水野尾 - みる会図書館


検索対象: シナリオ 2016年2月号
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1. シナリオ 2016年2月号

〇 年前に会社を興した。中卒でインターネッ升美「あなたたち、本来の自主研修に戻って。 升美は、三秒、意味を考えて : : : 唖然と する トの広告代理店を立ち上げたんだ。いま大学見学に行くの。この人の言うことは極 論なの。あとで説明するから : : : さあ、行っ升美「 : : : プロジェクトに : : : 失敗 ? 」 じや社員が一一百人、中には東大卒もいる」 生徒たちの目が驚きに見開かれ、升美は 水野尾「だれもかばってくれなかった」 クラクラする 生徒 < 「でも先生 : : : 」 升美「偉そうだから味方がいなかった。 、、。吏えよいいん升美「駅、分かるでしょ ? ーー大学見学 ! 」先輩は努力家だから、自信持つのは当然よ 水野尾「東大は出なくてししイ ( ピザーラでも、メニューぜんぶ暗記してた。 剣幕に押されて、生徒三人は三畳間から 出ていく でも仕事はひとりじゃ回せない。孤立して 〇キッチュなブティック 水野尾「田舎のまじ 5 めな先生 ( 升美 ) の理辞めた」 水野尾「高校時代のバイトで服飾販売の楽し想論しか聞いたことがない違う価値観見水野尾「あれは、時給が安かったからーー」 さに目覚めた女の子が即攻で中退してはじ せて、悩ませて、自分で決めさせればいい」升美「 ( 言い訳を無視して ) いつも気がかり めたのがこのプティックだ。ビニールの升美「ホントにやりたいことがある子は、教だった。心配だった。見てられないの、だっ テープルクロスをワンピースにする、ただ 師がなに言ったって飛び出してく。 ( 生徒て : : : じつはね」 一発のアイディアが受けて、いまじや年商たちが出ていった戸口を指して ) 子供なの。水野尾「 ? 」 升美は興奮から醒めて、ロをつぐむ。 先輩、片歳のとき、そんなに立派だった ? 」 四億円」 升美「 : : : 再就職は ? 」 生徒たちがざわめき、升美はいたたまれ水野尾「ーー . 」 升美「私が正しいなんて思ってない。生涯安水野尾「 : : : 」 泰だって言われた公務員の給料だってガタ升美「 ( ため息が漏れる ) 頭、下げないもん ガタ下がってる、私の給料だからよく知っ なあ」 神田川が見える老朽化したアバート いまのオレに腹 いまどき風呂トイレ共同の三畳間に、水てる。なにがいいかなんてだれにも分から水野尾「 : : : 升美見てて : 野尾が一同を連れてくる。 ない。分からないから必死なの。ちょっと が立った」 でも幸せに近い道選んでくれないと送り出升美「 ? 」 水野尾「一方、この部屋の住人は一流大卒、 せない。 ーーー私の生徒よ ! 」 水野尾「むかしと同じだ。いつも真っすぐで、 一流企業に入社した。自分が提案したプロ 一生懸命で : オレ、お前のそういうと 水野尾が背中を丸めて、お茶を淹れはじ ジェクトの失敗の責任を問われてクビに める。 : 。じつはさ」 なった」 素直に感心する生徒たちを見て、升美は升美「 : : : 勝手にいい 水野尾「オレの部屋だから」 水野尾はロごもり、やおら、升美にお茶 我慢の限界になる。 おこ 8 一

2. シナリオ 2016年2月号

あの、私、このスマホを拾っ結真実・美穂・明菜・聖子「 ( ポーズをキメて ) 升美「 ( 五年ぶりなのだ ) : : : 先輩」 た、東北原高校の馬場結真実という者です」 デシリットル ! 」 〇同・海辺のデッキ 同・舞殿あたり 升美と水野尾が海を見ている。 〇停車している①バスの中 鳩に餌をやって黄色い声をあげている美 だれもいないバスの後部で、見学をサ升美「あのコ、早慶上智狙ってたんだけど たかのぶ 穂、明菜、聖子のところへ、結真実が転 ポった梨本貴延 ( 片 ) が、「新宿ガイドマッ ・ : 先月、受験しないって、急に。学年の げるよ、つに走ってくる プ』にマーカーで印をつけている ホープなのに」 結真実「あのさあ ! 」 離れた席から、倉田有紀 ( 片 ) が貴延を水野尾「オレみたいだな」 見つめている 三人「 ? 」 升美「 ? 結真実「 ( ふいに照れ臭くなる。だから ) : ステップに足音がするので、貴延はとっ水野尾「成績トップ。みんなが羨む一流企業 母ちゃんが見てるお昼のドラマがあるだよ。 さに伏せるが、有紀は遅れ、覗き込んだ に就職した。それがどうして、運転手 ? 空港で、女がひと目惚れした男のスマホを 升美に見つかってしまう。 升美「 ( いちばん、知りたいことだ L 拾うの」 升美「倉田さん。 : : : 体調悪いかな ? 水野尾「あのコに訊いた」 三人はポカンとしている。 有紀が不承不承立ち上がり、貴延はし水野尾「なんで気持ちが変わったのかって」跖 結真実「で、男から電話がきて、男と女の帰 れっとガイドを見ている 升美「 ( それは訊いていない ) : : : よくある一 りが同じ日だから飛行場で待ち合わせて返 ことなの。あの年ごろって、五分で変わる すことに決まったんだ。 : : : 結末、いかカ〇 新江ノ島水族館・駐車場 そのコロコロに振り回されるのーーー」 なものかな」 水野尾「いい学校がいい人生か ? 少しは成 升美と有紀が①から降りてくる。 美穂「べタじゃん、べタ」 升美「倉田さん。 : : : 進路のこと、考え直し長したかと思ったけど、変わらない。大学 ンよりべッタベタだ 明菜「ウチのチャーハ てくれた ? 」 のころと同じだ」 ね」 有紀「私、もう決めたんです。 : : : 見学して升美「 ( カチンとくる ) 先輩もです」 聖子「ハグしてキスしてハッピーエンドで音 きます」 水野尾「ーー .. 一 楽ドーン 取りつく島もないのを、升美が追いかけ升美「いつも上から目線。キャンパスでもピ よ、つとする 結真実「 ( 上気する ) だよね ! だよね ! だ ザ 1 ラのバイトでもそうだった。みんなが よね ! だよね ! 」 升美「 ( 気配を感じて ) ・ バカに見えるんですよね」 ・ ( 振り返る ) 」 もた 鳩を蹴散らし、三人も理由もなく心がは ハスに凭れてスポーツ紙を開いていた水水野尾「見える。ピザーラカニマヨからカニ ずんできて、はしゃぐ。 野尾が笑いを堪えている を抜いてくれって注文に、お前、それはで 〇

3. シナリオ 2016年2月号

ふたりが雑踏を歩く。 お母さん ! ( 初めて、知る ) 水野尾「ーー .. 一 酔っ払いのダミ声や、飛び交う中国語が それ、本当ですか」 先輩「言ったよね。見下すみたいに、そのロ 升美はゆっくりと歩き、崩れるようにソ 有紀が、「フロアレディ急募』という風 フアに座りこむ。 水野尾「・ : 俗店の張り紙を見る。 深呼吸して平静を保とうとする。 有紀「・ : ・ ( いざとなると緊張する ) 」 升美「 : : : それで、受験やめるって。 ・ : 私、〇 チサンホテル上野の 410 号室 ( 夜 ) 貴延が、「サービスポーイ募集中」とい なんにも見ていませんでした」 勝利が恭平を締め上げる。 う看板を見る。 勝利「調べたんだよ、プログに返ってきたコ 貴延「 : : : ( 同じく ) 」 〇カフェ ( 夜 ) メント。健康のケンが建築の建。癒しは卑 いつの間にか身を寄せ合いながら、人ご 不貞腐れたような水野尾の前に、会社帰しいだし、環境のキョウは鏡って字だ。コ みに紛れていく。 りでスーツ姿の先輩が座る メント全部が同じ誤変換て、ありえないだ 先輩「久しぶり。 : うまくいってんのか、 ろぜんぶお前だ ! 」 〇チサンホテル上野・ 510 号室 ( 夜 ) 会社 ? 」 恭平「 ( 観念する ) ーーーじつは ! 」 プレステで騒ぐ同室の男子たちから離れ 水野尾は屈辱を堪えながら、先輩の前に勝利「来るわけないじゃん、オフ会に ! ぜ て、勝利がノートパソコンで『大並み家 履歴書を置く。 んぶお前なんだからー の一族』を見ている。 ごめんなさい ! 先輩「 ? 」 恭平「ごめんなさい ! 勝利「・ : ・ ( 黙々とスクロールさせている ) 」水野尾「 : : : どっか : ・ ・ : どうにか、なりませ勝利くん、肘、壊してから、死んだ人だった」 んかねー 勝利「 〇同・ロビー ( 夜 ) 先輩「・ : 恭平「でもプログにコメント来ると、ストラ 升美がスマホで電話している。 水野尾は覚悟を決めて、正面から先輩を イク取った顔になる。カッコいいんだ。ス 升美「ーーお母さん、泣かないでください 見る トライク取るとカッコよくて、オレ、ずつ 家出って決まったわけじゃないんです、迷水野尾「再就職。・ : : ・友だちと起業したって と見てたかった。勝利くんのカッコいいー よ子かもしれないし、お心当たりがあったら 言ったのは、ウソです」 あ 。今川達也 ? 3 組の ? : いえ、有 先輩は唖然としているが、やおら意地悪 つづきは言葉にならないーー・勝利が殴っ で せ紀さんといっしよなのは梨本くんです。ど な笑みをうかべる。 たからだ。 うして今川くん : 泣いてばかりじや先輩「お前、言ったよな。いつまで大みたい 恭平「 ( 頬を押さえて身をよじる ) 」 分かりません、なにかあったんですか ? に使われてるんだって」 勝利「 ( 同情はされたくない ) ・ ・ ( 荒々し

4. シナリオ 2016年2月号

ハスガイドさんの邪魔しちゃーーー」 生徒たちを急き立てている 達也「 ( いっしょに、息で ) ) 幸せであるよ 升美「みんな急いでね、遅れてるんだから。 唄「 ) 幸せであるように心で祈ってる。幸うに : : : ( 泣いているのを周囲に気づかれ せであるように心で祈ってる」 ないよう、身体を折り畳む ) ー ( 自分も乗り込んで、運転手に ) 四日間、 よろしくお願いします」 廣田「 ( その歌を聴いて ) ( 言葉を詰ま スポ 1 ツ新聞を読んでいた運転手、水野らせてしまう ) ー 〇②バスの中 あきひと ホルンスマホをカップホルダーに置いた 乾長太郎 ( 片 ) が、隣席の健一郎を不思 尾彰人 ( 四 ) は、升美を見て目を丸くする 結真実が、廣田を覗きこむ。 議そうに見ている 升美「 ( も気づいて ) デシリットル 結真実「これ、演るんだ。『』で」 長太郎「 : : : 転校生 ? 」 水野尾「 : : : 升美」 と訊こうとしたとき、 iPad で写真を撮っ 升美「 ( 生徒たちの目があるので、他人行儀廣田「 : : : デシリットル ? ていた健一郎が振り向く。 結真実「おらのバンド。卒業ライプでやった に ) よろしくお願いします」 らガン泣きだよね、三年連中。先生、知ら健一郎「 ( ロごもりながら ) : : : ども 水野尾「・ : : ・ ( あいまいに、うなずく ) ー ソウルも、日本語だらけだ」 ないっしよ、新しい曲 ? 」 〇 高速道路 廣田「 ( 呆れる ) これなあ、カバーだ。古い長太郎「 : : : ソウル ? 」 こ走る ③のバスが快調。 歌なんだよ。 ( ありありと思い出している ) 健一郎「ハワイと同じだ。外国って感じがし : これを聴きながら、泣いたことがあっ ないよね、まるで」 長太郎「ーー」 バスの中 〇③ 廣田は、一瞬、遠い目をする。 健一郎の学生服をよく見ると、東北原高 若作りのバスガイドが、大半寝ている生 校とは校章が違う。 廣田「 ( ふっと、笑う ) : : : むかし話だ」 徒たちに語りかける。 健一郎の手の冊子を見るとーー・『韓国修 結真実は、ヾ ノンド仲間の美穂 ( 片 ) 、明 バスガイド「では、三泊四日の鎌倉・東京修 学旅行のしおり』。 学旅行、超楽しんで参りましようね。鎌倉 菜 ( 片 ) 、聖子 ( 片 ) とお菓子交換で笑 いはしゃいで、聞いていない 長太郎「 ( 信じられない ) : : : お前 : : : お前」 までは約一時間のドライプです、ひと休み 健一郎「・ : しながら参りましよう。ここで、目的地、廣田「 : ・ : ・ ( 苦笑いする ) ー ハスの最後尾に、初めて聴いたこの 湘南のサウンドをーーー」 曲が胸に沁みて、車窓を見ながら泣いて〇インターチェンジ ハスガイドの声をさえぎって、ポップな トイレ休憩 いる今川達也行 ) がいる 曲が流れはじめる。 結真実が iPhone から音楽を出したのだ。唄「 ) 幸せであるように心で祈ってる。幸 ④のバスから駆け降りた教頭が、②に走 る 廣田「 ( やっと目を覚まして ) : : : おい、馬場。せであるように心で祈ってる」

5. シナリオ 2016年2月号

教頭「 ( ふっと、肩の力が抜ける ) : : : 壊した 美由紀「 : : : ああ。 〇スナック「 x 0 > ・店内 ( 早朝 ) かったのか。・ : ・ : 私が、壊れる前に」 店じまいの支度をしていた美由紀が、廣田「 ? 」 運転手「お怪我、ないですか ? ホント、す 美由紀「 「 ? 」と顔を上げる。 いませんでした ! ホント、ごめんなさ 廣田「 ーーー廣田が入って来た。 美由紀「動く」 廣田「 : : : ( 美由紀を見つめる ) 」 大西が笑い出す。 ・ ( そうだな、とうなずいて ) ・ 美由紀「 : : : ( 尋常ではないものを感じる ) 」廣田「 : ・ おめでとう」 運転手「 ( ポカンとする ) 」 廣田が口を開こうとしたとき、美由紀が、 広い海と昇る太陽に包まれて、大西は 歩き出そうとした廣田に、美由紀は、薄 カウンターで寝込んでいるサラリーマ すっかり自由だ。 く浮かんだ涙を隠すように笑って、告げ ふうの客を指す。 る。 あっけに取られている運転手に向き直る 美由紀「じつはね」 美由紀「さよなら。・ : ・ : 次は、遅刻しないで大西「ありがとう」 廣田「 : : : じつは ? 」 運転手「ーーー , 一 ね」 美由紀「結婚、するの」 大西「 ( 生まれ変わったような気分だ ) あり 廣田「・ : 廣田「 , か A 」、つ」 美由紀が店に消えて、廣田は路地に残さ 美由紀「ほたるを紹介したのは : : : 区切りを れる。 つけたかったから」 首都高 街が明るくなってくる。 廣田は混乱しているが、やっと、ロを開く。 四台のバスが走っていく。 : いっか マンを指して ) ・ 廣田「 ( サラリー 海沿いの道 ( 早朝 ) ら」 羽田空港・団体バス乗り場の①バスの中 教頭が放心している。 美由紀「二ヶ月前」 升美が生徒たちを降ろしている。 トラックがレンタカーの横っ腹に突っ込 廣田「・ : 最後にステップを降りようとしてーーー運 んでいて、運転手が平身低頭している 転席の水野尾を振り返る。 運転手「すいませんでした ! 自分、二日も 〇同・前 ( 早朝 ) 水野尾はスポーツ新聞を開き、顔を向け 寝てなくて。信号見てたつもりなんだけど 美由紀が廣田を送って出てくる。 よ、つとしない ・ : 青だったのは夢でした ! 」 ふたりは向き合うが、どちらも言葉が出 ダッシュポードの時計が七時を表示する。升美「 : : : ( 歩き出そうとすると ) 」 てこない。 水野尾が、紙面から顔を上げずに口を開 教頭はひん曲がったドアを開けて降り立 廣田「 : : : やつばり、 LOVE なのかな」 ち、夜明けのまぶしい海を見る と見るのは、最初の文字が欠けた看板だ。 〇 ・••MOVE 」 いま、分かった」 〇 〇 106 ーー

6. シナリオ 2016年2月号

幸せであるように してる。いろんなホテルを回って : : : 帰りタ子「じつはね。・ : ・ : 私のおばあちゃん、ユ太壱「 : : : がんばります」 は、夜中。 : : : 寝てても、杖の音で分かる」 タなの。沖縄の霊能者。・ : ・ : 変な力がある せいで、見たくないことや知りたくないこ〇 走る私鉄の車内 太壱「冷蔵庫からビールを出して、飲む。・ とを知って傷ついたって。苦しんで苦しん 上機嫌の水野尾と、不愉快な升美が電車 寝てる僕の顔を見ながら」 で生きてきたって。 : : : 同じ血が流れてる に揺られている タ子「見なからって : : : 目 ? だから太壱くんが見える。ーーー私、私が嫌 背後には、昨日の、進路に迷う生徒 < 、、 太壱「指で撫でる。指が目なんだ」 いだよ」 タ子の胸に、父子の情景が浮かぶ。 太壱「・ : 升美「なんで教頭は先輩の案に乗ったの ? 太壱「すごく美味しそうに、ビレを タ子「高校出たとき、おばあちゃんが年金貯水野尾「オレは事実を話しただけだ。彼らは それが、お父さんの楽しみなんだ」 めたお金、くれたの。 : : : 遠くへ行けって。進路に迷ってます。大学見学もいいけど、 タ子「 ( さえぎる ) やめて」 島から離れれば、いっか変な力も消えるつ 大学は通過点に過ぎません。リアルな社会 太壱「 て。孫、ひとりなのに、おばあちゃん、遠 を見学させましよう」 タ子「知らないよ、太壱くんのお父さんなん くへ行けって : ・。だから太壱くん : : : ご升美「 ( 不安だ ) て。私に関係ないじゃない」 めんね」 太壱「 : 太壱「 : ・ ( しやくり上げて ) ・ ( コクン〇ガラス張りのビルの前 タ子は、言い過ぎてしまったと思い、釈とうなすく ) 」 水野尾が生徒 < 、、 0 に説明する。 明する。 タ子「早く成仏しなね」 水野尾「このビルを持っ会社社長は歳、七 映画・演劇・演芸・シナリオ・戯曲の専門古書店 通 山 白 靖国通り ロ地下鉄神保町駅 矢ロ書店 矢ロ書店 地下鉄神保町駅ご利用の方は岩波ホール出口が便利です。 〒 101 ー 0051 東京都千代田区神田神保町一一ー五ー一 電話 03 ( 3261 ) 5708 03 ( 3261 ) 6350 Eßー寺 7 F マ yaguchi@mbk.nifty.com URL http://homepage3.nifty.com/yaguchi/ 地下鉄 九段下駅 ロ 至水道橋駅 ・ : リアル」 一三ロ 営業時間日・祭・平日問わす 10 時 ~ 18 時 30 分

7. シナリオ 2016年2月号

結真実「 ( 迷っているが ) ・ 困惑する。 実は窓の外を見る。 れて、読む ) 」 結真実「 ( いきなり、床をダン ! と踏み鳴ら そんな健一郎を、離れた長太郎が不 やがて結真実は、ホルンスマホを手に、 : べタでいこうよ」 憫そうに眺めている 自分のスマホで電話をする。 駐車場 結真実「 ( 相手が出て、小声で ) 東北原高校〇①バスの中 の馬場ですけど、碓氷さんお願いします。 多摩川を越えると、『東京都』の標識が 今日は競馬紙を読む水野尾が顔を上げる。 見えてくる。 ( 始が出て ) : : : あ、メールが来たんです。 見学を終えた升美が、進路に迷いがある なにか急ぎかと思って読んじゃったら、ホ 新宿ガイドから顔を上げた貴延が標識を らしい生徒 < 、、 0 を説得しながら戻っ てくる ルン先輩へ、クラリネットよりって書いて 見つめる。 あって : ・ へえ、プラバンなんだ。ホル 有紀も居眠りから醒めて、標識を見る。升美「専門学校にも意味はあるのよ。でも同 ンなんだ、碓氷さん。それでね : : : 」 じことは大学でも勉強できる。大学入って、 、」、つい、つ それから考えればいいじゃない ホルンスマホの画面のメールに、『じ・つ・有紀「 : : : 」 はび ( > ー > をの文字。 言い方、いやだけど、高い所から低い所へ一 は簡単よ。逆は難しいでしょ ? まず自分 結真実「告ってるんです、クラリネット。前 国会議事堂近く から好きでしたって。ほら、一年だし、恋 ハスガイドの旗について歩きながら、健が行けるトップに行かないと」 に恋するっていうか、私も経験あるけど、 一郎が勇気を出して、前を歩くハルミに 水野尾が、小馬鹿にしたように鼻で笑う。 こういうのってハッキリ言ってあげたほう 声をかける。 ・ ( 水野尾を横目で 升美「 ( 憮然として ) ・ : : : うん・ : へん : そ、つ健一郎「水族館に、電話しようか」 睨む ) 」 返信すればいいんですか ? : 分かりま した」 健一郎「落とし物。水槽の掃除のときとかに、〇東京タワーの前 最後は能面のような表情になって、電話拾って貰えば」 各クラスが交代で集合写真を撮っている。 を切る 太壱と並んでそれを見ていたタ子の顔が、 ハルミ「 : : : 取り返せないものって、あるん スーと曇る よ聖子「結真実、いっとく ? 」 だ」 あ 3 組の撮影ーー廣田が鞄から黒枠のつい と出されたポテチを見もせす、結真実は健一郎「 ? 」 で せ 機械的にスマホを操作する。 た写真を出して膝に置く。 ハルミ「ぜったい取り返せないものって、あ 幸 文面ーーー『マジうれしい。早く会いたい』。 るんだよ」 タ子「 ( 太壱に ) だれか亡くなったの ? 」 心を無にして送信ボタンを押して、結真 不機嫌にスタスタと行くので、健一郎は太壱「 : : : まあね」 ・ ( 誘惑に駆ら 〇

8. シナリオ 2016年2月号

幸せであるように 〇 水野尾「 : : : 決めた。・ : : ・再就職」 結真実「 : : : じつは」 チを入れる。 升美「 ( 耳を疑う ) 」 すべてを告白しようとして、ハッとする。浜田山「ご搭乗のみなさまにコックピットか 水野尾「ちんけな金融会社だ。 : : : 青森くん いつの間にか、クラリネット ( ) が立っ らご案内します。羽田空港混雑のため、当 だりの」 ている。 機、しばらく離陸を待っことになりそうで 升美は驚く。 始が結真実に頭を下げ、クラリネットのす」 升美「 : : : 先輩、実家九州だし大学東京だし、 前に行き、ふたりはなにか小声を交わし 浜田山が、副操縦士を窺う。 青森に来る理由なんか」 ながら歩き去っていく。 副操縦士「 : ・ ・ ( どうぞ、と目で促す ) 」 , ーーー 6 さか ? ・と思、つ 結真実「 : : : ( 呼び止めたいが ) 」 浜田山が口を開く。 かん わたくしごと 水野尾が初めて顔を上げるが、素直にな 明太子を手に取り残される。 浜田山「この間に、私事のご報告とお礼を れる性格ではない。 いつまでも、動けないでいる。 述べたいと思います。 : この青森行き いきなり、バスの扉を閉める。 結真実「 ) 夢のジャパネットたかた ? 」 1207 便が、私、機長浜田山のラストフ 升美「 ( びつくりして扉を叩き ) 笑お、つとした頬に、涙がポロリとこばれ ライトとなります。本日、定年退職を迎え る。 を重ねようとするが ) ー ます 疑惑が確信に変わり、ふいに涙が溢れ、 歓びで全身が震え、どうしていいか分か〇スポット ( 夕方 ) 機内 ( 夕方 ) らなくなり、自分でも思いもかけない言 ブッシュバックされた 7 37 のエンジ 浜田山の妻と思われる恵 ( ) だけが熱 葉が溢れる。 ンが轟音とともに回転する。牽引車が離 心に耳を傾けているが、修学旅行の一団 升美「 : : : 生きててよかった」 れて、 B737 は地上走行をはじめる。 155 名は、騒がしく、まったく聞いて 扉に、おでこを預ける。 しオし 操縦室 ( 夕方 ) 浜田山の声「思い起こせば三十七年前、新生、 同・ターミナル 操縦しているのは、副操縦士と、浜田東亜国内航空に入社、パイロットとしての 山だ。 ホルンスマホを持った結真実が立ってい 第一歩を踏み出しました : : : ( つづく ) 」 る。 7 3 7 は前を行く 7 7 7 と同時にプ ーーー窓外を見ながら上機嫌にハミングし 人ごみから現れたのは、始だ。 レーキをかけて停まる。 ている升美は、隣席のハルミが、やはり 始は照れ臭そうに、福岡土産の明太子を副操縦士「ラッシュですね。 : : : 相当、待 ハミングしながら、大水槽に捨てたリン 手渡す。 たされそうです」 グを玩んでいるのに気づき、顔を見合わ 結真実は震える手でスマホを渡す。 浜田山はヘッドセットのマイクのスイツ せる。 ・ ( 質問 〇 〇 107 ー

9. シナリオ 2016年2月号

幸せであるように クラリ、不ット 始を慕うプラスパンド部の後輩女子。 浜田山剛史 定年退職する B737 の機長。 羽田空港の管制官羽田の主。 あきひと 水野尾彰人 っ 0 観光バスの運転手。升美の大学時代の先輩。 普天間タ子 沖縄のユタ ( 霊能者 ) を祖母に持つ新人添乗員。 角田添乗員。 猪狩美由紀 4 3 スナック『 x 0 』ママ。廣田の高校の同級生。 ほたる スナック『 x O @』の巨乳ヘルプ。 太壱の父親 全盲のマッサージ師。 浜田山恵 浜田山機長の妻。 副操縦士 若い 4 組のクラッカー女子 < 3 組の若作りバスガイド スカートが短い女子 3 組のおじさん運転手 3 組引班の班長 ( 男子 ) 歳の廣田孝太郎 歳の猪狩美由紀 進路に悩む生徒 ( 男子 ) ( 男子 ) ( 女子 ) 301 号室の女子 自主研修の達也の班の班長 水野尾のサラリーマン時代の先輩 『 x 0 '.@』のサラリーマンふうの客 トラックの運転手 副操縦士 その他 いがり 別れはつらくてそれでも愛しあって 涙がかれたら疲れて眠ろう 君の涙を涙をお皿に集めて 全部飲みほしたらすべて許されるかも 幸せであるように心で祈ってる 幸せであるように心で祈ってる 別れはつらくてでもみんな愛し合うのに 涙がなんでこぼれ落ちるのかな声を奮わせて ママも死んでそれでも僕は君とキスを交わしている 子供も生まれてくれば懐かしい友のことなど 忘れるかもしれないよ ああこの想い君に伝えたくて 涙ながし夜に震えてるフル・エ・テ・ル みんなはみんなは涙をながすのに なぜ愛し合ってるのかな ママも死んで子供も生まれて 君と別れ君とめぐりあって キスしてキスして抱き合ってささやいて 愛をわかちあってそれだけでいいのに 寂しいときそばにいてそばにいてそばにいて ただそれだけでいいのに寂しいときに そばにいて欲しいだけなのにだけなのに 幸せであるように心で祈ってる 幸せであるように心で祈ってる 8

10. シナリオ 2016年2月号

はせでら きませんて言い張ったろう。カニを入れな : ここ、二回目」 長谷寺・駐車場 ( 夕方 ) きゃいい」 健一郎「 ? 」 ③のバスに帰ってくる結真実たちを廣田 升美「カニが嫌いなのにカニマヨを頼む方が ハルミ「停学くらってダブったから、修学旅 が迎えている。 間違ってますー 行、一一回目」 廣田「班長、人数確認してね。 ( スカートが 水野尾「カニが入ってないカニマヨを食べた健一郎「 ! 」 、ノッ見えてるな」 短い女子に ) おい、 ( い気分もある。メニューを自分で作っちゃ ダメか ? 」 ( 0 、、、「な〈停学か分か , ( 息がかか女子「 ( 平 1 と ) 見なくださ」 廣田「ーー ほど近づいて ) 援助交際」 升美「だから運転手なんですか ? 」 屈伸運動をしていたおじさん運転手が廣 健一郎は真っ赤になり、鼓動が激しくな る。 田に笑いかける。 水野尾「・ : ・ ( その質問には、答えない ) 」 ハルミ「ウソ。タバコ ・ : 興奮してる」 運転手「いまどきですねえ」 〇 同・相模湾大水槽 健一郎「 : : : してません」 廣田「はあ。 ( 相手が赤の他人の気安さで ) ハルミが左手の薬指からシルバーのリン ハルミ「してる」 ・ : 以前は、生徒の気持ちが見えてたんで グを外す。 すー 健一郎「 : : : してないです」 ハルミ「 : : : さよなら」 ハルミ「 ( 右手で握る仕草をして ) たしかめ運転手「 : : : 」 無表情のまま、大水槽にポチャリと落と よ、つか」 廣田「三十過ぎたころからかなあ : : : 分か一 す。 らなくなった。・ : ・ : 顔が見えなくなった。 健一郎「 : : : それは ( 困ります ) 」 健一郎「 ( マイワシの群れをばんやり見てい ハルミ「ーーあたし、透明人間なんだ。いっ ・ : みんな、どっかに行っちゃった」 るが ) ・ ・ ( えッと、気がつく ) 」 こ年上だから、だれも話しかけてくれない。 引班の班長 ( 男子 ) がバスの窓から首を 出す。 : ちっちゃいことでヘコんじやダメだ 沈んでくるリングと、階段上からそれを 見ているハルミの姿。 班長「先生、今川だけまだっす」 健一郎「 ( 落とし物だと勘違いし、係員に ) 健一郎「・ : 廣田「 : : : 達也 ? 」 ゲンナリし、運転手の苦笑に送られて歩 ・ : すいません。落とし物です」 ハルミか半ハり、健一郎は、とにかノ励ま よ ハルミかその前に立っ きだす。 されたことは感じている。 る あ ハル、、、「いいんた、、も、つ ・ : あれは」 ハルミの背中にペコリと頭を下げる で せ健一郎「・ : そうして、見るーー水底に沈んだ、ハル〇同・山門 ( 夕方 ) ハルミは歩き出そ、つとするが、思い出し ミのリングの銀色の光 廣田が歩いてきて : : : ふと立ち止まる たように健一郎を見る 心の中で、むかしの、 FLYING KIDS 〇 冖 /