百姓 - みる会図書館


検索対象: シナリオ 2016年1月号
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1. シナリオ 2016年1月号

新六、天狗状の東 ( 蜂起のお触れ ) を治治兵衛「一揆じゃと」 てくれますかいー 兵衛に渡す。 座り込む治兵衛。 新六「 : : : たたらや木地の衆は動かんぞ」 弥治郎「はあ ? 」 新六「矢谷内の百姓に」 たみ「 : : : 男は好きじゃねえ、赤穂浪士」 新六「徳右衛門」 治兵衛「蜂起じゃゅうて : : : 万蔵もですか」治兵衛「ありや侍じやけえな、わしら根っか らの小作に覚悟せえ言うたかて : : : 」 徳右衛門「なんじゃ」 新六「 ( うなずく ) 頼んだ」 たみ「 : : : 覚悟せえ治兵衛」 新六「山年貢、ならびに諸々運上銀も御免治兵衛「 : : : じやけえどこれ」 じゃ、ちいとは山のもんのことも考えろ」新六「分かるな」 治兵衛「はあ ? 」 徳右衛門「 ( 微笑み ) よし、みな覚悟してくれ」治兵衛「 : : : わしゃよう分からん、新六さん、たみ「たたかえ治兵衛」 「おー」とややうるさい こねえなことしたら、命のうなってしま、つ治兵衛「殺されつぞ」 んじゃねえんですか」 たみ「あんごう : : : 生き抜く闘いじやろ」 弥治郎「しー、声が大きい」 新六「山中惣百姓の決定じゃー 治兵衛「百姓が侍に勝つなんか聞いたことな 新六「揆を一つに」 静まる かろ、つが」 治兵衛「惣百姓って誰のことなら、新六さん、 わしらが百姓で、なんばでも食いもんこさたみ「 : えりやええですが、無うなったら弦でも草 たみは治兵衛の頭を腹に寄せる。 治兵衛の家・中 でも : : : 野のもんも居るし、それでええでたみ「あったけえな治兵衛」 治兵衛がたみの着物の中の股に顔を突っ 込んで戯れている。 すが」 見合うふたり。 新六「 ( 漏れる ) 分かってくれ」 たみ「ひとりじゃ何も出来ねえが、ひとり 治兵衛「 : : : わしや行かん、新六さん、わしゃ じゃねえが」 〇同・外 蜂起なんかしとうねえけえ」 治兵衛「・・ : : 」 新六がいる 治兵衛「新六さん」 新六「 ( 俯き ) おめえが行きとうねえのはよ う分かる、じやけど生まれてくる子のため〇 木地師の作業場 新六「おう」 新六がやって来る。 にも、今のこの山中の在りようを変えにや 治兵衛「たみですかい ? ー あ続いていかんけえ : : : 治兵衛、山中の一 喜八「新六さん」 新六「いや、治兵衛」 新六「おう」 治兵衛「へい」 揆じゃ、行かにゃあいけん」 喜八「 ( 出で立ちを見て ) すっかり百姓になっ 新六「 ( 小声 ) 山中惣百姓が蜂起することに 同・中 てしも、ったのう」 なった」 喜八と喜重はにやっく。 治兵衛「 ? 戻る治兵衛。 〇 〇 8

2. シナリオ 2016年1月号

干し柿を頬張る治兵衛、新六と一一人。 弥治郎「徳右衛門、みな気を張り続けて、こ新六「 : : : 帰ってやれ」 治兵衛「いったいどうなりよるんじゃ : : : 新 突然ものすごい複数の足音。 りや続かんぞ」 陣が襲撃される音。 六さん、わしは死にとうねえ」 徳右衛門「 : 遠目からそれを伺う一一人。 新六「侍いうもんは人のこころまで奪おうと 立ち上がる徳右衛門 しよる : : : わしは何も出来んかった : : : 何 徳右衛門「みな、一旦陣を解く、今夜は帰っ かあったら、喬の介を頼む」 てゆっくり休んで、あすまた明け六つ集〇 同・本陣 ( 夜 ) 寝込む数人が足軽によってすばやく縄に。 まってくれ」 河原にて足軽に連行される百姓たち 逃げ出すものも追いかけられお縄。 弥治郎「今夜はおっかあたんとかわいがって やれ : : : なお留守居数名志願のものは居ら足軽「 ( オフ ) 他にもおるぞ」 万蔵の住処・中 んか」 眠っている治兵衛と新六のもとへたづが 〇同・丘 ( 夜 ) あわてて来る。 陣と逆方向へ逃げ出す治兵衛と新六。 津山藩鎮圧隊の陣 ( 夜 ) たづ「大変じゃ」 足軽「 ( オフ ) 逃げたぞ、追え追え」 暗闇に松明少々 治兵衛と新六は起きて、 谷に隠れ陣を張る三つ寺率いる不気味な 〇 新六「どねえされた ? 」 部隊。 山道 ( 朝 ) 先を逃げる新六に必死でついていく治兵たづ「 ( 動揺 ) 谷いってみい」 異様に統率が取れ、乱れひとつない。 と向こ、つを指差す。 衛。 松吉が来て三つ寺に耳打ちする。 松吉「陣を説いた模様、約東は守ってくだせ 河原 〇 万蔵の住処・外 えよ」 縄をかけられた百姓たち。 にんまりする三つ寺。 新六と治兵衛がやってきた。 侍が監視する。 治兵衛「おばさん」 松吉が侍に百姓の首を斬るように脅され たづが戸を開け出てくる 百姓衆峠の陣・丘 ( 夜 ) ている。 留守居で残った治兵衛、満天の星空を眺新六「しばらく世話になる」 めている。 たづ「へえ」 同・丘 住処に入るふたり。 そのもとへ新六がきて隣に座る。 河原の見える丘に来てはっとする治兵衛 新六「たみが心配か」 と新六。 同・中 治兵衛「 : : : わしや一揆やこうどうでもええ」〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 -6 8

3. シナリオ 2016年1月号

交渉の場、大旦芝。 新六「神尾さま、」 万蔵「毒じやろう、一揆やこう」 伊織の手を振り解こうと。 新六の隊列が来た。治兵衛もいる 治兵衛「・・ : : 」 無数の民衆が湧き出すように集まってい 万蔵「治兵衛、おめえは百年後も小作じゃ、伊織「狂うな新六、百姓に何ができる」 る やっと手を離した新六は屋敷をでる。 小作の子、治兵衛」 治兵衛は集まった民の多さに言葉を失う 治兵衛「おめえもじやろう」 新六「 ( 振り向き ) 百姓はあんたさまらの食う もんつくりよるんです、自分らはひえや麦食 万蔵「一揆やこうやめとけ、はよ麦蒔いて、 うて、あんたさまらの米つくりよるんです」〇 同・大庄屋屋敷前 やや子の餌頑張ってつくれえの」 数名の見張り侍と大群集。 伊織「 : : : ( 呟く ) 命しらずが」 治兵衛「決まりじゃと、行かにやいけん」 いっしか万蔵はいなくなっている 去ろうとする新六。 〇同・大庄屋屋敷奥の間 伊織「新六」 中央の湯釜の湯が煮えたぎる。 藩側は三つ寺、郡代・山本、大庄屋・福 と呼び止める伊織 田が百姓と対峙。 伊織「お主らの用意しておる六カ条、みな認 津山藩城下伊織屋敷・玄関 ( 夜 ) 百姓側は徳右衛門、新六ほか、弥治郎、 めよう」 伊織が玄関へ。 忠七郎、喜右衛門 新六が先日の小判の包みを持って立って新六「 ! 」 いる 外の民衆の唸り声が徳右衛門らを後押し一 伊織「その代わり、ただちに徳右衛門の居場 する。 所を教えろ」 伊織「待たせたな」 睨み合い 新六「この銭はやはり受け取れませぬ、身分の新六「・ : 福田「徳右衛門、ええから引かせえ、それか 違いゆえ、侍さまの施しが怖うなりまして」伊織「悪い話じゃなかろう」 らじゃ」 新六の胸倉を締め上げる伊織 新六「 : 徳右衛門「何も決まらんまま帰れ言うても帰 伊織「何を考えておる、大旦芝に際し多勢を伊織「お主も藩内に取り立ててやってもよい らんでしよう」 のだぞ、どうじゃ」 集わせておるお主らの報はすでに入ってお 新六「 : : : 正々堂々やりましよう、神尾伊織福田「こねえな睨み合いばあしよってもええ る」 ことにはならん」 さま」 徳右衛門「みな覚悟しとります」 走り去る新六。 伊織「お主を見込みよきに計らうつもりだっ 三つ寺が山本に耳打ちする。 たが見損のうたぞ」 三つ寺「 ( 小声 ) ように聞いてくだされ、山 胸倉を掴まれつばなしの新六は気が遠く なる。 年貢、運上銀以外はお認めになられ」 〇 〇 大旦芝・大庄屋屋敷を望む丘 8

4. シナリオ 2016年1月号

〇 〇 なことをして万がいち見られでもしたら、 突き立てる 治兵衛「万蔵はあっこでやってくじやろう、 それに子が生まれたら、新六さんにはこれ百姓騒動になりかねませぬ」 静まる稽古場。 まで以上に世話になる : : : 万蔵のことまで伊織「まさか」 面倒かけれん」 三つ寺「山中は藩内でも特に木地師、たたら〇同・稽古場の見える門 など山の民と百姓どもが交ざる複雑な地、 そのありさまを通りがかった伊織が見て いる 見くびらないほうがよいかと 津山藩城下藩学校・稽古場 血気盛んな若い藩士たちに新六が古武道伊織「案するな、あやつらは何処にでも隠し伊織「あのものは」 もっておろう」 三つ寺「山中から竹中新六、竹中流の師範で の稽古をつけている 三つ寺「しかし」 ございます」 伊織「沸いてくるんじや米ぐらい」 同・石塀外 神尾伊織 ( ) が三つ寺 ( ) と歩きな三つ寺「はあ」 カら。 〇 津山藩城下伊織屋敷・客間 ( 夜 ) 伊織の妻・しん ( ) によって新六の前 三つ寺「この度の藩主の死による領地縮小の〇同・稽古場の見える門 噂はすでに領内広がっており、国替え、改 伊織と三つ寺が通りかかる にご馳走の膳がおかれた。 新六の向力し。 ( 、、こよ伊織が座る 易などと流布するやからがありて、百姓の その傍らにしんが座り酌する。 間でも一一重の年貢を恐れ動揺広がりそうで〇 同・稽古場 ございます、特に山中」 若い藩士のひとりが新六の稽古を受けて伊織「お主の腕には恐れいった、山中なぞに いる その腕置いておくものではないー 伊織「三つ寺 , 三つ寺「はい」 新六の投げが一層激しく決まる 新六「ははあ」 伊織「さあ、遠慮なくやってくれー 伊織「早々に山中郷蔵の年貢米を集めてまい 藩士「どういうつもりじゃ」 手を合わせお膳に手をつける新六。 れ」 新六「稽古にございます」 三つ寺「何と」 新六は火鉢の傍らに座る 伊織「山中よりどれくらいで参った ? 」 新六「さて八つほどで、山筋で」 伊織「山中もいずれ幕府に召し上げられるこ藩士「ふざけよって、百姓が」 藩士が隅に置かれた木刀を手にし、新六伊織「はやいな」 とになる」 三つ寺「 : : : 」 に振りかかる 新六「へい、もとは木地をやっておりました 伊織「そうなってからでは藩の米も足りぬ」 新六は火鉢に刺さった火箸をすばやく使ゆえ山のことは」 、それを見事に交わし、藩士に火箸を伊織「そうか、で、今は ? 三つ寺「お言葉ですが神尾さま、今そのよう 8

5. シナリオ 2016年1月号

外に出た一一人は立ち止まり、 〇きこり場 めえもしよっぴかれようが、気つけねえ」 新六「たみはええようになりよるか」 切り倒した樹で遊ぶかのように作業する喜八「ふふ」 治兵衛「もうだいぶ近こうなっとるように田 5 木地師たち。 治兵衛「へい」 いますー 喜八と喜重が作業をしながら話している。 過ぎ行く治兵衛。 新六「そうか : : : 治兵衛」 喜八「なんほ樹出してもおえんわ」 治兵衛「へい」 喜重「百姓らも今年はおえんでいいんなさる」〇 万蔵の住処・外 新六「わしもたみも出所は木地師じゃ、山の喜八「あいつらは世話ねえんで」 治兵衛がやって来て戸をたたく。 ことは分かっても正直百姓のこころはよう喜重「なして」 万蔵 ( オフ ) 「おおい」 分からん、」 喜八「食いもんつくりよんじやけえ、なんば 木戸を開け、中へと入る治兵衛。 治兵衛「へい こころですか」 うでも持っとらあ」 新六「うん ? 」 喜重「じゃあじゃあ」 〇同・中 治兵衛「いや」 喜八「そねえなもんじゃ 中は薄暗くわずかに光が射すだけ。 新六「父上も厳しゅうなった年貢を納めきれ喜重「わしら木地のもんは樹切って、なんば 床に座り、咳き込む万蔵 ( ) がひとり いる んで、この所あのような振る舞いばあじゃ椀作っても椀やこう食えりやせんけえな」 けえ、悪いな」 喜八「いっぺん食うてみねえ」 万蔵は寒さのあまり震えが止まらない 治兵衛「せわねえです」 喜重「あんごう」 万蔵「治兵衛か」 新六「すまん」 治兵衛「万蔵、いまあどっこもまともな食い 喜重「おいよー」 もんのうてな」 〇 大衆浴場 ( 夜 ) 喜八「あいやー」 万蔵「今に始まった事じゃなかろう」 湯煙うっそうと上がる中、たみ、みち、 掛け声と共に大木が下へ転がる 治兵衛「こんだけしか分けれん」 喬之介が浸かっている 治兵衛がそれを横目に通りかかる と、少々の食料を万蔵に渡す治兵衛。 たみ「喬ちゃん、この子生まれてきたら遊ん喜八「おお治兵衛」 袋の中を確認する万蔵。 じゃってえな」 治兵衛「ご苦労さんです」 万蔵「悪い : : : 麦はもう蒔いたんか」 喬之介「おお」 喜八「こねえな奥まで来てどけえ行くん」 治兵衛「蒔けれんけえ往生しよる」 みち「えらそうに」 喜重「万蔵とこじやろう」 万蔵「なして」 たみは腹を気にする 治兵衛「へい」 治兵衛「秋米みな納めんと蒔いちゃいけんゅ 喜重「あげえな盗人百姓と関わりよったらお うて」

6. シナリオ 2016年1月号

〇 〇 〇 〇 たみは腹を心配し、さする。 徳右衛門「 : : : すまなんだ」 街道 治兵衛、それを見て、 徳右衛門「新六さん、あんたが藩と通じとる 隊列を組み行進する暴徒化した男たち、 ゅうもんが居るんじゃが、そねえなことね 多くの山の民も目に付く 治兵衛「産婆はみちさんに頼んでおいたけえ」 えわあな、裏切るんなら言うて下せえよ、 木地師の頭や喜八、喜重の姿もある。 たみ「 : : : 何があっても死んじゃいけんで、 死なんかったら待っとるけえ、乞食してで わしもう疲れた、怖ええんじゃ」 も何してでも生きといで、さあ、はよう行っ新六「そねえなことで惣百姓率いたんか、み 庄屋・蔵内 てきねえ」 な捕まったら死ぬかもしれんゅうなか、そ 蔵から米俵を略奪する暴徒化した男たち。 米切手が舞う。 黙る治兵衛。 れでもお前を信じて続いたんじやろう、い 治兵衛「たみ」 まさら怖ええやこ、つい、って」 同・居間 5 奥の間 たみ「何」 徳右衛門「 ( 微笑み ) 百姓は毎日びくびくし 室内に入り金品を強奪するもの 治兵衛「嘘をつくな」 とるんじゃ、風が吹いてもお日さんでても、 ・ : 山のもんは銭はもっとるけえ、わしら 梁に縄をかけ、家 ) 」と壊そうとするものも。たみ「うそ ? 」 治兵衛「今度は本気で殺されつぞ」 が少しでも豊かになりゃあ、あいつらも小一 同・蔵前 たみ「じゃったら行くな言うたらええんか 判噛んで死ぬようなことはねえと思ったん じゃ、じやけえ山年貢は譲った」 治兵衛と新六がやってきた。 ・ : わからんわ」 大八車に蔵から持ち出した米俵を山盛り治兵衛「・ : ・ : 」 新六「侍は自分ら守るためにわしらの連判切 武者震いがつく治兵衛、家を飛び出す。 り裂いて、争わせる、わかっとろうが」 に積む男たち。 たみがひとり。 徳右衛門「・ : それを愕然と見る治兵衛は震えがとまら 血相を変え弥治郎がくる はそれを見て暴徒化した男たちを必死に〇 山道を駆け抜ける新六 弥治郎「藩の部隊が久世に入った」 説得するが、吹っ飛ばされる 徳右衛門「 ( 呟く ) 早い : : : 」 〇 弥治郎が新六に気づき、徳右衛門に耳打 徳右衛門の隠れ家 ちする 薄明かりのなか、徳右衛門がひとり。 〇 治兵衛の家・中 治兵衛とたみが黙って座っている。 連判状がある。 徳右衛門「弥治郎、すぐに山中三触の百姓に 武装の上、三坂峠西詰め再決起と触れよ」 徳右衛門の激しい武者震いが止まらない。 たみ「どうなるん」 新六がやってくる。 弥治郎「わかった」 治兵衛「わからん、じやけど新六さんは藩と 弥治郎は徳右衛門をチラッと見たあと新 戦する覚悟じゃと」 新六「交渉の折、なぜ山年貢を譲った ? 」

7. シナリオ 2016年1月号

新六「へい、矢谷の地主に婿入りして慣れな〇 徳右衛門隠れ家 弥治郎「徳右衛門、ここが時かもしれん」 薄暗い。 い百姓を小作に習っております」 徳右衛門「新六、どねえ思う」 伊織「 ( 笑い ) それはご苦労 : : : もう麦は蒔 一揆の頭衆が集まっている 新六「急いどるな、あるもんは今のうちに いたか」 一揆総大将・徳右衛門 ( ) を中心にさ とっとこ、つ一言、つことじやろ、つ、じやけどムマ 新六「いえ : : : 実はいまだお年貢完済できぬ まざまな報告が行われている。 わしらが動くとなると麦の段取り前、どれ ゆえ、麦を蒔くなとのお達しで : : : 申し訳 頭衆・弥治郎 ( 、忠七郎 ( 、喜右だけの百姓が動けるか」 ございません」 衛門 ( 四、松吉 ( ) 、ほか三名の百姓。松吉「麦はすぐに食えませんが」 頭を深々と下げる新六。 新六も徳右衛門の向かいに座る 忠七郎「段取りどころじゃなかろう」 伊織「お主らが厳しいのは存じておる」 忠七郎「 : : : ひじやで五名、山中三触で十名喜右衛門「死んどるんじゃぞ」 新六「申し訳ないしだい」 が餓死」 弥治郎「みなの言うとおりじゃ、徳右衛門 伊織「ところで、徳右衛門というやつは、知っ徳右衛門「備蓄米」 急がれい」 とるな」 喜右衛門「へい、大庭皿に三俵、隠し谷に一一徳右衛門「 : : : 五日後明け六つ、蜂起ののち 新六「へ、へい 俵、玉田、都喜足にそれぞれ五俵、以上増大日一芝にて終結、要求は未納米ならびに借一 やや動揺する新六。 減なし。新たに見尾に三俵、 / 川に一俵半米返済の御免、現庄屋御役ならびにそのす四 伊織「懇意か」 集まっとるとのこと」 べての帳面をわしら村方百姓へ引き渡すこ一 新六「いえ」 徳右衛門「松吉、兵具は」 と、山中の仕組みはわしらが決める」 伊織「そうか」 松吉「異状ねえ」 弥治郎「よし、忠七」 新六「徳右衛門が何か」 徳右衛門「弥治郎」 忠七郎「ほい」 伊織「いや : : : まあよいー 弥治郎「へい 弥治郎「喜右衛門」 徳右衛門「藩の動行は」 喜右衛門「ほい」 〇同・玄関 ( 夜 ) 弥治郎「久世の郷蔵にて藩方の役人がこそこ弥治郎「たたら衆に手ごうせえゅうてこい 新六の帰り際、伊織は小判の包みを新六 そと年貢米を輸送したとのこと」 忠七郎「ほいさ」 学」 0 徳右衛門「ついに動いたな」 喜右衛門「ほいきた」 民伊織「とっときなさい」 松吉「どういうことなら」 弥治郎「地主たちにはそれぞれみなで回して し新六「いえ」 喜右衛門「これでお上が変わりゃあ二重の年くれ」 と言いながら断れぬ新六。 貢の取り立てか」 「ほいよ」などとそれぞれ。 などとざわっく。 弥治郎「木地の衆へは新六さん、廻しちゃっ

8. シナリオ 2016年1月号

新しき民 は某にございましよう、しかしすべては藩尽きしだい三方向より鎮圧」 弥治郎「仲間じや思うとったのに」 のため、引いては幕府のために尽くしたも足軽頭「はあ」 と吐き棄てて去る。 三つ寺「松吉はまだ戻らんか」 徳右衛門「新六さん、あんたはどうする」 浅野「それを分かっての所払いじゃー 足軽頭「いまだ」 新六「 : 伊織「如何に : : : ならば、いっそのこと武士 として、切腹、切腹お申し付けをー 〇 百姓衆峠の陣・本陣 〇 津山藩城下家老屋敷・広間 冷え込んできた。 浅野 ( 菊 ) と伊織がいる 津山藩城下伊織屋敷・居間 徳右衛門ら百姓がそれぞれ武装し、陣に 浅野「この騒動の責任、大変に重く、腹を切 刀を前に置き座し、ひとり遠くを見る伊 詰めている れと言いたいところじゃが、元来お主は幕 織。 府直参、これまでの改革は見事であったゆ 同・丘 え、所払いに処す」 津山藩鎮圧隊の陣 新六と治兵衛ほかが峠の先を監視するが 伏す伊織。 三つ寺が陣頭指揮をとる陣 何の気配もない。 浅野「江戸もの、きれがよかったぞ」 足軽たちが武装し控えている 疲労を隠せない。 伊織「・ : : ・ご家老、恐れながら申し上げますー足軽頭「三つ寺さま、峠の向こうに陣を張っ 浅野「 : ・ たもようでございます」 同・本陣 ( 夜 ) 伊織「ここまでの騒動にいたった責任、多く三つ寺「美甘の部隊を谷筋からも配置、食料 百姓衆はかなりの疲労。 ラピュタ阿佐ヶ谷 毎月抽選で 15 名様 招待券プレゼント “ 12 月上映スケジュール“ 「昭和家庭日乗わたしのかぞく」 ~ 12 月 19 日 月に飛ぶ雁 / 山の音 / 母 / 乳母 車 / 美しき母 / 裸の重役 / 黄色 いからす / 若い東京の屋根の下 / 恍愡の人 / サラリーマン目白三平 亭主のためいきの巻 / かあちゃん と 11 人の子ども 「東京映画地図」 12 月 20 日 ~ 東京の恋人 / 真昼の罠 / 夜の片 鱗 / 駈けだし刑事 / 吹けよ春風 / 見事な娘 / 洲崎パラダイス赤 信号 ◆ モーニングショー 「昭和の銀幕に輝くヒロイン第 79 弾野添ひとみ」 ~ 12 月 20 日連日 10 : 30 より 不敵な男 ( 1958 年 / 増村保造 ) セクシー・サイン好き好き好き ( 1960 年 / 島耕ニ ) 「映画探偵の映画たち ? 失われ 探し当てられた名作・怪作・珍作」 12 月 20 日 ~ 連日 10 : 30 より 薩摩飛脚 ( 1938 年 / 伊藤大輔 ) 特急三百哩 ( 1928 年 / 三枝源太 郎 ) ◆レイトショー 「 ' 70S 東映プログラムビクチュ アの雄山口和彦 NIGHTS 」 ~ 1 月 22 日連日 21 : 00 より 子連れ殺人拳 ( 1976 年 ) ネオンくらげ新宿花電車 ( 1973 年 ) 多羅尾伴内鬼面村の惨劇 ( 1978 年 ) 色情トルコ日記 ( 1974 年 ) ※ 12 月 31 日 ( 木 ) 、 1 月 1 日 ( 金 ) は休館い たします。 JR 阿佐ヶ谷駅北ロ徒歩 2 分 Tel.03-3336-5440 http://www.laputa-jp.com 〇 〇 〇 〇 ご希望の方はハカキて、〒 107-0052 東京都港区赤坂 5 ー 4-16 シナリオ会館 4F 「シナリオ」編集部ラヒュタ阿佐ケ 谷係宛にお申し込み下さい。締切は、 毎月月末必着。 8

9. シナリオ 2016年1月号

新しき民 足軽たちに捕らえられ河原に集められた新六「引き返そう、なあ」 大勢の百姓たちが見える。 治兵衛「 : : : 」 松吉が一人の百姓の首を落とす。 治兵衛の隣に万蔵がいる 足軽や侍、三つ寺はそれを黙って見てい 万蔵「どうする治兵衛」 る。 治兵衛「 : : : 」 足軽に囲まれ憮然と縄に付いた徳右衛門万蔵「帰るか ? それとも逃げるか」 カくる 治兵衛、全身に力が入り震えはじめる 「大将確保」などと。 万蔵「たみを捨て、山中を捨て、己が生きる 鋭い眼差しで侍たちを睨む徳右衛門 ことを選ぶか、戻って捕まり、殺されるか もしれん道を選ぶのか : : : おいお前」 〇 万蔵の住処・丘 治兵衛「・ : ・ : 」 新六「 ( 呟く ) 徳右衛門 万蔵は石を拾い治兵衛に渡す。 治兵衛「新六さん、ここも危ない、逃げよう」 受け取る治兵衛。 新六「・ : 万蔵「歯をこげ、人相を変えろ」 脱力している新六、動こうとしない。 治兵衛「・・ : : 」 三つ寺が新六と治兵衛に気づく。 石を自分の顔にぶつける治兵衛。 三つ寺「あねえな所にも、働き蜂じゃ」 新六「 : 数名の足軽が、新六と治兵衛を追う。 治兵衛「わしは行く 新六の手をとり無理やり連れて逃げる治 さらに顔じゅうぶつ治兵衛。 兵衛。 血が垂れる。 新六「治兵衛」 山道 治兵衛「 : : : 」 治兵衛と新六が行く。 新六「生きて帰れ」 立ち止まる新六。 治兵衛「 : : : 」 立ち止まり振り替える治兵衛。 振り返り、新六を置いて進む治兵衛、や 新六「わしは帰る」 がて走り出す。 治兵衛「はあ ? 〇 山道 その後を万蔵が追いかけてくる。 併走するふたり。 万蔵「おい ・ : も、つ一生麦蒔かんでええな」 治兵衛「万蔵、おめえが合うとったんかもし れん : : : 一揆、すなわち毒」 万蔵「あたりめえじやろうが、わしゃ万蔵 じゃ と治兵衛を飛ぶように追い越す。 治兵衛は万蔵の妙な爽快さに何故か顔が 緩む、血は落ちる カット・イン たみが産気づき苦しそうにしている。 みちが手際よく、お産の段取りを整えて一 いる 京の町を行き交う人 テロップ「七年後」 治兵衛の長屋・中 治兵衛が暮らす京都の長屋。 目立っところに当時流行していた ( であ ろう ) 象の被り物が見える。 治兵衛は内職のわらじを編んでいる 杉作が来る。 杉作「ちょっとおらしてくれ」 〇 〇 〇 冖 / 8

10. シナリオ 2016年1月号

喜重「ほんまじゃ、あんた昔侍になるゆう新六「ありがたきしあわせ」 をしている とったのに」 と、頭に天狗状の東を託す。 喬之介もそばで観劇している。 新六「 ( 笑い ) おう」 新六「天狗のごとく、これを村々へー みちが来て、 奥にいる木地師の頭のもとへ行く新六。 頭「 ( それを見て ) 天狗状か」 権右衛門「こんな折でもな祭りは祭りじやせ 頭の妻・さち ( ) も近くにいる。 ( ゃいけん、いうていうてたとこなんじゃ、 新六「ご無沙汰しておりますー 〇 治兵衛の家 のう、治兵衛ー 大徳利のふたに、天狗状を仕込む治兵衛。治兵衛「権右衛門さんちいと飲みすぎでさ 新六「頭」 あ」 頭「どうした」 万蔵の住処・外 権右衛門「治兵衛、おめえも飲め、明日はね 新六「本年の、日照り干ばつ、合わせて過剰 治兵衛が大徳利を持ってやってくる。 えぞ」 になりゆく年貢によって、」 たづは干し柿を吊るしている と、酒を注ぐ。 頭「動き出したか」 治兵衛「おばさん万蔵おるか」 新六「へい たづ「 : 「万蔵が死んだ」との報が舞い込む。 頭「 : : : わしらは百姓のつくるもん頼りに 中を覗く治兵衛、万蔵は臥しているので、 あたりが騒がしくなる しとる、が、ここ数年高値のうえ、なかな治兵衛「これ、」 「あの米泥棒か」「死んでも仕方なかろう」 か回ってこん、加えて運上銀、山年貢、苦 と、大徳利をたづに渡す。 などの声が上がる。 しいのう」 たづ「薬じゃな」 その時、治兵衛周辺の雰囲気が一変し、 新六「その件この度の交渉六カ条に加えまし治兵衛「薬じゃ」 治兵衛の隣にふっと万蔵が現れる。 たゆえ、 たづ「いつもすまんな」 まわりは誰も万蔵のことは見えない。 頭「なんじゃと ? 」 去る治兵衛。 治兵衛「万蔵ー 新六「山年貢、運上銀の御免」 万蔵「八百万の神々さんはわしを生かせはせ 神社境内 ( 夜 ) なんだ」 新六「ゆえに百姓たちと共に加わっていただ 村祭り。 治兵衛「はあ」 きたい」 民 松明が辺りを照らす。 あたりを見渡し状況を無理やり飲み込む。 し頭「新六 : : : それは確かか」 鐘や太鼓が鳴り始め村歌舞伎が始まって万蔵「治兵衛、毒入りの酒なんぞ持って来 新六「へい」 いる よって」 頭「わかった」 治兵衛は升席で酔っ払う権右衛門の相手治兵衛「毒 ? 〇 〇 8