第一一章学園の怪人 ろうか わたしは、放課後、優と並んで、廊下を歩いて、生徒会室へ向かっていた。 「ーーでね、あのショーンくんをカレシにしたいの。優も、協力してねー たた 優は、ポンと、わたしの背中を叩いた。 「まかせて。できるだけ、応援するよ。りにしてていいよ」 「だけど、優も、カレシいないじゃない。カレシの作り方とか、わかる ? 「そりゃあ、 : わからないよ」 優は、胸を張りかけて、やめた。 「クラスじゅうどころか、ショーンくんなら、学校じゅうの女の子が狙ってるわ。あんな にかっこ ) ハンサムなハーフの男の子なんて、モデルやタレントでもいないわ。上級 かいじん ゅう ねら
134 を植えつけ、混乱させて目的を果たす」 優が、答えた。 高瀬くんが、言った。 かいじん 「しかし、優。あのポャ騒ぎのときは、学園の怪人は、わざわざ姿を見せただけで、高島 さんは襲われてはいないよ」 「それは、あまりにも生徒たちが混乱して、チャンスがなかっただけかもしれないんじゃ ないかな ? 」 秀が、手帳を広げた。 「ボクたちの聞き込みだと、高島さんと付き合っていて、フラれた男の子たちゃ、現在の カレシも、突き止めたの。優と手分けして、各自のアリバイを調べたんだけど、全員、シ ロだった。高島さんが、いまのカレシに秘密で、学園外の男の子と付き合っていたとした ら、お手上げなんだけどね」 優が、言いそえた。 「高島さんは、ほんとは、亨くんに目をつけていたらしいよ。川路さんにかこつけて、応 援するようにみせたりしている一方で、気があったみたい。いまのカレシが、高島さん は、いつも、本郷くんと自分を比べるって、文句を言っていたくらいだもん」 なっとく わたしは、それを聞いて、納得がいった。 おそ さわ
ら、これ見よがしに言いまわるタイプだよ。会長は、カレシがいないから、そういう女心 はわかんないんだよ」 高瀬くんたら、なによー 失礼しちゃうわー カレシ予備軍なら、ショーンがいるんだからね。 それにしても、この場に亨くんがいないと、なんだか、気が抜けちゃう。 亨くんは、意地悪で、クールだけど、それでも、イザっていうときは、みんなを引っ 張っていくもんね。 責任感が強すぎるのも、問題だよ。 もど 早く元気になって、もとの亨くんに戻ってほしい。 とおる 次の日。 亨くんが、生徒会室にやってきた。 自分から話をしないし、話しかけても、返事もしない。
どっちがほんとの亨くんなのよ。 二重人格なんだから。 あきれちゃうわ。 でも、わたしって、単純だから【 ママの手作りのアップルバイを頬ばっていると、さっきの亨くんとのけんかなんか、け ろっと忘れちゃう。 「アフ、アフ、アチチッー ママのアップルバイ、中身は、まだ熱々。 「里奈、ガッガッしないで、ゆっくり食べろよ。あーあ、ロの端に、パイのかけら、つけ ぎようぎ ちゃって。女の子なんだから、少しは行儀よくしろよ。そんなんだから、いつまでたって もカレシができないんだよ」 会なんですって ! 生許せないわっー 「余計なお世話よ。カレシの前じゃ、こんな食べ方しないもん。おとなしく上品にお嬢様 するわ」 「そういうのは、日ごろから、いつもやってなきや、いざとなったときにポロが出るんだ 四から」
生だって、ライバルよ。年なんか、関係ないもん」 とおる わたしの頭の中に、ママと亨くんの寄り添う姿が浮かんだ。 優が、そんなわたしに言った。 りな みりよく 「とにかく、ショーンくんと友達になって、里奈の魅力をアピ 1 ルするよ。カノジョにす るんだったら、絶対、里奈がおすすめだって、がんばるー 「なんだか、生徒会長に立候補したときみたい」 かつらぎ 「里奈、心配しなくていいよ。里奈は、桂木先生に似て、スタイルがよくて、顔はアイド ル系なんだから。いままでカレシがいなかったのが不思議なくらいなんだよ。ねえ、ほん ほん′」う とに、本郷くんとはーー」 「ない、なしなしー わたしは、プンプンと、両手を振った。 会やつばり、カレシができなかったのって、亨くんとひとっ屋根の下で暮らしていたり、 生いっしょにいる時間が長いからだわ。 亨くんのやつ。 ぶひとのしあわせを、ぜーんぶ自分のものにしちゃって。 亨くんに、愛とか恋なんて感じたこと、ないわ。 だって、あいつは、パパなんだもん。
45 あぶない ! 生徒会探偵団 ほんとに、さびしかったわ。 だけど、そこらへんのダサイ男の子で妥協しなかった自分を、いまはほめてやりたい。 こうなったら。 ショーンを。 絶対、カレシにするんだから ! だきよう
ショーンが、前の席に座った。 広い背中。 プレザーが、すっきりと、大きなからだを包んでいる。 ショ 1 ンのプロンドを見ていると、ここが日本じゃないみたい。 わたしだけ、アメリカのハイスクールにいるみたい。 クラスのダサイ男の子なんて、見たくもない。 わたしは、前しか見えないように、両方の手のひらを、顔の両側に立てた。 げつー とおる 指と指とのあいだから、わたしを見ているとなりの亨くんの顔が見えた。 そうか、こんなやつもいたのね。 おとこぎら 亨くんは、わたしが男嫌いだけど面食いだって、知っている。 てんじよう 亨くんは、「またかよ 1 」という顔で、天井を見上げた。 くそっー いやみなやつ。 だれを好きになったって、わたしの勝手でしょ ? おとめごころ 亨くんなんかに、わたしの乙女心はわからないわ。 カレシいない歴、一年。
よゅう きゃいけないだろう ? ばくは、そんな余裕がないんだ。カレシを探すんだったら、ほか をあたったら ? この手紙、悪いけど、返す」 亨くんは、クールに言い放っと、封筒を川路さんのほうに滑らせた。 おおっー 亨くんも、やるじゃない。 さすが、ママの夫。 げきたい 逆ナンパも撃退ね。 「本郷くんて、冷たいのね ! 高島さんが、声をあげた。 「川路さんは、わざわざ、本郷くんのために、時間をかけて手紙を書いたのよ。読んでも あげないなんて、失礼よ ! 」 しいわよ。どうせ、本郷くんは、わたしのこと、嫌いってことでしょ ? それな らそ , っと、はっきり一言えば ? 川路さんが、裏返った声を出した。 高島さんは、食い下がった。 「本郷くん。特定のカノジョがいないんだから さんと付き合って、悪いことでもあるの ? 」 、いいじゃない。なんで断るのよ ? 川路 きら すべ ことわ
0 たかしまさおり かわじゃよい 高島沙織 詩音・カーター 川路弥生 川路弥生と中学 専に O な一方で 呼び名はショー 時代ガらいつも ハデでカレシを ン。カリフォル つるんでいて、 次々ガえたり、 ニアガら転校し てきた、釜 学校では目立っ 学園でも悪い評 て、ウイた存在。 超美形・秀オ ! 判が目立つ。 しおん かつらぎかの 桂木佳乃 里奈の美人なマ マ。専との秘密 の新婚生活は、 娘もあきれるほ どラブラプが。 かまた みやけ けんじ 蒲田・三宅 森健司 鳳凰学園の主事 " 怪人 " の出現や さんたち。校内 学園で事件が続 の巡回中に殺人 くことを理由に 事件に邁して 生徒会探偵団に 解散を求める。 しまう。 かいじん じゅんかし、
亨くんが、わたしのとなりの席に座った。 そのとき。 かわじゃよい たかしまさおり 一組の川路弥生さんと、高島沙織さんが、教室へ入ってきた。 川路さんは、脱色した白っぱいケバイ髪。 高島さんも、眉をベンシルで描いて、色つきリップを塗っている。 ハデなふたりが、いつもいっしょだから、どこへ行っても、このコンビは目立ってい かわい ふたりとも、けっこう、可愛い系なんだけど、女の子にはきつくて、男の子には媚び媚 はっきり言って、友達にはなりたくないタイプ。 うわさじゃ、ふたりとも、カレシを次から次へとかえたり、ふたまたかけたり、評判は 悪い 同じ中学校の出身で、いつもつるんでいたらしい それにしても、このふたりが、三組になんの用事 ? Ⅱ路さんと高島さんは、まっすぐ、こちらに向かってきた。 いっしゅん 一瞬、わたしに用事があるのかと思ったけど、ふたりの視線は、亨くんに向いている。 川路さんは、小花プリント模様の封筒を持っていた。 る。 び。 まゆ こ