことだ。でも、寝小便というのは : : シャッ」 「あ、はい 起き上がったジェイに言われ、リンゼは近くにあった木箱からシャツを取り出した。 からだ すいりゅう せいさんきずあと シャツを渡す際に、ジェイの身体につけられた、水竜の形を模した凄惨な傷痕を目にし たリンゼは、どきりとしてをみ、思わず目を逸らす。どんなふうになっているものな ゅうわく のか、傷痕を近くで見たいという誘惑にかられるのだが、興味本位でそれをするのは、あ まりにも失礼で恥じるべき行いだ。 「 : : : 着替えてこい」 「はい

9. 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣

264 してはたいして役に立てないかもしれないが、エレインのことを心配するハッシュと、エ レインの役には立てそうだ。 「で、どこに向かうわけなんだい ? 世話になった雉子亭のハッシュとエレインに手を振って別れ、町を出るという報告と手 まどうし と、つ 続きをしに魔道士の塔に向かって歩きながら、ルミはジェイに尋ねる。 「ーーーカナ 1 ル : 「ふ 1 ん。予定どおりなんだ」 「急ぐのなら、車に乗ったほうがいいですよね」 言ったリンゼを、煙草を吸いながら眼球だけ動かしたジェイが、深緑の瞳で見つめた。 ジェイの耳は、まだ赤い。 きげん 「リンゼ、こっち側においで。ジェイは今、機嫌が悪いようだから」 「はあい」 うなが くすくす笑うルミに促され、二人のあいだにいたリンゼは、少し歩く速度を落とし、後 ろをまわってルミの横に歩く場所を変える。普段から機嫌の悪そうなジェイは、怒ってい てもよくわからない。 ふかみどりひとみ

10. 黒蓮の虜囚 プラパ・ゼータ ミゼルの使徒1⃣

第十章心機 窓から射しこむ光が眩しくて、顔を動かしたリンゼは、顔の上を滑り、ばさりと枕に落 ちたものに驚いて目を開けた。 てぬぐ ( 手拭い : : : ? ) まばた 瞬きしたリンゼは、目の前に落ちた手拭いを見つめて起き上がり、小卓の上に置かれた 洗面器に水が入っていることに気づく。 ( あれ ? 僕・・ : : ) かばん きぎすてい 雉子亭に戻ってきた記憶がなかった。ここに来るまで使っていた鞄とトロセロに作って もらった鞄は、書き物机の上にきちんと並んでのっていて、昨日、出して寝台の上に広げ 囚 ていた荷物は見当たらない。 蓮 寝台を出たリンゼは、書き物机の上の新しい鞄の蓋を開いた。出しつばなしにしておい 黒 たばこすがら た荷物は、きちんと整理されてしまわれている。書き物机の上の灰皿には、煙草の吸い殼 が六つほど転がっていた。 まぶ ふた まくら