頷く - みる会図書館


検索対象: シナリオ 2016年5月号
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1. シナリオ 2016年5月号

道宏「・ : 1 いわき駅・切符売場 切符販売機の前に、道宏と風子。 風子「上野まででいし 頷く道宏。 ヒ 刈風子「六千三百九十円」 ュ 風子、切符販売機の投入口を指差し、 の風子「ここに入れて」 道宏、札を入れる。 風子「ここ押して」 女、卒業アルバムの幸子と瓜二つ。 道宏、ボタンを押すと、切符が出てくる。 風子「あ : : : 」 道宏、吸い寄せられるように女に近づい 風子「変なの」 道宏、よくわからないまま、擦る ていく 道宏「 ? 風子「指、入れて」 道宏、女の前に立っ 風子「ほんとに乗ったことなかったんだね」 道宏、指を入れ、動かす。 女・片桐葵 ) 。 道宏「 : 風子「痛い 二人、改札へと歩き、改札前で立ち止まる。葵「ドンテンさん ? 道宏、始めはゆっくりと動かし、風子が 感じ始めると、徐々に早く動かしていく。風子「それじゃあ」 道宏、頷く。 葵「行こっか」 風子「ああ ! 」 葵、歩き出す。 風子「初恋の人に悪いことしちゃったかな」 風子、空を見ながら、イク。 訳もわからず、ついていく道宏。 道宏、首を振る 風子の閉じた目から涙があふれ、頬を伝 風子「会えるといいねー 路地 道宏、風子の手を取り、手のひらに人差 歩く葵。 し指で文字を書く。 道宏、愛液で濡れた指を鼻先に近づけ、 少し後ろを歩く道宏。 ニオイを嗅ぐ 風子「 ( 読む ) あ・り・が・と・う : : : 」 葵、ラプホテルに入って行く。 道宏、改札に入ろうとするが、切符の入 道宏、ふと父親の写真を見る。 道宏、立ち止まり、ラプホテルを見上げる。 れ方がわからない。 写真の中の父親、微笑んでいる。 風子が入れてやる 道宏、切符を取り、風子に頭を下げると ラプホテル・一室 葵、バッグをソフアに置くと、 ホームへと歩いて行く 葵「先にお金いいですか ? 」 風子、見送って 道宏「・ : 葵「お金」 上野駅・広小路ロ 道宏、財布から千円出すと、渡す。 雑踏の中、年賀状を手にした道宏が迷い 葵「 : : : ふざけてんの」 子のように辺りを見回している ふと、駅の壁を背に、携帯を見ている女道宏「 : : : 」 を見る。 葵「英世じゃねえよ、諭吉だろ」 道宏、財布から一万円札を取り出す。 道宏「卩 141

2. シナリオ 2016年5月号

を持ち、 葵「 ( 読み ) 病院も、僕がいたほうがいいー 幸子「一緒に行きますか」 幸子「民間の病院も経営が苦しいから。満床葵「 ( 道宏に ) すぐ戻ってくるから、待っ 道宏、乗り込む。 てて」 にしておかないと、もたないのよ」 道宏、頷く。 葵「だからって、病気が治った人を退院さ 同・前 葵、出て行く。 せないなんて、ひどいよ」 幸子、道宏、葵がマンションから出てくる。 幸子、卒業アルバムの自分の写真を見て、 葵、先を歩く幸子を窺いながら、そっと幸子「うん : : : 」 葵「僕だったら、ほんとに気が変になって、幸子「もしかして、私とやってる ? 」 道宏に万札を握らせて、 道宏、頷く。 死んじゃうな」 葵「返すから、婆ちゃんには内緒にして」 幸子「だよね : : : 私のあだ名、憶えてるで と拝む。 道宏「 ? 」 道宏、頷く 幸子、卒業アルバムを開き、道宏の写真しょ 道宏、頷く をじっと見て、 幸子「なんであんなことしてたのかなあ。な 道宏と葵、幸子に追いつく。 幸子「 : : : ごめん。やつばり思い出せないー んか、やけつばちだったんだろうね」 葵「婆ちゃん、残酷。せつかく会いに来て くれたのに」 スナック『待つわ』・店内 開店前の店内。 幸子「・・・・ : ど、つして私に ? 幸子「ずっと地元が嫌いでさ。人も土地もせ一 ーんぶ。原発があるとか、ないとかじゃな 道宏と幸子がカウンタ 1 席に座り、葵が葵「好きだったからに決まってんじゃん。 いんだよね。きっと、私みたいなのは、ど カウンター内でグラスとグラスを拭くク ね、オジサン」 こで生まれたって一緒。変わんないんだよ」 ロスを手にしている 道宏、メモ帳に書く 幸子と葵、驚いた顔で道宏を見ている。葵「 ( 読み ) みんな、立・石・さんと・やっ道宏「 : : : 」 幸子「卒業したら、上京しようと思ってたの 幸子「それ、ほんとなの・ : に、お母さん、病気になっちゃって。弟も 道宏、頷く。 幸子、慌てて、メモを破る。 いたし、面倒見なくちゃいけなくなって」 葵「信じらんない。だって、まともだった葵「なにすんだよ」 道宏、頷く。 んでしよ。どうして医者は出してくれな幸子「葵、あれ、氷、買ってきて」 幸子「この歳で、上京するとは思わなかった」 かったの」 葵「あるよ、氷」 道宏、メモ帳に書く。 幸子「いいから」 と顎をしやくる。 幸子「原発が爆発しなかったら、ずーっと、 道宏、書く。 葵、ぶつぶっと文句を言いながら、財布あそこに住んでたんだろうな。死ぬまで」 幸子「 ( 振り返り、怪訝な表情で ) ? 」 葵「 ( 読み ) 親が引き取ってくれなかった」 144 ー

3. シナリオ 2016年5月号

夢の女ュメノヒト 幸子「すっと私とやってたと思ってたの ? 」 道宏、頷く。 道宏、頷く。 道宏、五百円札を差し出し、 幸子「永野君 : : : ( 笑い ) 思い出した。あの 幸子「 : ・ : ・ごめん。思い出、壊しちゃったね」 道宏「これだけ : : : 」 時も手でしてあげたんだ」 幸子「それなら手だよ」 道宏、首を振る 幸子、ゆっくりと擦り始める 幸子「そうだよ。お漏らしして、私のセーラー道宏「 : : : 」 : でも、思い出って、 幸子「 ( 擦りながら ) ・ 幸子「やならいいけど」 月にかけたじゃない 変えられるのかも」 道宏「 ( 小さく頷く ) 道宏「・ 幸子、五百円札を受け取ると、ペニスを道宏「 ? 」 幸子「変えてみよっか」 擦り始める 双葉の浜辺 ( 1972 年 ) ともう一方の手で道宏の瞼を優しく閉じ 幸子、擦る、擦る 幸子 ( 片 ) 、セーラー服に付いた精液を る ートの形 幸子「 ( ペニスを見て ) この痣、 拭いながら、 幸子「 ( ゆっくりと擦りながら ) 永野君は高 してる。フフ、変なの」 幸子「一回出したら終わりだからね」 校を卒業して、役場に就職するの」 幸子の擦る手が早くなっていく。 道宏「え」 道宏、「 ! 」となり、射精する 幸子「そういう決まりだから」 幸子「ある日、住民票を取りに来た私と再会一 道宏、落ち込み、項垂れる する。「久し振り』、『元気だった』 : : : 永 元のラプホテル 幸子「もう一回したいなら、あと千円」 野君が私をデートに誘う。映画を観たり、 道宏、財布の中を覗くが、五百円札しか道宏「 : : : 」 ス判プ 消 簡イ 安 ! 場た だ末 のく を ッく粉 8 ) 品ま注し 専ロ 全きの入 だら記 、、 IJ か」ル れい 時すてネ備 消シ 文告せ 境ヒ 生と“、 注報さ 微人ー 臭いのお悩みを解決します ! 強力安心 消臭安全 納豆菌がヘットの臭い、 オシッコ臭を分解・消臭 ! 化学成分を使っていないので、 人とペットに安全な消臭剤です。 楽天 消臭剤関連部門 通算 148 週 ランキング バイオミックス Q 検索 シナリオ読者特典 ! ! ・お問い合わせ B0120 ー 4321 ー 80 ( 平日 8 : 00 ~ 16 : 00 ) 147 ー

4. シナリオ 2016年5月号

永吉「ん ? 洋「 ? 浩二「お父さんがちょっと入っとるけえ」 望月「それではべールをあげてください」 ・おう」 永吉「・ 一番いい所、誰も治に気付かない。 永吉、受け取る。 洋が、治をつつついて、遊ぶ。 永吉と由佳、向き合う。 高速船 永吉がべールをゆっくりとあげる。 高速船に乗り込んだ永吉と由佳。 由佳の泣きべそをかいたような表情。 見送る春子と浩一一。 望月「誓いのキスです」 永吉「になって帰ってくるから」 カメラを持った野次馬が、一斉に身を乗 春子「働け ! 」 り出す。 鴈美しい海、キラキラしている やがて、船が出る。 洋、治をつつついている 手を振る春子と浩一一が、どんどん小さく 治が、もがいている フェリー乗場・待合室 なっていく 永吉と由佳、べンチに座っている。 永吉が由佳の唇に、触れようとしたその 永吉と由佳、手を振っている 足元に、帰りの荷物。そこにトランペッ 時 ! 島が遠ざかっていく トの箱もある 治の断末魔が聴こえる 永吉、由佳、後部べンチに座る。 そこへ、店の軽バンがやってくる ( デス声 ) 」 治「あー 風に吹かれている 中から、前かけをした春子と浩二が、慌 永吉「うお ! 」 てて降りてくる 由佳、疲れてしまったのか、ぐったりと、 治、死ぬ 永吉にもたれかかる 二人の元へ。 洋が、びつくりして固まっている 永吉、由佳の腹をさすってみる 春子「ああ、間におうたわー」 参列者全員が、治を見た。 そっと、耳を当ててみる 春子、めんっゅを数本抱えている 永吉、じっとその音を聴いている 春子「由佳ちゃん、これ、まだ入るじやろ」 帰同・廊下 遠くから、ものすごい勢いで、竹原と千由佳「あ、いや・・」 郷 故 葉たちが、治を乗せたストレッチャーを 春子、由佳のバッグに無理やり、めんっ戸鼻島俯瞰 ン カ 瀬戸内海をフェリーがゆく。 ゅを詰め込もうとする ヒ 運ぶ。 モ 大きなテロップ「完」。 浩二が、永吉に小さな箱を渡す。 タキシードの永吉とウェディングドレス 浩二「兄ちゃん、これ」 の由佳、春子、浩二が追いかける。 カープに差し掛かり、もつれる その拍子に、総崩れ 一同「あーあーあーあ ! 」 勢いのついた、ストレッチャーの治、一 人そのまま、廊下を滑っていく。 一同「あー 遠くの壁に激突した治、ちょっと浮く。 125 ー

5. シナリオ 2016年5月号

無伴奏 渉も「おめでとう」と小さくグラスを掲 エマを見る、響子と渉 エマ「 : : : 響子 ? 」 げる。 エマ「もう一二ヶ月のおわり」 響子「こんにちは」 エマ「ありがとう」 渉、瓶ビールとグラスを手に小窓の前に エマ、駆け寄ってくる。 エマ、目元を指でぬぐう 座る。 エマ「とってもよく似合ってる」 エマ「二人とも、おめでとう、って言ってよ」エマ「 ( 笑う ) なんだかすぐ涙が出ちゃうの」 響子「ありがとう。誰もいない ? 」 渉をみる響子。 エマ「 ( 不機嫌 ) 祐之介さんたら、一人で東響子「産むの ? 」 小窓に肘をつき、窓の外を見ている渉。 エマ「もちろん」 京に行ったらしいの」 響子「祐之介さんは ? 」 メモをヒラヒラさせる、エマ エマ「堕ろせ、って。でもいやだ、って」 連れ込み旅館・中 エマ「煙草ある ? 」 ケーキに灯るロ 1 ソクを吹き消す響子。 笑うエマ 響子、エムエフとマッチ箱を渡す。 渉「誕生日、おめでとう」 響子「でも、祐之介さんは : : : 」 「サンキューと煙草を吸うエマ 響子、ちらりと渉を見るが逆光でよく見響子「好きよ、渉さん」 響子も一本くわえて火をつける えない。 渉「僕もさ」 エマ「ガムを噛んだまま吸うとね、身体にも 軽く啄ばむようなキスをする渉。 エマ「 ( 笑う ) ゃあだ。あなたが心配するよ いいような気がする」 うなことなんて、なんにもないのよ。緒 響子、無理やり舌を入れ、深いキスをする。一 響子「いまさらムダじゃない ? にやっていくんだから」 エマ「わかってるけどさ。せめてもの親心よ」 響子「結婚するの ? 」 千葉家・居間 響子「・ : 「三島由紀夫、割腹自殺』の新聞記事と 渉が手に袋をもって、飛び石を渡ってくエマ「ううん、まだ。でもね、赤ちゃんが産 三島の小説。 る。 まれるのよ。お腹が目立つようになったら、 炬燵にみかん。まだらの光に揺れる影。 家を出るわ。そして祐之介さんと二人で暮 振り向く、響子とエマ デッサンノートに荒々しく綴られていく らすの」 渉、男装した響子をみて立ち止まる。 文字ーー。 エマ、ミニスカートのまだ平らな腹部を なでる 『・ : ・ : 生きるとい、つことはこ、つい、つこと 茶室・中 なんだ。時にはこんなふうにして、愛す 響子「協力するわ」 レコードに針を落とす渉。 るものを奪わなければならない。たとえ 渉、響子を見る コーラをコップに注ぎ、響子に渡すエマ、 それが罪だとしても』 ビンのままゴクゴク飲む 響子「おめでとう、エマ」 響子の声「一九七〇年十一月二五日、十九歳 コップを掲げる響子。 エマ「あたし、妊娠してるの」 8 8

6. シナリオ 2016年5月号

ち。 ノ 1 トの文字ーーー。 隣には風間の姿。と、機動隊の一群がデ モ隊を襲撃する。 レイコが「ごきげんよう」とジュースと 「私は感情の血を流すように生まれつい カッサンドを手にやってくる。 ている。決して肉体の血は流さないと 一緒に食べ始める三人 響子の背中を押す風間。 レイコ「ねえ。私、大学生から、ラブレター 無我夢中で逃げようとする響子。 響子の声「ジュラルミンの楯で区切られた青 貰ったの」 そこかしこに血が飛び、呻き声がする い切れつばしのような空は、ジュリーやレ ジュリー 振り返ると、機動隊に頭を殴られ倒れる イコと校庭で見た青い空じゃなかった」 響子「レイコ、恋より革命だよ」 風間 『カノン』が流れる レイコ「あら。ポリス・ヴィアンが言ってる 口から血を流して白目をむいている。 響子、顔を上げる。「あ」と赤くなる。 でしよ。人生でだいじなのはどんなことに響子「 ! 」 前の席から振りむき微笑んでいる渉。そ も先験的な判断を下すことで、それはきれ 誰かに足をとられ地面に倒れこむ響子。 の隣には祐之介。 いな男の子との恋愛だ、って」 響子の上に折り重なって倒れる人々。 渉「一人 ? 」 響子、鞄からデッサンノートを取り出す 路上に転がるヘルメット。 響子「 ( 頷く ) 」 とペ 1 ジを開き、朗読する。 ジュラルミンの楯の向こう、区切られた渉「誰かと待ち合わせ ? 」 青い空。 響子「だんだら縞のながい影を曳き、みわた 響子、首を横に振る。 すかぎり頭をそろへて、拝礼している奴ら 声にならない叫び声をあげる響子、逃げ渉「そっちに移っていい ? る。 の群集のなかで、侮蔑しきったそぶりで、 頷く響子、ノートを鞄にしまう。 ただひとり、反対をむいてすましているや 移動してくる渉と祐之介、並んで座ると、 つ。おいら。おっとせいのきらひなおっと じっと響子を眺める。 せい。だが、やつばりおっとせいはおっ 響子、目をそらし煙草を吸う むかうむきになってる とせいでただ、ク 渉「きみもデモに参加してきたの ? 」 おっとせい乙 響子「 んん、まあ」 女生徒たちが体操している 響子、煙を吐き出す。煙草の吸い口に血 かついている デモ隊の行進 渉「どうしたの。怪我してるんじゃないか」 ヘルメットをかぶり、行進していくレイ 響子、くちびるを手で押さえる。 ンコート姿の響子。 祐之介「 ( 冷笑 ) 名誉の負傷つてやっか」 風間「 ( 響子に ) 逃げろ ! 」 幻ク無伴奏を前 レインコートの襟元を手で押さえて、地 下へ逃げ込む響子。 同・中 やや混んでいる店内。ボックス席の響子、 エムエフに震える手で火をつける。 鞄からデッサンノートを取り出し万年筆 で綴る響子。 4 -0

7. シナリオ 2016年5月号

病院・病室 ( タ ) 一一人、煙草を吸いながら、中学校を眺め永吉「おい、どした ? 」 ている 治、咳が止まらない。悶え苦しむように、 放心状態で座っている治。 その場に倒れ込む 隣で野呂、サメの軟骨を食べている 治「お前がおった頃、吹奏楽部、何人じゃっ 慌てた永吉、煙草をもみ消し、 治「のお、野呂よ」 た ? 」 永吉「おい、どした ! 何があった ! 」 野呂「はい」 永吉「あー、人くらい ? 」 治、苦しそうに、悶えている 治「おまえ、吹奏楽、好きか ? 」 治「ほうか」 野呂「・ 永吉「何があった」 永吉「まだ矢沢やりよるんじゃの」 永吉、助けを求 0 、治を置き去り」し治「あ〈ま」好きじ ~ な〔じ ~ 」 治「まあ、ワシにや、楽しみが、これくら 走っていく 野呂、コクリと頷く いしかねーけえーのお 治「じゃあ、なんでやっとるんや」 永吉「俺、中学ん時、吹奏楽部って、みんな 野呂「お父さんが、やれって言うけえ」 矢沢やりよるんかと思っとった」 車内 ( タ ) 何食わぬ顔で運転している永吉。 治「・・・ほうか、それは困っちゃうのお」 治「おまえさー、もう、東京帰れや」 後部座席の春子、怒りがこみ上げ、運転 いつもと違う治を、野呂が不思議そうに 永吉「あ ? 」 見ている している永吉の頭を、狂ったようにハタ 治「いちいち、付き合、つことないんじゃ きだす。 治「 : ・野呂よ」 けえーのお」 春子「あんた、ホンマのバカなん ! 」 野呂「はい 永吉「・ 浩二が、春子を止める 治「おまえ、これから、ちよくちよく遊び 治「ちゃんと働け」 ・わかっとるよ」 浩二「危ないって ! 」 永吉「・ 野呂、コクリと頷いた 治「由佳さんだって、仕事あんじやろー春子「二年も禁煙しとったんよ ! 」 由佳が、思わす笑う。 が ? 」 春子「何がおかしい ! 」 永吉「ああ、あいっ仕事辞めた」 田村家・永吉の部屋 ( 夜 ) 帰治「ほうか、何しよったんや ? 」 由佳「あ、すいません」 永吉、何やら押し入れを漁っている 永吉、何も言えず、運転している 中から、埃を被った箱を取り出してくる。 永吉「なんか、ネイルの 故 マジックで子供の文字『田村永吉』。 開けると、中に古いトランペット。 ヒ永吉「爪のや ? 校庭 ( タ ) モ 全速力で走ってくる野呂が見える 永吉、取りだしてみる。だいぶ錆びつい 治、急にむせだす。咳き込む。 ている 永吉、どうしたものか

8. シナリオ 2016年5月号

モヒカン故郷に帰る 治「やれ、行くか」 治が、とばとばと一人で歩いてくる。 引き返す一一人。 やがて、後ろから、永吉が杖を持って追 治、ふと足を止める いかけてくる 眼下に、島の風景が拡がっている 永吉「おい、どこ行く ! どこ行く ! 」 治、じっと見下ろしている 治、舌打ちを一つ。 ・ピザ食いたいのお」 永吉を嫌がりながら、歩いていってしま治「・ 先をゆく永吉、振り返る 永吉、追いかける 一定の距離を保ち、トボトボと歩いてい 8 田村商店・店内 酒買いがてら遊びにきた、登、金ャン、 く二人。 重ちゃん。 春子が酒を新聞紙でくるんでいる 長い階段 ( 朝 ) 春子「あー、食べた食べた、還暦のお祝いで、 先の長い階段を見据える治と永吉。 赤いちゃんちゃんこ着て」 治・永吉「・ 聞き込みをしている永吉と由佳。 杖を差し出す永吉。 登「あれ、なんでピザ食ったんや ? 」 治、受け取らず、階段を登っていく。 金ャン「赤いけえじやろ ? 」 永吉、杖をついて登っていく。 重ちゃん「ピザ、赤いかいのお ? 」 春子「冗談半分じやろお」 墓 ( 朝 ) 切り崩した山の斜面にある『田村家』の永吉「なんか、ウインナーが入っとったとは 言っとるんよ」 墓の前。 治が、杖によりかかり、汗だくで座り込春子「え、何、そのピザじゃないと、ダメな んでいる んね ? 」 汗だくの永吉、墓石に水をかけ、線香の永吉「そん時のが、食いたいんと」 春子「覚えてるわけないじゃないねえ」 灯を燃す。 永吉「それ、どこで買ったん ? 春子「安川の方じゃったと思うけど」 手を合わせる二人。 6 由佳が、早速、携帯で検索。 由佳「安川って、ピザ屋 3 つもあるよ」 困ったと笑う登たち。 永吉「・ 由佳「どうする ? 」 永吉「・ : 全部頼むか」 一同「え」 永吉「どれか当たりじやろ」 携帯をスピーカーにして電話している永 吉。見守る一同。 ・、っちはそ ピザ屋の声「島はちょっとー ういうの、やっとらんのんですよー」 永吉「親父が癌なんですよー」 ・あの、冷めちゃい ピザ屋の声「えーと・ ますしー」 永吉「親父が癌なんですよー」 ピザ屋の声「・ 永吉「親父が癌なんですよー」 高速船・客室 甲板に、ピザの原付が乗っている 三人のピザ屋、お互いを意識しあって 座っている 海沿いの道 ピザの原付が、三台走ってくる。 1 17 ー

9. シナリオ 2016年5月号

無伴奏 歩いてくる響子、立ち止まる。 んにちは」が流れてくる 足にギブスしている浪人生がアジビラを 仙台第三女子高等学校・正門前 ( 朝 ) 炬燵に入って、お粥を食べている響子。引 配っている ク卒業式ツの立て看板 愛子が果物ナイフで林檎を剥いている。 路上のアジビラを一瞥する響子、予備校 「卒業式粉砕』のビラを撒く、響子とジュ 愛子「堂本さんていう方から何度も電話が リーとレイコ に入っていく。 あったわよ」 響子の声「私はどんどん時代から孤立してい 騒然としている正門前。 響子「 : : : そ、つ」 説得しに集まる教師達、遠巻きに応援すく。それが何だというのだろう・ : ・ : 」 愛子「熱を出して寝ている、って言ったら、 る生徒達、眉をひそめる父兄達。 とっても心配してたわ。ポーイフレンドで ビラを撒き終わると互いの腕を組んで学 連れ込み旅館・前 しょ ? 」 渉が手を振っている。 校を後にする三人 黙々と粥を食べる、響子。 駆け寄る響子、渉の手を握る 戻ってきなさい、と声が聞こえる 愛子「お父さんには黙っててあげるから、二 一一人の前をデモ隊が行く。 くすくす笑いながら、やがてはスキップ 度と親子喧嘩したりしないでね」 のように走り去ってゆく三人 響子「もうしないわ。卒業したら四月から予 連れ込み旅館・部屋 備校でみっちり受験勉強するわ」 布団の上に横たわる響子に軽いキスをす一 2 ク無伴奏 : 中 愛子「熱を出したのも、悪くなかったようね。 6 る渉。 ポックス席に響子、レイコ、ジュリー はい、召しあがれ」 渉「じゃあ、好きな作家は ? リー「じゃあね」 ウサギの形に切られた林檎を食べる響子。ジュ 響子「ポリス・ヴィアン、カミュ、倉橋由美子」 、つん、とうなすく響子とレイコ。 店から出てゆく 渉「好きな詩人」 席を立っジュリー、 公衆電話ポックス 響子「金子光晴、ポードレール、それにエリュ レイコも席を立っ 電話している渉 アールも好き」 渉「二、三日したらきっと会おう、約東だレイコ「ごきげんよう」 響子「 ( 微笑 ) レイコのその台詞、好きだった」渉「ミュージシャン よ : : : 響子、愛してるよ」 レイコ、微笑むと軽い足取りで去ってゆ響子「ビージーズ」 渉「マルクスの資本論は ? 」 千葉家・廊下 一人残る響子、壁に頭をもたせかける。響子「本当はよくわからないの。高橋和巳も 電話に出ている響子。 吉本隆明も : ・・ : 」 涙ぐみながらうなすく響子、受話器を置 何度もキスをする渉。笑う響子。 予備校・前 マ /

10. シナリオ 2016年5月号

三人、無言で食べる。 田之倉「まだ結婚してへんわ」 堀内「先、帰りますわ」 店内のテレビでニュースが流れている。堀内「じゃあ、彼女は ? 」 田之倉「おう、また明日」 アナウンサー「 : : : 全校生徒の約 9 割が死田之倉「こっち来る前に別れてもた」 堀内「気いつけんと、犯罪者ばっかり見とっ 亡・行方不明となった〇〇小学校の保護者堀内「何でですか ? 」 たら、同じような人間になってまいますよ」 が県と市を相手取り損害賠償を求める裁判田之倉「向うが結婚したがって」 堀内、帰っていく。 堀内「結婚しない主義ですか ? 田之倉、グラスを呷って空ける。 田之倉「 : ・ 氷の音に反応するように聖子が顔を上げ 〇ダイニングバー ( 夜 ) 堀内「 : : : 僕ねえ、震災で親、亡くしてから、 て田之倉を見る 客はまばらである ずっと施設暮らしなんですわ。そやから早聖子「ハイボールですか ? 田之倉が一人力ウンターで飲んでいる。 よ結婚して、ちゃんとした家庭作りたいん 田之倉、軽く頷く。 聖子が小皿に盛ったナツツを置くとカウ ですよね」 聖子、ハイボールを作って、田之倉の前 ンターの隅へ行き、グラスを磨き始める 田之倉、堀内を見る。 堀内がやってくる 堀内「ホンマはね、僕、自衛隊に入りたかっ ガャガヤと騒がしい声。 堀内「おった、おった」 たんですよ。地震の時、仮設のお風呂とか、 ドアが開いて二十代前半のヤンキー風の % 田之倉「何や。朱里ちゃんとデートちゃうん チャチャっと組み立てたりして、カッコえ 男女数人が入ってくる えなあって : : : 」 男 1 「コロナ三つと、ジーマ二つ 5 」 堀内「ボランティアの手伝いやって言いまし田之倉「それが何で、警察官に ? 」 テープル席につく男女たち。 たやん。 ( 聖子へ向かって ) ジーマちょう堀内「自衛隊に入ったら、海外とかに行かな 聖子、コロナとジーマの瓶を置く だい」 アカンでしよ。家族と離れ離れになるの嫌 聖子を見た男の一人が目を見開く 聖子、ジーマの瓶を堀内の前に置くと、 やし、それやったら警察かなって : : : 田之男 2 「お前、〇〇小学校の : : : 」 カウンターの隅へ戻る 倉さんは ? 聖子、俯く。 堀内、殺菌ジェルで手を拭いながら聖子田之倉「俺か ? 俺は : : : 罪を犯す人間に、 連れが、男 2 と聖子を見る を見て、 会ってみたかってんなあ」 男 1 「どうしたんだよ」 堀内「彼女、結構ええですやん。田之倉さん、堀内「わかる気がしますわ。罪を犯す人間と男 2 「こいっ〇〇小学校の先生だよ。自分の もしかして狙ってんですか」 犯さん人間の境目って、どこにあるんやろ娘だけ連れて逃げた」 田之倉「アホ」 なって」 女「あんたの弟、通ってたんでしょ」 堀内「奥さん、怖いんですか ? 」 堀内、瓶に残ったジーマを飲み干す。 男 2 「いい気なもんだよな。他の生徒を見殺