ディーノ - みる会図書館


検索対象: 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6
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1. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

に清めを与えて片づけなくては : まものやみ あわ こんな哀れな遺体をそのままにしていてはいけない。死体食いの魔物が闇にまぎれてやっ てくる。たちの悪いそれらの魔物は、惨状の起こる場所を気に入って居ついてしまう。土地 不十分な状態 に染みこみ、そこを通りかかる旅人たちを待ち受ける。御符が汚れていたり で、体調の優れぬ旅人を見つけると、死体食いはそれに取りついて、影にひそみ生気をすす りながら死ぬまでつきまとう。旅人が自分から魔物の存在に気づき、完全浄化した御符を帯 びるか、清めの力をもった魔道士や拝み屋のような者に出会わぬかぎり、助かることはな 「魔法使い、死者に与える清めの魔道、できるわよね ? 」 プ」れは : そんなに日が経ったわけではないようだね」 「もちろん : 「溶岩がすぐ下を流れてる、その熱のためよ。一日か二日ってところだわ」 1 いの里、火山地帯に育ったシルヴィンである。空気の鬼いや腿に感じる温度には、 少なからぬなじみがある。見当に邯いはない。 レイムは清めの魔道を行うために魔道の粉を取りだす。 「ディーノ、飛竜を降ろしちゃだめよ。空から魔法陣を捜して」 てきばきと指示するシルヴィンに、ディーノはきよとんとしたように顔を向ける。 こく当然のように吐かれた ディーノにはこんな小娘に命じられねばならない理由はない。、 すぐ ごふ

2. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

とくに轟かせル痴を残してきた悪漢であるディーノだ。知らない武具などあるはずがない。 滅亡に向かう世界にあって、全軍の武具を一新するようなゆとりがもてるわけがない。危機 につけこんだ領地侵略の争いも、自分たちの生活すらあやしい時代にやっている領主などい ない。混乱を防ぐために、いちはやく各地に魔道士を向かわせた女王トーラス・スカーレン に知られず、事を起こせるはずもない。 近づきくる兵団を見おろしながら、ディーノは和に目を細めた。飛には首をつつ こまないほうがいい。、 とういう連中がどんな考えをもってやってきたかがわからない。 出番があるまで大物は顔を出さないものである。相手もわからないまま、不用意にでてい く必要はない。ディーノは高見の見物を決めこみ、もの高度をあげた。 あと 火山噴火に強襲された跡である。軍を挙げて来なければならないようなところなのか。 まゆ 何か解せない感じがして、シルヴィンとレイムは眉をひそめる。 赤黒く輝く甲胄をまとった一団は、規則正しい足音を響かせて行軍し、上空の飛竜たちに 樹気づくことなくのそばで歩みを止めた。 もくもく 時 ただ一人乗りものを使っていた者が監視するなか、合図もなく黙々と兵士たちが動く。 かっ 影歩兵は手近なところから一人一体ずつ死骸を担ぎあげると、そのままやってきたほうに向 したた けて一列になって帰りはじめた。血の滴るものも、わいた蛆がばろばろとこばれ落ちるもの もお構いなしで、荷物のように肩に担ぎあげ運んでいく。焼け焦げた大地も、流れ出た大量 こ

3. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

ディーノは、じいっと見つめてくるファラ・ 「一人寝は寂しいか ? ー 「そんな : ・ ハンは顔をうように、さらに上掛けを引っぱりあげようとす 忙しく第。きし、ファラ・ る。自分がそんな顔をしていたのかと思うと、恥ずかしくてならない。 「すぐ戻る」 バラ色に頬をほてらせる可な顔をめ、ディーノは言った。 ハンの目に涙がにじんだ。泣きたかったわけでもなんで 言われた瞬間、じわっとファラ・ もないのに。ファラ ・ハンは、涙の珠をこばさないように目をばちばちさせながら笑む。 「眠ってますから平気です」 「それが平気な顔なのか ? 指摘されて、こそこそとファラ 樹「無理するな」 時「してません」 影「そうか ? 」 こうてい ファラ ・ハンは黙った。嘘や強がりは見透かされそうで、肯定することができなかった。 「俺がそばにいては牙魔か ? 」 ・ハンは顔の下半分を上掛けの中に隠す。 ハンに笑う。

4. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

「させぬわ ! レイムをねのけて崩れた姿勢をただし、キハノが吠えた。 一条の闇がはしった。 爪先を王家の庭に触れさせようとしていたファラ・ ただならぬ気配を感じて、振り返った。 体をねじったため、わずかに位置をずらしたファラ・ 闇が通りすぎた。 衣装の裾が、ざくりと大きく切り裂ける。 つらぬ ファラ ハンを肩口から貫くところだったのは、影の剣。 キハノの投じたもの。 影の剣は王家の庭の中心に突き刺さり、瞬時の悪夢のように、 空受け入れ、られた : ・ の「逃げろ " " 」 どな 幻ディーノが怒鳴った。何がどうなるということはわからなかったが、そこにいるべきでは ないことがわかった。ただならぬディーノの声に、シルヴィンが振り返る。 ハンがその場から飛びすさる。 怒鳴られ、反射的にファラ・ つまさき すそ ハンは、ぎくりとして目をあける。 ハンの真横を。 瀧らかに沈んで消えた。

5. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

113 幻影の時空樹 「失敗してません ! 」 も印も正確だった。ひっかかることがある。 「ディーノ ! 君は魔物の気配を感じるかい ?

6. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

「なんとか : : : してきたじゃない、ねえ、魔法使い。またやって見せてよ。ねえ。顔あげて 。できないなん よ。まっすぐ いつだって、逃げずに、あんたって、無茶ばうかり : 助けてよおっ " て、そんなことないわよ ! 絶対ないわよ ! ねえ : 肩をつかんで揺すぶりながら、悲鳴のように叫んだシルヴィンはレイムの後ろに座りこん だ。レイムの背中にすがり、泣きじゃくる。 たとえどんな魔道 できることとできないことがあるんだ : 「すまない、ディーノ : ・ハンが自分か ・ハンは救えない。しぜんに意識をとり戻して、ファラ 士でも、今のファラ ら僕の魔道を受け入れる準備をしてくれないことには : 意識すらなくし後は死ぬばかりという、ぎりぎりの状態でかろうじて生きているファラ・ ( ンに、魔道で目覚めをうながすことはできない。深層心理に飛んすれば、その瞬間に ファラ ・ハンは死んでしまうのだ。 肩を落とすレイムを見つめ、ディーノはぎりつと歯を鳴らした。 樹「能なしめ : ・ 時りとも悲しみともっかぬ声。腹の底からの。であったが、レイムにはそれを否定する 影ことはできない。己の無力さを思い知り、た。を握りしめるだけだ。 = けたクリスタルに 打たれてできた指の痣が、熱をもちじんじんと痛む。 「ファラ・

7. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

完結でございます D ながながとごひいき、ありがとうございましたっー うつふふつー ー・エンドですわね。 とりあえずのハッピ エンディング・テーマには、故第氏の『太陽の破片』をどうぞ D この曲、びったんこっー どっぷり法っちゃったわよ。 ディーノが一人旅立っていくっていう、あのシーンに最高 ! さわやかな光あふれる空を 行く風に翻るマント。上空からのカットで、手を振って何か叫んでるシルヴィンの姿 とか映って、ディーノのアップになって、映画みたいに画面が半分に割れてクレジットが流 れて、さらに小さい画面がきられて、セピアでこれまでのシーンが回想される うつわー D イメージ曲っていうのは、ラスト・シーンのリクエストみたいなものよね。 き いくつかあげてくれた 残念ながら、びったし当ててくれた方はなかったようだけれども、 カ あ曲、それぞれに思い入れがうかがえて嬉しかったです D あーでもないこーでもないと考えて、お手紙くださった方、ありがとうねっー ということでつー

8. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

274 物語完結の第六巻、発行であります D 滅亡しかけた世界を救うため、旅立った聖戦士たちは、六つの時のを入手し、最後の 約束の地、王都は「王家の庭』と呼ばれる聖地に戻ります。 運命の公女ルージスを聖女とし独自の世界を構築しようとらむキハノ、戦士到着まで かぎ キハノから聖地を死守しようとする女王たちが、世界の鍵となるべきその場所に集い、しの けず ぎを削ります。 ファラ・ ハンを生死の境におき、莫大な失段におののきながら、ようやく自分の気持ち を認めたディーノと、記憶を取り戻しディーノとのつながりを思いだしたファラ・ 結ばれるべき運命の糸が、キハノの存在によってより明確になります。 どうして世界が滅亡に向かわねばならなかったのか。 なぜファラ ・ハンが具現することができたのか。 プラバ・ゼータとは、なんであるのか。 死の状態にあるファラ ・ハンは、世界救済の後、どうなるのか。 ぜーんぶひっくるめて、解決。 大団円でございます D ゃあったねっー だいだんえん

9. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

間「ファラ ・ハンに、よろしくね ! 健いの里にも遊びに来てー こうけいしゃ 里に戻るシルヴィンには、飛竜と竜使いの後継者を育てるという仕事がある。多くの仲間 を失った里にとって、世界の傷跡は大きい 「また会えればいいですね」 まどうこうし たびじたく 同じく旅支度のレイム。金色の魔道公子の行き先は、知れている。 「どこかで、幸せにー もう二度と来るなとの意味で、かばい守るようにトーラス・スカーレンの前に立ったバル ドザックがディーノをし、った。 にこっとトーラス・スカーレンが笑んで命をくだす。 「旅人に、祝福を ! 」 エル・コレンティが印を結び、魔道の粉を散らしたマリエが安全の祈りを捧げた。 「かならず、幸せにおなりよ」 かい芦で言いながら、マリエは目にいつばいの涙を浮かべた。 「キャウ D こた 小さな飛竜が振り返って応え、背を向けたディーノは、かすかにうなずいたように見え

10. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

216 老魔道師たちやバルドザックに苦戦を強いていた魔物も、の瘴気による力が届き にくくなり、格段にその力を失った。ここぞとばかりに飛竜を駆り、紐を唸らせ、火炎を 吐かせるシルヴィンが、集結して巨大化しようとする魔物たちを引き離す。 「おのれ : ・ ぎりりと目を吊りあげて、キハノがファラ・ ハンの後ろ姿をにらんだ。 暗黒竜を支援するためのを結んでいる場合などではない。 左腕を振りあげた激しいキハノの動きに、自分が何をするべきなのかわからず、ただ無 となりゆきを見ていたディーノが、ぎよっとする。 キハノの手に生じたのは影の剣。 自分が何者であるのか、何がどう自分に関係しているのか、理解しきれていなかったが。 それがファラ・ ハンを傷つけるものであることはわかった。 キハノの腕が大きく振りおろされるー ・「よせつリ」 ど′」う 怒号のように吠えながら、素早く飛竜を動かしたディーノが、キハノとファラ・ に害りこんだ。 そうぜっ 聖魔道士の術をもっても受け流しきれなかった、壮絶な力に満ちた影の剣。 ハンの間