本当に - みる会図書館


検索対象: ジャンクソード
36件見つかりました。

1. ジャンクソード

118 部、嘘だったなんて。 けしよう 「今度会ったら、倍返しにしてやる。あの化粧オバケ」 かかと 一発、踵で床を鳴らした。 「うーん。それはちょっと、あまり考えないほうが良いですよ。術士は扱いが難しいですから ねえ」 そう一言われて、カナンはシェリアークの、綺麗だけどへれ、とした顔をまじましと見直す。 「扱いが、難しい ? 」 てんじようてんげゆいがどくそん 「ええ。なんて言いますかこう、自己中と言いますか天上天下唯我独尊タイプの方が多いです から。総じてお天気屋さんですし」 「へえ・ : どこが、と言いたかったけど。取りあえすその問いは呑み込んだ。さすがに失礼だろう。 代わりに、カナンは立ち上がったシェリアークを見上げて訊いた。 「ねえ、すごく変なことを聞くけど。本当に、あなたが魔剣の創造者なの ? 「そうみたいですねー 「本当に本当の ? じゅ 「えーと・ : 呪を封じた剣は、造りました。はい、 確かに。今は一つしか呪がなくて、ユサ には散々ばかにされてますけどお」 きれい

2. ジャンクソード

どうくっ 「こんな山ん中の洞窟にその一番奧に突っ立って、『気がついたらいた』なんて、あるわけな いだろうが。ふざけるなっー 怒鳴りながら、腰の剣に目を落とす。錆びついた奴よりは、こっちのほうが多分ましだ。 「でもー、本当に目が覚めたらここだったんですよ。私は、術士の塔で、作業していたんです ・ : その剣を、完成させようと」 青年は地面の剣に目を向けた。つられてユサも、目を落とす。 ところ 「それなのに、どうして私はこんな処にいるんでしよう ? 「それは俺が訊いてるんだろっ」 くさ うさん臭げに見据え、けれど己の中の何かが、この目の前の青年が『本当のこと』を話して いると感じているのを、ユサは知った。 ほわんと笑って、そのくせどこか不安そうな目がユサを見つめている。 「名前」 「はい ? 」 「名前、何て一一一一口うんだよ。お前は」 「ああ : : : はい。私は私はシェ・ 言いかけて、舌をもろに噛んで、青年はあつつと声を上げる。反射的に指を舌にあてて、ち よっとの間があって。

3. ジャンクソード

皿うのよ。そんなばかな話ってあり ? 」 思いだして、唇を噛む。途方に暮れて王宮を後にして、女にぶつかったのだ。 「よっぱどろくでもない用事だったんだろ。全部を秘密裏にしなきゃいけないような、そんな 何かをしでかしてたんだよ、おっさん」 はさ ュサが剣の刃を確認しながら、初めて言葉を挟んできた。 「あんたって。本当にヤなやっ」 「でなけりゃあ、おっさんを連れに来たのが、王宮の人間しゃなかったのか」 最低、と言いかけたカナンの顔から、表情がすばんと抜け落ちた。 かじゃ 「王家が本当のことをお前に言ったんなら、嘘をついたのは鍛冶屋に来た連中の方ってこと。 こ難しくない ただの消去法だ、別ー ひざ カナンはユサの、机に片足を引っ掛けて膝を立て、もう一方をぶらぶらさせて剣に見入って いる顔を見直した。相変わらず、カナンやシェリアークには全然目を向けない。 「それで」 声を掛けられて、カナンは振り返った。シェリアークがじいっと彼女を見つめて尋ねる 「カナンはなぜ国境を超えて、ジュアンの森に ? 名を挙げようとして、まだ剣を手にした少年に名前を聞いていないことを思いだして、シェ

4. ジャンクソード

260 「本当に本当に本当にもう大丈夫なの ? 」 「大丈夫だって、言ってるだろ。しつこいぞお前」 これで何度目になるかわからないくらいに、同じ質問をカナンは繰り返し、ユサも同し答え を繰り返していた。 セトラの村の出口で、門の所には一一人、自警団の門衛が立っている。太陽はそろそろ中天に 差し掛かろうとしていた。 カナンがうるさいだろうというので、わざと彼女が買い物に出ている間にジオルドに別れを 告げて出てきたというのに。途中で出くわすというのは、完全に計算外であった。 おかげで何で黙って行こうとした、というところから始まって、村の外れまで延々と抗議を 聞かされた。 リューネの館から戻って十日目、契約のとおりに十日分の宿代と食事代っいでに薬代もジ そして取りあえすは隣の国へ

5. ジャンクソード

「契約だって、できなかったですよお」 銀の長い髪、透けるくらいに白い肌。切れ長の目は、不思議に暖かい緑の瞳だ。頬の辺りが どうしても熱くなった。 「ああ、契約ね、契約。あいつってば、本当にちゃんとしてくれる気、あるのかな。何だか剣 を渡したら、その場でばいばいしそう」 「そんなことしませんよー」 どこか間延びした、穏やかな声。イントネーションが柔らかいのは、それが百五十年前の時 間の流れにあった響きだからだろうか。それとも、ただのんびりしているから ? 「そっかなあ。あたし、あんまりアテになんないって思ってるんだけどな」 「大丈夫ですよ。ュサ、良い人ですからあ。ちゃんと、食事させてくれましたし . 自信を持ってそ、 2 一一一口う。 「ここのパンは、本当に柔らかくておいしいですねえ」 カナンは一瞬頭を抱えそうになって、シェリアークがまったく邪気がないのに、思わす吹き 出してしまった。 ン ャ 「いいけど、それって確かだし。あたしは、パンよかおにぎりの方が好きだけどね」 こにく ジ その通りといえば、その通りだった。あの小憎たらしいガキが、ここの宿泊費も食事代も支 払っている。カナンの分も。 ほお

6. ジャンクソード

「触んな ! 」 「す、すいませんつ。すっかり忘れてましたけど、ユサ、傷の具合はどうですう ? ずいぶん 自由に動かしているみたいですけどー、まだ無理はしない方が良いんしゃないですかあ ? ま た傷口開きますしー、痛みだってありますよねえ」 ュサは一瞬ばかんとして棒立ちになったが、すぐに気がついて笑った。 「ああ、なんだ。それか」 けろりとした顔で、腕を回して見せる。 「何ともないって言っただろ。痛くもかゆくもねえよ」 シェリアークは、ユサの本当に平気そうにしている顔を見直した。 確かに、全然ぎこちないそりがなかったから、ユサが服の下にけがを負っていることを、 すっかり忘れていたのだけれど。 「ええでも、三日しか経ってないんですよねえ、確か。そんなに浅い傷しゃなかったですよー ・ : 本当に大丈夫ですかあ ? 無理してませんー ? 」 久「してねえよー 、ヤ腕を伸ばして彼の右腕を取ろうとするシェリアークを、勢い良くュサは払いのける。 ジ 「大したことないって。あんなの、ただのかすり傷だ。傷痕も、もうねえよ シェリアークはカ一杯払われた右の手のひらを、左手で包んだ。ひりひりする。ということ きずあと

7. ジャンクソード

その節は申し訳ありませんでした。反省してます。どんなユサを描いて下さるか、楽しみで つよ すつ。毅くて艶があって繊細な目にくらくらです。よろしくお願いします。 思えば随分久々に、『かぜ江』シリーズではないものを書きました。 今回は全然違う話を書くということでかなり時間を頂いていたのですが、私が頭の切り替え ードなことがあったりしまして、結局締切を延ばしていただい 悪かったり私事の方でちょーハ じか てしまいました。 ( コレがまた夏の集中大雷雨でいかれちゃって、電話で直に話すしか なかったという。留守電機能もない代替電話で、お盆近くまで過ごしたんですう。しくしく ) 毎回毎回本当にご迷惑をおかけしています。この遅筆、何とかならんかとは思うんですけ ど、あ、フ・・ でも本当に楽しかったです。特に剣の文様 ( ケルト展を観たのと友人から借り た手描きのケルト文様の本が、影響大きいです。すごくてこれが。でろでろのどろどろ。もろ うるお ッポ ) とアクションシーン ! やつばり私は、血湧き肉躍る切ったはったの血の潤いが好きな んだと再認識しました。アブナイなあ、私。 うわさ この次は、冬でしようか ? 『かぜ江』だという噂が流れてます。だとしたらも一回頭を切 しょ , つじん : : : うーん、精進します り換えなきゃいけないんで、また時間をばくばく食うような とそれではこの辺で。もしよろしければ、またお会いしましよう。 あ 八月下句横浜高校の春夏連覇のニュースを聞きながら つや 朝香祥

8. ジャンクソード

「あの。ごめん、なさいー ュサが部屋を出て、緊張感がなくなってしばらくすると、シェリアークの後ろでカナンの小 さな唇が、そう言葉を形作った。 ー ? どうしてです ? 」 あなた 「だってあたしのせいで、貴方あいつに : 振り向いたシェリアークは、ロをへの字に歪めたカナンに笑いかける。 「いやー、別にカナンのことがなくても、怒られてますから。もう何度も」 ク 「だけど今も、さっきだって蹴り倒されたりして」 、ヤ「あれはねえ、私が悪かったんですよ。あんなことは、本当にしちゃいけないんでー」 「でも、あたしが助かったのは、あなたが何か、してくれたからでしょ ? あたし、あの時絶 対殺されるって、わかったもの。あいっ : : : 全然、あたしのこと気にしてなかった」 森に住む引退鍛冶師のこど

9. ジャンクソード

ち、という音を耳の端に聞く。 〃警告スル。許可ナクココニ入リシ者ョ今スグ去ルガョイ。コレ以上ココニ停マリ館ニ害ヲ ナスノデアレバ死ヲ得ルコトニナルデアロウ〃 どこから聞こえてくるのか、わからなかった。まるで空中から、生まれているようで。 抑揚のない、感情のかけらもない声であった。生きているものとは思えない響きが、闇に溶 けてゆく 「しょーとー ュサはそう吐き捨てると、再び錠に取り掛かった。 「ユサ」 「意地でも開けて、ぶん殴ってやる」 かちつ。 ャまた音が聞こえた。本当に小さい。何かがどこかに嵌まったみたいな音だ。 ジ シェリアークは顔を上げて音源を探した。 闇に慣れたとはいえ、夜の中で目が捉えられるものには限りがある。目新しいものは、何も なぐ

10. ジャンクソード

125 ジャンクソード 濡れた肌に血が流れている。 「それ、だめですよお。手当てしないと」 思わす中に入ろうとするユサの左手首を、掴んでいた。 「放せよ、おい 「だって、血があ」 「大したことねえよ、こんなもん」 「魑魅の剣は、普通の剣とは違いますう。すぐに熱とかでますし、それに下手に放っておく と、腕を落とさなくちゃならなくなったりするんですよお」 「知ってるよそんなこと。平気だって、俺は。すぐ治んだ : : : っ ! 」 ひざ 息を、ユサは呑んだ。がくんと膝が折れて、床に手をつく。 「てめつ : 「なあんだ。やつばり痛いんしゃないですかあ」 シェリアークが彼の傷口の部分を、もろに擱んでにこにこしていた。 「痛くないわけねえだろうが ! 」 「だってえュサ、平気だってばっかり一一一口うからー。本当に平気なのかと思ったんですー 差し伸ばされた手を思い切り強くひつばたき、ユサは右腕を押さえて立ち上がる。 「このつ、くそったれ