ぶっ飛ばす。 帰ろうとする先輩を、水野尾が追ってく〇 路地 ( 深夜 ) る。 前を塞ぐ車にバカヤローとかコノヤロー 廣田が迷子のようにさ迷っている とか、腹から叫んでいる 水野尾「 : : : ( 自身の殻を打ち破って ) ー 唄「 ) キスして、キスして、抱き合って、 よろい いっか教頭は、重い鎧から解放されて笑 先輩に、深く頭を下げる。 ささやいて。愛をわかちあって、それだけ い転げている。 唄「 ) 子供も生まれてくれば、懐かしい友でいいのに」 唄「 ) 幸せであるように心で祈ってる。幸のことなど、忘れるかもしれないよ」 せであるように心で祈ってる」 チサンホテル上野の 421 号室 ( 深夜 ) 新江ノ島水族館の相模湾大水槽 ( 深夜 ) 疲れて戻って来たタ子が、困った顔にな る。 チサンホテル上野のロビー ( 深夜 ) 閉館後で、だれもいない。 香織と角田 & タ子が、戻ってきた貴延、 水底に沈んでいるシルバーのリング。 べッドで毛布をかぶって眠っているのは 達也、有紀を迎えている マスクとフィンをつけたプリーフ一丁の 太壱だ。 升美が急ぎ足に来て、有紀に迫る 健一郎が素潜りをする。 タ子は太壱の前に立ち、起こそうとする 有紀「 ( ぶたれると思って ) ・ ・ ( 頬をかば唄「 ) ああこの想い君に伝えたくて、涙な 、刀 なにかを感じる。 う ) 」 がし夜に震えてる」 目を閉じて、太壱の心を全身で受け止め g ている 升美はぶつかるように有紀を抱きしめる。 なにも気づいてやれなかった自分を責め、〇チサンホテル上野の屋上 ( 深夜 ) 唄「 ) 寂しいとき、そばにいて、そばにい て、そばにいて。ただそれだけでいいのに。 痛みを共有するように、きつく抱く。 勝利がミカンを拾、つ 有紀「ーーー 険しい顔のまま、投げる 寂しいときにそばにいて欲しいだけなのに、 達也と貴延「 : ・・ : 」 恭平も、険しい顔のまま、受ける。 だけなのに」 升美「 ( ただ抱きしめている ) 」 かってのバッテリーのキャッチボール。 有紀「 : ・ ・ ( やおら、涙があふれてくる ) 」 言葉にできない思いを、ポールが伝え〇 新江ノ島水族館の相模湾大水槽 ( 深夜 ) 唄「 ) 別れはつらくて、でもみんな愛し合 合っている もう少しでリングに指が届こうとしたと うのに。涙がなんでこばれ落ちるのかな、 唄「 ) みんなは、みんなは、涙を流すの 」ーーーマスクが外れ、健一郎はパニクる 声を震わせて。ママも死んで、それでも僕 に、なぜ愛し合ってるのかな。ママも死ん 水の中で、泡にまみれてもがき、足掻く は君とキスを交わしている」 で、子供も生まれて、君と別れ、君とめぐ唄「 ) 幸せであるように心で祈ってる。幸 りあって」 せであるように心で祈ってる」 〇カフェの前 ( 深夜 ) 〇 〇 〇
る。 かほかの方法がないか、先生も考えるから。 勝利がぎこちなくタバコをふかしている いっしょに考えてこう。な」 その足元にミカンが転がってくる 貴延の顔に失望がうかぶ。 〇チサンホテル上野の廊下 ( 深夜 ) 勝利「 : : : ( 振り向かなくても、分かってい 達也と有紀の顔にも。 昨夜とは逆に、結真実が美穂、明菜、聖 る ) 」 恭平が立っている 廣田「 ( も、そんな自分にひそかに失望して 子の手を強引に引っ張ってドタドタと走 る。 いる ) ・ ( 感傷を押し殺して ) 行くぞ。 勝利「 ( 無視して、吸えないタバコをムリに : 帰るぞ、もう」 ふかしつづける ) 」 〇 結真実の唄「 ) 別れはつらくて、それでも愛 上野駅近くのレンタカー屋 ( 深夜 ) しあって。涙がかれたら、疲れて眠ろう」 〇チサンホテル上野のシングルルーム ( 深 教頭が飛びこんでくる。 教頭「 ( 錯乱気味だ ) 間違えた ! 間違えた 疲労困憊の教頭がべッドでカップ酒を飲んだ ! 妻に送信してしまった。もう寝て〇スナック T><O>W ・前 ( 深夜 ) みながら不器用に古臭い携帯のボタンを る。いつも七時に起きて保険の仕事に行く 廣田が立っている 扉に手をかけているが、開けられないで一 押している。 んだ。飛ばせば間に合う。 間にムロ、つつ 固まっている。 痴呆のような顔、嘆息、部屋がぐるぐる て言ってください ! 」 回る。 係員たちは唖然としている 結真実の唄「 ) 君の涙を、涙を、お皿に集め一 『香織先生。じつは、好きです。部屋で待っ てます』というメール。 チサンホテル上野・地下宴会場 ( 深夜 ) 一瞬の躊躇のあと、送信する。 ホルンスマホが放り出してある 〇同・店内 ( 深夜 ) ひとりの美由紀が、のポリュ 1 ムを 「ーーデシリットル ! 」 教頭「 ( 身体を丸めて、枕を抱く ) 香織先生 上げる。 美穂がドラムを叩き、「幸せであるよう ふいに、ガハ と跳ね起きる。 懐かしい十七年前の FLYING KIDS を に』がはじまる 聴いていたのだ。 携帯を確認すると、送信メールの宛先は、結真実「 ( 爆発したように、唄う ) ) 幸せで よ あるように心で祈ってる。幸せであるよう FLYING KIDS の唄「 ) : : : 全部飲みほし る たら、すべて許されるかも」 に心で祈ってる」 教頭「 みなぎ せ 音程が狂うが、ある迫力が漲っている 幸 〇上野駅頭 ( 深夜 ) 〇高速道路 ( 深夜 ) 教頭が制限速度を無視してレンタカーを 教頭がホテルのスリッパのまま全力で走〇同・屋上 ( 深夜 ) 『はなこさん』だ。 〇 103
く立ち上がる ) ー 有紀「 : : : よかったのかな」 達也「 ? 」 貴延「初恋は体育の先生で、それで思い知っ 新宿歌舞伎町 ( 夜 ) 有紀「私だけじゃない、達也も停学とか、最た : カミングアウトしたら、親は首吊 広場に座った貴延と有紀が靴を脱ぐ る。けど、もうイヤなんだ、自分にウソっ 血豆がつぶれて赤く滲んでいる 達也は、憑き物が落ちたようなサッパリ くの。 : : : 本当の自分になるためにここに 貴延「 : : : ( 大都会に圧倒されている ) 」 した顔だ。 来たけど : : : ビビっちゃった」 有紀「 : : : ( も、途方に暮れている ) 」 達也「ふたりで働くか」 三人「 : そんなふたりに、近づく影がある 有紀「ーーー 貴延「でも先生。居場所って、逃げ込むもの 有紀の瞳にこみ上げてくるものがある。 じゃなくて、作るものだ」 貴延と有紀「 : 有紀「 : : : 達也」 廣田「 ? 」 廣田と達也が立っている。 有紀は達也の肩におでこを乗せて、ひと貴延「修学旅行の文集でカミングアウトしま 貴延「 ( 信じられない ) : : : 先生引」 しきり泣いている 有紀「ーー ( ただ、達也を見つめている ) 」 そして、すまなそうに貴延を振り返る。廣田・達也・有紀「 ! 」 有紀「 : : : ごめんね。 : 私だけ、なんか、貴延「イヤな思いい つばいしても、僕は僕に 〇 花園神社あたり ( 夜 ) こんな感じで」 なれる」 廣田が達也のスマホを取り、有紀と貴延 貴延が苦笑して首を振る 困惑し、ロをパクパクさせる廣田に、達 に見せるーー有紀がさっき撮ったネオン有紀「 ( ずっと気になっていた ) 梨本くんは 也が言う。 の写真だ : どうして ? 」 達也「オレも書く」 廣田「青森人にはサッパリだけど、タクシー 貴延は立ち上がって、廣田に対峙する。 廣田はギクッとする に見せたら一発で歌舞伎町だって分かった。貴延「・ : ・ : じつは、さ」 達也「有紀とのこと、ぜんぶ。 : 一時間、駆けすり回った」 廣田「 ? 」 れにも邪魔させない」 貴延「 ( 有紀を見る ) 貴延「ゲイなんだ。・ : : ・僕」 有紀「 ( 達也を見て、嬉しくうなずく ) 」 有紀「 : : : 達也にメールしたの。 : : : 最後に、 廣田がーーそして達也と有紀が、「」 三人に囲まれて、廣田は困り果てる 賭けてみよ、つって。・ : ・ : 信じたかった。あ と目を剥く。 : やっと、甲高い早ロでまくし立てる の夜を」 貴延「小学校の性教育で気づかされた。みん廣田「それってさ、すごく個人的なことだし、 達也が有紀の前に来て、ふたりはぎこち な女性器見て騒いでるのに、僕が興奮した文集に書くことじゃないな。受験控えてる なく向き合、つ。 のは : : : 」 ャツを混乱させるし。いろいろ : 〇 : 、も、つ、に
ふたりが雑踏を歩く。 お母さん ! ( 初めて、知る ) 水野尾「ーー .. 一 酔っ払いのダミ声や、飛び交う中国語が それ、本当ですか」 先輩「言ったよね。見下すみたいに、そのロ 升美はゆっくりと歩き、崩れるようにソ 有紀が、「フロアレディ急募』という風 フアに座りこむ。 水野尾「・ : 俗店の張り紙を見る。 深呼吸して平静を保とうとする。 有紀「・ : ・ ( いざとなると緊張する ) 」 升美「 : : : それで、受験やめるって。 ・ : 私、〇 チサンホテル上野の 410 号室 ( 夜 ) 貴延が、「サービスポーイ募集中」とい なんにも見ていませんでした」 勝利が恭平を締め上げる。 う看板を見る。 勝利「調べたんだよ、プログに返ってきたコ 貴延「 : : : ( 同じく ) 」 〇カフェ ( 夜 ) メント。健康のケンが建築の建。癒しは卑 いつの間にか身を寄せ合いながら、人ご 不貞腐れたような水野尾の前に、会社帰しいだし、環境のキョウは鏡って字だ。コ みに紛れていく。 りでスーツ姿の先輩が座る メント全部が同じ誤変換て、ありえないだ 先輩「久しぶり。 : うまくいってんのか、 ろぜんぶお前だ ! 」 〇チサンホテル上野・ 510 号室 ( 夜 ) 会社 ? 」 恭平「 ( 観念する ) ーーーじつは ! 」 プレステで騒ぐ同室の男子たちから離れ 水野尾は屈辱を堪えながら、先輩の前に勝利「来るわけないじゃん、オフ会に ! ぜ て、勝利がノートパソコンで『大並み家 履歴書を置く。 んぶお前なんだからー の一族』を見ている。 ごめんなさい ! 先輩「 ? 」 恭平「ごめんなさい ! 勝利「・ : ・ ( 黙々とスクロールさせている ) 」水野尾「 : : : どっか : ・ ・ : どうにか、なりませ勝利くん、肘、壊してから、死んだ人だった」 んかねー 勝利「 〇同・ロビー ( 夜 ) 先輩「・ : 恭平「でもプログにコメント来ると、ストラ 升美がスマホで電話している。 水野尾は覚悟を決めて、正面から先輩を イク取った顔になる。カッコいいんだ。ス 升美「ーーお母さん、泣かないでください 見る トライク取るとカッコよくて、オレ、ずつ 家出って決まったわけじゃないんです、迷水野尾「再就職。・ : : ・友だちと起業したって と見てたかった。勝利くんのカッコいいー よ子かもしれないし、お心当たりがあったら 言ったのは、ウソです」 あ 。今川達也 ? 3 組の ? : いえ、有 先輩は唖然としているが、やおら意地悪 つづきは言葉にならないーー・勝利が殴っ で せ紀さんといっしよなのは梨本くんです。ど な笑みをうかべる。 たからだ。 うして今川くん : 泣いてばかりじや先輩「お前、言ったよな。いつまで大みたい 恭平「 ( 頬を押さえて身をよじる ) 」 分かりません、なにかあったんですか ? に使われてるんだって」 勝利「 ( 同情はされたくない ) ・ ・ ( 荒々し
〇 達也がチラチラ気にしているーーー有紀の 制服で腕を組んでいるカップルに香織と 六時半の時計の下で、教頭以下の教師全 席が空いている。 教頭が走り寄る。 員と、角田、タ子が切迫した顔で集まっ ている 長太郎も気にしているーーー健一郎の席が香織「 ( カップルの顔を覗いて、首を振る ) 」 空いている。 香織「 1 組の梨本貴延と倉田有紀です。駅に 教頭「・ : ・ ( ガッカリだ ) 」 ハルミは同席の女子たちのお喋りに入っ ふたりはラッシュの駅頭をさ迷う 向か、つのを見た生徒もいます」 : ど、つなっ ていけない。 升美「ふたりが付き合っているという情報は 教頭「あとからあとから問題が : てんだ、今年の二年は」 聞いてません」 ハルミ「 : : : ( 平気な顔を繕っているのは、 教頭「でもふたりで消えたんでしよう。 けっこうつらい ) 」 香織「ぜんぶ予定通りの学年なんて、ありま したか ? 」 携帯は ? 」 早々にごちそうさまをして、席を立つ。 みすほ「切ってます」 勝利と恭平は沈んだ顔でモソモソと食べ 教頭は虚を突かれる ーーー小さく苦笑する ている 教頭「ほかは全員、帰ってますね ? 」 教頭「 : : : 香織先生と話すと元気が出る」 結真実はテープルの下でホルンスマホを香織「離婚のとき、相談に乗って勇気をくだ 廣田「 ( 書類を取っ散らかしながら ) たぶん。 いじっている。 さったのは教頭です」 ( 教頭にすごい目で睨まれて ) : : : はい」 ふたりは照れ笑いを交わし、また探しは 朝「 ( どこかで面白がっている ) 修学旅行結真実「 : : : ( 憑かれたような顔だ ) 」 じめる 液品 駆け落ち : : : とか」 『好きな子ができた。君とは付 教頭は舌打ちして、指示を出す。 き合えない。ホルン』。 新宿歌舞伎町 ( 夜 ) 教頭「 ( 宅配便ラッシュを指して ) これ、早結真実「 ( 嗜虐的に目を輝かせる ) : : : ザマ〇 貴延と有紀が量販店の袋から安つほい く終わらせて。生徒たちは夕食後、部屋か ジャンパーとコートを出し、制服を隠す 沙耶香たちのはじけた声とクラッカーの ら出さないように。捜索隊、ホテル待機、 ために着て、ネオン街に立っ あと親御さんへの連絡か ( 胃を抑えなが 中で、送信ボタンを押す。 次の瞬間ーー 有紀「 : ・ ( スマホを出して ) 」 ら ) ーー私が編成しますから」 どぎついネオンを写真に撮る 結真実「 ( 自分を取り戻す ) ・ ( 声になら 有紀「 : ・ ( 画面を見つめている ) 」 同・食堂 ( 夜 ) ない悲鳴をあげる ) 」 電波をかき消そうとでもするように、中貴延「 ( 緊張している有紀を気遣って ) 空でじたばたする 一何′け・ど」 「おめでとう ! 」 有紀が意地になって歩き出し、貴延があ 沙耶香たちがコンビニの袋から出したク わてて追う。 ラッカーを鳴らす喧騒。 〇上野駅前 ( 夜 ) 1 OO ー
を勧める。 水野尾「 ( 自分の湯呑みに口をつけて ) ・ 〇同・前 ( 夕方 ) 冷めちゃったな」 ディズニーランドの土産を抱えた有紀た 升美「 : ・・・・うん・・・・ : 冷めちゃったね」 ちが戻ってくる 〇 船の科学館の前 電柱に凭れているのは貴延だ。 勝利と恭平が寒風の中で地べたに座りこ 有紀は仲間たちに、すぐ行くと告げて、 んでいる。 貴延に近寄る 勝利「 : : : 参加表明 : : : 十二人だろ ? 」 ーーー有紀と同じ班の女子たちは、ふたり 恭平「 : : : 忙しいんですねえ。 : : : 東京の人 を興味津々に見ながらホテルに入ってい カモメが群がる空は、だんだん夕方の色 貴延と有紀が向き合う。 になっている 貴延「 : : : 同じ、迷子だ」 有紀「 ? 」 チサンホテル上野・ロビー ( 夕方 ) 貴延が歩き出す。 「疲れた疲れた ! 」 有紀「 ( あわてる ) ねえ。梨本くんは、なん と言い合いながら、達也たちのグループ で新宿にーー」 が帰ってくる。 貴延は答えず、黙々と歩く。 帰着チェックの準備をしていた香織とみ 有紀は一瞬、迷っているが、小走りに貴 ずほが時計を見る。 延のあとを追う。 みすほ「きみたち、まだ五時半だよ」 廣田の声「 ( 次のシーンからズリ上がって ) 班長がみずほの前に立つ。 ・ : 高校生のころって、不安だった。 よ班長「ハンパじゃないです、人と車が。青森明日が見えなかった」 帰りたい。 引班六人、帰りました」 せ 達也は、ソフアにばんやりと座り込んで〇同・ロビー ( 夕方 ) 幸 いる廣田を見る 廣田が、となりに座った達也に語ってい る。 〇 有紀「 : ・ 〇 廣田「だからグレたり、壊れたおもちゃみた いにはじけたり、引きこもったり、みつと もない自分のかわりにだれかをいじめた り」 廣田「いっから、明日が見えるなんて思っ ちゃったんだろう ? 」 ふたりが目を向けるーーガラス越しの往 来。 行き交うサラリーマンや買い物の主婦や O*-Äたち。 片歳の廣田と達也が、道行く片歳たちを 見つめている。 江ノ電が走る ( 夕方 ) 暮れなすむ海沿いの線路を、ガタゴトと。 車内 ( 夕方 ) 健一郎ひとりが、暗くなる車窓を見てい る。 腕時計を見ると、六時を過ぎている 〇チサンホテル上野・ロビー ( 夜 ) 生徒たちがお土産や汚れ物を段ボールに 詰めて宅配便業者に渡していて、騒然と している 〇
〇 年前に会社を興した。中卒でインターネッ升美「あなたたち、本来の自主研修に戻って。 升美は、三秒、意味を考えて : : : 唖然と する トの広告代理店を立ち上げたんだ。いま大学見学に行くの。この人の言うことは極 論なの。あとで説明するから : : : さあ、行っ升美「 : : : プロジェクトに : : : 失敗 ? 」 じや社員が一一百人、中には東大卒もいる」 生徒たちの目が驚きに見開かれ、升美は 水野尾「だれもかばってくれなかった」 クラクラする 生徒 < 「でも先生 : : : 」 升美「偉そうだから味方がいなかった。 、、。吏えよいいん升美「駅、分かるでしょ ? ーー大学見学 ! 」先輩は努力家だから、自信持つのは当然よ 水野尾「東大は出なくてししイ ( ピザーラでも、メニューぜんぶ暗記してた。 剣幕に押されて、生徒三人は三畳間から 出ていく でも仕事はひとりじゃ回せない。孤立して 〇キッチュなブティック 水野尾「田舎のまじ 5 めな先生 ( 升美 ) の理辞めた」 水野尾「高校時代のバイトで服飾販売の楽し想論しか聞いたことがない違う価値観見水野尾「あれは、時給が安かったからーー」 さに目覚めた女の子が即攻で中退してはじ せて、悩ませて、自分で決めさせればいい」升美「 ( 言い訳を無視して ) いつも気がかり めたのがこのプティックだ。ビニールの升美「ホントにやりたいことがある子は、教だった。心配だった。見てられないの、だっ テープルクロスをワンピースにする、ただ 師がなに言ったって飛び出してく。 ( 生徒て : : : じつはね」 一発のアイディアが受けて、いまじや年商たちが出ていった戸口を指して ) 子供なの。水野尾「 ? 」 升美は興奮から醒めて、ロをつぐむ。 先輩、片歳のとき、そんなに立派だった ? 」 四億円」 升美「 : : : 再就職は ? 」 生徒たちがざわめき、升美はいたたまれ水野尾「ーー . 」 升美「私が正しいなんて思ってない。生涯安水野尾「 : : : 」 泰だって言われた公務員の給料だってガタ升美「 ( ため息が漏れる ) 頭、下げないもん ガタ下がってる、私の給料だからよく知っ なあ」 神田川が見える老朽化したアバート いまのオレに腹 いまどき風呂トイレ共同の三畳間に、水てる。なにがいいかなんてだれにも分から水野尾「 : : : 升美見てて : 野尾が一同を連れてくる。 ない。分からないから必死なの。ちょっと が立った」 でも幸せに近い道選んでくれないと送り出升美「 ? 」 水野尾「一方、この部屋の住人は一流大卒、 せない。 ーーー私の生徒よ ! 」 水野尾「むかしと同じだ。いつも真っすぐで、 一流企業に入社した。自分が提案したプロ 一生懸命で : オレ、お前のそういうと 水野尾が背中を丸めて、お茶を淹れはじ ジェクトの失敗の責任を問われてクビに める。 : 。じつはさ」 なった」 素直に感心する生徒たちを見て、升美は升美「 : : : 勝手にいい 水野尾「オレの部屋だから」 水野尾はロごもり、やおら、升美にお茶 我慢の限界になる。 おこ 8 一
廣田が驚き、離れていた達也もびつくり だからな ! 」 靴を両手に持ち、音を殺して鉄階段を して見つめる。 上って貴延が戻ってくる。 ほたる「 : : : 母さんの言う通りだ」 〇スナック『 x 0 > I-LIJ の前 ( 深夜 ) 貴延「ーー ( 足をすくませる ) ー 廣田「 ? 」 廣田が地面に崩れ落ち、達也がその前に 四階の非常扉の前に、白い息で掌を温め ほたる「鈍感なんだなあ、お父さんて」 立つ。 ながら、有紀が待っていた。 廣田「 : : : お父さん ? ほたるちゃんーー・」廣田「 : : : 時間て、優しくないぞ。なんにも有紀「新宿でしょ ? 」 ほたる「まだ分からないの ? じつはね : 解決しないじゃん」 廣田が、そして達也も、ぐびっと唾を飲む。達也「むしろ悪化させてるね」 有紀「なにしに ? 貴延は無視して、非常扉に手をかける。 ほたる「 ( 店内を指して ) 新潟の親戚に預け廣田「いまじや親友だよって、オレ最低じゃ わら られたけど家出して、堕ろさなかった。母ないか。 ( 藁にもすがりたい ) ・ : ・ : どうす有紀「明日は私も連れてって」 ればいし さん、産んだの」 貴延「 ( 鼻で笑う ) バレたら内申、悲惨だよ」 廣田「ーー 達也「オレと彼女が失ったものを、かわりに有紀「家出するために来たの、修学旅行。新 掴んでくれ」 宿なら片歳の女の子でも食べてけるって。一 ・つてい、つ力い ほたる「あたしを。 : 歳だよ。 ・ : あな廣田「つて言われても。 風俗に就活しに来たんだ、私 たの、娘です」 つからお前が先生なんだよ」 貴延「 ( 有紀を凝視する ) 」 廣田は衝撃で、達也は現実感がなく、ロ 達也が助け起こすーー瞬間、廣田は片歳有紀「じつはね。 ・ : ねぶたの夜に。 を開けない。 の廣田になり、ふたりは入り組んだ路地 キちゃって」 を歩きはじめる。 ほたる「 ( 店に戻りかけるが ) : : : 待ってた の、母さん、ずっと。 ・ : 忘れられなかっ 角を曲がると行き止まりだ。 有紀「 3 組の達也。・ : ・ : オロオロするばっか で電話も出なくなった。あいっ逃げたんだ たんだって。待ってたんだよ : : : お父さん ここかと思、つと、また『』の ~ 則 よ。母さんにバレて病院連れてかれて、検 が、気づいてくれるの」 に戻ってしまう。 ほたるが店に駆け戻る ふたりの片歳が、行きっ戻りつ、迷って査だって言われたのに : : : 気がついたら、 いる 赤ちゃん : ・ それから達也の親が来たの。 よ廣田「 : ・ ・ ( ぐらりと、よろける ) あ 達也「 : : : どっち ? これで忘れてくれって : ・・ : 十万円。・・ : : も で せ〇ねぶた祭り ( イメージ ) 片歳の廣田「 : : : どっちだろうなあ」 うイヤなんだよ、あそこはイヤなの」 真夏の夜の光の乱舞。 貴延「それ、悩みのうちに入らないから」 片歳の廣田の声「ずっと、すっと、いっしょ〇チサンホテル上野・非常階段 ( 深夜 ) 冷たく言い放って、有紀を残して建物に O ′
結真実「 ( 迷っているが ) ・ 困惑する。 実は窓の外を見る。 れて、読む ) 」 結真実「 ( いきなり、床をダン ! と踏み鳴ら そんな健一郎を、離れた長太郎が不 やがて結真実は、ホルンスマホを手に、 : べタでいこうよ」 憫そうに眺めている 自分のスマホで電話をする。 駐車場 結真実「 ( 相手が出て、小声で ) 東北原高校〇①バスの中 の馬場ですけど、碓氷さんお願いします。 多摩川を越えると、『東京都』の標識が 今日は競馬紙を読む水野尾が顔を上げる。 見えてくる。 ( 始が出て ) : : : あ、メールが来たんです。 見学を終えた升美が、進路に迷いがある なにか急ぎかと思って読んじゃったら、ホ 新宿ガイドから顔を上げた貴延が標識を らしい生徒 < 、、 0 を説得しながら戻っ てくる ルン先輩へ、クラリネットよりって書いて 見つめる。 あって : ・ へえ、プラバンなんだ。ホル 有紀も居眠りから醒めて、標識を見る。升美「専門学校にも意味はあるのよ。でも同 ンなんだ、碓氷さん。それでね : : : 」 じことは大学でも勉強できる。大学入って、 、」、つい、つ それから考えればいいじゃない ホルンスマホの画面のメールに、『じ・つ・有紀「 : : : 」 はび ( > ー > をの文字。 言い方、いやだけど、高い所から低い所へ一 は簡単よ。逆は難しいでしょ ? まず自分 結真実「告ってるんです、クラリネット。前 国会議事堂近く から好きでしたって。ほら、一年だし、恋 ハスガイドの旗について歩きながら、健が行けるトップに行かないと」 に恋するっていうか、私も経験あるけど、 一郎が勇気を出して、前を歩くハルミに 水野尾が、小馬鹿にしたように鼻で笑う。 こういうのってハッキリ言ってあげたほう 声をかける。 ・ ( 水野尾を横目で 升美「 ( 憮然として ) ・ : : : うん・ : へん : そ、つ健一郎「水族館に、電話しようか」 睨む ) 」 返信すればいいんですか ? : 分かりま した」 健一郎「落とし物。水槽の掃除のときとかに、〇東京タワーの前 最後は能面のような表情になって、電話拾って貰えば」 各クラスが交代で集合写真を撮っている。 を切る 太壱と並んでそれを見ていたタ子の顔が、 ハルミ「 : : : 取り返せないものって、あるん スーと曇る よ聖子「結真実、いっとく ? 」 だ」 あ 3 組の撮影ーー廣田が鞄から黒枠のつい と出されたポテチを見もせす、結真実は健一郎「 ? 」 で せ 機械的にスマホを操作する。 た写真を出して膝に置く。 ハルミ「ぜったい取り返せないものって、あ 幸 文面ーーー『マジうれしい。早く会いたい』。 るんだよ」 タ子「 ( 太壱に ) だれか亡くなったの ? 」 心を無にして送信ボタンを押して、結真 不機嫌にスタスタと行くので、健一郎は太壱「 : : : まあね」 ・ ( 誘惑に駆ら 〇
はせでら きませんて言い張ったろう。カニを入れな : ここ、二回目」 長谷寺・駐車場 ( 夕方 ) きゃいい」 健一郎「 ? 」 ③のバスに帰ってくる結真実たちを廣田 升美「カニが嫌いなのにカニマヨを頼む方が ハルミ「停学くらってダブったから、修学旅 が迎えている。 間違ってますー 行、一一回目」 廣田「班長、人数確認してね。 ( スカートが 水野尾「カニが入ってないカニマヨを食べた健一郎「 ! 」 、ノッ見えてるな」 短い女子に ) おい、 ( い気分もある。メニューを自分で作っちゃ ダメか ? 」 ( 0 、、、「な〈停学か分か , ( 息がかか女子「 ( 平 1 と ) 見なくださ」 廣田「ーー ほど近づいて ) 援助交際」 升美「だから運転手なんですか ? 」 屈伸運動をしていたおじさん運転手が廣 健一郎は真っ赤になり、鼓動が激しくな る。 田に笑いかける。 水野尾「・ : ・ ( その質問には、答えない ) 」 ハルミ「ウソ。タバコ ・ : 興奮してる」 運転手「いまどきですねえ」 〇 同・相模湾大水槽 健一郎「 : : : してません」 廣田「はあ。 ( 相手が赤の他人の気安さで ) ハルミが左手の薬指からシルバーのリン ハルミ「してる」 ・ : 以前は、生徒の気持ちが見えてたんで グを外す。 すー 健一郎「 : : : してないです」 ハルミ「 : : : さよなら」 ハルミ「 ( 右手で握る仕草をして ) たしかめ運転手「 : : : 」 無表情のまま、大水槽にポチャリと落と よ、つか」 廣田「三十過ぎたころからかなあ : : : 分か一 す。 らなくなった。・ : ・ : 顔が見えなくなった。 健一郎「 : : : それは ( 困ります ) 」 健一郎「 ( マイワシの群れをばんやり見てい ハルミ「ーーあたし、透明人間なんだ。いっ ・ : みんな、どっかに行っちゃった」 るが ) ・ ・ ( えッと、気がつく ) 」 こ年上だから、だれも話しかけてくれない。 引班の班長 ( 男子 ) がバスの窓から首を 出す。 : ちっちゃいことでヘコんじやダメだ 沈んでくるリングと、階段上からそれを 見ているハルミの姿。 班長「先生、今川だけまだっす」 健一郎「 ( 落とし物だと勘違いし、係員に ) 健一郎「・ : 廣田「 : : : 達也 ? 」 ゲンナリし、運転手の苦笑に送られて歩 ・ : すいません。落とし物です」 ハルミか半ハり、健一郎は、とにかノ励ま よ ハルミかその前に立っ きだす。 されたことは感じている。 る あ ハル、、、「いいんた、、も、つ ・ : あれは」 ハルミの背中にペコリと頭を下げる で せ健一郎「・ : そうして、見るーー水底に沈んだ、ハル〇同・山門 ( 夕方 ) ハルミは歩き出そ、つとするが、思い出し ミのリングの銀色の光 廣田が歩いてきて : : : ふと立ち止まる たように健一郎を見る 心の中で、むかしの、 FLYING KIDS 〇 冖 /