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検索対象: 全寮制男子校物語! 兄弟篇
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1. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

230 こうが しようた 翔太のほうは食べるのに夢中だが、巨河の話を聞いていないわけではない。 なが こうが むしろ直河がしゃべるのを眺めてうっとりとしている。 しようた 翔太はもぐもぐラーメンを胃に流しこむと、ようやく口を開いて言った。 「オレだってビックリだぜ。おかんがチェロ弾いてるとこなんて見たことなかったからさー」 きりゅうまりか 桐生茉莉花だった頃には、世界的な名チェリストとして常に演奏会に追われ、家に戻ること も少なかった母親だ こ、つが 巨河にとっては記憶すら定かでない母親だった。 だがこうしてカウンターの向こうでせかせかと働いている母親の姿を見ていると、たしかに チェリストだったことなどあるのだろうかと疑ってしまいそうになる。 しようた 翔太はスープをすすりながら、さらに言った。 「今はさ、もうあんなにがんばって働かなくても、他のチェーン店からの収入もあるんだし、 ーって言ったんだけどな。親父 せつかくでけー家たてたんだから、うちでゆっくりしてりやい もおかんも貧乏性なんだよな。ってゴメン」 しようた こら′が 恒河にとっても母親である人なのだと思い出した翔太が、あわてて言いつくろう。 こうが だが巨河は首を横に振って言った。 「幸せそうだよね。こういうのってきっと、まさに幸せって感しだよね。お母さんにはこっち のほうが合ってたんだなあって思うよ

2. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

232 「いやっ、ほら、血イつながってねーから、ケッコンできるよなー、とかー」 こうが プホッ、と思わず咳きこむ恒河である。 こうが しようた そもそも奇抜な発想は翔太の持ち味だったが、さすがにこれには巨河もブッ飛びそうになっ 「けつ、けっこん【 今度は翔太のほうがポカンとする。 「しねーの ? 「し、しねーのって : ・ 「だってオレら、愛し合ってんじゃねーの ? フツー、愛し合ったらケッコンすんだろッ ? なあ ! おかん ! そーだよな ! 」 「はあ ? この忙しいのに何わけわかんないこと言ってんの ! それより早く食べちゃいなー 手が足りないんなら手伝うって言ったのはあんたらだよっー カウンターの奧から活きのいい女性の声が返ってくる。 こ、つカ うーん、とうならずにいられない巨河だった。 そらにい ひと ( 宇宙兄、この女性見たら、びつくりするだろうなー ないなあ ) しようた 0 ってい、つか、ショック受けるかもしれ

3. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

「関係ないだろ。顔でチェロ弾くわけじゃねえよ」 ぶっちょうづら 宇宙はまだ仏頂面である。容姿の話題は兄には禁句だ。 こうが もっとも直河は知っていたが、宇宙は誰かに対して仏頂面を見せないことのほうが少なかっ 「それはそうだけど、綺麗な子は多いほうが楽しいよ。花姫選びもあるしね」 「ああ。いや、きみたちはまだ知らなくてあたりまえか」 「 ? あんた、菜の花東のことにくわしいのか」 「まあ、そうかもしれないね。桜花学院の校長先生と、隣の菜の花東高校の校長先生は、実は 兄弟でいらっしやるんだよ。そのせいか共同で使う施設も多くてね。僕もついさっきまで菜の 花東の副生徒会長と共用の道場で剣道の練習をしていたくらいだから」 「ふーん。隣接校どうし、べタベタ仲良くしてるってわけかよ」 「べタベタ仲良く・ : ? なぜだか不自然な長さの沈黙が続く。 ほほえ やがて桜花学院の副生徒会長だというその人は、美しい顔に謎めいた微笑みを浮かべて言っ 「どうかな。自分たちでたしかめてみたらどうだい ? ドール

4. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

「いいよ。うん、そうなんだ。お母さんが出ていってからこっち、お父さんは研究室に入り浸 って、っちには一民ってこないし、たいていは兄さんと一一人で放っておかれたんだ。僕にはそ、フい う状況がふつうだったから、かなり兄さんばなれできてないほうかもしれないよ。だめだね」 「だめってことはないだろ。そういう状況なら俺だってきっと兄貴から離れないって思うし。 まあうちは姉貴だけなんで想像つかないとこあるけどね」 こ、つ幇 ~ 夏目がそう言ってまっすぐに直河を見つめる。 そんな夏目を横から中条がうっとりと見つめている。 こ、つが 直河は中条の視線に気づいて、なんだかいいなあと胸がほんわり暖かくなったりする。 と、夏目が思い出したよ、フに一一一一口った。 篇「桐生って、何か部活、もう決めた ? いや、まだだけど」 「うん、だったら、剣道部に入ったらどうかな」 語 物 男「いや、国枝先輩ってたしか剣道部だったんしゃないかと思って」 ゅうれい 寮「幽霊部員だろ。あいつ、運動会系、ほとんど押さえてんじゃねえの ? 中条が顔をしかめながら夏目のほうを見上げる。 夏目は中条を振り返って、そうなの ? という目で見つめる。 くにえだ

5. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

こうが 宇宙の手が巨河のライダーズジャケットをつかんでいる。 こうが 巨河は兄の手に気づいて目を細めたが、何も言わなかった。 宇宙の視線は土手の下のほうへ向かっている。 戦闘は花咲川に近い河原のほうまで広がっていた。字宙の視線の先には次々に敵の攻撃をか ゅうもうかかん くにえだたつや わしてゆく勇猛果敢な男の姿があった。国枝竜哉だ。 「あー、まああいつ、言い方は横暴だけどなー」 レキも宇宙の隣に並んで土手の下を見おろす。 「けど、あれでもすいぶんマシになったんだぜ ? 転校してきたばっかの頃はそりやもう」 くにえだ 「転校 ? 国枝が転校生 ? 」 篇「あり ? 知んねえの ? 倪「ああ。聞いてない」 ( 転校生。しゃあオレと同ししゃないか ) 校「ふーん」 男レキはそれきり黙ってしまった。 ごとうれき 字宙は知らなかったが、菜の花東の生徒会長・後藤暦は、自分の環境のせいもあって、他人 ム亠しゆっじ の出自を本人以外の人間がロにすることを極端に嫌う。だから宇宙がそれを知ったのは、レキ こうが がその場を去ってのち、恒河が告げてきたからだった。

6. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

あせ たつや 竜哉はそう一言うと空いているほうの手を裏返し、宇宙の汗ばんだ額を拭う。 宇宙はびくっと頭を引っこめた。 負けたくない。誘ったのは自分のほうだ。 「オレ」 「声あげるぜ、けっこう。こんなオンボロな寮しやますいんしゃないの ? 「ロをふさぐか ? 」 : 、ツ、なに ? あんた、そーゅうの趣味なの ? 縛りとかも好き ? だったらオレ、得意 かもだぜ」 「得意 ? 」 「ああ。前に言ったろ ? 襲われたことあるって」 「・ : そうだったな」 たつや ふいに竜哉の声が低くなったが、宇宙は気づかない。 あお たつや そのまま少しでも相手の上に立とうと、竜哉を煽り続ける。 くにえだ 「あんたがしたいようにしろよ、国枝。そういう取り引きだろ ? オレを縛って、あんたの好 なぶ きに嬲ればい ) なま たちう 宇宙の声には、どんな男でも太刀打ちできないであろう艶めかしさがあった。

7. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

「ほんと ? 」 「うん。ほんとにそう思う」 こうが しようた 恒河か言い返すと、翔太がニハッと笑う。 」、つが 恒河はすかさす言ってみた。 しようた 「僕の幸せは、翔太くんがそうやってそばで笑ってくれてることだけどね」 しようた 翔太はたちまち食欲を失ったらしい しようた 真っ赤になってうつむいた翔太は、箸の先をくわえ、もしもししながらつぶやく 「オレ、さあ、コーガとはたしかに兄弟ってことになるんだけど、でも、オレはおとんの連れ 篇子だし、コーガとは直接血はつながってねーわけだし」 倪「え ? 」 しようた こうが 引翔太が何を言いたいのかわからなくて、直河は聞き返す。 校「血のつながってない僕とは一緒にいられないってこと ? 男「あー、やー、そういうことしゃなくてよー」 しようた 寮翔太の声はますます小さくなる。 しようた こ、フ ~ 恒河は首をかしげ、翔太のほうに耳を近づけた。 しようた 翔太はさらに耳たぶまで真っ赤にしながら、ばそばそとっやく 0 0

8. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

「病院に行ったほうがいい しナ . たつや 激しい拒絶の言葉に、竜哉が顔を上げる。 宇宙がその視線に気づいてとまどったようにうつむいた。 こうが 「 : ・直河が、心配する」 、田い、消えてしまいそうな声だった。 それだけに字宙という少年の内側が透ける。 せすじ ぞくっと背筋がふるえた。 たつや 竜哉は自分の中で何かが起こっていると感じていた。 たつや 怒りに我を忘れないうちに、すべてを明確に だがそれを追及する余裕は今の竜哉にはない。 しておかなければならなかった。 たつや べッドの奥に引っこんだままの字宙を無理に引き出すようなことはせず、竜哉は手前でただ 手を差しのべて言った。 み 「では俺に内診させろ。病院で診られるよりましだろう ? なかなか答えが返ってこない。 たつやあせ さすがに大胆すぎたかと竜哉が焦り始めたとき、字宙がやっと口を開いた。

9. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

200 「オレ。 しようた 翔太の声はふるえている。 しようた そんな翔太がかわいそうでたまらない。こんなにかわいいのに泣いてるなんて。 こうがしようた 巨河は翔太のひたいに手をやって、ゆっくりと撫でながら一一一一口う。 「僕が泣かせてるの ? 僕が悪いんだね」 しようた 翔太は、ううんと首を振る。 「ちが : ・、ちがう。おまえしゃない。悪いのはオレだ。オレ、おまえにウソ言ってた」 「ウソ ? のど しようた 」、つカ 巨河の瞳に間近で見下ろされて、翔太はごくっと咽を鳴らした。 「オレ、おかん : ・おかーちゃんと血のつながり、ねえんだ。だからオレ、最初からおまえのこ と知ってた」 しようた 「 ? 翔太くん ? 何のことを言ってるのかわからないよ ? 」 こうが いきなり母親の話など持ち出されて、巨河は軽く目を瞠って微笑む。 こうが 巨河の指は翔太の頬をそっと撫で続けている。 まりか 「オレの今のおかんの名前、茉莉花ってゆうんだ」 しようた 翔太はしやくりあげそうになっていたが、あえてそれをガマンして叫ぶように言った。 きりゅう 「うちの親父と再婚する前は、桐生茉莉花だった・ : しようた みは ほほえ

10. 全寮制男子校物語! 兄弟篇

「わしがきみらのお母さんと知り合うたのは、お母さんが離婚して家を出て、一年以上も経っ てからや。お母さんが他の男といっしょになりたかったから家を出たて思うのは、大まちがい やで」 きようがく 宇宙の瞳が驚愕にみひらかれる。 すそ 茉莉花は困ったように今の夫のエプロンの裾を引っぱった。 ( あ ) こ、つカ そらにい などと田 5 、フ。 そんな母のしぐさを見ていた直河は思わす、字宙兄といっしょだー おやこ ( やつばり母子なんだなあ ) しゆら 」、つカ 篇 この修羅場にあって、こうい、フことをのんびり考えるあたりか、まさに直河らしいのかもし 弟 倪れなかった。 「ごめんね、宇宙。そんなふうに思わせてたんなら、それは母さんの責任だね」 語 校「え」 男母親の苦痛に満ちた声に、宇宙が混乱した視線を向ける。茉莉花は言った。 寮「母さんは、おまえたちを捨てたりしてない。父さんのことも、母さんのほうから捨てたりで きるわけないしゃない。そうしゃない。母さんのほうが捨てられたの。ううん、こんな言い方 ひきよう は卑怯だね。ちがうの。母さんは母さんでいられなくなったんだよ。母さんがダメだったの」