ロワール - みる会図書館


検索対象: 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6
106件見つかりました。

1. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

ないロワールの雰囲気を察知し、やや物騒な青色に輝く目を細めて、飛のを持つ手 に、力をいれる。一見静かなその若者が、恐ろしいものを内に隠し持っているだろうこと が、ディーノにはわかった。 まなぎ どうしてそんな眼差しを向けられねばならないのかわからなかったが、サフィア・レーナ はロワールの問いかけに答えねばならない。 「ええ : せいれいまどうし それは、生命を守る使命にある精霊魔道士であれば、当然のことなのだ。 「 : : : だから、あいだに割りこむようなことができたのですね : : : ? 殺さないとわかっていたから、の前に身をさらせたのか。その程度のカ、意思であるの あなど だと、侮ったのか : ロワールの言わんとしていることが理解できず、サフィア・レーナは眉をひそめる。 「ロワール : 王 うかがうように、そっと名を呼んだサフィア・レーナを、ロワールはきつい眼で睨んだ。 覇 ( 僕は弱虫じゃない ! ) 麗「姉様 ! 今のあなたに、。たる資格はない ! 言い放ったロワールは、再びあげた剣の切っ先で、真正面からびたりとサフィア・レーナ を指し示した。サフィア・レーナは、ロワールの口から吐かれたその言葉に、驚いて目を丸 まゆ にら

2. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

びみよう 葉は微妙にひっかかった。 全部終わりにして : : : から、龍を返す・・・・ : ? 全部終わってしまうものとは、何か。かすかに、はぐらかされた言葉。 「さあ、ロワール、こちらへ」 そうめい しんし 本来の彼そのものである、懐かしくも優しい聡明な紳士の声で、アール・フィージはロ ワールを自分の許。二た。 , こ誘っ , 彼の発するどの声にも、逆らえないというように、み遊病者 ひとみ の瞳でロワールが従う。 ぐれんほのお 紅蓮の炎のマントをなびかせ、空を蹴ったロワールは、白い天馬の背に腰かける、アー ル・フィージの目の高さより低くなるようにして近寄った。邯逸い位置まで来て顔をあげた ロワールに、アール・フィージはユリの花を持つ手を伸ばし、愛し子にするように、その耳 な びぼう の下から顎にかけてをそっと撫でる。母と同じ美貌を持つ者の手に愛撫され、ロワールは うっとりと目を閉じる。 からだ 「お母様のために、あなたの身体の : えんりゅうよろ、 言いながら、アール・フィージはもう一方の手、人差し指の先で、つうっと炎竜の織を まとうロワールの胸元から腹のあたりまでを、撫で下ろした。 びくんと震えたロワールが、かっと目を見開き、棒をんだように全身を硬直させた。 ロワールの元から、ゆっくりとせり上がってきた絶叫に、サフィア・レーナたちは、 なっ

3. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

3 / ひりゅう ロワールから離れた巨大な飛竜のあいだに、メリンダとフラナガンが横から割りこみ、自 分たちの背後にディーノをかばう。 すご びぼうぬしね 凄みさえ増した美貌の主に睨めつけられ、気圧されてロワールはかすかに身を退いた。サ フィア・レーナがこんなに怒る様子など、これまで一度も見たこともなかった。 せいりゅうおう 「 : : : 姉様は、僕を精龍王にする気がないのですね : : : ? 」 「そんなこと、今は問題にすべきことではありませんー いらだ さすがのサフィア・レーナも、ロワールのあまりの聞き分けのなさに、苛立ちをつのらせ おさな だがしかし、幼いロワールの未来はすべて、精龍王になること、ひとつに向かって進んで いるものだった。勉強も、魔道の修も、何もかもーー・。否定はすなわち、ロワール自身 ささ あや みずか の存在理由を危うくする。自らの支えとするものを、ひとはそう簡単に手放しはしない。 ロワールは泣きそうな顔で、視線を落とす。 姉様は、そんなふうにるひとではなかった。 あの男が現れてから、姉様は変わってしまった。 姉様はあの男に殺される。 ひ

4. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

意のままに動く身体の感覚を確かめながら、ゆっくりと笑んだロワール。アール・ くちびる フィージの唇から、声が漏れた。 みずか 自らに秘められていた魔道力を解放し、龍のかけらを利用し、炎竜を手に入れて、凄 もの こうし きよう まじいカの化け物になったロワール公子だったが、それでもまだ不十分だった。器用な術者 であるアール・フィージは、ロワールよりもずっと、効率よく円瀧に力を解きっ方法を 知っている。もっと炎竜の力を引きだすことができる。 おか 覇ロワールを犠牲にしても、アール・フィージは自分まで龍珠のかけらの力に侵されようと なは思わない。ア 1 ル・フィージがロワールと一体化していられるのは、力を利用され、活性 華化した龍珠のかけらが、心を喰いつくし、強大な力の化け物になるまえまで。 ぼうそう だが、そんなことを考える必要はなかった。龍珠が暴走する以前、生きていくのに必要 ほうかい Ⅱな、すべてのカ、細胞の一片までもを魔道力のために使って、ロワールの肉体が崩壊するま いっさっ 第七章一殺

5. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

「それは : 、そんなこと、あるはずがないでしよう ? 」 青く澄んだ瞳にロワールを映し、サフィア・レーナはにこりと笑む。 身内であるいじように、精龍姫であるサフィア・レーナが、今の世界にとってどんな存在 意味を持っているのか、ロワールにわからないはずがない。 おだ 疑ってみることもないような、あまりに穏やかすぎる反応に、そんなことを言っているの まゆっ ではないと首を振り、ロワールは眉を吊りあげる。 そまっ 「どうして身を粗末に扱えるのですか 精龍姫でありながらー ロワールの意見は、ディーノには痛いほど理解できた。他人を大事に思い、傷つけまいと ぎせい おとめ するがゆえに、自分が犠牲になろうとすることが、この乙女には多すぎる。苦しみを自分一 人で引き受けようとしすぎる。 まどうりよく あの時、精龍姫であるサフィア・レーナの魔道力を用いるのならば、ロワールかディー はじ 王ノ、どちらかに攻撃をしかけて、手荒でもそこから弾き飛ばしてしまうことさえ、できたは るずなのに。 麗ロワールがサフィア・レーナに気づき、懾てて剣を止めたとしても、今回のように軽傷で はず すむという保証はどこにもなかった。弾みで取り返しのつかないようなことになっていて けいそっ あや めつぼう みちび 幻も、決して不思議ではない。軽率なサフィア・レーナの行動は、危うく世界を滅亡へと導く

6. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

「わかっていましたわ。ロワール、あなたにはできないって」 だから、丈夫。わたしは平気なのだし、いや失敗は、誰にでもあるのだから。 きっとディーノも、許してくれる。 救いを差し伸べるように、そっと手を出そうとするサフィア・レーナの前で、ロワール くちびる が唇を動かした。 「 : : : わかっていた、ですって : : : ? 」 重く静かなロワールの声に、小さな子供に向かってするように差し出そうとしていた手 を、サフィア・レーナは止める。本質に変わりはなくとも、自分の仕草が相手に対してなん ふにあ だか不似合いのように思えて気圧された。 「僕が、この男を殺せない。傷つけられない。 ・ : そう、わかっていたのですか ? 」 ゆっくりと顔をあげたロワールは、まっすぐにサフィア・レーナを見つめた。 サフィア・レーナに向けられたのは、若草色の瞳しかしそれは内にする溶岩の激 いだ しさを感じさせる、怒りを抱く瞳だった。 誰からもそのような目を向けられた経験などなく、しかもロワールにそんな目で見られよ うなどとは思ってもいなかったサフィア・レーナは、驚いて胸の前で手を握りしめる。 さいぎしん 動かない者は、腹の中で何を考えているものか、知れたものではない。猜疑心の強さで、 いたずらに言葉を発しなかったディーノは、サフィア・レーナの思っているような反応では

7. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

ところだった。 いきどお ロワ 1 ルの憤りに反論すべき余地はない。 ここにジューン・グレイスかいたとしても、ロ さんどう ワールの意見に賛同したはずである。 何も言い返せないサフィア・レーナは、静かに視線を落とす。ディーノとロワール、どち らもが大切であったからこそ、サフィア・レーナにはとっさにあのような行動をとることし かできなかった。 「 : : : 姉様、もう、いし ) です、 くちょう やわらかくなったロワールの口調に、サフィア・レーナは顔をあげる。ロワールは剣をし ままえ まい、サフィア・レーナににこりと微笑んだ。 「僕に龍をください。今ここで、僕が糯龍五になりますから」 一片の邪気もない、素直な声で言われたことに、皆はさっと身体を緊張させた。今は何 くろまどうし も感じられない、近くに黒魔道士の存在を確認できないとはいえ、ロワールは黒魔道の術に より、その身を捕らわれていたのだ。 「いけません ! 」 にべもなく、要求をはねつけるよう、メリンダはサフィア・レーナに声をかけた。 ふつごう 何か不都合でもあるのかと、ロワールはメリンダに視線を向ける。 「どうして ? 皆は望んでいてくれたはずでしよう ? 僕が精龍王になることを .

8. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

「奴はどれほどの魔道量を持っているのだ ? はが 放出する魔道力で空間に激しく火花を散らせながら迫り来るロワールに、ディーノは歯噛 はくりよく みする。見るたびに、迫力が増しているのは、決して気のせいではない。 ロワールを見、悲痛にメリンダが顔をめた。 「こんなに大きな力を使うことは初めてだから、力量が本人にもわかってないのよ : こんな無茶な魔道力の使い方をしていたら、半日ももたない ! 体力も生命力もすべて魔道 かんげん 力に還元して、死んでしまうわー 細胞も何もかも燃焼させて魔道力に換え、あとには何も残らない。 「それだけもてば十分だー したう その前にこちらが確実にやられてしまうだろうと、ディーノは舌打ちした。 「止めなくては : まど いくらアール・フィージに惑わされているとはいえ、ロワールは決して敵ではない。ロ おそ みがま 王ワールを失うわナこよ ) ゝ しし。し力ない。襲い来る者に身構えて振り返りながら、サフィア・レーナ 覇ぼうぎよいん るは防御印を結ぶ。防御印だけではロワールの魔道力にはかなわない。しかしこちらからも攻 麗撃を行うとなると、これだけの規模の魔道を使うのに慣れていないロワールは、必要以上に 一・しようもう こうげきわざ 消耗する。魔道戦士としての本式の教育を受けるのにはまだ早いロワールは、攻撃技を行 はんば う時に失念してはならない防御のことなど考えていない。半端な力でサフィア・レーナが対 やっ せま

9. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

192 ささ じゅくれんしゃ 駄の多い不思議の力も、熟練者たるアール・フィージの技術が支えてやれば、十二分に効 果を揮する。一途に、憎悪だけの塊であるロワールの心で挑むほうが、殺しあいという野 ばんこうい 蛮な行為においては適当であるように思えた。 「よくも姉様をつ " 】」 真の。あげる炎竜の織を、爆発的に燃えあがらせ、獣のように吠えたロワール。アー ル・フィージが、をって空に飛び、炎竜の剣を引き抜いてディーノに襲いかかった。 かろ ひるがえ かいひ 襲いかかるロワールⅡアール・フィージの一撃を、軽やかに身を翻して回避し、素早く左 みぎこし の手のひらに右拳をあてたディーノは、手のひらの中から光り輝く長剣を抜き出した。柄 ぎんふ せいりゅうおう ゅう が銀色をしたそれは、聖なる銀斧の変化したもの。精龍王たる力と、聖なる銀斧の力が融 ごう はじゃ 合した破邪の剣。 渾身の力をこめた一撃を、難なくかわされ、ロワール。アール・フィージは、懾てて体勢 きじんぎようそう くち を立て直して振り返る。鬼神の形相をしたロワール日アール・フィージに、ディーノはロ もと 許をほころばす。 「いい顔だ ! 」 にやりと笑いながら評価したディーノを、ロワール。ア 1 ル・フィージは憾怒の目で睨み つける。 「僕の姉様を返せー だ え

10. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

134 空を蹴ったロワール日アール・フィージは、サフィア・レーナに向かって飛ぶ。 ぎようしゆく まどうりよく びぼう 凝縮させた魔道力を、光り輝くレピアに変えて握ったサフィア・レーナは、冴えた美貌 にら で、接近するロワール日アール・フィージを睨む。 かわい 「可愛いサフィア・レーナ。わたしを殺すのですか ? 一気に近くに寄って、ロワール日アール・フィージは今にも愛撫するかのように、サフィ ア・レーナの顔に手をのばし、落ち着いた声で優しく問いかけた。ロワールであるその顔と しゃべ 声は、サフィア・レーナの大好きだった兄、リカルドと酷似したもの。そして喋り方さえも みに真似られた言葉は、リカルドその人の口から発せられた言葉と錯しても、不思議は ない鏘きを帯びている。 まうぎよけつか、 舞いあがった海水が、激しい雨となって降り注ぐ。方御結に守られたディーノたち三人 えんりゅうよろ、 は濡れず、燃えあがる炎竜のをまとうロワール。アール・フィージは、濡れるよりも先 じようはっ に水のほうが蒸発してしまう。 しやまく 白くしぶきあげる雨を、蒸気に変えた紗幕の向こうの顔に、ぎりつとサフィア・レーナは りゅうび 柳眉を吊りあげた。 けが 兄リカルドと、その子、ロワールを、これ以上汚され、辱められたくはない。 「殺します ! 」 さけ 凜とした声で叫びながらサフィア・レーナは、こっそりと鞘から引き抜かれ、今まさに自 りん はずかし さや