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検索対象: 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6
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1. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

134 空を蹴ったロワール日アール・フィージは、サフィア・レーナに向かって飛ぶ。 ぎようしゆく まどうりよく びぼう 凝縮させた魔道力を、光り輝くレピアに変えて握ったサフィア・レーナは、冴えた美貌 にら で、接近するロワール日アール・フィージを睨む。 かわい 「可愛いサフィア・レーナ。わたしを殺すのですか ? 一気に近くに寄って、ロワール日アール・フィージは今にも愛撫するかのように、サフィ ア・レーナの顔に手をのばし、落ち着いた声で優しく問いかけた。ロワールであるその顔と しゃべ 声は、サフィア・レーナの大好きだった兄、リカルドと酷似したもの。そして喋り方さえも みに真似られた言葉は、リカルドその人の口から発せられた言葉と錯しても、不思議は ない鏘きを帯びている。 まうぎよけつか、 舞いあがった海水が、激しい雨となって降り注ぐ。方御結に守られたディーノたち三人 えんりゅうよろ、 は濡れず、燃えあがる炎竜のをまとうロワール。アール・フィージは、濡れるよりも先 じようはっ に水のほうが蒸発してしまう。 しやまく 白くしぶきあげる雨を、蒸気に変えた紗幕の向こうの顔に、ぎりつとサフィア・レーナは りゅうび 柳眉を吊りあげた。 けが 兄リカルドと、その子、ロワールを、これ以上汚され、辱められたくはない。 「殺します ! 」 さけ 凜とした声で叫びながらサフィア・レーナは、こっそりと鞘から引き抜かれ、今まさに自 りん はずかし さや

2. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

ころ て転びながらも、二人がかりでなんとかダイアナを守る。箱舟は唐突に停まった。 「なんじゃ e: いったい、何が : しやくじよう とびら 錫杖を押しあてて扉を開いた老ソール・ドーリーは、何が起こっているのかと、部屋を こうはん かいそう か 飛びだし、甲板に出ようと、上の階層に向かう階段を駆けあがる。また何か起こってはいけ すみ しんちょう ないと、何が起こっても速やかに対処できるよう、慎重に身構えながら、ダイアナを抱い たニーナ・クレイエフが後に続く。 老ソール・ドーリーが居間と食堂のある階まであがり、甲板に出る階段に向かおうとした 時、再び箱舟が揺れた。 甲板に出る昇降口から、船室に向かって一。紅蓮の炎が噴き降り、魔道力の界によっ て素早く外に押し戻された。 少女の幼い響きを持つ、身もるような絶叫が、甲板の上を移動する。 さあっと音をたて、老ソール・ドーリーの身体から血の気が退いた。注意深くダイアナを 王抱えながら階段を上っていたニーナ・クレイエフも、大きく目を見開き、思わず足を止め る」 0 かたまり せんアん 麗移動した少女の悲鳴は、燃え盛る炎の塊とともに船舩の窓の外を通り過ぎ、激しい水音に よって消えた。 遠く離れた下のほうで、血を吐くようなフラナガンの叫びが、小さく聞こえた。 と、つとっと

3. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

へだ 語られない真実に隔てられ、やはりサフィア・レーナとディーノとの距離は遠い。しかし その心は、確実に近づいていることを、ディーノは感じていた。 みちび はる 不思議の空間を抜け、導かれ出た先は、まだ陸地には遠く及ばない、沖合い遥かな海上 はかよ けしき だった。『竜の墓場』のあった場所と、景色としてはほとんど変わりないが、陽の高さが違 う。祈りをこめた呪文は、三人を、まっすぐ王都に向かうはずの、ロワール日アール・ フィージが、必ず通るべき場所に導きだしたはずだ。間もなく来る。 野獣・炎竜を織として、力を利用していなければ、アール・フィージは黒魔道による影 よこしま やみ 移動で、王都に向かうことができた。聖獣は、邪なる闇の魔道である黒魔道を使うことはで てつつい かえん きないのだ。神々の怒りの鉄槌にも等しい、強大な破壊力を持っ炎竜の火炎は、いっさの 破壊という点において、黒魔道と方向性を同じくするため、利用されることができる。聖 邪、両方における強大な破壊力をほしいままにするアール・フィージだったが、細かなとこ 覇ろで制約があった。魔道で開く門は、正負の力を持つ者が同時に通り抜けることは、基本的 ぼうだい にはできない。強行するならば、かなり膨大な魔道力を一度に消費してしまうはずだ。少し 華ばかり時間はかかるが、目的地まで飛行魔道で向かったほうが、失う魔道力は少ない。破壊 のための力を、残しておくことができる。 じゃ こま

4. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

反った。まとっていた炎竜の織が、内側から加えられた圧に耐えきれなくなったように、ば らばらにけ散る。 りゅうし ロワールの全身の毛穴から、光の細かい粒子が噴きだし、ロワールの姿を輝かせた。 ディーノは龍珠のかけらを擱んだ手を、自分の胸の前に引き戻すように動かす。 「ディーノ様 ! 使ってくださいな ! 」 つばさ すかさず、ヘイゼル・ヒンドが銀色の小鳥をディーノに向かって飛ばした。翼で風を切っ て一直線に飛んで来た小鳥は、ディーノの顔のすぐ横で止まり、何やら見覚えのある銀色の 小箱に変化する。サフィア・レーナが龍珠のかけらを回収した時に、一時保管するのに使っ まどう ていた、あの魔道の小箱だ。 ディーノが腕を引き戻すのと同時に、輝いていたロワールの身体が小さく縮んだ。 ちゅう 目を閉じ、元の小さな少年の姿に戻ったロワールが、輝きを失って宙に投げだされた。 ひりゅう けいこく 一足早くディーノのそばに向かったメリンダが、飛竜を急降下させ、渓谷に向かって糸の 覇切れた人形のように墜落していく口ワールを受け止めた。 ばらばらに砕け散り、炎を消して落ちながら、鎧になっていた炎竜のは再び、干から 華びた一頭の飛竜の死骸へと凝り集まった。滅しているとはいえ、不思議の力を駆使した野 の遺骸を、そのままにうち捨てておけば、心ない者に悪用される危険がある。埋葬し、蜥 、いんほどこ 四印を施しておく必要があるため、ヘイゼル・ヒンドがこれを追った。 ついらく よろ、

5. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

122 「サフィア・レーナ姫 ! アール・フィージを止めよ ! 」 「彼を王都に向かわせてはなりません ! 」 お 墜ちていく箱舟から、ニーナ・クレイエフとヴェルトライゼンが叫んだ。 不安定に揺れ、斜めに傾いでいた箱舟は、あの恐ろしい爆発よりもわずかに早く行動を起 こしたフラナガンがたどりついてをとり、荒れう大気のなか、なんとかして平衡を取り 戻そうとしていた。 そう、王都。 そうせい 創世の神が、最初に降り立った地。 あそこにあの勢いで一撃を加えられたなら、世界は糸の切れた首飾りのように、ばらばら ほうかい めぐ に崩壊してしまう。世界のすべての生命力は、あそこを中心として巡っているのだ。 そしてアール・フィージを止めるということは からだこうちよく ぎくりと身体を硬直させ、サフィア・レーナは目を見開く。 「お前に殺せるのか ? 」 静かにさえ聞こえる声で、ディーノか問い力した みずか 止めるということは、殺すということだ。自らも死ぬつもりで世界を破壊しようとしてい るアール・フィージを阻止するためには、彼を殺さなければならない。そうしなければ止ま はこぶね なな

6. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

どもね。あんたたち二人が落ちてきたのにびつくりして、あたしたちは目が覚めたのよ。水 からだ なお か 面で打って、身体じゅうがたがただったのをなんとか自分で治して、駆けつけたの。・ うね、あんたたちが落ちてきてから、五分くらい、かしらね」 「そんなに : げきつうおそ 早く海上に戻ろうと隹 . って、少し身体を動かしたジューン・グレイスは、再び激痛に襲わ れ、顔をしかめる。 まどうりよく 「だめよ ! ちょっとじっとしてて ! 治癒のための魔道力がうまく入らないじゃない 「・ : ・ : すみません : ・ がた 高さと勢い、侵入角度によっては、水も地面より安全とは言い難い。今のように、鉄板や しようげき 石に向かって落下するのと同じくらいの、激しい衝撃を受けることだってある。 そしてオルファンは、それに加えて、凄まじい魔道力による攻撃を受けている 「ほかのひとたちは : 「さあ、どうなってるのかしらね。水があたしたちを守ろうとしてて、上の気の様子がさっ ばり読めないのよ。とにかく、今、この海の中にいるのは、あたしたち四人だけよ」 「そうですか・・・・ : 」 ならば、なんとかもちこたえている、のだろうか : あ すさ

7. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

「わかっていましたわ。ロワール、あなたにはできないって」 だから、丈夫。わたしは平気なのだし、いや失敗は、誰にでもあるのだから。 きっとディーノも、許してくれる。 救いを差し伸べるように、そっと手を出そうとするサフィア・レーナの前で、ロワール くちびる が唇を動かした。 「 : : : わかっていた、ですって : : : ? 」 重く静かなロワールの声に、小さな子供に向かってするように差し出そうとしていた手 を、サフィア・レーナは止める。本質に変わりはなくとも、自分の仕草が相手に対してなん ふにあ だか不似合いのように思えて気圧された。 「僕が、この男を殺せない。傷つけられない。 ・ : そう、わかっていたのですか ? 」 ゆっくりと顔をあげたロワールは、まっすぐにサフィア・レーナを見つめた。 サフィア・レーナに向けられたのは、若草色の瞳しかしそれは内にする溶岩の激 いだ しさを感じさせる、怒りを抱く瞳だった。 誰からもそのような目を向けられた経験などなく、しかもロワールにそんな目で見られよ うなどとは思ってもいなかったサフィア・レーナは、驚いて胸の前で手を握りしめる。 さいぎしん 動かない者は、腹の中で何を考えているものか、知れたものではない。猜疑心の強さで、 いたずらに言葉を発しなかったディーノは、サフィア・レーナの思っているような反応では

8. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

じよめいしよぶん もと精龍王候補者の一人であり、除名処分を受けた精霊魔道士アール・フィージの死亡 王が、浮空城で報告された。 る 。な 麗 華 おう 翁が来て、アール・フィージと話をした。しかしそれはアール・ 最長老ソール・ドーリー なっとく フィージが納得できるものではなかった。 どうしてこうなってしまうのか、いくら考えてもアール・フィージにはわからなかった。 はくだっ せいれい わからなかったがために、精霊魔道士としての資格も剥奪された。 精霊魔道師ニーナ・クレイエフにより、すべての魔道力と感覚とを消され、アール・ フィージは一人、曠に置き去りにされた。 するどきばつめ りゅうきしたい 数日後、その場所の近くに向かった竜騎士隊の精霊魔道士たちが見たのは、鋭い牙と爪で 引き裂かれた衣装の残と、おびただしい量の血癜といくつかの小さな肉片、そして骨のか けらだった。竜騎士隊は懸の携索を行って後、それ以上の違品の回収をあきらめて帰路に ついた。

9. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

講談社 X 文庫ホワイトハート 流星香の作品 黒い写本 イ かくおにゆうぎたん . 隠れ鬼遊戯譚 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 不良少年たちの背後に , 何かが忍び きさらぎはなみ 寄る ll 如月華蜜の存在が気になり , いつになく気もそぞろの悠司。周囲の 人々に、、恋わずらい″と冷やかされる が , 悠司の真意は別のところに・・ヨ ? 日萌芽の奥津城 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ あんじ 冬の桜花は , いったい何を暗示する のか冬も間近だというのに , 寝苦 しくなるほどの暖かい日が訪れた。 この異常気象に , 写本の影響を感じた 悠司は , 原因を探りはじめるが・・ヨ ? ことだま かげばうし 日言霊の影法師 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 黒い写本の最終章を取り戻すため , 学校へ向かった悠司を待っていたの どくろ は , 鎌を持った髑髏 - ー一死に神だった。 不滅の魂を持つ悠司だが華麗なる 聖戦土の超自然ファンタジー最終幕日 ほうが おくつき たましい

10. 華麗なる覇王 プラパ・ゼータ外伝 精龍王 6

3 / ひりゅう ロワールから離れた巨大な飛竜のあいだに、メリンダとフラナガンが横から割りこみ、自 分たちの背後にディーノをかばう。 すご びぼうぬしね 凄みさえ増した美貌の主に睨めつけられ、気圧されてロワールはかすかに身を退いた。サ フィア・レーナがこんなに怒る様子など、これまで一度も見たこともなかった。 せいりゅうおう 「 : : : 姉様は、僕を精龍王にする気がないのですね : : : ? 」 「そんなこと、今は問題にすべきことではありませんー いらだ さすがのサフィア・レーナも、ロワールのあまりの聞き分けのなさに、苛立ちをつのらせ おさな だがしかし、幼いロワールの未来はすべて、精龍王になること、ひとつに向かって進んで いるものだった。勉強も、魔道の修も、何もかもーー・。否定はすなわち、ロワール自身 ささ あや みずか の存在理由を危うくする。自らの支えとするものを、ひとはそう簡単に手放しはしない。 ロワールは泣きそうな顔で、視線を落とす。 姉様は、そんなふうにるひとではなかった。 あの男が現れてから、姉様は変わってしまった。 姉様はあの男に殺される。 ひ