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検索対象: 全寮制男子校物語! 兄弟篇
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1. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

宇宙はビリビリと自分の肌がふるえるのを感じていた。何年も心の奧深くにかかえ込んでき た怒りはあまりに大きくて、蓋を開けて取り出すこともできないでいた。 どうして許したりできるだろう。この女は裏切り者なのだ。 父さんを裏切り、オレたちを裏切った。 いきどお 呼吸は速くなり、それでも憤りを吐き出しきれなくて、宇宙は思わす自分の胸をつかんだ。 たつや と。すっと前に出てきた竜哉に、肩を抱かれる。 その腕に寄りかかりたくなった自分に、宇宙自身、びつくりした。 いつのまに自分は、この男をこれほど信用してしまっていたのだろう ? 「ちゃうよ。きみらのお母さんは裏切り者やない 篇そのとき、これまで沈黙を守ってきた男性が、ふいに割り込んでくる。 倪「きみらに一一度と会うな一一一〔うてきたのは、きみらのお父さんや」 「あんた ! 校現れた男は翔太の父親だった。ラーメン屋の店長はカウンター内での仕事に一段落つけ、エ 男プロンで両手を拭きながら、妻の少し後ろに控えめに立って一一一口う。 寮「よけいな口出しして悪いな。けど、おまえには一言えんこともあるやろうと思ってな」 非難めいた視線を向けてきた妻を、なだめるように説明する。小柄だが人好きのする顔をし 幻たその男は、ちらりと宇宙たちのほうを見やると、妻のほうを向き直って言った。 しようた ふた

2. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

220 そらにい そらにい 「僕は宇宙兄次第です。字宙兄がいいなら、僕に異存はありません」 「俺は男で、おまえの兄も男なのに ? 」 「ああ、ええと、そうですね。以前はそういうことも気にしたかもしれませんけど、今は特に 気になりません」 「ふん ? 男の恋人でもできたか ? たつや 思わす一瞬息を詰めてしまったので、竜哉にはバレただろう。 こうが たつや 竜哉は軽く肩をすくめ、横目でちらりと恒河を見やる。 「共犯者は歓迎だ」 くにえだ 「国枝先輩 ! 「なんだ ? 」 こうが 薄いグレイの瞳でしろりと見返されて、恒河はウッと詰まる。だが、言わなければ。 そらにい 「最近の宇宙兄は楽しそうです 「そうか」 くにえだ そらにい 「ええ。だから僕は国枝先輩を信用します。本来、字宙兄には国枝先輩みたいな人が必要だっ たんだと思うんです こんたん 「ずいん買いかった言い方をしているな。何か魂胆がありそうだが ?

3. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

「いい勘してます、 向き合った二人の視線がビシリとからむ。 そうしてからみついた視線は、限りなくテンションを上げてゆく たつや そのテンションをギリギリのところまで引き上げておいて、ふっと竜哉が力を抜いた こうが 巨河も同時に力を抜く。 このタイミングはキライじゃないと思、つ 兄もこうやって揺さぶられては、彼の近くに引き寄せられていったのだろう。 こうが たいした男だ。と巨河は思う。たいていの人間は相手に揺さぶりをかけることなどめったに 篇しない。関わらすにいたほうが安全だからだ。 倪 ( でもこの人はちがうんだな ) 諏あの感情過多とも一一一一〔うべき兄を、彼ならすつばり包んでさらっていってしまうだろう。 こ、つが 物 巨河は少し感傷的になる。だが、その想いはすぐに別の想いに取って代わられた。 「十そらにいそらにい 男 ( 字宙兄は宇宙兄だ。何があっても、僕たちが兄弟だという事実は変わらない ) こ、つ幇 ~ 恒河は目の前の男に意識を集中する。 一度決意したなら、後はやり遂げるしかない。 たつや やがて、ニャリと口元をゆがめて竜哉が言った。 かん

4. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

あや 妖しくも麗しい 「くっそーっー 待ち伏せしてやがったな ! 」 ドールズ・ガーディアン ドール 花姫守備隊の男たちがあわてて花姫を守ろうとしたが、時すでに遅く。 くら 「ふふ。こちらのほうが数が多い。きみたちは我々の目を眩ますために花姫を保護する人員を 二手に分かれさせた。だけどそれが命取りになったというわけ。残念だったね」 こうが 「直河 ! 」 そらにい 「宇宙兄ツー またた こうがそら 桜花学院の戦闘要員たちに瞬く間に取り囲まれて、巨河と宇宙とはあっさり引き離されてし 篇「弟君はいただいていくよ。悪く思わないでくれたまえ。もともと趣味なんだよね。彼みたい 倪に背が高くてやさしそうなタイプ」 こうが 「やめろ ! 恒河を返せー 校「ふ、ふ。むりだよ。そちらは数が少なすぎる」 男薄く唇を伸ばして微笑む様は、本当に地獄から現れた悪魔のようだ。 寮悪魔のように美しい男・京夜。 こうが 「だめだ ! オレの恒河にさわるな : ・ ! 」 そら かす 字宙の声は掠れてしまって悲鳴にもならない。 0 うるわ じごく ドール

5. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

きりゅう 「桐生 ! そっちに行ったぞ ! 」 「オレに任せろー たつや 竜哉と字宙とは体内リズム感でも似ていたのか、ケンカのリズムも、やってみると互いに把 握するのは早かった。 信しられないことだが、二人のあいだに、あうんの呼吸とでも呼べきものが生まれようと 倪しているようだった。 「イテえっー 校そうやって何度目かの乱闘に巻きこまれて、字宙も少しずつケンカのやり方を思い出してき 男た頃。 きりゅう 「何だ ? 騒がしいな、桐生」 「見ろよ、ここっ、ここっ ! ケガしたツ ! 」 つめは 殴った拍子か、中指の爪を剥がしかけて、字宙が顔をしかめてみせる くにえだたつや ( 4 ) 国枝竜哉どいう男

6. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

「内診した俺の立場はどうなる ? : 。だってあんたが病院に行けなんて一一一口うから」 「あれは・ 字宙はうつむいて赤くなる。 「つまり、中を触れさせたのも俺が初めてということか ? 」 カッとさらに耳たぶまでが赤くなった。 じっと見つめられているのがわかる。 体しゅうが反応している。 この男の視線に。 宇宙は顔をあげることもできす、乾いた声で言い返した。 「あ、あんな奧まで指突っこんでくるヤツなんかいるかよ ! 「いるさ」 「しかし俺もだまされたものだな。初めてのくせにあの態度か ? どうりで狭かったはすだ。 どうやらあのときは俺もよほど動揺していたらしい。おまえの嘘を見破れなかったとはね」 たっ 内診させられたことがよほど腹に据えかねるのだろうかと、宇宙は半ばドキドキしながら竜 哉の言葉を聴いている。 ほんろう この男の抑揚のある声は、低くなるといっそう迫力を増して宇宙を翻弄する

7. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

みとが そうして山のほうへ駆けてゆく宇宙の姿を見咎めた男たちがいた。三年のあまり評判の良く ないグループの少年たちだ。授業は当然のようにさばっている最中だった。 「へえ ? 兄貴のほうだぜ。一人かよ ? 「みたいだな」 カワイイ 「いいねえ。ずいぶん生意気んだって ? 」 「ああ。上級生と目があっても、アイサツもしやがらねえってハナシだぜ」 「それはそれは」 「あんまりエラそうにのさばっちまう前に、一度きっちりシメとかねえとなあ」 「ふーん ? ボディガードもいねえみたいだな。完全に一人だぜ ? 」 した ふんいき 引少年たちは今にも舌なめすりをしそうな雰囲気で目配せをし合う。 倪腕に覚えのある少年が、ふかしていたタバコをつぶして笑った。 「チャンスしゃん ? 物 校 子 男 制 全 「おい弟。兄はどうした ? 「は ?

8. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

「ムカつくぜ。ひとの弱味にぎったような顔してんしゃねえよ」 「弱味だったか ? ムッと唇を噛みしめる。この男の言い方は最初から気に食わない。人を上から見下ろしてく るような話し方だ。いつもいつも。 ( 少しは動揺しろってんだ ) たつや そら 体が悲鳴をあげるのもかまわす、宇宙は半身を起こし、片腕で竜哉の肩を引き寄せた。 ささや たつや 吐息が吹きかかるほどの近さまで引き寄せて、竜哉の耳もとに囁く。 「あんた、この顔好きか ? 」 「おまえは ? 気に入っているのか ? 「オレ ? 」 切り替えされて、ふたたびムッとする。 どうしてこの男はいちいち自分の気に食わない言い方ばかりするのだろう ? 「好きなわけないだろう、こんな顔。オレはあんたの好みかどうか訊いてんだぜ ? 「好みだと言って欲しいのか」 「ああ」 「なぜ」 「そのほうが誘いやすいからさ。口止め料がいるんだろ ? 」

9. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

( マジかよ ) たたか かれつ 宇宙は彼らの闘いりのあまりの苛烈さに、ひたすら圧倒されていた。 ( これ、ほんとにゲームなのか ? うそだろ ? ) まさかこれほど本格的なバトルだとは思ってもみなかった宇宙だ。 あた 思わず草の上に座ったまま、呆然と辺りを見回してしまっていたが。 いつまで腰を抜かしている気だ」 そら たつや 竜哉が余裕の表情で戻ってくる。よく見ると彼の背後には、先ほど字宙に襲いかかってきた 大男が倒れていた。 篇 ( すごい。あんなのをのしたのか ) 倪「腰なんか抜けてないー 「それは良かった」 たつや 校暗かったのだが、ふっと竜哉の口元が笑ったのがなぜか字宙にはわかる。 男自分のことを心配していたのかと一瞬感動しかけたが、違った。 寮「だったら、さっさと立つんだな。足手まといになるようなら置いていくぞ」 ( 足手まとい卩 ) あいかわらす失礼な男だ。

10. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

たつや 竜哉はヴァイオリン・ケースをいつもの場所に置くと、宇宙のほうは見もせすに、カッター シャツの袖の釦を外しながら言った。 「今夜はそのべッドを提供するよ」 「何 「明日の朝まで、おまえをこの部屋から一歩も出さない」 たつや 竜哉が振り返る。 ガキッと視線が絡まる金属のような重たい音が聞こえた気がした。 「取り引きがしたいなら応じるぞ」 たつやうそぶ 引宇宙の烈しく燃える瞳を平然と見返しながら、竜哉が嘯く。 倪「今度は何を俺に差し出す ? 」 ほのお 近づいてくる男を、焔の瞳がじっと動かずに迎える。 語 物ギシッとべッドが鳴った。 子字宙の両手が前へと伸びる。 贐男の体をシャッごと引き寄せる。 全 宇宙は質問に答えた。 「オレ」 そでボタン