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検索対象: 全寮制男子校物語! 兄弟篇
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1. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

月はいい具合にまんまるで、あたかも少年たちの夜の祭りを祝福しているかのようだ。 ドール こ、つが その夜、先に敵の花姫を確保したのは、恒河たち、菜の花東高校のほうだった。 ド 1 ルゲット 「やった ! 敵の花姫を獲得したぞ ! 」 「本物か卩」 「ああ ! 桜の造花を持ってる。間違いねえな ! 」 「よし ! レキに知らせろ ! 午前〇時までそいつを絶対に逃がすな ! 桜花の戦闘要員は全 ド 1 ル 員こっちへ向かってくる ! 応援が来るまで俺たちの花姫を死守するんだ ! 」 くにえだたつや 説得力のある国枝竜哉の声に、戦士たちがまた盛り上がって声を張りあげる。だが。 ア」、つが 直河の耳には何も入ってこなかった。 ドール 篇 ただ息をのみ、目の前の敵の花姫にひたすら視線を釘付けにされていた。 弟 あわ 倪哀れにも捕らえられた敵の花姫は後ろ手に縄で縛られ、地面に両ひざをつかされて、ぐった りとうなだれている。 校すっかり疲れ切っているようだ。どうやら捕まるときにかなり抵抗したらしい 男今夜の敵の花姫はおそろしくかわいらしく飾り付けられていて、それがまた哀れを誘う。 あおじろ 寮着ているものは月の光に蒼白く浮かび上がる白の和服で、暴れたためにすそが乱れている。 桜の造花は胸もとに挿してあるだけではなく、花冠まで造られて、花姫の頭を飾っていた。 こうが いつもとはまったく異なるその装いは、恒河の視線を夢中にさせるには十分だ。 ドール さ ドール なわ

2. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

250 ふいに字宙が母親から顔をそむけた。 そのままくるりと背を向け、すたすたと店の入り口に向かっていってしまう。 「そ、宇宙 ? そら 茉莉花が動揺したように宇宙の後ろ姿を見つめる。 たつや こうが 巨河はフォローしようと足を踏み出したが、それは竜哉に先手を打たれてしまった。 「大丈夫です、お母さん。たぶんあいつ、泣きたくなっただけですから」 「え・ : 」 たつや たつや 自分よりも相当背の高い竜哉を見上げた茉莉花に、竜哉は軽くウインクしてみせて言った。 「母親の前しや、息子は涙は見せにくいものでしよう ? 桜、こひ 花か春碆と 学ぞ日び月 院和吉後 局の 校今 と日 共は で菜 使の 用花 て高 い校 楽科 で楽 大攻 勢の の生 招徒 待た 客ち をの 招演 い奏 て会 のの 発日 表だ ( 4 ) うるわしの兄弟愛 なはなひがし

3. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

こ、つ 2 桜花学院の生徒会室に拉致されていた恒河は、戦闘が終わって解放されてからも、しばらく は桜花学院高校の門の前にとどまって、菜の花東へ戻ろうとはしなかった。 どうしても会いたい人がいたからだ。 しようた 「翔太くん : ・ ! 」 ドールズ・ガーディアン 桜花の花姫守備隊に守られながら戻ってきた翔太の姿に、思わす名前を叫んでしまう。 かす だが咽が詰まって、それはヘンに掠れた声になった。想いがあふれすぎたせいだ。 はかな きようじん ドールズ・ガ 1 ディアン 強靭なメンバーをそろえた花姫守備隊に囲まれていると、翔太は小さすぎて儚くて、なんだ ア : っ 2 か本当にお姫さまみたいだなと直河は思う。 しようた その場で両手を広げて翔太を抱きしめたかったけれど、あいにく人目がありすぎた。 しばたた こうカ 篇門の前に立ち尽くしている巨河を見つけて、翔太は驚いたように目を瞬かせる。 弟 ほほえ せつ 兄 だがその顔はすぐに、相手を切なくせずにいないような痛々しい微笑みに変わった。 「、、ツ、コーガも花姫なんてな。予定外すぎて笑っちゃうぜ」 語 しようた 校「翔太く・ : 」 男「いーやもう。なんかウンメイに味方されてねーかんし。そんなら、もういい しようた 制 寮 うつむいてそうつぶやいた翔太の声は、小さく口の中にこもって聞き取りにくい こうが 全 次の瞬間、直河の体は前に飛び出していた。 「おいっ ! うちの花姫に何する気だ ! 」 ドール ド 1 ル らち しようた しようた しようた

4. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

」、つが 巨河の言葉にうなずいて、宇宙が上空を見上げる 」、つ幇 ~ 直河の声はどんなときもほとんど感情的になることがなかったので、兄には落ち着いて聞こ えるかもしれないが、内心はまったく逆だった。 そらにい ( 字宙兄に、話さなきや ) ′」とう こ、つ幇 ~ 先ほど、後藤生徒会長のグループに連れ去られてゆく翔太を見送ってから、恒河の心はその 想いていつよ ) ご。 しようた しようた ( 翔太くんのこと、ちゃんと話さなきや。翔太くんが僕たちの義兄弟だってこともぜん打ち しようた 明けて、それでも僕は翔太くんをあきらめることはできそうにないって、言わなきや ) こ、つが 恒河は隣を歩く宇宙の姿をちらちら盗み見する。黒いロングコートに身を包んだ兄は、満月 あや ふんいき 篇の光の下、なんとも言えす妖しい雰囲気を漂わせていた。 ドール そらに、 兄 ( 花姫っていうなら、宇宙兄のはうがよっぱどらしいんだけどな ) ド 1 ルこうが 思わす自分の体をまじまじ見つめ直してしまう今夜の花姫・直河である。 語 校海賊たちの戦闘はすでにあちこちで展開されている。 ドールズ・ガーディアン ドール 男花姫守備隊の一群は花姫を守り抜くため、花咲川の土手に沿って移動し、菜の花東の裏門を 寮めざしている途中だった。 あれほど参加することを嫌がった兄だが、今こうして隣り合って歩いていると、そういう感 こうが しは漂ってこない。巨河はもう一度ちらっと宇宙の顔を盗み見て、訊いてみた。 はなさきがわ 0 しようた

5. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

130 「さーて、そろそろラストだ。オレたち攻撃第三隊は敵の花姫を連れてやつらの裏から援護に かくらん ドール ドールズ・ガーディアン 回るぜ。おまえら花姫守備隊はうちの花姫連れて、オレたちとは逆の方向に逃げろ。敵を攪乱 する」 ビシッと戦闘モード。 みは こうが それまでとは比べものにならないレキの声の鋭さに、宇宙も巨河も目を瞠る。 ごとうれき 後藤暦ーーーー彼はたしかにこの菜の花東のポスなのだと思い知らされた。 くにえだたつや そしてそんなポスに「信頼できる男」と評価される国枝竜哉。 宇宙は河原を見下ろさずにいられない。 銀色の月光を浴びて思うままに戦う無敵の戦士。 たつや 字宙の頭の中は、無意識のうちに竜哉のことでいつばいになろうとしている。 弟、守り抜けよー 「いいなウチュ 駆け出してゆく生徒会長が力強くかけた言葉も、今の字宙の耳には届いてないかもしれなか ド 1 ル

6. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

レキの声に一一人は顔を見合わせ、一一人だけの世界から離脱する。 土手の上の、木立になった場所へ移動すると、そこにはレキの他にも菱田副生徒会長を始め 多くの戦闘要員たちが集まっていた。 「なに ? もうこっちの勝ちは決まってるんじゃないのか ? 」 字宙がけげんな顔をして訊く。と、レキのほうがけげんな顔になって聞き返してきた。 「なんでよ ? まだ十一一時になってねえぞ」 ドール 「だって向こうの花姫は捕まえたんだろ ? 」 「ああ、桜花の花姫ね。罠だろ」 「罠 ? 」 きようやひとすじなわ 篇「京夜は一筋縄でいく男しゃねえからな。裏の裏に罠はってくるよ。わざと花姫ラチらせて、 倪帰り際の油断したところを総攻撃とかな。ほら」 そう言ってレキは橋の向こう側を指さす。 校森の奧から黒い戦闘服で身を固めた一団が現れてくるのがわかった。 男「おびき出されたな」 寮菱田副生徒会長がばそりとつぶやく。レキがうなすいて言った。 「ああ。こっちの作戦ルートを知ってやがるんだ。スパイから情報仕入れたんだろう」 「スパイ ? ツ・そんなものまでいるのかよ ? 」 ひしだ ワナ ひしだ

7. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

214 「こいっッ ! まだ戦闘行為を続行する気か卩 こうが ドールズ・ガーディアン 花姫守備隊の少年たちがドッと巨河を押さえつけてくる。 「ちがう ! 放してくれ ! 僕はただ彼と話がしたいだけで : 「放してやれ」 りん ドールズ・ガーディアン 満月の光の下、凜と響く涼やかな声が花姫守備隊たちの動きを止める。 振り返ると、前線から兵隊たちと共に引き上げてきた副生徒会長・榎本京夜の姿があった。 ドール 「戦闘は終結した。今夜はもうお開きだ。花姫どうしで話すくらい、かまわないだろう ? 彼 らは剣道部の部員で顔見知りだ」 ハイ ! 失礼しました ! 」 桜花学院の生徒にとって、副生徒会長の言葉は絶対だ。 」、つカ しようた すぐに解き放たれた恒河は翔太の手を引き、裏の森の中へと連れていった。 しようた こうが 翔太は最初こそ巨河の手を振りほどこうとしたが、森の中ほどまで来ると、逆に強く握って くるようになる。どうしたの ? と訊いたら、暗いところは苦手なんだと海しそうにつぶやい こうが た。それがまたかわいくて、直河はとうとう足を止める。 「な、なんだ ? こ、つ州 ~ 急に立ち止まった巨河に、翔太はびたりとくつついてきた。 「なんかいた ? しようた き

8. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

あや 妖しくも麗しい 「くっそーっー 待ち伏せしてやがったな ! 」 ドールズ・ガーディアン ドール 花姫守備隊の男たちがあわてて花姫を守ろうとしたが、時すでに遅く。 くら 「ふふ。こちらのほうが数が多い。きみたちは我々の目を眩ますために花姫を保護する人員を 二手に分かれさせた。だけどそれが命取りになったというわけ。残念だったね」 こうが 「直河 ! 」 そらにい 「宇宙兄ツー またた こうがそら 桜花学院の戦闘要員たちに瞬く間に取り囲まれて、巨河と宇宙とはあっさり引き離されてし 篇「弟君はいただいていくよ。悪く思わないでくれたまえ。もともと趣味なんだよね。彼みたい 倪に背が高くてやさしそうなタイプ」 こうが 「やめろ ! 恒河を返せー 校「ふ、ふ。むりだよ。そちらは数が少なすぎる」 男薄く唇を伸ばして微笑む様は、本当に地獄から現れた悪魔のようだ。 寮悪魔のように美しい男・京夜。 こうが 「だめだ ! オレの恒河にさわるな : ・ ! 」 そら かす 字宙の声は掠れてしまって悲鳴にもならない。 0 うるわ じごく ドール

9. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

刺繍の模様は蝙蝠・蜘蛛・髑髏。 誰よりも自分を魅力的かっ攻撃的に見せることに成功している。 榎本京夜という人は、自分自身をもっとも効果的に仕立て上げることができる人なのだと、 その場に居合わせた誰もが再認識させられていた。 「くっそーっ ! 待ち伏せしてやがったな ! ドール ドールズ・ガーディアン 花姫守備隊の男たちがあわてて花姫を守ろうとしたが、時すでに遅く。 くら 「ふふ。こっちのほうが数が多い。きみたちは我々の目を眩ますために花姫を保護する人員を 一一手に分かれさせた。だけどそれが命取りになったというわけ。残念だったね」 こうが 「直河 ! そらにい 「宇宙兄ッ ! 」 こうがそら 兄 桜花学院の戦闘要員たちに瞬く間に取り囲まれて、巨河と宇宙とはあっさり引き離されてし 0 語ま、フ こうが こうが 校「巨河 ! 恒河を返せ こうが 男兄の悲鳴のような声が巨河の耳に残った。 桜花学院の戦闘要員たちに連れ去られてゆきなが さつかく こうが 寮ら、恒河は自分自身がまつぶたつに引き裂かれてゆくような錯覚を覚える。 兄の元には戻ってやりたい。でもこのまま桜花学院の人たちと一緒にいれば、もしかしたら しようた また翔太に会う機会がめぐってくるかもしれない こ、つ ) り どくろ またた ドール

10. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

その王子様が、いでたちに似合わない不機嫌な表情で先を続けた。 ′イレーツ・ディ 「おまえをあいつらのおちゃらけたパーティなんかに差し出す気はない。海賊の日だって ? ばかばかしい いいか。オレが前の晩に迎えに行く。逃げる用意して待ってろ」 そらにい ド 1 ル 「え、でも宇宙兄、僕には花姫の役目があるんだ」 ド 1 ル 「花姫ー 花姫ってのはなー ノ ただの獲物だぞ ! わかってんのか ! おまえ、敵に あ 捕まったらどんな目に遭わされると思うんだよー 「え。だいしようぶだよ。たぶん。戦うって言ったって、ただのゲームだし」 こうが どうやら巨河は参加したいと思っているようだ。 宇宙の目がスッと細くなる。 こうカ 引宇宙は知っていた。恒河は何かを大勢の仲間とやり遂げることが好きなのだ。 共有して使ってる施設の所有権をそういうイベン 倪「だ、だってさ、おもしろいと思わない ? トで、毎月自分たちで決めるなんて。あ、昔はね、両校でそうとう激しいバトルがあったんだ パイレーツ・ディ って。それで当時の生徒会長どうしが話し合って、この海賊の日っていうイベントを導入した 子んだ。自分たちで考えだしたんだよ ? すごいよね ? 今では両校の校長先生たちもこのシス テムは黙認してるんだって、レキ先輩が言 0 てたよ」 ′イレーツ・ディ 全 海賊の日。 それは閉鎖された男子校の寮でくすぶっていた少年たちのエネルギーが炎になる夜。 ロ ド 1 ル と