顔 - みる会図書館


検索対象: 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2
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1. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

顎の力が緩められ、ジェイはルミのロの中に入れていた指を引き出す。 「ルミ : : : 、大丈夫か : : : ? 」 ルミを押さえていた手を放したジェイは、ナハトーマを浴びたルミの顔を、ルミの顔の 横に滑りをちていた濡れタオルで拭く まばた 目を見開いていたルミは、ゆっくり瞬きする。 : リン、ゼ : : : ? : ジェイ : : : ? 「大丈夫ですか : : : ? をし、目を潤ませながら、リンゼはルミに振り返る。ルミのロに入れていたジ = イの 人差し指と中指には、くつきりと歯形がついているのが見えた。革の手袋をしていなけれ ば、指を食いちぎられていたかもしれない。 ぬぐ 顔に浴びせられたナハト 1 マをジェイに拭ってもらったルミは、深呼吸して瞬きする。 すまない : 「ああ、大丈夫だ : の目を開けたルミは、リンゼに顔を向ける。 色「 : : : 驚かせたね、ごめん : ・ 彩 「いえ、僕はいいですけど : こんわく 優しい笑みで詫びられて、咳をしながら、リンゼは困惑する。 やさ ゆる かわ

2. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

270 「ジェイい、どうする ? ちょっとだけ帰ろうか」 しと ジェイが育った宿場町には、ジェイが思いを寄せている娘がいる。ミゼルの使徒となっ たジ = イの目的が、斧の戦士との邂逅という、死の影の濃いものであるために、思い あっているくせにジェイもエレインも、お互いの思いを口にできないままだ。エレインの 父親のハッシュも、ジェイのことを息子のように思っていて、二人のことを認め、孫の顔 : しかしそれでも、なるようになってしまえば、 が見られる日を楽しみに待っている。 娘婿はジ = イでなくてもべつにかまわないというのが、本だろう。ジイが婿入りし あんたい てくれたなら、食堂をやっている店も安泰だが、エレインの幸せが第一、 ' いつの間にか、話の中心人物が、自分からジェイに移ってしまっていた。声を殺して笑 うルミと、心配そうな顔でジェイを見つめているリンゼの姿に、フェレスはきよとんとし ながら考える。 ( ひょっとして : : : ) 「あんたにも、誰かいるのか ? 」 好きなくせに、まだ何も告げていない人が。 「うるさい ふきげんー ジェイは不機嫌な顔をしたまま、新聞を読む。 ロ数少なく、 いつでも不機嫌そうな顔をしていて、にこりともしないが、ジェイにはな

3. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

「ミランが絵を描く、うちの村のカレットが、どこのものより一番素敵なのよ」 ねえ、と同意を求めるように視線を送られ、褒めちぎられて自慢されているミランは赤 くなってき、お茶を飲みながらフ = レスは、ふんと鼻を鳴らす。 からだ 「身体が弱いんだ。それぐらいの取り柄でもなきゃな」 父親が木こりだったというが、ミランには家業を継いでいる様子はない。か細い身体つ ぜいじゃく きから、見るからにミランは脆弱そうだった。色も白く、太陽の下で仕事をしている感 じでもない。 はくせい 「まあ、フェレスったら。ミランは鳥の剥製を作るのも巧いじゃない。それに、領主様か ほうび らご褒美をいただくときには、自分のことみたいな顔をしているくせに」 内気でおとなしいミランは、人にじろじろと見られたり、詮索されたりするのが嫌で、 森に引きこもったまま、ほとんど人前に出ない。祭礼にも、スザナに引っ張られて仕方な くほんの少し顔を出すだけで、晴れがましい場所には姿を見せない。 くすくすとスザナに笑われ、フェレスはばつの悪い顔になる。 こいつがどう、っていうんじゃなくて、うちの村のカレットのことだか の「あれは・ ら」 それにあんな場所でおどおどしていては、村の格を落としてしまうし、格好が悪い。代 表は代表らしく立派に振る舞うのが、当然だ。 、つま せんさく かっこう

4. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

き、倒れた仲間に手をかける。揺すられて、倒れた賊の頭部がごとりと動く。白濁した目 はいつばいに開かれて極限まで上を向き、だらしなく緩んだ顎から、でろりと舌がはみ出 っちけいろ した。緑がかった土気色になった顔は、一見してわかる死人の顔だ。 「この野郎 ! 何しやがった ? 」 びれい 馬車の中にいる美麗なる者は、まったく同じ姿勢で、指一本動かした様子もなかった。 ほんの一瞬まえまで、確かにこの男は生きていた。外傷一つない。 死んだ仲間を馬車から引きずり下ろしながら色をなす賊に、顔を向けたルミは艶やかに ままえ 微笑みながら答えた。 「一 = ロったはずだ」 近づくと死ぬ。 「ふざけるな ! 」 どな まどう さや 怒鳴った賊が腰から引き抜いた剣の鞘には、悪しき魔道の印があった。黒魔道士を仲間 とするこの賊たちには、たとえ高級魔道士であっても、まったく気づかれることなく、不 の思議の力を行使することはできないのだ。 きようあく びぼう 色血で汚れた剣を突きつけ、その凶悪なる力の絶対をもって、美貌の主を服従させよう からだ あやっ とした賊は、洋車の中に半身を入れたとたん、ぎくんと身体を硬直させ、糸の切れた操り 人形のようにれ羅ちた。 たお ゆる はくだく した あで

5. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

「おやすみなさい」 いつもなら、ジェイもいっしょの時間に寝台に入って休む。しかし、今日のジェイは、 着替えをすませただけで、寝台に入ろうとする素振りはない。 ジェイはやはり新聞を読んだまま、リンゼに返事した。疲れ切っていたリンゼは、すぐ に眠りに落ちた。 熟睡していたリンゼは、床の上に何かが倒れる物音を聞いた気がして、びくりと肩を震 わせ、目を覚ます。 眩しい光が顔に当たったので、朝かと思ったが、それは明かり取りから入りこんだ月明 かりだった。 うめごえ ルミの苦しげな呻き声に、骨折すると熱が出ると、ジェイが言っていたことを思い出 し、リンゼはどきりとする。 まぶ ゆか ししか、顔にかけるぞ : たお

6. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

なので、そこらの町医者に任せるよりもずっと頼りになる。 ジェイの手伝いをしていた従者は、馬が森から出てくる物音で、ルミが戻ってきたこと ますいばち ほう′」う に気づいて振り返った。麻酔蜂の針を用いた局部麻酔で、意識のあるままで縫合手術を受 うかが けている従者も、どうなのかと窺うように顔を向ける。馬上でぐったりとしている娘を見 ほほえ つめ、心配そうな顔をした従者たちに、ルミはにつこりと微笑みかける。 まう 「森の中で隠れん坑をして、疲れたようだ」 おだ あちこちにかぎ裂きを作り、泥や草の汁で汚れて、衣服には穏やかでない乱れはある あんど けが が、助けが来たことで安堵して気絶しただけで、怪我をしたり乱暴なことをされたわけで よゝ 0 ) レオ . し びれい やさ 美麗な顔で、うっとりするほど優しく微笑んだルミの言葉に、リンゼと森に逃げた娘を 心配していた従者たちは、心底ほっとする。たとえ男性であっても、美人の微笑みには、 癒しの効果も大いに期待できる。ルミが手ずから患者に薬を渡して、しばらく近くにいる ようしたんれい ときには、ジェイは処方する薬の量を減らす。容姿端麗なルミが手渡して服用させれば、 偽薬効果も絶大であることは、すでに証明済みだ。少量の投薬でも大きな効果があるのな ら、患者本人のためにもそれが一番いし ひ 馬を曳いてきたリンゼに、ルミは足を止めさせる。 かばん 「リンゼ、薬品鞄と水を」

7. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

236 じぎ フェレスにお辞儀して、スザナはフェレスに背を向けた。 ぼうぜん 歩き去るスザナの背中を、フェレスは呆然と見つめる。 ( なんだよ、それ : : : ) 不満が何もなくて、突然態度を一変させられるなんて、まったく道理に合わない。嫌わ れるようなことなど、絶対にない ( スザナ : : : ! ) こぶしにぎ 一度、ぎりつと拳を握りしめ、怖い顔になったフェレスは、スザナに向かって手を伸ば す。今ここできっちりと捕まえておかないと : 「スザナさあん ! 」 こだち 木立の向こうから聞こえた声に、スザナははっと顔を向けて、足を止める。 「リンゼさん ? がさがさとを漕いできたリンゼは、スザナに微笑みかける。 「こんにちは、おひさしぶりです」 こわば ひとなっ にこにこと人懐っこい笑顔で微笑むリンゼに、スザナはそれまで強張っていた表情を和 ら、ける。 「さっきミランの家に行ってきたの。茸、とれました ? 」 こわ きの、」 やわ

8. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

れて慌てる。それまでとても従順であったのが、嘘のようだ。 「こ、こら ! どうしたんだよ ? 」 前に引っ張ろうとすればするほど、馬は激しく暴れる。 馬を宥めようと必死になっているリンゼに、腕を負傷していた従者が、急いで手を貸 「ここまで来たところで、きゅうに暴れだしまして : 「普段はおとなしい馬なのですが : けげん 腹部を負傷した従者も、娘たちも、同様に怪訝な顔になる。 ジェイ」 「ああ : うなず 道具を片づけたジェイは、ルミに頷き、軽く左手を動かした。 ジャキンという金属質な音を響かせ、黒い革の手袋をはめたジェイの左手に、長い爪を 思わせる五枚の刃現れる。 ふきげん ぎよ 不機嫌な、怒ったような顔をして、刃を掲げてやってくるジェイの姿を見て、馬を御し ていた従者は、ぎよっとする。 「あ、あの : ・ 「こっち、下がりましよう」 す。 あわ なだ かか かわ うそ

9. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

148 に罠を支度してきて、自分が森に入って罠を仕掛けにいき、午後来たときに、罠にかかっ た鳥を回収することになっている。 「こんなことして、また寝こんで、スザナに面倒をかけるつもりなのか e: あといくっ : ・これで全部だよ」 ちょうど、最後の罠にかかった鳥を外しおわったときに、フェレスが来たのだ。 かっこう 「珍しい客が来たからって、お前なんかが格好つけようなんて思うなよ」 「そんなこと、考えてないよ : 睨みつけるフェレスに、 ミランは少し逃げ腰になり、顔を伏せる。 「僕には何もできないし : ・ と ジェイたちに泊まってもらっても、ミランは料理も満足にできないし、することがあっ て、ろくに話もできない。ただ、使っていない屋根裏部屋を提供して、気拠ねなく楽にし てもらっているだけだ。 めいわく 「勝手なことをして、まんまと病気になって、それを絵が描けない理由にされちゃ、迷惑 だからなー 手厳しく言われて、ミランは顔を上げられなくなってしまった。 にら わなしたく めんどう

10. 彩色車の花 プラパ・ゼータ ミゼルの使途 2

306 「あれ、全部飲んじゃったんですかル まだ、小さい樽一つ分はあったと、リンゼは記憶している。 ゅうべ 「いや、昨夜。君が寝てるあいだに」 酒が入ると、自然と話し声も大きくなってしまうものだが、リンゼは熟睡していて、 まったく目を覚まさなかった。 やけざけ ジェイの自棄酒につきあって、いっしょに飲んだルミも、当然一一日酔いなのだが、苦痛 を感じないルミの場合、少し顔色がよくないぐらいで、行動にはほとんど変化がない。 うそ 「嘘でしようつ e: ぎようてん リンゼは仰天して目を剥く。飲酒の習慣がないリンゼには、あんな大量のものがどう なか して飲めるものなのか、理解できない。水や清涼飲料水では、お腹がいつばいになってし まって、とても飲みきれない量だ。 大声を発しているリンゼに、ジェイはゆっくり顔を向け、呟いた。 「 : : : 騒ぐと、殺す : : : 」 据わった目で睨んだジェイに、リンゼはひくっと顔を引きつらせた。 たる にら む つぶや