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検索対象: 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6
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1. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

た。フードを後ろにやり、な金色の髪を肩にこぼれさせる、見目麗しい若者である。 ひりゅう もうひとつ高みにも、もう一頭飛竜がいる。遠すぎてよく見えないが、それでも動かされ る翼の感じから、それがなんとも立派な飛竜であることがわかった。あれを乗りこなすとい うのは、かなりの武人であるのにい やかた 「ようこそお客人、わたしの土地へ。お疲れでありましよう。わたしの館で休んでおいきな どな いきなり怒鳴りつけられたわりには、女はひどく好意的な言葉を投げかけた。 「あ、はい・ ありがとうございます」 ハンを連れているわけだ 思いがけない誘いに、レイムは礼をのべる。弱っているファラ・ し、願ってもない言葉ではある。 ディーノが飛竜を降下させてきた。どうしたものかと目で訴えるレイムに、うなずいてみ せる。 「見渡したかぎり何もない。誘われてみるのもいし まもの ここに彼らは導かれきたのであるから。これまでのことから考えて、少なからず魔物のい るところに蜥の魔法陣も時のもあったのだ。こんな見晴らしのいい、殺風景な場所に 長居しても、収穫は望めそうにない。 「牙魔をする ! 休ませたい者がいる。案内を !

2. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

第三章呼广 その言葉の意味を知るのはファラ ・ハンだけだった。大声で叫んだディーノ本人にも、そ れのもっ本当の意味はわからない。ただ、そう言うべきであっただけなのだ。 ディーノの叫びを耳にしたレイムは、そのディーノの吐いた言葉に思わず足を止めてい た。何か自分には計り知れないもの、飛入することのできない確固たるものが、この 一アイーノとファラ ハンの間に存在していることがわかった。ディーノとつながりをもっ しよ、つげ・き ファラ ハンを前にして、真実の与えた衝撃に打ちのめされずにはいられなかった。 「キャウア ! 」 ぐったりと、まったく反応のないファラ・ ハンの様子にあせり、シルヴィンの腕に強く抱 きしめられたままの小さな竜がじたばたと暴れた。もがく小さな飛竜に、はっとに返っ またた ゆる たシルヴィンが目を瞬く。緩んだ腕の間から、するんと小さな飛竜は抜けだした。 ファラ・ ハンを恋い、一直線に飛んだ小さな飛竜を、ディーノたちの乗る大きな飛竜が首 を動かして止めた。びたんと大きな飛竜の顔にはりついた小さな飛竜は、不満たらたらの顔 心、う

3. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

すがるような目で、バルドザックは老魔道師を見やった。トーラス・スカーレンが文字ど おり骨身をって願いつづけた世界救済の夢を、こんな形で打ちかれたくはなかった。 おとめ 眠るように息絶えている金色の髪の乙女をそっと抱きあげながら、老魔道師は首を振る。 未来の見はできなかった。見えぬ未来の意味することは、定まりきらぬもの。そして、 どうにでも変わる可能性をもつもの。今起こっているのは、誰も答えを知らないこと。 「できることをせよ」 静かなエル・コレンティの言葉に、トーラス・スカーレンが薄く目を開き、顔をあげる。 けんじゃ 「賢者オルロフの御言葉でしたかしら : : : ? 」 笑んだトーラス・スカーレンに、エル・コレンティはうなずいた。 希望を捨てぬこと。努力を続けること。 それが聖女のを行った最初から、抱き続けていた想い。 礼を述べてバルドザックの助けを断り、両足でしつかり大地を踏んで立った、トーラス・ きぜん 空スカーレンは毅然と背筋を正す。 の「王都に残った者たちを集結させなさい。王都を失うことになろうとも、ここを守りきれれ 幻ばかまいません ! 祈りの力を。全世界に残っているものたちに呼びかけを ! 」 しようちょう うるわ 世界滅亡の危機に立ち向かう賢き女王、世界の繁栄と存続を象徴する麗しの女王の命じ る声が響いた

4. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

ものでも、上下前後左右、あらゆる方向から襲いくる小魔を防ぎきれるはずがない。 いつになく強く意見するレイムに、シルヴィンはすねたように口をとがらせる。レイムは まっすぐにシルヴィンを見つめる。年下の娘であるからと、甘い顔ばかりはしていられな かわい 。命令口調やわがままめいた言葉も、思いあがり、可愛げがなくなればっきあいきれな ゝ 0 「もっと素直に目上の者の意見を聞く ! きつばりした口調に、つりこまれるようにシルヴィンは返事していた。優しさに隠れてい はくりよく しん た芯の強さをむき出しにされると、レイムにはどうしても反抗できないような迫力がある。 少女でありながらただひとり、成獣の飛竜を扱うことのできるシルヴィンは、里の者から可 愛がられていたのと同時に、飛竜を扱う者として同じ年頃の少年たちよりもずっと厳格に育 かこく てられてもいた。女だからという甘えも許しもなく、女であるがゆえに、より過酷なものを 空要求されていた点もある。たわむれやは受けいれられても、わがままはいっさい通ら のない。同じことを言っても、時と場合に応じ、周りの反応が違ってくることをシルヴィンは 幻知 0 ている。シルヴィンのためを思「てる者の言葉の響き、真意を読みとることができ 習慣で反射的にレイムに向かって大きく返事してしまってから、シルヴィンはロを押さえ

5. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

何か : 薄幕の向こうで、つと立ち止まったレイムに、ソニエはむっと目を細める。 ソニエの表情から、ディーノは自分の叫びがレイムに届いたことを知った。おっとりのん びりした、頭の回転の遅そうなおめでたいだが、だてに魔道士を名乗ってはいないらしい と、少しばかりほっとする。 「奥へ , 言葉と同時に。 すいとソニエはレイムに向け、ディーノのから半身をだした。 レイムがぎる悲鳴をあげた。 しようヂき のうみそ レイムは脳味噌を直接金属棒で強打されるような衝撃に襲われていた。 空たまらず、耳を押さえてのた打ち回る。 の予想もしない反応に驚き、ソニエが目を見はる。 幻自由にならぬディーノの視界、壁に張られた布に映るレイムの姿。 わかった。

6. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

世界そのものである時空樹に、えさせることなく衄して接近することができる 強行策による分の悪さは目に見えている。 ならば : 「魔道士リ どごう ディーノの怒号に、びくりとレイムの体が震えた。 「身構えろ " " 」 とどろ 怒号のように轟いたのは簡潔な言葉。 かっと目を開いたレイムは、迫りくる一頭の飛竜を見た。 さと 飛竜を駆り、銀斧持っディーノの図を吾った。 ディーノが銀斧を握る右手を振りあげる。 レイムは唱え続けていた魔法陣維持のための呪文をやめる。 樹 空 の「ディナ・フィアー 幻魔道術強制終結の呪文が、レイム割る。 くう 投じられた銀斧が鋭く空を切り裂い ・カ

7. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

ひと眠りすることにした。 巨大な飛竜と女が行ったのを見送り、シルヴィンはレイムと目を合わす。 「やっちゃいましょ 簡潔な言葉にレイムは目をばちくりする。 「な、何を ? 」 まどう さっさと済ませてよ」 「清めの魔道に決まってるでしょー 「でも、あの、まだ : ・ 死体を担ぎあげ、列を作っていく兵士たちがいる。 ・ハンたちが気になっているシルヴィンは、むっしをとからせる。 先に行ったファラ なんかこういうの気持ち悪いのよ ! すばっと綺にいきましよう ! 「いいじゃないー さっきの女も気にいらないー 樹「シルヴィン、君ね : から 時私情が絡んでいるのではないのか ? 言いかけてレイムはやめた。怖い顔をして、黙って 影シルヴィンがにらみつけたからだ。 第一印象がよくないと、シルヴィンは後々まで、わりとしつこく尾を引く。天性の、もし かん くは野性の勘と感性で生きているような娘だ。理屈ではないから説得のしようもない。 こわ

8. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

ふんいき 雰囲気は申し分ない。二人きりでいる、今、この時ならば、言えるかもしれない : 「まあったく、どいつもこいつもっー 部屋の前を横切っていったマリエに、びつくりしてトーラス・スカーレンが振り返る。 意を決した言葉をぶち切られ、がくりと首を落としたバルドザックはその場に立ちつく 「どうかしまして ? 部屋から出たトーラス・スカーレンに声をかけられ、マリエが振り返る。 「レイム様を御存知ないですか ? 魔道士の階級承認の儀式の段取りをしますと連絡してお いたのに、どこにもいらっしやらないんですのよ ! ああもう ! 時間がありませんの 脱力した様子で、心当たりのあるバルドザックはトーラス・スカーレンの後ろから顔を出 樹 の「それなら : 影 幻いつまでも女王のところに入りびたっている圦を、マリエはぎろりとにらみつけた。 「あー、やつばりこんなところにいたのねー す。

9. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

102 つくるのだ。未来に続く、確かなものを。なんと喜ばしいことであろう : : : ! 寄せた腰からディーノの下帯にかくされた位置を確かめ、にいっと笑いながらソニエは身 体を離す。 鋼鉄のような意思の力にはばまれて、震えるディーノの手は、それでもひどくゆっくりと 腰帯の止め金に動いていた。 ぎりりと歯を鳴らし、噛みしめたために、ディーノのロの中に臭い味が広がっていた。 力の入っている様子を見せる顎に、ソニエは高らかに笑う。 たナだけ 「これはたいしたもの ! なんと気の強いことよー さすがは戦士、なんと猛々しい者であ ることかー これならば、さぞかしすばらしい精を持っことであろう ! 」 館に招きよせた目的を知り、ディーノは第する。 こんな女にくれてやるものなど、何もない。たとえ捨てるものであっても、けっして恵ん でやりたくはない。 ディーノがこれならば、ファラ・ ハンは ?. 小さな竜がついてはいるが、ファラ・ ハンはどのような扱いを受けるというのか。 そもそもソニエは、休ませたい者がいると言ったディーノの言葉を、兵士に伝えてもいな

10. 幻影の時空樹 プラパ・ゼータ 6

192 重くゆったりと響くで告げられた言葉に、レイムはうなずく。一頭の〉もが降下し 「行きます ! 地表すれすれを行く飛竜に、飛翔の印をきり地を蹴ったレイムは、すばやくを握っ ゆる 透明の光の翼を広げたファラ ・ハンは、静かに王家の庭の中央に向けて降りた。 そうせい あたかも創世の神が、初めて大地に足跡を記したときのように、おごそかに。 せいへき 聖壁に囲まれて、視線を浴びることすら拒否し、守られていた王家の庭。 それは、はてしなく透明なものをたたえる湖のようなものである。 一点のくもりもなく、 みもない、鏡面に似たもの。 やみとびら ぼうせいろう 望星楼にあった闇扉と、極をなす性質をもつもの。 光そのものにがるもの。 真実の、世界の中心点。 緩やかに印をほどき、ファラ ・ハンは腕を広げる。 降りたって、集めた時の驪を、この場所に : あしあと 0