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検索対象: シナリオ 2016年9月号
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1. シナリオ 2016年9月号

子さんとは何の関係もないのよ」 徹「日曜なんだぜ」 夏子「受験生に日曜なんかないわ」 加藤家・庭 悠一が草をむしったり掃いたりしている。 映画館・従業員控室 表の方からフラッと次郎が来る 光代と同僚の早苗がラーメンを食べてい夏子「次郎君も今日は自分の家へお帰んなさ る。 次郎「兄さん、映画見に行かない ? 早苗「今夜、お花見に行かない ? 」 次郎「ヘッー 悠一「映画 ? 光代「はねてからじゃ遅くなっちゃうわ」 夏子「お兄さんにそう言われたのよ。あんた次郎「行こうよ : : : 兄さんに見せたいものが 早苗「じゃあ、明日 : : : 早番だから : ・ をうちへ泊めないでくれって : : : だから、 あるんだ」 光代「まだ桜の花、少し早いんじゃない ? 」 さあ、一一人ともお帰んなさい」 悠一「どんな映画だい ? 」 早苗「七分咲きがいいのよ」 徹「姉さんはどうするの ? 」 次郎「映画じゃないよ」 光代「満開の方がいいわー 夏子「せつかく出て来たんだから、ぶらぶら悠一「え ? 」 早苗「花なんかどうだっていいのよ」 して帰るわ」 次郎「いや : : : 映画を見に行くんだけど : 光代「何を見に行くの ? 」 次郎「じゃあ俺たちも : : : 」 そこの・ : ・ : 」 早苗「ポーイハント」 徹「もうちょっとぶらぶら : : : 」 悠一「今日はうちでゆっくりしようよ : せつかくお前が帰って来たんだ」 光代「キョロキョロしてたら、酔っぱらいに夏子「駄目」 からまれるわよ」 徹「帰ろ帰ろ」 次郎「でも : 早苗「あんたって、どうしてそう私の言うこ 次郎はちらと入場券売場の方を見ながら、悠一「お母さんももうすぐ帰って来るよ」 とにいちいちさから、つの ? 」 徹と一緒に立ち去る 次郎「どこへ行ったの ? 」 光代「いちいち賛成してたら、お金とひまと 夏子、笑いながら見送って、ぶらぶら歩悠一「その辺まで買物に行ったよ」 き出す。 身体と : : いくつあっても足りないもん」 次郎「・ : 早苗「意地悪婆さん」 ふっと入場券売場の方を振り返る 悠一「お前、アルバイトなんかやめて、予備 ・ : この味噌ラー夏子「 校へ行ったらどうだ ? 」 光代「ああ、おいしかった : メンたつぶりあるわね」 光代の顔が見える。 次郎「行く必要がないよー 人 恋 引きつけられるように近づく。 悠一「もう一年頑張ってみたらどうだ ? の 人 映画館の表 入場券を売っている光代ーーー 次郎「無駄だよ」 3 次郎と夏子と徹 悠一「もう一年頑張って、それでも駄目だっ 夏子「・ : たら : : : 働くのはそれからでいいじゃない 茫然と見つめる。 夏子「徹はうちへ帰って勉強 : : : 」 いね」 ー 105 ー

2. シナリオ 2016年9月号

良平「まさか嫌いじゃないんだろ ? お互い 次郎と徹と早苗が目くばせをして、さり 向うから徹と早苗が走って来る。 に好意を持ってるんだろ ? 」 げなく、悠一と光代のそばから離れて行徹「おー 夏子「ええ、嫌いだなんてことは絶対に 早苗「待ってえ : : : 」 ただ悠一さんのことですから、まだ何とな ゲームに熱中している悠一。 息を切らしながら駆け寄る くとまどってるんだと思いますわー 光代がふっと気がつくと、次郎と徹と早次郎「腹へったあ」 良平「まあ、無理もないと思うがね」 苗の姿は見えない。 徹「僕も・ : ・ : 」 夏子「この間の晩、次郎君や徹たちと一緒に光代「あら : : : ? 早苗「私もおなかべッコペコ : ポーリングへ行ったそうですけど、お互い悠一「どうしたの ? 6 にあんまり口もきかないんですって : : : 」光代「いないわ」 中華料理店 ( 夜 ) 良平「みんなと一緒じゃ駄目だよ。遊びに誘悠一「え ? 」 悠一と光代が食事をしている。 い出したら、そっといつのまにか二人きり キョロキョロとあたりを見回す。 光代「馬鹿だわ、あの人達 : : : 今頃、きっと にして、ほかの者は消えてしまわなくちゃ おなかべコペコよ」 ビルの谷間 ( 夜 ) 悠一「そうか : ・・ : 」 夏子「ホホホ : : : 手のかかる恋人同士だこ 次郎と徹と早苗が歩いて来る 光代「大勢で一緒に食べた方がおいしいのに と 徹「今頃、二人でまごまごしてるよ」 次郎「ざまあ見ろ」 早苗「これから二人、どうするかしら ? 光代「 ( ふっと微笑んで ) 早苗ちゃん、こん 次郎「そこまで面倒見きれねえや」 なお店でおなか一ばい食べてみたいって パッと駆け出す。 言ってたのよー 徹「おー 悠一「そ、つ : ・ 追っかけよ、つとする 光代「おいしいわ : : : ほんとにあの人達、ど 早苗「あら : : : 待ってよ」 こへ行ったのかしら : : : 」 若い二人連れの男女が入って来る 走って来た次郎が立ち止まる 男「やあ・ : : ・」 息を切らしながら、キックボクシングの悠一「やあ : : : 」 真似をしたりする 男「どうも : : : 」 何となく不機嫌になっている 光代の方をチラと見て、二人は向うの グループ・サウンズ 狂熱的な演奏ーー 観客席 楽しそうな次郎、徹、早苗、光代。 何となくついて行けない悠一。 ゲーム・センター ( 夜 ) 悠一、次郎、徹、光代、早苗が射的や x xx ポールなど色々なゲームを楽しんで いる ー 1 12 ー

3. シナリオ 2016年9月号

来週ぐらいまで待った方がいいだろうって。園子「わからないのよ。そんな話、してない 出社していく越智 子供には長旅だからね」 の」 園子、カーテンの隙間から見ている 園子「そう」 雨宮、詰めていた息を吐く 越智、窓を見る 雨宮「会社から電話したら、たまたま蓉子 呆れたような笑みが浮かぶ。 園子、カーテンから姿を出す。 ちゃんが出てね、お義母さん一人じや心許雨宮「会社の事務員にも、越智のファンが何 越智、園子に微笑みかける。 ないから、一緒に来てくれるってさ」 人もいるらしいよ。あんな男のどこがいい 越智を見つめる園子の目から、涙がこば園子「・ : んだろう。女ったらしってああいうのをい れる。 雨宮「園子 ? 聞いてるのか」 うのかな」 園子「ごめんなさい」 と、取り繕って、ご飯を食べようとする雨宮「園子。あなたは勘違いしてるだけなん 越智、窓辺に近づいてくる。 が、溜め息をついて、箸を下ろす。 だよ。誠がいなくて、僕も残業が続いて家 園子、カーテンの陰に隠れる。 雨宮「何だよ、魂が抜けちゃったみたいじゃ にいないから、寂しくて、それに暇なんだ。 ないか」 だから、そんなバカげた考えに取り憑かれ一 越智が立ち去る気配がする。 園子「そんな風に見えるの ? るんだ。有閑マダムのよろめきってやっさ」 % 園子、外を覗く。 雨宮「ああ。どうしちゃったんだよ」 園子「 : ・ 去って行く越智の背中。 雨宮「誠の顔を見れば、越智のことなんか、 雨宮「なに ? どうしたの ? きれいさつばり忘れるよ」 座り込む。胸が大きく上下している 園子「・ : ・ : 越智さんが好きになってしまった園子「 : 園子、指を噛む 一 4 雨宮「へ ? 」 離れ 園子「恋、なんだと思う」 夕飯の席。煮くずれた南瓜。焦げためざし。雨宮「ええ ? 雨宮、顔をしかめながらも、何も言わす 冗談かと笑おうとするが、切なげな園子 に食べている の顔を見て、 園子、食事に手をつけず、ほうっと箸先雨宮「越智は ? 越智はどうなんだ ? 」 を眺めている 園子「 ( 首振り ) 知らないー 雨宮「誠、だいぶよくなったそうだよ。でも、雨宮「知らないって」 園子「 : 越智「卩 同・寝室 蒲団の中、雨宮、園子に手を伸ばす。 園子、その手を押しのける。 雨宮、構わず、園子を抱き寄せようとする 園子「いや : : : 」 と、身を捩り逃れる。 雨宮「越智のせいか」 園子「ごめんなさい」

4. シナリオ 2016年9月号

園子、二組の蒲団を並べて敷いている 園子「すみません。今夜は : 笑みが湧いてくる。 その顔には笑みが浮かんでいるように見 雨宮、構わず、園子の胸元を探る と、越智も園子を見つけ、微笑みかける。 える 園子「・ : : いやなの」 園子、つい、間近に歩み寄る。 雨宮、窓辺で煙草をふかしている。 と、雨宮を振り切る。 が、言葉が出ない 雨宮「越智さんってさ、やつばり、ちょっと雨宮「どうしたの ? 越智も言葉がないまま、見つめてしまう。 変わってるな」 園子「 ( 取り繕って ) 落ち着かなくて」 園子「やつばりって ? 」 雨宮「わかったよ。園ちゃんが嫌がることは越智「 : 雨宮「幾度も栄転の話が出たらしいんだが、 したくないからね 園子、俯く。 誰が説彳 しても、京都から動こうとしない と、蒲団に潜り込む。大きく伸びをする。越智「 : : : じゃあ、また」 んだってさ」 と、歩き出す。 園子「京都の方だからでしょ 園子、出社していく越智の背を見送る 雨宮「それが違うんだよ。大学は京都だが、 と、越智、振り返る 生まれも育ちも東京だっていうんだ」 園子の顔に笑みが浮かぶ 園子「ご家族 : : : 奥様がいらっしやるんで 越智、小さく頷きかけると、角を曲がっ しょ ? 」 て消える。 雨宮「いたら、下宿なんてしてないだろ」 園子「下宿って ? じゃあ、北林さんのとこ 雨宮、園子の顔を面白そうに見つめる 園子「何ですか ? 雨宮「すいぶん、気分が良さそうだね」 園子「え ? 」 雨宮「なんだか生き返ったみたいな顔をして るよ」 園子「 : : : 気のせいですよ」 と、蒲団を整えに戻る。 雨宮、煙草を消し、園子を抱き寄せる 離れ・玄関前 スーツ姿の雨宮が出てくる。 その後ろ、園子がプリーフケースを持っ て、見送りに出る。 雨宮「今夜は遅くなるから、先にやすんでて園子「・ : しいからね」 園子「ええ」 四北林家・応接間 雨宮、プリーフケースを受け取ると、笑 園子、受話器を耳に当てている 顔で手を振り、出かけて行く。 北林、紅茶を淹れながら、俯きがちな園 園子、北林家をみやる 子の襟足やワンピースから伸びた素足な 庭木が見えるばかり どを見ている 溜息がついて出る。 園子、受話器を置き、 戻りかけるが、箒を手にする。 「ありがとうございました」 また、北林家を見やる。 と、戻ってくる と、出勤してくる越智の姿 北林「坊ちゃん、いつ、いらっしやるの ? 園子「それが、おたふく風邪にかかっちゃっ

5. シナリオ 2016年9月号

花心 9 園子、朝の陽射しに目を覚ます 「おはよう」 と、障子を開けて、窓外を見ていた雨宮 が亠をかける。 寝不足な顔つきだが、さわやかな声であ る。 園子、なかなか、目が覚めない。欠伸を かみ殺す。 雨宮「ねえ、園ちゃん ? 今時、僕たちみた いな純情な夫婦ってあるかな ? 」 雨宮「昨夜のことは、世間に放送していい美 をたね」 園子、唖然と雨宮を見る。 雨宮、園子を見つめ、微笑んでいる 園子、赤面してしまう。 蒲団を出て、そのまま部屋を出て行く。 初夏 新居・庭先 園子、シーツを干している。真っ白なシー と、しやがみこみ、えずき始める 吐くものはない。それでも吐き気が込み 雨宮、大の字になる。 園子、はだけた浴衣をかき合わせ、 3 上げて、喘ぐ。 縁側に腰を下ろす。 傍に、洗い桶に浮かぶ真っ赤なトマト 園子、足を投げ出し、トマトを齧る 汁が溢れ出し、顎を、首筋を伝う。 園子、手の甲で拭い、また齧る。 また汁が伝い落ちる。 園子、構わず、トマトをまた齧る 同・寝室 雨宮が、園子の上で動いている 虚空を見上げ、必死な顔つき。 園子、その顔を見上げている。鼻の頭が 痒くなり、掻いたりする 雨宮、切迫して来て、動きを早める 園子、顔を背ける。 襖に染みが出来ている 貶襖の染みに、桃色の和紙の花 昭和年 2 月 お腹を大きくした園子、壁に凭れ、見つ めている 雨宮、その腹に耳を当てている 蒲団の中 横向きに寝た園子。 夏 雨宮、後ろから抱くようにして、その帯 を解く 園子「ねえ」 雨宮「もう大丈夫だってお医者も言ってる じゃないか」 園子「でも : ・・ : 」 雨宮「優しくするからさ」 と、肌に触れる 園子の腹は元に戻っている。 雨宮、園子をまさぐる 園子、横向きになったまま、じっとして いる ばんやりと眺める桃色の和紙の花、くす一 み始めている 雨宮、背後から、園子に入って行く。 と、園子、「あ」と目を見開く これまでにない感覚が体の奥に生まれて いる 園子、その強烈な感覚に圧倒される 声が出る 感覚に溺れてゆく。 園子、自らの乳房を握りしめる。 押し殺すことも忘れ、声をあげる。 赤ん坊が泣き始める と、園子、ひときわ、大きな声をあげる その声に、雨宮も一声呻く。

6. シナリオ 2016年9月号

生きている作家自身の経験、取材で知る他者の 経験、今という時代背景を織り込んだ作品はで きないだろう。人工知能には仕事をとられたく ないので、独自性を磨いていたいと思った。 シナリオ会館の老朽化とシナリオ講座の - 受講 生減少は昨年も聞いた話だった。埼玉県北部に 住むわたしにとって、赤坂は近寄りがたい都会 である。が走る地域は行きやすいが、地下 鉄オンリーはハ ードルが高い。脚本を学ぶにあ たり、他のスクールを選んだ主な理由は金額、 立地だった。だが、赤坂にはがあり、芸 能や映像関連の会社も多数あり、実際の仕事に ここからかスタ 1 トだから 近しい空気がある。夜は値が張りそうだが、ラ ンチなら安価で美味しい店も多く、女性にも嬉大島まり菜 しい。もし両方の説明会に参加していたら、こ い私が、総会に参加し、思ったこと、考えた 6 月日金曜日、学士会館にて、平成年 ちらを選んだかもしれないと今になって思って ことを綴ってみよ、つと思います。 度協同組合日本シナリオ作家協会通常総会が いたりする。 はじめに各部署の役員の方々からの報告で 行われました。今年 5 月に協会に入会した私 金事務局長によると、テレピ・映画は不調だ 「シナリ す。資料をもとに、ふむふむ : 自身、総会と名のつくものは、学生時代し がネットドラマが好調とのこと。 > シネマは著 オ講座」の講座生が減っているとの報告 か、それも学生が学生に開くこじんまりとし 作権使用料が発生せず、作家が権利を受け取れ た、数字を絶え間なく聞かされ、むにやむにや 年度は、昼間部の受講生数が一桁台に止ま なかったが、ネットドラマではできるだけ良い るなど、低空飛行を続けているそう。一昔前 と眠くなるような総会しか経験したことがあ 形で使用料を受け取りたいと話していた。低予 のある時期には、先生一人につき、 8 人もの りませんでした。会場に入った時、大学時代 算のためギャランティ減少、テレビドラマの製 生徒がいたというお話には驚きました。家事 の師匠である荒井晴彦さんに「なんでお前い 作本数の減少、など脚本家にとって逆風もある の合間を縫って主婦が、講座に駆けつけてい るの ? 聞いてもつまんないよ。 ( 総会の後 が、新しい可能性にも目を向けていきたい。そ たと。趣味で脚本を習えるような、家庭に余 に開かれる ) 授賞式だけくればいいのに」と して、最も目新しい話題は、今後、マイナンバ 言われた時には、ああ、やはり私が聞いても裕のあった時代があったんだろうなあと思う の報告が必要になるということだ。マイナン と同時に、今の一桁台というのは、減りすぎ ほかんとするだけの会かしら、という思いが ー法に反対の会員もいるかもしれないが、事 じゃないかとも感じました。シナリオ講座以 強まりましたが、それでも、新入会員として、 務局は法に則り対応を進めていくという 総会後は第回新人シナリオコンクールの表脚本家の皆様の中で、まだまだ経験の足りな外にも、シナリオセンター、日本脚本家連盟 彰式が行われた。荒井晴彦委員長より「受賞は ゴールではなくスタートなので、それを忘れな いで頑張ってほしい」との言葉があった。 受賞者スピーチでは、『折り花』で佳作受賞の 近藤希実さんが「シナリオは紙とペンさえあれ ばどこでも書けるが、逆に書かなくなると遠ざ かる。賞を励みに書き続けていきたい」と話し ていた。コンクールで受賞したからといって将 来が約束されているわけではないとよく言われ るが、受賞する人にはそれだけの才があり、選 ばれるべくして選ばれた人だと、受賞に縁のな いわたしは思っている。受賞したことに自信を 持ち、今後の作家活動の追い風にして頂きたい。 懇親会ではおなかいつばいご馳走を食べた。 ( どれも美味しかったが、その場で切ってくれ る生ハムに感動 ! ) 過去の総会では波乱が起 きた年もあったと聞いたが、今年は何もなかっ た。ドラマチックな展開があれば、総会報告の 言事がもっと面白くなったかもしれないが、団 体としては平穏無事が一番だろう。 ワ」

7. シナリオ 2016年9月号

民子「私はね : : : あんたたちが学校へ行こう夏子「私、やつばりやめますわ」 盟夏子のア。ハート・入口 と、そのまま働こうと・ : ・ : 元気に : : : 生き良平「え ? 」 悠一が来て、扉を叩く。 ててさえくれればいいんだよ」 夏子「アメリカへ行くの : : : はっきりやめま 扉が開いて、夏子が顔を出す。 次郎「もう一杯」 すわ」 夏子「まあ : : : 」 お椀をつき出す。 良平「あ、そ、つ : ・ 悠一「今度は僕が家出をして来たんだ」 夏子「何もアメリカへ逃げて行くことなんか 夏子「え ? 」 ないんですもの」 夏子のアバート・ 悠一「ああ、眠い」 夏子がコーヒーをいれる 良平「そりやそう・・・・ : そうだよ」 大きなあくびをする 夏子「どうぞ」 居間 夏子のアバート 夏子がコーヒーを持って来る ぐっすり眠っている悠一 悠一の姿が見えない。 居間 夏子と悠一が来る 夏子「あら 映画館の表 徹が眼をこすりながら出て来る カーテンの蔭から大きないびきが聞える 次郎が入場券売場の方を見ている。 夏子がのぞくと、悠一が夏子のべッドの 入場券を売っている光代ーー次郎に気が一 悠一「お早う」 上に寝ている ついて微笑む。 徹「え ? ・ : お早う」 夏子「まあ : : : 」 悠一「どうぞよろしく」 加藤家・座敷 徹「ん 民子が若い娘たちに生花を教えている 甲野書房・社長室 夏子「今、コーヒーをいれるわ」 夏子が新しい雑誌を良平に見せる ハチン : : : と花の 光代の写真ーー・ 枝を切る民子。 良平「ほ、つ : ・ ・ : なかなかいいじゃないか」 加藤家・茶の間 次郎と民子が朝飯を食べている 夏子「ええ」 夏子のアバート 次郎「熱ッ : ・・ : 豆腐の味噌汁か・・・・・・久し振り良平「ふーん : ・・・・こうやって見ると : ・・ : やっ 夏子が悠一の寝顔をのぞきこむ。 だなあ・・ : : 」 ばり美千子とは別人だな」 悠一の無邪気な寝顔ーー 民子「働きロは見つかりそうなの ? 」 夏子「あたり前ですわ」 夏子の顔が近づく 次良「え ? : ・・ : 働いていいの力い ? 」 良平「ハ 終 124 ー -

8. シナリオ 2016年9月号

電話を切って、派手なセーターをつまん 受付の少女とふっと視線が合い、てれて 娘「ほんと ? 頭をかく。 だりする。 民子「さあ、はじめましよう」 少女もふっと微笑む。 次郎「このビルの屋上、どうなってるの ? 高層ビル 地下道 地下鉄の改札口から次郎が駆け出して来少女「え ? : : : 展望台が : : : 」 る。 次郎「ああ、金取られんのか : : : 」 絽太陽バルプ・営業部 壁の時計が一時四十四分である 少女「ええ : : : 」 電話が鳴る 次郎「いくら ? 」 悠一が出る。 中から社員が出て来る。 悠一「もしもしん ビルの廊下 エレベーターから次郎が出て来る 少女、ふっと真面目な顔になる。 社員、次郎の方をジロッと見ながら廊下 公衆電話 へ出て行く。 次郎が電話をかけている 四太陽バルプ・受付 次郎が派手なセーターを気にしながら、次郎「また来まあす」 次郎「すまんけど、お金 : : : 二枚欲しいんだ そんなこ 頼むよ : ね・ : ・ : うん ? ・ : : ・ 受付の少女の所へ来る。 少女「え ? 」 次郎「お邪魔しましたあ」 と : : : 絶対に : : : だから : : : 一一枚でいいん次郎「あの : : : 」 少女「いらっしゃいませ」 少女「はあ : : : 」 だよ : : : 」 次郎、エレベーターの方へ行く。 次郎「あの : : : 営業の加藤悠一 : : : 」 少女、また微笑みながら見送る。 営業部 少女「ああ、加藤次郎さんでございますね ? 」 : そ、つです , 悠一「うん : : : じゃあ、二時から会議が始る次郎「え ? : ・ から、二時、十五分前に来いよ : : : 遅れ少女「これをお預かりしております : : : どう 加藤家・茶の間 ( 夜 ) 和服に着換えた悠一が食卓に着く ちゃ駄目だぞ : : : 、つん : : : あ、それから、 と一通の封筒を渡す。 悠一「次郎はほんとに学校へ行く気がないの あんまり変な恰好で来ちゃ駄目だ : ・ かな : な ? ・ : ・ : え ? ・ : : ・うん : : : まあいしたろ次郎「どうも : : : 」 封筒の中にはメモ用紙が入っている 民子「私はね : : : どうしても学校へ行くのが いやなら、無理に行かせることもないと思 「時間通りに来ないから渡せない。四時 十五分にも、つ一度来ること」 うのよ」 幻公衆電話 ・ : きびしい」 悠一「いや、やつばり行った方がいいよ」 次郎「じゃ : : : うん : : : うん : : : じゃ : : : 」次郎「チェッ・ なんだ 100 ー

9. シナリオ 2016年9月号

園子「違うわ」 越智「じゃあ、どうして : : : どうして、愛し園子「 : : : 」 てもいない男とそんなこと : : : 」 園子「愛 ? そんなもの、あなたにもないわ」 越智「園子 : : : 」 園子「私、あなたに恋をしたの。たぶん、そ園子「 : : : 」 れは本当。でも、箱根の夜で終わってしまっ たの」 越智「待てよ、俺たちは、あの夜から始まっ たんじゃないか」 園子「 : 越智「何年もこうして肌を合わせてるんだ。 愛してるって言ってくれればいいじゃない か」 園子「いいわよ。私たちのことを、そういう 言葉で言いたいんなら」 園子「愛してるわ」 越智、べッドを出て、着替え始める。 園子「怒ったの ? 」 応えず、着替えている 園子「もうお終い ? 私に会わないつもり ? 」 越智、財布を出して、札を放り投げる。 園子「 ! 」 芯越智「愛がないんなら、金を払わないとな」 園子「・ : 越智「またくるよ」 と、部屋を出て行く。 蓉子、園子を見る。 園子、襦袢を羽織り、べッドを出る。 園子、微笑んで、立ち去る 床に散らばった札を見る。 べッドに腰掛ける。 火葬場・外 園子、空を見上げる。 蓉子が追いかけてくる。 足下の札を、足指で掴み上げようとする。 てこすりながら、札に手を伸ばす。 蓉子「姉さん : : : 」 園子、空を見たまま、 が、園子、取らずに、立ち上がる。 着物を着始める。 園子「お母様も灰になっちゃうのね」 裸足の足で札を踏んでいるが、構わず、 蓉子も空を見上げる。 園子「早く籍を入れなさい 着物を着付けていく。 蓉子「本当にいいの ? 」 身支度を整えた園子、鏡に向かって棒紅園子「しあわせなんでしょ を塗る 蓉子「姉さんは ? これからどうするつもり一 なの ? 一人で不安じゃないの ? 」 鏡には艶然と微笑む女が映っている。 園子、歩き出す。 蓉子「姉さん ! 」 棺に横たわる母 園子、振り返り、蓉子に手を振る 棺の蓋が閉められる 笑顔だ。 見ている喪服姿の園子。 園子、また前を向き、歩きだす。 雨宮、蓉子、誠の姿もある 誠が泣き出す。 歩いていく。 園子、誠を抱き寄せようとする 園子の声「私が死んで焼かれたあと、白いか 誠、園子の手を払い、蓉子の腰にしがみ ばそい骨のかげに、私の子宮だけが焼け残 つく。 るんじゃないかしら」 園子、歩き続けていく。 誠を抱き上げ、なだめる蓉子。 その傍らに、雨宮が寄り添う。 了

10. シナリオ 2016年9月号

上半身を起す。 噴水ーー そのまま二階へ上って行く。 悠一「光ちゃんが僕を嫌いだってこと : : : 」 悠一「君には誰か好きな人があるんだな ? 」 次郎「嫌いだなんて : : : 言やしないよ」 光代「 : ・ 悠一「言ったよ」 居間 ( 夜 ) 悠一「それは : : : 誰なんだ ? 悠一が入って来る 次郎「誰に ? 」 光代「・ : 民子「お帰り」 悠一「お前にも、僕にも : : : 」 悠一「次郎だな ? 」 次郎「・ : 悠一「次郎は ? 」 光代「・ : 民子「二階よ : : : たった今までここにいたん悠一「はっきり嫌いだって言ってる女に、ど 悠一「あいっ だけ - ど・ : ・ : 」 うしてプロポーズしろなんて言ったんだ」 光代「・ : 噴水ーー 出て行く。 階段の下 ( 夜 ) 民子が一一階を見上げる 民子「御飯は ? 」 悠一の声「いらない 次郎の声「はっきり嫌いだなんて言やしない 加藤家・居間 ( 夜 ) 次郎と民子 民子「あなたは生れてはじめて、ほんとにい 田階段 ( 夜 ) いことをしてくれたわ」 悠一が上って行く。 次郎「生れてはじめて ? 何をしたの ? 」 民子「兄さんに、光代さんという人を探して 次郎の部屋 ( 夜 ) 次郎がべッドの上に仰向けに寝ている 来てあげたこと : ・・ : 」 次郎「ああ : : : 」 悠一の声「いいか ? 」 茶卓の上のお菓子をつまんで立ち上る。次郎「ああ : : : 」 悠一が入って来る 民子「今、お茶をいれてあげるわ」 次郎「いいよ」 人 恋 黙って立っている の 人 次郎「何だよ ? 」 四階段 ( 夜 ) 次郎が階段を上りかける。 悠一「どうしてはっきり言わなかったんだ ? 」 玄関のあく音 次郎「何を ? 」 次郎「・ : 次郎の部屋 ( 夜 ) 悠一と次郎 次郎「ぐずぐずしてると、女なんて何を考え るかわからないから : : : しつかり擱、んろっ て言ったんじゃないか」 悠一「もうとっくに、僕のことなんか何とも 思っちゃいなかったんだ」 次郎「違うよ : : : 兄さんのことを好きになろ うとしたんだよ」 悠一「でも好きになれなかったんだ」 階段 ( 夜 ) 1 17 ー -