ハッ、俺、芸人辞めようかな」 ンで黒沢の顔を叩き、 実道「は ? 何その言い方 ? お前反省して いきなり黒沢が実道を殴る 夏海「どっちだ ! 」 んの ? 俺が今、オチてる事わかってんだ 実道「」 よな ? わかってて言ってんだよな ? 俺 返す刀で実道も張り飛ばした。 顔を押さえる実道。 が何でオチてるかわかってて言ってんだよ な ? 黒沢「相方が死んだ位で辞めるとか言ってん 食堂 じゃねえ」 顔にハリセンの跡が残っている黒沢が昼夏海「実道さんは何がわかってんですか ? 鼻血が出ている実道。 定食を食べている 実道「お前のせいだよ。どこの世界にタレン 実道「 : : : てめえ」 トの顔、傷物にするマネージャーがいんだ 音声から実道の名前が聞こえ、 黒沢「あ ? を見る黒沢。 よ。これ ( 痣 ) でオチてんだよ、俺は。お グルメリポートをしている実道。 前はマネージャー失格だ」 実道「自分こそ妹が死んだくらいでメソメソ してんだろ」 客「こいっ最近つまんねえな」 夏海「もしそう思ってるなら実道さんこそ、 と、チャンネルを変えると、 芸人失格です」 黒沢「俺はな、雛子、大学にやる為に : : : 」 実道「その言い訳がうぜえんだよ ! あんた、黒沢「こっちは見てんだけど 実道「何」 夏海「もっと、必死の芸を見せて下さい。命月 いつつも言い訳だ。親が人轢き殺した位で客「あ ? 削って、私達を笑わせて下さい」 芸人辞めやがって」 黒沢「つまんなくても見てんだよ」 黒沢、酒瓶を持って立ち上がる 実道「てめえ」 舌打ちし、チャンネルを戻す客。 実道も手近のポッキーを二三本手にし、 振り上げた拳を夏海には下ろせず、夏海 が手にしていたロケ弁を叩き落とした。 立ち上がった。 駐車場 ロケバスから降りる実道。 黒沢、酒瓶を振りかぶると、中のバーポ 夏海「 ( 悲しそうに ) これが必死の芸ですか」 ま ンが黒沢の身に降りかかった。 苛立ちを隠さず、歩き出す実道。 ロケ弁を手にして、待っていた夏海と車 じ 対峙する一一人。 へ向かう 夏海「お弁当どうすんですか ? この落とし と 実道にもハリセンの跡がくつきり。 前はどうつけんですか ? 」 黒沢「殺すぞ」 ま 夏海「もう漫グラの季節ですね」 実道「 ( 振り向き ) お前が考えろ ! 」 実道「やってみろ。負け大」 の ムスッとしている実道 すると夏海は落ちた弁当を食べ始めた。 激昂した黒沢が酒瓶を振り下ろそうとし ア た瞬間、 実道、暫く見ていたが、夏海の元に戻り、 夏海「予選始まりますけど、どうします ? 」 工 夏海「どっちも ! 」 実道「どうするって何出来んだよ ? 」 実道「やめろ。俺が悪かった」 しかし夏海はやめず、 どこから取り出したのか、巨大なハリセ夏海「 : : : 実道さんは何がしたいんですか ?
園子「違うわ」 越智「じゃあ、どうして : : : どうして、愛し園子「 : : : 」 てもいない男とそんなこと : : : 」 園子「愛 ? そんなもの、あなたにもないわ」 越智「園子 : : : 」 園子「私、あなたに恋をしたの。たぶん、そ園子「 : : : 」 れは本当。でも、箱根の夜で終わってしまっ たの」 越智「待てよ、俺たちは、あの夜から始まっ たんじゃないか」 園子「 : 越智「何年もこうして肌を合わせてるんだ。 愛してるって言ってくれればいいじゃない か」 園子「いいわよ。私たちのことを、そういう 言葉で言いたいんなら」 園子「愛してるわ」 越智、べッドを出て、着替え始める。 園子「怒ったの ? 」 応えず、着替えている 園子「もうお終い ? 私に会わないつもり ? 」 越智、財布を出して、札を放り投げる。 園子「 ! 」 芯越智「愛がないんなら、金を払わないとな」 園子「・ : 越智「またくるよ」 と、部屋を出て行く。 蓉子、園子を見る。 園子、襦袢を羽織り、べッドを出る。 園子、微笑んで、立ち去る 床に散らばった札を見る。 べッドに腰掛ける。 火葬場・外 園子、空を見上げる。 蓉子が追いかけてくる。 足下の札を、足指で掴み上げようとする。 てこすりながら、札に手を伸ばす。 蓉子「姉さん : : : 」 園子、空を見たまま、 が、園子、取らずに、立ち上がる。 着物を着始める。 園子「お母様も灰になっちゃうのね」 裸足の足で札を踏んでいるが、構わず、 蓉子も空を見上げる。 園子「早く籍を入れなさい 着物を着付けていく。 蓉子「本当にいいの ? 」 身支度を整えた園子、鏡に向かって棒紅園子「しあわせなんでしょ を塗る 蓉子「姉さんは ? これからどうするつもり一 なの ? 一人で不安じゃないの ? 」 鏡には艶然と微笑む女が映っている。 園子、歩き出す。 蓉子「姉さん ! 」 棺に横たわる母 園子、振り返り、蓉子に手を振る 棺の蓋が閉められる 笑顔だ。 見ている喪服姿の園子。 園子、また前を向き、歩きだす。 雨宮、蓉子、誠の姿もある 誠が泣き出す。 歩いていく。 園子、誠を抱き寄せようとする 園子の声「私が死んで焼かれたあと、白いか 誠、園子の手を払い、蓉子の腰にしがみ ばそい骨のかげに、私の子宮だけが焼け残 つく。 るんじゃないかしら」 園子、歩き続けていく。 誠を抱き上げ、なだめる蓉子。 その傍らに、雨宮が寄り添う。 了
彼の日本人妻となる。 される。役所がシーポルトを罠に 「そう言いました。もう、三十年瀧という名もなき遊女に焦点を当 て物語を組みたてたのは高田氏な なんという皮肉な設定を高田氏嵌める為に作成した書面に押印せもなるのだから。どうして、会い らではの眼力だろう。高田氏は、 に行かないのと」 は用意したのだろう。一度は恋心 よと迫るのだが瀧は断固拒否する。 を打明けた高良斎のシーポルトは業を煮やした奉行所は、シーポル 「それで、オタクサは何と言った」厖大な資料から実像虚像の人物を 師であるのだ。 創作し、シナリオ時代に鍛えあげ トと瀧の子、伊禰を連れ出し押印「何も」 た構成力で登場人物を乱れ踊らせ そして物語は、幕末前夜を激震を迫る。瀧は咄嗟に書役が押印用 「わたしを憎んでいるのか」 三百八十五ページの大作時代小説 させたシーポルト事件へと展開す に持つ小刀を奪うと一歳と半ばの 伊禰は強くかぶりを振った。 としてエンターテイメントの極致 る。一八二六年、シーポルトはオ我が娘、伊禰の首に突きつけ、 「母は、そういう人なのです」 へと導く。私みたいに映像を生業 ランダ商館長の江戸参府の随員と 「この子の命までお召しとあらば、 この場面と最後のセリフに「う まい」と私は、思わず唸った。振としてきた者は、いっしか文字がス して江戸に行く。軍人でもある母なるわたしの手で ! 」 クリーンとなって一気に読破する シーポルトの江戸での最大の目 り返っても過去は過去でしかな 公儀の裁きの場で母なる子殺し 私より高齢の高田氏がよくもま 的は、伊能忠敬の日本小地図を手が実行されては : : : 幕府検察の完 い今を生きてきた瀧という女の あこの巨編を書くエネルギ 1 が に入れ母国に持ち帰ることである。敗であった。瀧の死を覚悟した大人物像を見事に象徴する一言だっ ・ : 否、物書きの執念をみてただ が、幕府にとって伊能地図は国防芝居でシーポルトは国外追放、再たからである。高田氏は主人公瀧 ただ敬服脱帽である。『ひどらん 上門外不出の品。シーポルトはあ入国禁止という中途半端な処分で をラストに登場させない事によっ らゆる手を使ってその地図を手に幕府はお茶を濁す。シーポルト、 て、登場させる以上のインパクト げあおたくさ』大傑作である。 を読む者に与えたのだ。映画会社私は、ひとりでも多くの皆様に読 入れるが、それを幕府に知られる瀧、伊禰の別れの名場面の後、ラ にとってシナリオライターの高田んでもらいたいと切に願うもので 事となる。書物奉行やシーポルト ストとなる。三十年の月日が流れ、 の門下生が捕らえられ壮絶な拷問日蘭和親条約が締結され、六十一一一宏治氏は、困った時の高田頼みである を受ける。絶体絶命のシーポルト。 歳になったシーポルトは瀧、伊禰ついた異名が鉄腕アトム。その剛 【著者】高田宏治 ( たかた・こうし ) が、幕府も苦悩していた。シーポ に会う為、日本の土を踏む。出迎腕はシナリオから小説と形を替え 1934 年大阪市生まれ。田年東京大学 えたのは三十二歳となり日本初の ルトを死罪にすれば戦にもなりか ても遺憾なく発揮され、否、映像英文科卒、同年東映に入社。東映京都撮 影所企画部に脚本要員として配属。柳生 ねない。幕府は一計を案じる。日婦人医師となった娘の伊禰。シー という制約から解放されたのかシ 十兵衛シリースでデビュー。主な脚本作 えせ 品に「極道の妻たち」「鬼龍院花子の生涯」 本の敵、外国の回し者、似非学者、ポルトが一番会いたいと思う瀧のナリオ時代以上に筆は躍動する。 「陽暉楼」「野性の証明」「復活の日」「仁 幕末物といえば坂本龍馬や吉田松 義なき戦い完結編」「北陸代理戦争」「赤 呼あらん限りの汚名を着せてシーポ姿はない。伊禰は言う。 陰等数多く本になり映画化もされ穂城断絶」「女帝春日の局」「日本の首 「母は結婚して、子供がいます」 ルトを抹殺しようとする。彼の最 領」など。年「「陽暉楼」で日本アカ 圭日も身近な者の証言を基にして : ・ 「気にすることはない。私も同じているが、その時代の礎となった デミー賞最優秀脚本賞、年「牧野省三 シーポルト事件、その主人公楠本賞」受賞。 瀧が捕縛され、裁きの場に引き出だ。妻と子がある」
雨宮「なんだよ。真面目な話をしてるんだろ」 越智、煙草を吸いながら、そんな園子を 雨宮「蓉子さんの言った通りだ。お前は腹の園子「でも、あんまり滑稽だから」 見ている 底からの冷血漢だ」 雨宮「何が滑稽なんだよ」 越智「君という女は、からだ中のホックが外 園子「ねえ、こんなこと、私の言えた義理じゃ園子「だって、蓉子だってあなたと寝たかっ れている感じだね」 ないけど、あなたたち結婚してくれないか たから、あなたと寝ただけでしよ。それな 園子、越智を振り向き、微笑う。 しら」 のに、あなたはそれを認めようとしないで、 越智、煙草を揉み消すと、背後から八つ 雨宮「あなたたちって、誰のこと言ってんだ」 無駄に言葉を探してるんですもの」 口に手を差し入れる 雨宮の視線が揺れる。 雨宮「・ : 園子、吐息を漏らし、その白い喉元を光 園子「もちろん、あなたと蓉子よ」 園子「女だって欲情するし、セックスすれば に晒す。 雨宮「ばかっ ! そんなこと、なんでお前気持ちいいのよ」 が ! そんなこと指図できるお前か ! 」 雨宮「女のくせに、そんなはしたないこと 事後のけだるさの中、園子がべッドの中 園子、急に激高する雨宮を見つめ、 で、天井を見上げている。 園子「 : : : あなた、蓉ちゃんと、もう : : : そ園子「そうね。きっと蓉子も言葉を探してる 越智、隣りで煙草をふかしている うなんでしよ」 んだわ。あの子は私と違うんですもの。あ越智「何を考えているの ? 」 雨宮「・ : 引蓉子さんは、園子が帰ってくるな いまいにしないで、ちゃんと結婚してやっ園子「どれだけの違いがあるんだろうって ? ら、それでもいいといってくれたんだ : てちょうだい。私だってその方が安心だわ」相手が誰あれ、結局、子宮は恥知らずなう どうしてもだめな場合ははっきりしようつ 雨宮、まじまじと園子を見る めき声をあげるのよ 雨宮「お前は、ほんとに、僕を愛してなかっ越智「まさか、君 : : : 他に男がいるのか ? 園子「気持ちよかった ? たんだなあー 園子「一度きりのきまりでねー 雨宮「え ? 越智「一度きりって・ : 園子「蓉子と、気持ちよかった ? 園子「だって、一度以上逢うと情が湧いてし 雨宮「何、言い出すんだ : : : 」 ホテル 昭和年・春まうもの」 園子、雨宮の目を見ている。 園子、越智と初めて旅をした時の着物を越智「一人じゃないのか ? 」 雨宮「蓉子さんとは、そ、ついうんじゃないよ」 着て窓辺に立っている。 園子「じゃあ、ど、ついうの ? ばんやりと窓外を眺めるその姿は、きっ 越智、煙草を揉み消す 雨宮「だから : : : 」 ちりと着付けをしているはずなのに、ど越智「嫌がらせか ? 俺が北林と別れないか 園子、笑い出す。 こかしどけない。 ら」 一 4 3 )
りする時に、故人のバカ話で盛り上がっ すよ。僕は泣けなかったけど、いい映画じゃ たりすることがあるじゃないですか ( 笑 ) 。 ないのみたいな感じで終わるんだけど、笑 それまで泣いてたのに、急にそうなった いの映画で笑えないとなると、本当にクソ りする。それは案外普通のことなんだな つまんないって言われる ( 笑 ) 。もう、 と思って。人の死に立ち会ったりする時 ィリスク、ノーリターン。映画の人は全員、 に、悲しみはあるんだけど、笑いで浄化し 笑いは難しい、泣かせるのは技術だからっ て、悲しみと笑いが相殺されていく。だん て一言いますけど、確かにそ、つい、つところは だん忘れるわけじゃなくて、そういうもの あるんで、そんなに無理に笑いを入れなく の繰り返しによって、故人のことが、いい ても、 しいんじゃないかというのが、あり 思い出になっていくのかなあという気がし ましたね。 て、そういう映画って、物語として、あん 手つ取り早く一言うと、本職のお笑いの まり見てないなあと思って、それからです 人を主人公にするという選択肢も、あった かね のでは。 そこで主人公を漫才コンビにしたのは、 渡辺それはイヤだったんです。映画の人 職業として、お笑いをやっている人たちだ が、お笑いをやるというのを、ちゃんと からとい、つことで つばいある やってみたかった。逆は、い 渡辺その前に、映画に笑いか必要かどう じゃないですか。役者は勿論、監督も、み か悩んでる時期があったんです。笑いをと なさん上手にされていますが、その逆をや るって難しいし、全然笑えない映画だって、笑いをメインにする映画を作らなきゃいか りたかった。それで、あるプロデュ 1 サー いつばいあるわけじゃないですか。それま んと。それじゃ、も、つ漫才コンピにしよ、つと。 から、本当の話かどうか分かりませんが、 で、映画の中に無理に笑いを入れようとし 必要ないんじゃないかというのは、ど高倉健さんとビートたけしさんが共演した ていたんですが、必要ないんじゃないかと うしてですか 時に、たけしさんが「健さん、お笑いの人 思う一方で、こういうテーマの話を思いっ渡辺ます、リスクが高い笑いって滑っ 間は俳優をやれますけど、映画俳優は漫才 いた時に、本格的に笑いをやらないとダメ たら、ものすごく引かれるわけですよ。だ をできませんよ」って言ったらしいんです。 だなと思ったんです。今までのように、ア けど、泣かせる映画って、泣けなくても、 それを聞いた健さんが、ムカッとして、田 クセントとして笑いを入れるんじゃなくて、 そんなに怒って出ていく人よ、、 ( しないんで 中邦衛さんに電話をして「邦ちゃん、俺と 02016 「エミアビのはじまりとはじまり」製作委員会 一わ
が立ってない ( 笑 ) 。 藤さんが、ああやつばりそうなのか、と 時、ものすごくスキャンダラスで、文壇か 計算ではなしに、すべて感性で書いて現場で、そのシ 1 ンで手をつながないと ら放逐されるぐらいの小説だったんですけ る ? ( 笑 ) 言ったときに、村川さんも不満だったらし ど、今、そのまま描いても全くスキャンダ 黒沢何なんですかね ( 笑 ) 。私、中学の いんですよ。その日、一日目を合わせてく ラスな感じがしないというかそこで現代 ときの国語の木村桂子先生に感謝すべきだ れなかったくらいだったって。「手をつない でもスキャンダラスな感じが出せないかと、 と思うんですよこれから感謝の意を伝え だときに、私はいちばん可愛い顔をしよう 愛と性は別物であるというのを際立たせた に行きたいぐらい、木村先生の読解力の授と思っていたのに」と村川さんは言ったそ んです。 業が今に繋がっていると思うんです。学校うです。それを聞いて私は、あ、この人ホ 企画の成り立ちはだいぶ以前だった 教育を褒める脚本家ってそんなにいないで ント分かってるなと。そこは男性女性の違と伺いましたが、ここ最近の週刊文春の すよね ( 笑 ) 。 いなのかなと思うんですけど、両安藤さん 芸能人の不倫バッシングの話題とリンクし それと『花芯』は鈴木一博さんのカメラ ( 安藤尋、安藤政信 ) は、手をつなぐとい て、とても現代性のある題材とも思えます も美しかった。私はこの安藤さんの映画、 うことにそんなに意味を感じなかったみた 全部が好きだし、初号を観た後も安藤さん いなんですよ。逆に男の人からすると、寝黒沢だといいんですけどね ( 笑 ) 。だけ に面白かったです、素敵でしたとポジティ る前の女と手をつなぐなんて恥ずかしいよ、 ど男性はこの映画を観てどうなんでしよう 2 プなことしか言わなかったら、安藤さんが ね と。ただその代わりに一博さんのすばらし 「いいんだよ文句言って」って。それでひと い河原の引きの映像がありますから。どっ 口紅を塗るシーンが何度か出てきまし つだけ不満を述べたんですよ。落とされて ちがよかったのかは分からないですけどね たが、ああいうのは男は流して観てしまい るシーンがある。それがとっても不満だ、と がちです。 シナリオの冒頭のいくつかのシーンは 黒沢口紅ってありがちなので、普通なら 愛と性は別物である 映画にありませんでしたが。 避ける小道具なんです。でも、舞台は京都 黒沢いやいや、予算の関係もあるし、そ 映画を観ると、愛と性は別物だという だし、京紅なら使えるなって。紅筆を含ん こはも、つしよ、つがないなと割り切ってるん お話に感じました。 で湿らせる仕草が好きだし、棒紅との対比 ですけど、ワンアクション、落とされてい 黒沢原作ではそこまで言い切ってないん も出来るし。 るところがあるんです。越智と園子が初め ですよ。『花芯』の映画化にあたっていち 逆に雨宮の方に、魅力のない男だなあ て箱根に行ったときに、シナリオでは二人ばん腐心したのは、当時のスキャンダラス と思いつつも感情移入してしまいましたが は手をつなぐんですよ。そこが映画では落性みたいなものを、現代でどうやって伝え とされてる。そこが不満だと言ったら、安 るのかということで。原作が発表された当 黒沢それは嬉しいです。林遣都くんいい
雛子「 2007 年、地下鉄劇場」 海野「僕らどうだった ? 」 海野「うん。あのネタ、あの時しかやらなかっ雛子「柔道ラッパは変な間で癒された。しか海野「ええ。宮路が俳優 : た」 し漫才ではなかった」 店員「 ( 現れ ) お飲み物、如何致しますか ? ー 雛子「 ( 急に立ち上がり ) かしこまりました」海野「また出た。辛口雛子」 海野「えーと、緑茶ハイと : : : 黒沢さんは ? 」 雛子「ライオニングは、実道さんと相方の渡黒沢「同じの」 海野「 ( 笑いながら ) お前は座れ」 コロコロと笑いながら座る雛子。 辺さんの息が合ってなかった、全くと言っ店員「緑茶ハイとバーポンロックでよろしい ですね ? 」 海野「あの時、どうだった ? て良い程」 雛子「 ( 素になり ) : : : 許せた」 海野「 ( おかしそうに ) だってあの後、実道海野「はい と渡辺が大喧嘩しちゃって、その場で解散 黒沢が煙草を吸おうとすると、海野が火 海野「辛口 5 。超上から目線だし」 を差し出す。 雛子「あのネタ、もう一回見たい」 したんだから」 ノスタルジーに浸る一一人。 雛子「私も、海野さんと実道さんが組んだら、黒沢「いいよ。そういうの」 海野「最初、僕、実道じゃない奴とコンピ組面白いだろうと思った、あの時」 海野「すみません」 自分で火をつけて、 んでたんだよね」 海野「 : : : も ? 黒沢「宮路、役者目指すんだ ? 」 雛子「 ( 指差し ) 柔道ラッパ」 雛子「え ? 」 海野「みたいです」 海野「それも知ってるんだ ? 海野「今、私も、って」 雛子「ライオニング」 雛子「 : : : 言ってないー 黒沢「まあ、傍から見てても、お前らは無理 あったからな」 海野「 ( 目を丸くし ) 実道のコンビ」 海野「そう ? 頭を下げる海野。 雛子「 2006 年、泪橋文化センター」 雛子「うん。言ってない。どんな耳してん 店員「お待たせしました」 海野「えー、まさかあれも見た ? 」 ま 頷く雛子。 と、飲み物を持ってくる。 海野「 ( 脚を上げ ) こんな耳」 じ 店員「バーポンロックと緑茶ハイになりますー は海野「すげえ ! 柔道ラッパとライオニング、雛子「それ脚だし」 同じイタに立ったの、あれだけだよ。あん 黒沢「じゃ、とりあえず。お疲れさん」 ま じ ー八年前 海野・実道「お疲れ様です」 なとこまで行ってたの ? あれ超レアだ 居酒屋・個室 の 乾杯する三人。 やってきた海野 ( ) が、実道 ( ) の ア 黒沢「少しなら食えんだろ ? 」 雛子「 ( 自分を親指で示し ) 中学生」 隣、黒沢 ( ) の向かいに座る 工 海野「はい」 海野「当時は誰の追っかけだったの ? 海野「お疲れ様でした」 黒沢「お疲れ。柔道ラッパ、 解散すんだっ黒沢「 ( 実道に ) 適当に頼んどけ」 ・ 6
か」 のあたりでガサゴソと音を立てるんだ : ・ 次郎「どれ ( と横からのぞいて ) こんなの駄 次郎「兄さん、そんなに気にしなくてもいい 僕がパッと飛び出すと、お前は今と同じよ 目だよ」 んだよ」 うに、ふてくされたような恰好でノッソリ民子「まあ、あんたのお嫁さんじゃないのよ」 悠一「え ? と出て来るんだ : ・ 次郎「だって、ちっとも美千ちゃんに似てな 次郎「母さんは俺のことなんか、もうあきら次郎「ふん : いじゃないか」 めちゃってんだから : : : 学校なんか行かな悠一「今だってお母さんは、お前とどんなに悠一「え : : : ? いで働いた方がいいと思ってんだよ」 喧嘩したって : : : お前がどんなにふてくさ民子「何を言うのよ : : : 美千子さんに似てな 悠一「そんなこと : : : 」 れて、家を飛び出したって : : : 必らず帰っ くたって : : : そんなこと : : : 似てない方が 次郎「そうなんだよ て来ることを知ってるんだよ」 いいのよ 悠一「そうじゃない : 次郎「・ : 次郎「似てた方がいいよ」 次郎「そ、つだよ」 悠一「だから安心してるんだよ : 民子「そんな馬鹿なこと : 自分も草をむしりはじめる 裏口から民子が帰って来る たって人は : : : 」 悠一「お前、こんな小さい時から、お母さん民子「なんだ、帰ってたの ? そんならも、つ次郎「 : に叱られると 、パッと飛び出したっきり、 少し何か買って来るんだった : : : まあ、何民子「変なことばかり言い出すんだから : : : 」 夕方、暗くなっても帰って来ないことがよ とか間に合、つだろう・ : ・ : あんたが悪いのよ 台所の方へ行く。 くあったな」 ・ : プイと飛び出したっきり、いっ帰って 次郎「ふーん」 来るかさつばりわかりやしないんだもん」 夏子のア。ハート・ ( 夜 ) 悠一「僕と、亡くなったお父さんは心配して次郎「 : ・ 夏子と徹がタ飯を食べている。 近所を探し回るんだが、お母さんはちっと民子「すっかり遅くなってしまって : : : そこ夏子「あれじゃ次郎君が興奮しちゃうのも無 もあわてないんだ」 で渡辺さんに会ったら、ちょっと寄って 理ないわ [ 次郎「冷たいんだよ」 らっしゃいってきかないのよ : : : 見せたい徹「やつばり幽霊みたいだった ? 」 悠一「違うんだ : : : お母さんはお前が必らずものがあるからって : : : 何だと思う ? 」 夏子「私も胸がドキンとしたわ : : : 悠一さん 帰って来ることをちゃんと知ってたんだよ悠一「どうせまた : : : 」 に見せたら混乱しちゃうだろうなあ」 ・ : 信じてたんだよ」 民子「そう : : : あなたにどうかしらって : : : 」徹「見せない方がいいんだろう ? 」 次郎「・ : 一枚の写真を渡す 夏子「そうね : : : あんな人を見たら、また、 悠一「その通り、お前はいつのまにかこっそ悠一「ふーん : : : ( と写真を見る ) 」 しばらくはほかの人と結婚する気なんかな りこの庭へ帰って来るんだ : : : その木の下民子「なかなか奇麗なお嬢さんでしょ ? くなっちゃうわね : ほんとにあん ー 106 ー
( 前号 ) みたいな底冷えするようなものを : べッドシーン、たった二行ですよね。 右 氏掴みそこねてる、という気がする。さすが久々に燃えた : : : そんな表現で終わっちゃ 道 に映画っていう大衆的なもの、あるいはテ う。僕が書いたテレビ版の「鬼畜」はピー 俊 レピっていう大衆的なメディアで今言った トたけしと黒木瞳だったけど、監督がムツ 佐 と ようなことを展開することは難しいとは思 シュ ( 田中登 ) だったから、かなり濃厚だっ 左 たなア。 うんですが 州佐伯セックスと犯罪、言い換えれば性と井土佐伯さんはロマンポルノやられてた し、僕もピンク映画出身なんですが、ポル 土革命 : : : そういうことですよね。セックス 井 のことでいうと、大島 ( 渚 ) さんが間年代ノ書くと性というものを考えざるを得ない に「中国」という雑誌に書かれたエッセイ じゃないですか。何かから目を背けるとか、 があって、その中でこう言っている。「世何かにのめりこむといったときに、セック の中の最底辺最貧困を描こうと思ったら、 スってのめりこんで逃避して、というのが 犯罪と性を描かなければならない」。いち いちばん説得的行為ですよね。その逆もあ ばん分かりやすいのは今村昌平さんの「復る。ピンクじゃなくても男女のキスシーン : になかなか行 讐するは我にあり』で、犯罪やったらセッ だったり濡れ場だったり : ・ クスする。セックスする相手がいなかった けないときがあって。ある時期から掴んだ ら女郎屋へ行く。この興奮度と言ったら変んですけど、まさに「鬼畜」的なものが自 ですけど、結局そうですよね、犯罪と性は分のなかで昇華されたのだと思うんですけ 密接に結びついているということですよね。ど、その前に男女が死体を見るとか、ある 平岡正明は「あらゆる犯罪は革命的である」 いは事故で死んだ人を見る。図式的に言う と言っている とエロスとタナトスじゃないですけど、何 井土そうですね。その辺、佐伯さんはど かそういうものがあると、けっこう理屈抜 ういったかたちで きで男女がガ・ハッといける ( 笑 ) 。それは 自分がやってきた中での発見ではありまし 佐伯清張さんのはね、さりげない描写。 サラッと書いてあるじゃないですか。その 「鬼畜」は「日本名作シナリオ選」下巻に収載。 日、お梅 ( 女房 ) が急に上に乗ってきて 、」 0
テープルの方へ行く。 光代「美千子さんって、どんな方だったのか しら : : : ? 光代「会社の方 ? 」 悠一「うん」 悠一「だから : : : 君とそっくりなんだよ」 光代「亡くなった美千子さんを知ってる方 ? 」光代「だって、私はただちょっと似てるって 悠一「いや : ・ : ・彼は知らないよ」 だけでしょ ? 」 光代「そ、つ・ : : ・ : この光 悠一「ううん : : : 美千ちゃんは : 悠一「どうして ? 」 ちゃんにそっくりなんたよ : : : 何もかも 光代「だって : : : 」 悠一「きっと珍らしかったんだよ」 光代「違うわ」 光代「何が 悠一「ううん、違わない : 悠一「僕が君みたいに若くて奇麗な人と一緒 ポーイが次の料理を運んで来る。 なのが : : : 」 光代「あら、加藤さんってそんなに : 映画館の表 悠一「そんなに : : : 何 ? 次郎が来て入場券売場の方を見る 光代「ううん : 光代の顔は見えす、他の出札係がいる 悠一「言いかけたことは言ってくれた方がい いな」 クラシック音楽 光代「美千子さんが亡くなられてから : : : ほ 典雅な演奏ーー・ んとに一度も : : : 恋愛をなさらないの ? 」 悠一「うん、一度も : ・・ : 」 8 観客席 光代「へえ : ・ 悠一と光代がいる 悠一「そんなに不思議 ? 何となく退屈している光代。 光代「不思議だわ」 人 恋悠一「そうかな」 加映画館の表 人光代「やつばり美千子さんをよっほど深く 次郎が来て、入場券売場の方を見る。 ・ : 愛してらしたのね」 入場券を売っている光代 次郎には気づかない フラット立ち去る次郎 映画館の中 ( 夜 ) 閉館後ーー ガランとした場内を清掃係が掃除してい る。 光代と早苗が入って来て手伝う。 早苗「その後、どうしたの ? 素敵な恋人」 光代「フン : 早苗「あの人、次郎さんと違ってお行儀がい いから、あんたの方から積極的に出なきや 駄目よー 光代「馬鹿ね : : : 」 花喫茶店 良平と夏子がコーヒーを飲んでいる。 良平「その後、悠一君と光ちゃんはどんな具合 かね ? 少しはエスカレートしたかな ? 夏子「ええ、多分 : ・・ : 私もこの頃忙しくなっ て : : : そこまでは面倒見きれませんもの」 良平「そりゃあそうだ : : : 君だって、ほんと 夏子「ん 良平「その後、とうなったの ? 」 夏子「ああ : : : そのまんまなんですけど : ・ 思い切ってアメリカへ行っちゃおかな」 良平「おいおい、そうあっさり行ってしまわ 1 13 ー