使徒 - みる会図書館


検索対象: 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2
97件見つかりました。

1. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

。亡くなった者を思い出すことが辛いと、道具からもついつい距離を置いてしまう。 いつもとはちょっと 「我はミゼルの使徒にして、知の神ミゼルの神聖なる使いなり。 違うけど、こういうのも悪くないな」 さず ミゼルの使徒は、人を幸せにするための知恵を授けられた者だ。 「そうだな」 ろうそく しよくだい まだ外は少し明るいが、屋内は暗くなったので、吸っていた煙草を使って燭台の蠑燭 なべ に火を点けたジェイは、洗いおわった食器を片づけ、鍋を洗う。 「よく食べたよね」 「ああ」 昼食が少し遅くなったのと、夕食が早いのとで、今日はお茶の時間をとらなかった。料 理の皿を見つめ、かふかふと一心に喰べているリンゼにつられて、ミランも食が進んだよ うだ。ジェイの作る料理は、どれも美味しいし、食卓は大勢で囲んだほうが楽しい あぶら きれい 綺麗にな「たに、マギ 1 ザックの脂を入れて溶かし、ジ = イが蠑燭を作ろうとしてい のるところに、衣苺を摘みおえたリンゼとミランが戻ってきた。ミランは鍋で溶けている脂 たば もめんひも 純を見て、急いで地下室に下り、木綿の紐を巻いてある束と、型に使う金属の管を探してき 「なんだか、すごくひさしぶりです・ : つら

2. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

204 まどうしとう 使って、魔道士の塔のある大きな街に書類を送り、そこの魔道士の塔から、書類は王都に しと 送られる。居場所を報告したあと、活動をした場合には、ミゼルの使徒は活動記録書を、 その街や村の責任者はミゼルの使徒の活動報告書を、提出する決まりになっている。書類 を提出し、きちんと確認されれば、ミゼルの使徒の活動に対して王都は援助を行うのだ。 これにより、ミゼルの使徒はかかる費用を気にすることなく、滞在して活動を行うことが できる。 「立ち会いを頼む」 えしやく 書類とメダルを持ってきたルミは、ミランとフェレスに会釈する。 怪我をして療養中のルミは、ミゼルの使徒として活動できない。しかし、ジェイたちと ともにいることは、報告する義務がある。安静にしている必要があるので、ルミは教会ま なついん で足を運ぶことができない。提出する必要書類にここで記入捺印するので、ミゼルの使徒 としての身分証明の手続きの立会人が必要なのだ。 「はい こくいん ミランとフェレスは緊張したが、それは身分証明のメダルの刻印と、ルミの指紋での捺 印という簡単な作業を見守ることだった。身分証明のメダルの裏の刻印は、ルミの指紋で 作ってある。これによって、本人かどうかが確認される。王都のミゼルの塔には、メダル かた の刻印と同じものがきちんと保管してあって、ミゼルの使徒の名を騙る者による不正が行 しもん

3. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

「ううん。用事がすんだから帰ってきたの」 「ずいぶんと早かったねえー いねむ ひざ スザナの祖母は縫いかけのキルトを膝の上に置き、スザナが出かけてから、ここで居眠 りをしただろうかと、空を見上げて考える。ごとんごとんと回っている水車の音は、どう にも調子がよくて、ついつい居眠りをしてしまうものだが、日の高さはまだほとんど変 わっていない。 しと 「ミランのところにいるミゼルの使徒さんたちがね、いろいろとやってくれるから、する ことがなくなっちゃったの」 となり バスケットを置いたスザナは祖母の隣に腰を下ろし、足をぶらぶらと揺らす。 ほこたか みな 神聖なる神の使いであるミゼルの使徒たちは、神の御名に恥じない、誇り高く、よいお 手本となるような者だ。回国の活動をして世界じゅうを行くのだから、自分の身の回りの ことができるのは、当たり前だ。世話になっている家に、負担をかけるようなことはしな い。独り暮らしのミランの場合、ミゼルの使徒が来てくれて、かえって助かることになる 花 車だろう。 絶「そうだねえ うなず い、なるほど確かにそうだと、微笑んでスザナの祖母は頷 ミゼルの使徒という存在を思 2 し / ままえ

4. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

4 ノ、 「なるほど」 つか 小金を掴ませれば、ちょっとした悪事に加担する役人など、どこにでもいる。顔を見ら れないように気をつければ、そんなことを言った覚えなどないと、しらをきりとおしてお くろまどう あやっ かんいさいばん しまいだ。あるいは金を使わず、黒魔道の術で、役人を操ったのかもしれない。簡易裁判 しょ ろけん 所で告白の水を用いても、記憶になく自分の意思で行ったのではない事柄は、決して露顕 することはない。魔道士の力を借りるような大事にならないかぎり、黒魔道が使われたと とうぞく はわからない。金持ちの馬車が盜賊に襲われるなどということは、、 へつに珍しいことでは オし ルミやジェイが所持している医薬品や道具は、よほど精製や加工が難しいもの以外は、 店で買うのではなく、自分たちで調達する。今日、森に近い道を選んで歩いていたのも、 適当なものを見つけて、補充しておこうと思ったからだ。たまたまそうして森を歩いてい たおうじよう たとき、馬が暴れて立ち往生している馬車を見つけ、どうしたのだろうかと近寄ったら、 賊が襲撃してきたのである。知恵を伝えるための回国の活動をしているので、本来、ミゼ しと ルの使徒は戦いに加勢するようなことはしないのだが、い っしょに襲われてしまっては、 戦わないわけにはいかない。 ミゼルの使徒は、取得している資格によって、回国の活動をする際に着用する制服があ

5. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

しと もちろん、ミゼルの使徒になるには、相当の教育機関で学習し、その後に資格取得の試 験を受けて、それに合格して免許をもらわなければならない。そうして申諢すれば、ミゼ ルの使徒になることができるが、もちろんそれだけで研究員採用試験を受けられるという ものではない。ある規定以上の距離を旅して、ミゼルの使徒としての活動をし、実績を証 明する『評価点数』を得なければ、受験資格がもらえないのだ。評価点数の算出法には、 厳格な規定がある。ミゼルの使徒の出発地点は聖地だが、聖地からあまり距離を隔ててい めぐ かせ ないところをいくら巡っても、高い評価点数を稼ぐことはできない。 一般教育課程を修了した者のうち、成績優秀な者が受験して取得できるのが、教員免許 である。一般教育課程を修了すれば、専門教育課程である大学に進むことができる。王立 学問所を目指すなら、一級の大学に進学しなければならない。一級の大学に入学して、大 じゅんぶうまんばん 学院に進み、博士の学位を授与されるまでには、順風満帆に問題なくいっても、八年か かる。ミゼルの使徒になって、評価点数を稼ぐことを目的に活動すれば、うまくいけば一 年くらいで王立学問所の研究員採用試験の受験資格が得られる。一日も早く王立学問所の 研究員になりたかったリンゼは、一般教育課程の卒業試験に合格したのち、一級大学への 入学試験を受けず、教員免許の取得試験を受け、ミゼルの使徒になって評価点数を稼い で、王立学問所の研究員採用試験を受けることを選んだのだ。 こうていしんせいしょ リンゼが独自の理由から作成した、途方もない距離を旅する行程申請書が採用されてい へだ

6. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

130 わって、解決しなければならないようなことではない。 「リンゼ、薬を作るための薬草や木の実を、集めてきてくれないか。わたしは : 「寝てろ」 今日の予定を提案するルミに、ジェイはすかさず哭下した。苦笑して、ルミは続ける。 「わたしは、安静にしている。ジェイは ? 「何か動物を獲ってくる」 ミゼルの使徒としての活動をしていないため、ここでどれだけ世話になっても、ミゼル の使徒の活動を円滑に進めるための王都からの援助はない。ミランにかける迷惑を最小限 にとどめるよう、食料の調達は自分たちの仕事だ。薬草から薬を作って売り、小金を入手 して、自分たちが消費した分の埋め合わせをしていく必要もある。 「じゃあまあ、そういうことで。 しし、刀し ? ・ 「はい うなず リンゼはルミに頷いた。十分な薬品がなければ、ジェイの医療活動に支障が出る。村に 戻ったスザナとフェレスから、ミゼルの使徒の医師と薬剤師と教師がミランの家にいるこ とが話されるだろう。ミゼルの使徒の力を必要とする急ぎの用事があったなら、何か言っ てくるはずだ。 えんかっ めいわく

7. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

: こんにちは、ルミさん : ・ : ・。あの、ミランは : なまず さお 「ミランはたぶん、沼に鯰を釣りにいったんじゃないかな。朝、リンゼと竿をいじってた きのこ から。リンゼは薬に使う茸とかをとりに、森に行ってるはずだ」 出かけるときには、ミランは行ってきますと声をかけて出るのだが、控えめなミラン は、上で休んでいるルミを起こすほどの大声は出さない。 「沼で、鯰 ? 」 ミランが釣りをするなんて、聞いたこともない。きよとんとしているスザナに、ルミは 笑う。 「このまえ、リンゼと釣りをしてきたときには、ずいぶん大きなのを釣ってきたよ。ジェ イといっしょにミランが台所で料理して、すごく美味しかった。ミランは気が長いから、 釣りは向いているのかもしれないね」 「ミランが料理をするの ? ひど 「うん。ジェイに教えてもらいながら、台所に立ってるよ。最初は酷かったけどね、上手 花 になってきた」 そうぜっ 色 壮絶な味だった料理を思い出し、ルミはくすくす笑う。ルミは苦痛を感じない。ミゼル 彩 しと の使徒になってジェイと回国の活動をするようになってから、味のない料理を食べたの まず は、本当に初めてのことかもしれない。破壊的に不味い肉料理に、ジェイは無言になり、 ひか

8. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

310 しと カレット 「ミゼルの使徒」第二巻『彩色車の花』発刊です。お待たせしました D さず 王都を出発したミゼルの使徒たちは、世界じゅうを回って、ミゼルの神によって授けら れた知恵による活動を続けています。主人公のジェイたち三人も、ほかのミゼルの使徒た ちと同じように旅をし、活動を行っているのですが : 、今回は、アクシデントのため、 ちょっとだけお休みです。しばらくの休養のためにジェイたちが宿を求めた場所は、街の 中の宿屋でも教会でもなく、森の中にある一軒の小さな家でした。 つな 人と人は多くの場合、さまざまな関係で繋がっています。ミゼルの使徒であるジェイと ルミとリンゼの三人は、仲間として。そしてジェイとルミは、それぞれの立場で。 友達って、どんな関係でしよう。同じような年ごろの人たちが集まる場所では、とても よく耳にするものですけれど、身近にあるそれは、本当に正しい意味ですか ? いい友達 じまん がいることは自慢になりますが、いないからといって恥じる必要はありません。その場所 めぐあ では、たまたま呼吸のあう人と巡り合えなかっただけなのですから。 やったことのないことは、誰だってできません。自分ができないことを、できる誰かに 頼るのは、悪いことではありません。しかし、やろうともせずできないままでいること、 たいだ あくへき 他人任せにして知ろうともしないことは、怠惰からくる悪癖に間違いありません。大人に なるということは、たくさんのことを自分でできる人間になっていくということです。

9. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

にた ヒのようなものからとれるヤニを加えてもう一度煮立て、木箱で作った石鹸型に流し入れ て、固めて切りわけてから、乾かして保存する」 「まえ、僕に教えてくれたときと、言い方が違いますよ」 しぼうさんじゅしさん 石鹸とは、脂肪酸・樹脂酸の金属塩。以前、難しい言葉を使って、石鹸の作り方を言わ ほおふく れたリンゼは、ジェイに向かって、ぶっと頬を膨らませる。 「リンゼ、きみは教師だから」 解説を加えて、さらにリンゼを絶望的表情にしたルミは、くつくっと肩を揺らして笑 しと う。ミランに教えるなら、材料と作り方を教えれば、それでいし ミゼルの使徒で、教師 として人にものを教える立場のリンゼの場合、何をどうすればどうして石鹸ができるの か、その仕組みをきちんと理解していなければならない。 「すみません、書くものを取ってきます : : : ! 」 聞いてわかったのだが、覚えきれないと判断したミランは、急いで紙を取りに居間に 走った。十分な灰汁が必要なので、石鹸作りは春の仕事だ。それまで、きちんと覚えてい なければならない。ジェイはもう一度、ミランに向かって同じことを教え、ミランはそれ を一生懸命に書き留めた。 「プリザープやコ 1 ディアルはどうする ? 」 きいち′」 上品につまみ食いしているルミから、食べ尽くされないよう木苺のバスケットを取り上 せつけんがた

10. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

・はう る。医師であるジェイの場合は白いコ 1 ト、薬剤師のルミはケ 1 プと大きなべレー帽、教 しよ、フぞく 師のリンゼはライトコ 1 トと帽子がそれにあたる。装束のすべてではなく、上着や帽子、 かばん 鞄といった感じで、資格ごとに定められているものだが、それは少なからず目にして、世 しと いちもくりようぜん 界じゅうの人々が知っている。格好から一目瞭然、ミゼルの使徒であることがわかるう えに、ジェイとルミはミゼルの使徒であることを告げている。ミゼルの使徒に刃を向ける ふていやから ことは、それは天に唾する行為にも等しい。神威を恐れない不逞の輩は、それに見合った ばっ 罰を受けなければならない。 くろまどう ミゼルの使徒として、禁じられた術である黒魔道を用いて悪事を行う者を処分するの たいぐ は、まったく合法である。そして賊の残りの三人は、警告したにもかかわらず、大愚なこ とに自ら死を選択した。 「本当に、ありがとうございました」 ていねい 娘はもう一度、従者たちとともに丁寧に礼を述べた。 の「いや : ・ かどうりんかく 色特別なことをしたわけでもないと、ジェイは新しい煙草に火を点ける。火導鈴を隠しに しまったジェイは、不安そうな顔で見つめている娘たちの視線を感じ、そちらに目を向け かっこう しんい