光代「私、あなたや青木さんたちの気持もよ光代「皆さんがどんなに悠一さんと私のことマダム「映画の題名にそんなのがあったん くわかるし : : : 正直のところ、はじめのう をそんな風に考えて下さっても : : : 私の気じゃない ? 」 ちは美千子さんの代りに、悠一さんを慰め持を動かすことは出来ないのよ」 良平「あれは、わが青春に悔なし」 てあげられたら : : : と思ったのよ : : : でも、次郎「 : ・ 夏子「葉桜や : : : 」 そのうちにだんだん : : : 」 光代「そんなこと出来やしないわよ : バ 1 テン「わが青春に悔多し : 次郎「美千ちゃんが : : : 美千子さんが今でも次郎「 : ・ 良平「え ? 君なんか悔なしだろう ( チラと 兄貴の心の中にいると言うのは : : : それ 噴水ーー マダムを見る ) 」 は君の思い過ごしだよ : : : そんなことは 1 テン「いやあ : ・ 酒場 ( 夜 ) マダム「この人、全学連なのよ」 光代「ううん : : : それだけじゃないの : 良平と夏子が飲んでいる 夏子「あら、そ、つ・ : ・ : 」 私がほんとうに悠一さんを好きになれた カウンターの中にマダムとバーテンがい マダム「この前の、アンポハンタイの時の る。 ら、美千子さんのことだって気にならない : なるほどねえ : 良平「そうか : と思うの : : : 見たこともない美千子さんの夏子「もう一つ、これ」 ことが気になるのは、私がどうしても悠一 ーテン「はい」 夏子「私 : : : やつばり : : : も、つしばらく見送 さんを好きになれないってことだと思うのマダム「どうなすったの ? 今夜は : : : 」 るわ」 良平「どうも少し荒れ気味なんだよ」 良平「え ? 次郎「そんな馬鹿な : : : 」 マダム「季候のせいね : : : 葉桜の頃ってみん夏子「結婚」 光代「どうして馬鹿なの ? 」 なそうなのよ」 マダム「え ? 」 次郎「兄貴は : : : 今はもう君に夢中だし : 良平「葉桜か : 夏子「ほんとに好きな人がみつかるまで そのうちに結婚の申し込みをするだろうし ーテン「はい」 ・ : 僕たちだって、おふくろだって、みん とグラスを出す。 良平「・ : マダム「そりゃあそう : : : どうせ結婚するん なそれを喜んでるんだよ」 夏子「どうも : : ほんとに喜んでるの ? だったら・ : ・ : わが結婚に悔なし : : : でなく 光代「あなたも : ・ 良平「葉桜や : : : わが青春に悔多し」 人 ちゃねん 恋次郎「え ? : : : 喜んでるさ」 マダム「なあに ? それ : : : 」 人光代「嘘ー 良平「俳句だよ : : : 僕は一生にたった一つ、 俳句を作ったことがあるんだ : : : 葉桜やわ 6 ロ 次郎「え ? 」 7 カ藤家・居間 ( 夜 ) 噴水ーー が青春に悔多し」 悠一と民子 しいですね」 ー 1 15 ー
れたんじゃ、こっちが困っちゃうよ」 夏子「え : ・ 映画館の裏口の方から光代が出て来る。 公園 ( 夜 ) 良平「君に代る編集長なんてめったにいるも光代「あ : : : 」 噴水ーー んじゃない」 次郎の後姿を見つける。 次郎と光代が歩いて来る 夏子「大丈夫ですわ、この頃の若い人、しつ 光代「私、この頃、だんだん、お兄さんの かりしてますから : 次郎、あきらめたようにプラブラと歩き : 悠一さんの気持が : : : 重荷になって来 良平「おいおい、君がそんな年よりみたいな 出すが、また引き返して、売場の方を見る。 たのよ」 こと言っちゃいかんよ」 次郎「重荷 ? 」 夏子「でも、年をとりましたわ」 じっと次郎の方を見ている光代。 光代「今日も電話がかかって来たんだけど 良平「いかん、いかん : : : どうも変だよ : ・ : 私、断ったの」 季候のせいかな ? 」 じっと立っている次郎ーーよ、つやく歩き次郎「どうして ? 」 夏子「年のせいですわ」 出そうとすると、後からポンと肩を叩か光代「いやなのよ」 れる。 良平「よしてくれったら : : : 君ぐらいの年で 次郎「いや ? 」 年より年より言、つのは、ほんとうの年より次郎「あ : ・・ : 」 光代「だって、悠一さんの心の中にはまだ に対して失礼なんだよ : : : こっちはそろそ 振り返ると、光代が微笑んでいる はっきりと美千子さんがいて : : : 私はその一 ろ停年退職だからな」 次郎「あッ : 身代りの玩具に過ぎないんだもの」 夏子「でも社長はまだまだ : : : 」 光代「こんばんは : : : 」 次郎「玩具 ? 」 良平「そう、まだまだこれから元気を出して、次郎「やあ : : : 」 光代「そう : : : 悠一さんは玩具と遊んでるだ アメリカ人に負けないよ、つに : : こっちも光代「どうしたの ? 」 けなのよ」 未婚の女性にプロポーズしようと思ってる次郎「いや : 次郎「違う」 んだからな」 光代「私に何か用 ? 」 光代「ううん、そうなのよ」 次郎「ううん : : : ちょっと通りかかっただけ次郎「違う・ : ・ : 兄貴は君がほんとに好きなん なんだ : : : 」 だ : ・・ : 君とっき合うようになってから、兄 映画館の表 ( 夜 ) 次郎が来て、入場券売場の方を見る。 : 別人の 光代「そう・ : ・ : 映画を見るの ? 貴はすっかり元気になったんだ : よ、つに明るくなったって、おふくろもとっ 光代の顔は見えす、他の出札係がいる。次郎「うん ? : : : ううん : 次郎、ガッカリしたように、まだじっと光代「私、あなたにお話があるの」 ても喜んでるんだ」 見ている。 次郎「え ? 」 噴水ーー 1 14 ーー
テープルの方へ行く。 光代「美千子さんって、どんな方だったのか しら : : : ? 光代「会社の方 ? 」 悠一「うん」 悠一「だから : : : 君とそっくりなんだよ」 光代「亡くなった美千子さんを知ってる方 ? 」光代「だって、私はただちょっと似てるって 悠一「いや : ・ : ・彼は知らないよ」 だけでしょ ? 」 光代「そ、つ・ : : ・ : この光 悠一「ううん : : : 美千ちゃんは : 悠一「どうして ? 」 ちゃんにそっくりなんたよ : : : 何もかも 光代「だって : : : 」 悠一「きっと珍らしかったんだよ」 光代「違うわ」 光代「何が 悠一「ううん、違わない : 悠一「僕が君みたいに若くて奇麗な人と一緒 ポーイが次の料理を運んで来る。 なのが : : : 」 光代「あら、加藤さんってそんなに : 映画館の表 悠一「そんなに : : : 何 ? 次郎が来て入場券売場の方を見る 光代「ううん : 光代の顔は見えす、他の出札係がいる 悠一「言いかけたことは言ってくれた方がい いな」 クラシック音楽 光代「美千子さんが亡くなられてから : : : ほ 典雅な演奏ーー・ んとに一度も : : : 恋愛をなさらないの ? 」 悠一「うん、一度も : ・・ : 」 8 観客席 光代「へえ : ・ 悠一と光代がいる 悠一「そんなに不思議 ? 何となく退屈している光代。 光代「不思議だわ」 人 恋悠一「そうかな」 加映画館の表 人光代「やつばり美千子さんをよっほど深く 次郎が来て、入場券売場の方を見る。 ・ : 愛してらしたのね」 入場券を売っている光代 次郎には気づかない フラット立ち去る次郎 映画館の中 ( 夜 ) 閉館後ーー ガランとした場内を清掃係が掃除してい る。 光代と早苗が入って来て手伝う。 早苗「その後、どうしたの ? 素敵な恋人」 光代「フン : 早苗「あの人、次郎さんと違ってお行儀がい いから、あんたの方から積極的に出なきや 駄目よー 光代「馬鹿ね : : : 」 花喫茶店 良平と夏子がコーヒーを飲んでいる。 良平「その後、悠一君と光ちゃんはどんな具合 かね ? 少しはエスカレートしたかな ? 夏子「ええ、多分 : ・・ : 私もこの頃忙しくなっ て : : : そこまでは面倒見きれませんもの」 良平「そりゃあそうだ : : : 君だって、ほんと 夏子「ん 良平「その後、とうなったの ? 」 夏子「ああ : : : そのまんまなんですけど : ・ 思い切ってアメリカへ行っちゃおかな」 良平「おいおい、そうあっさり行ってしまわ 1 13 ー
良平「まさか嫌いじゃないんだろ ? お互い 次郎と徹と早苗が目くばせをして、さり 向うから徹と早苗が走って来る。 に好意を持ってるんだろ ? 」 げなく、悠一と光代のそばから離れて行徹「おー 夏子「ええ、嫌いだなんてことは絶対に 早苗「待ってえ : : : 」 ただ悠一さんのことですから、まだ何とな ゲームに熱中している悠一。 息を切らしながら駆け寄る くとまどってるんだと思いますわー 光代がふっと気がつくと、次郎と徹と早次郎「腹へったあ」 良平「まあ、無理もないと思うがね」 苗の姿は見えない。 徹「僕も・ : ・ : 」 夏子「この間の晩、次郎君や徹たちと一緒に光代「あら : : : ? 早苗「私もおなかべッコペコ : ポーリングへ行ったそうですけど、お互い悠一「どうしたの ? 6 にあんまり口もきかないんですって : : : 」光代「いないわ」 中華料理店 ( 夜 ) 良平「みんなと一緒じゃ駄目だよ。遊びに誘悠一「え ? 」 悠一と光代が食事をしている。 い出したら、そっといつのまにか二人きり キョロキョロとあたりを見回す。 光代「馬鹿だわ、あの人達 : : : 今頃、きっと にして、ほかの者は消えてしまわなくちゃ おなかべコペコよ」 ビルの谷間 ( 夜 ) 悠一「そうか : ・・ : 」 夏子「ホホホ : : : 手のかかる恋人同士だこ 次郎と徹と早苗が歩いて来る 光代「大勢で一緒に食べた方がおいしいのに と 徹「今頃、二人でまごまごしてるよ」 次郎「ざまあ見ろ」 早苗「これから二人、どうするかしら ? 光代「 ( ふっと微笑んで ) 早苗ちゃん、こん 次郎「そこまで面倒見きれねえや」 なお店でおなか一ばい食べてみたいって パッと駆け出す。 言ってたのよー 徹「おー 悠一「そ、つ : ・ 追っかけよ、つとする 光代「おいしいわ : : : ほんとにあの人達、ど 早苗「あら : : : 待ってよ」 こへ行ったのかしら : : : 」 若い二人連れの男女が入って来る 走って来た次郎が立ち止まる 男「やあ・ : : ・」 息を切らしながら、キックボクシングの悠一「やあ : : : 」 真似をしたりする 男「どうも : : : 」 何となく不機嫌になっている 光代の方をチラと見て、二人は向うの グループ・サウンズ 狂熱的な演奏ーー 観客席 楽しそうな次郎、徹、早苗、光代。 何となくついて行けない悠一。 ゲーム・センター ( 夜 ) 悠一、次郎、徹、光代、早苗が射的や x xx ポールなど色々なゲームを楽しんで いる ー 1 12 ー
てだけじゃない」 : だから、あな 早苗「だから素敵じゃない : たを見た瞬間、あの兄さん、あんな顔をし たのよ : ・・ : 凄いショックだったのよ : : : わ あ、素敵 ! ( と布団にもぐる ) 」 光代「ふん : : : おやすみ」 早苗「おやすみ : : : でも、もうそろそろつい て来てもいい頃よね : : : 苦労したんだもん ・ : だから素敵な恋人と結婚して、田舎の 伯父さんや伯母さんを見返してやるのよ ・ : あんたをいじめて、追い出してしまっ 光代「別にいじめられやしないけど : : : そん なに悪い人じゃないのよ、伯父さんも伯母 さんも : 小さい時から、みなし子の私を 引き取って育ててくれたんだもん : : : 恩返 しもしないで飛び出して来た私の方が悪い 娘かも知れないわ」 早苗「今どき、少しぐらい悪い娘でなくちゃ たった一人で生きて行けやしないわよ : とにかくあんた、ついて来たんだから : 運が向いて来たんだから : : : その運を逃が しちゃ駄目よ : ・・ : おやすみ : ・・ : 素敵な恋人 人 の夢でもごらんなさい , の 人光代「・ : : ・ ( 目を閉じる ) 」 箱根 明るくなる室内 良平、悠一、次郎、夏子、徹、光代、早 苗が遊んでいるーーそのまま八ミリの画 みんな、ホッと息をついて、何となく光 面になって 代の方を見る 光代「 : ・ とまどって、両手で頬を抑える 甲野家・リビング ( 夜 ) 八ミリの画面を見ている良平、悠一、次良平「ああ、きよさん」 郎、夏子、徹、光代、早苗、民子、きょ きょ「は : ・ : ・ ( 涙を拭く ) 」 良平「酒のさかなばかりで : : : 御婦人たちに 画面・ーー も何か : 光代の顔。 きょ「はい、ちゃんと出来ております : : : 只 髪をかき上げる 今すぐ・ : ・ : 」 夏子「手伝いましようか ? ー 微笑む 光代「私たちも : : : 」 指先で涙を抑えるきょ 早苗「ええ : ・ 良平の眼もうるんでくる きょ「とんでもない : お嬢さん : ・ じっと画面を見つめる悠一。 光代「え : : : ? 画面ーーー きょ「 : また、あふれてきた涙を抑えながら出て 笑う光代。 じっと画面を見つめる次郎、夏子、徹、 甲野書房・社長室 光代、早苗、民子。 良平と夏子ーーー 画面ーーー 良平「その後、悠一君とミッちゃん : : : 光代 さんはどんな具合かね ? たまにはデート 笑う光代。 フィルムが終る でもしてるのかな ? 」 夏子「それがなかなか・ : : どうぞ、そのまま、一
早苗「大丈夫よ」 夏子のアバート ( 夜 ) 次郎「送るよ : : : さあ、行こう」 夏子「雑誌のモデルに頼んだのよ : : : この写 夏子と悠一 徹「うん : : : 行こ、つ」 真が今日出来たもんだから、遊びに来たの」夏子「ほんとうは今みたいに出し抜けでなく、 光代「じゃあ、この写真、いただいてって : : : 」悠一「そう : : : 」 あなたに、或る程度、彼女の予備知識を与 えておいて、そしてさりげなく紹介するつ 夏子「ああ、どうぞ ( 大きな封筒を渡す ) 」夏子「コーヒ 1 いれるわ」 もりだったんだけど : : : 私がぐずぐずして 光代「ありがとうございました」 、ん、こちらこそ : たもんだから : ・ 夏子「いし 地下鉄ホーム ( 夜 ) 早苗「じゃ、おやすみなさい」 光代、早苗、次郎、徹が歩いて来る 悠一「いや、別に : 光代「さようなら」 早苗「素敵なお兄さんね」 夏子「実はうちの社長も一度会いたいって 光代「でも、何だか怒ってるみたいだったわ おっしやってるから : : : その時、一緒に食 ね : : : 私、恐かった」 事でもしない ? 」 早苗「そうね、ちょっと無愛想ね」 悠一「え ? 」 入口 ( 夜 ) 光代、早苗、次郎、徹が出て行く。 夏子「軽い気持でね・ : 夏子「じゃ、気をつけてね」 次郎「兄貴には恋人がいたんだけど : 光代「さよなら」 早苗「さよなら」 次郎「いいんだよ : : : 兄貴の恋人、三年前に 光代のアバート ( 夜 ) 夏子「さよなら」 死んじゃったんだ」 光代と早苗が布団を敷いて寝支度をして いる 光代「まあ : ・ 次郎「その恋人、君にそっくりだったんだ」早苗「あんた、この頃、急について来たみた 居間 ( 夜 ) 悠一が立っている 光代「え ? いね」 夏子が来る 徹「名前もミッちゃんって言ったんだ」 光代「そうかしら : ・・ : 」 夏子「どうぞ : : : お坐りになって : : : 」 早苗「え ? 」 早苗「だってそうじゃない : : : ファッション モデルになったり、素敵な恋人が現れたり 悠一「ええ : : : ( 椅子にかける ) 」 徹「美千子って一言うんだけど、僕たち、ミッ 夏子「この写真 : ・ ちゃんて呼んでたんだ」 残っている光代の写真を見せる 光代「素敵な恋人って : 早苗「まあ : : : 」 電車が来る 早苗「次郎さんの兄さんよ」 夏子「 ( さりげなく ) どっか、ちょっと美千 光代「だって、あの人の恋人が私に似てたっ 子さんに似てない ? 」 : いいでしょ ? 」 ー 110 ー
加藤家・茶の間 ( 夜 ) 悠一と民子がタ飯を食べている。 悠一「次郎は、また二、三日帰らないな」 民子「そうなのよ : ・・ : ほんとにどういうつも りなんだか・ : : ・」 悠一「僕、今夜、行ってみるよ」 人 恋民子「今から ? 夏子さんとこへ ? 」 人悠一「うん」 民子「いいわよ、疲れてるのに : 悠一「大丈夫だよ : : : 僕、連れて帰って来る よ : : : お父さんのつもりで、少し次郎にき 入口 ( 夜 ) びしくしろって、お母さん、そう言ったじゃ 甲野書房・社長室 悠一と夏子ーー 洋服、和服、いろいろなコスチュ 1 ムの ないか」 悠一「お客様だったら、僕、ここで : : : 次郎 光代の写真ーー 民子「そりゃあ、そう言ったけど : : : あ、御を連れに来ただけですから : : : 」 良平と夏子が見ている 飯は ? 」 夏子「いえ・・・・ : あの・・・・ : ど、つぞお上りになっ 良平「うーん、これは驚いたなあ」 悠一「もういい : ・ : 御馳走さまー て : : : あなたに紹介したい方があるのよ 夏子「社長にはショックが強過ぎるんじゃな : さあ、どうぞ」 いかと思いましたので、まず写真をお見せ 夏子のアバート・入口 ( 夜 ) 悠一「僕に : して、それから、もし本人に会いたいとお 悠一が来て、扉を叩く。 思いになるんでしたら : : : 」 扉が開いて、徹が顔を出す。 居間 ( 夜 ) 良平「会いたいような : : : 会いたくないよう徹「あ : 夏子と悠一が来る。 な : : : 妙な気持だなあ : : : 悠一君にはもう悠一「今晩は」 夏子「御紹介します : ・・ : こちらはね、次郎さ 会わせたの ? 」 徹「今晩は : : : ( 振り返って ) 姉さん」 んのお兄さんで、加藤悠一さん : : : こちら一 夏子「いえ、まだ : : : 悠一さんもきっと社長 夏子が来る は坂本光代さんと村川早苗さん」 と同じように複雑な気持だと思いますから夏子「あ : いらっしゃい」 光代「はじめまして : : : 」 悠一「どうもこんなに遅くお邪魔して : 早苗「どうぞよろしくー 夏子「いん 悠一「は・ : ( 茫然と光代の顔を見ている ) 」 次郎「 : ・ 引居間 ( 夜 ) 徹が来る。 光代「あの : : : 私達、失礼します」 次郎と光代と早苗が写真を見ている。 夏子「まだいいでしょ ? もうちょっと : : : 」 早苗「お客様 ? 」 光代「いえ、もう、今、帰ろうとしてたとこ 徹「うん ? うん ですから 次郎「 早苗「明日、早番なんです」 光代「私達、帰りましよう」 夏子「そ、つ : ・ 早苗「ええ : ・ 次郎「送ってくよ」 光代「あら、いいわ」 ー 109
次郎「いや : ポーツとなっちゃ、つな」 デルっていい商売だなあ」 光代「まあ : ・ 夏子「だから、ちょっと待ってよ」 光代「よしてよ、ファッションモデルだなん 夏子「こっちはね、私の弟の : 次郎「どうして ? 」 徹「青木 : : : 徹です , 夏子「光代さん、感じのいい人だったけど早苗「だってまた頼むって言ってたじゃない 夏子「あんたなんか今日は関係ないと言って : 一度会っただけじゃ、まだよくわかん : ね、どっちが好き ? ェクレアとモン も、どうしてもあなたの顔が見たいって プラン ないし・ : ・ : 」 徹「点が辛いんだなあ」 光代「エクレア」 徹「ヘッ : 次郎「あれだけ感じがよけりや大丈夫だよ」早苗「じゃ、私はモンプラン」 夏子「こちらがね、坂本光代さんとお友達の夏子「でもね、悠一さんの気持って、あんた 二人、ケーキを食べる。 たちみたいに単純じゃないのよ : : : 美千子早苗「徹さんってさ、ちょっと可愛いじゃな 早苗「村川早苗です : : : 私も今日は関係ない さんとそっくりの人なんて、もしかしたら 男のくせに睫毛がこーんなに長い んですけど、光ちゃんがどうしても : 会いたくないかも知れないでしょ ? 」 次郎「ミッちゃん ? 徹「そうかなあ」 光代「そ、つ ? 早苗「ええ、光ちゃんが付いて来てくれって夏子「反対に、そっくりだからってだけで早苗「ね、あんた、どっちが好き ? 」 カッとなっても困るでしよう ? 私は二人光代「だから、エクレア : : : おいしいわ」 ポーイがメニューを持って入って来る。 をなるべく自然に会わせたいのよ。周囲で早苗「馬鹿ね。徹さんと次郎さんとどっちが ポーイ「どうぞ」 あんまり騒がないで、自然なっきあいをさ好き ? 」 せたいのよ : : : 」 光代「別に : : : どっちでも : : : 」 夏子のアバート ( 夜 ) 4 徹「自然に : : : 自然につて : : : 」 早苗「そう : : : じゃ、次郎さんにしときなさ 夏子と徹と次郎 次郎「何だかじれったいなあ [ 夏子「坂本光代だから、ミッちゃんなのよ」夏子「とにかくもうちょっと私にまかしとい光代「え ? 」 徹「美千子さんもミッちゃんだからな : てよ」 早苗「次郎さんだって、あんたを好きなのよ でもさ、両方とも同じミッちゃんだなんて、 ・ : あんたの顔ばかり見てたもん : : : おい 何だか : : : 」 しいわ : : : これ、一個八十円するのよ : 光代のアパート ( 夜 ) 夏子「単なる偶然よ」 光代と早苗がケーキの函をあける。 ウッ : : : ウ : ・ : ・ ( のどにつかえる ) 」 次郎「ね、兄貴にはいつ紹介する ? 」 早苗「お金もらって、御馳走になって、こん光代「どうしたの ? 馬鹿ね : : : 」 徹「あれだったら、悠一さん、一ペんで なお土産までもらって : : : ファッションモ 早苗の背中を叩いてやる。 ー 108 ー
この人、うちでテレビ見てた方がいいって 徹「じゃあ、その人と : : : 絶対に結婚しちゃ フォト・スタジオ 言うし : : : じゃあ、お花見に行こうって言 いけないってことはないだろ ? 光代のカメラテストが行われている 、つと、も、つ散っちゃったって一言、つし : : : も ポーズをつけて、パチ : ハチ : : : と 夏子「そりゃあそうだけど : めてるうちに日が暮れちゃうんです シャッターを切るカメラマン。 徹「どんな人だか、調べりやすぐわかるん 夏子「それでよく一緒に暮せるわねえ」 そばで見ている記者 < と夏子と早苗。 光代「喧嘩してた方が退屈しなくていいんで 夏子「そりゃあそうね : : : 」 徹「とにかく一一人を会わしたらどう ? 」 高速道路をバックに ポーイに案内されて、次郎と徹が入って カメラマンが光代を写している 夏子「ちょっと待ってよ : : : 私も何だか混乱 来る。 して来ちゃった」 夏子「遅いじゃない」 徹「へえ、クールな姉さんが混乱しちゃい 貶高層ビルをバックに 徹「だってさ、出かける時になって、やた 光代の写真。 けないな」 らとカッコつけちゃってさ」 夏子「ほんとね : : : 申しわけない 次郎「お前 : : : 君だってタートルネックにし一 xx 庭園 よ、つか、亠小いセーターにしよ、つか : ・・ : 」 光代。 甲野書房・編集部 夏子「いいわよ ( ポーイに ) じゃ、これで揃一 夏子と記者 < いましたから : 夏子「写真のモデルに、一人あたってもらい 埠頭ー ポーイ「承知いたしました」 光代。 たいのがあるんだ」 と出て行く。 記者 < 「今度はどこの子です ? 」 夏子「紹介するわ : : : こちらが加藤次郎君 , 夏子「映画館の切符売場 : : : 窓口で見ただけ レストラン・個室 光代「・ : 夏子、光代、早苗ーーー だから全身のシルエットはわからないけど 夏子「疲れたでしよう ? せつかくのお休み夏子「あなたをはじめて切符売り場で・ : ・ : 大丈夫だと思うんだ」 光代「あ : : : あの時の : ・ : ・」 を無理に引っぱり出して : 記者 < 「プロのモデルや女優さんじゃなくて 次郎「え : : : ? 素人っほい子を探してたんです : : : 早速あ光代「いいえ」 人 恋 早苗「どうせ今日はどっこにも行くつもり夏子「あら、覚えてたの ? 」 たってみますわ」 の 光代「入場券が飛んでって : : : 」 じゃなかったし : : : 」 人夏子「まじめそうな子だけど : : : 」 夏子「でも、それを拾おうともしないで : 夏子「お休みに出かけないの ? 」 記者 < 「大丈夫ですわ。まかしといて」 あなたの顔をポカンと見てたのね ? 」 早苗「私が映画を見に行こうって言っても、 107
か」 のあたりでガサゴソと音を立てるんだ : ・ 次郎「どれ ( と横からのぞいて ) こんなの駄 次郎「兄さん、そんなに気にしなくてもいい 僕がパッと飛び出すと、お前は今と同じよ 目だよ」 んだよ」 うに、ふてくされたような恰好でノッソリ民子「まあ、あんたのお嫁さんじゃないのよ」 悠一「え ? と出て来るんだ : ・ 次郎「だって、ちっとも美千ちゃんに似てな 次郎「母さんは俺のことなんか、もうあきら次郎「ふん : いじゃないか」 めちゃってんだから : : : 学校なんか行かな悠一「今だってお母さんは、お前とどんなに悠一「え : : : ? いで働いた方がいいと思ってんだよ」 喧嘩したって : : : お前がどんなにふてくさ民子「何を言うのよ : : : 美千子さんに似てな 悠一「そんなこと : : : 」 れて、家を飛び出したって : : : 必らず帰っ くたって : : : そんなこと : : : 似てない方が 次郎「そうなんだよ て来ることを知ってるんだよ」 いいのよ 悠一「そうじゃない : 次郎「・ : 次郎「似てた方がいいよ」 次郎「そ、つだよ」 悠一「だから安心してるんだよ : 民子「そんな馬鹿なこと : 自分も草をむしりはじめる 裏口から民子が帰って来る たって人は : : : 」 悠一「お前、こんな小さい時から、お母さん民子「なんだ、帰ってたの ? そんならも、つ次郎「 : に叱られると 、パッと飛び出したっきり、 少し何か買って来るんだった : : : まあ、何民子「変なことばかり言い出すんだから : : : 」 夕方、暗くなっても帰って来ないことがよ とか間に合、つだろう・ : ・ : あんたが悪いのよ 台所の方へ行く。 くあったな」 ・ : プイと飛び出したっきり、いっ帰って 次郎「ふーん」 来るかさつばりわかりやしないんだもん」 夏子のア。ハート・ ( 夜 ) 悠一「僕と、亡くなったお父さんは心配して次郎「 : ・ 夏子と徹がタ飯を食べている。 近所を探し回るんだが、お母さんはちっと民子「すっかり遅くなってしまって : : : そこ夏子「あれじゃ次郎君が興奮しちゃうのも無 もあわてないんだ」 で渡辺さんに会ったら、ちょっと寄って 理ないわ [ 次郎「冷たいんだよ」 らっしゃいってきかないのよ : : : 見せたい徹「やつばり幽霊みたいだった ? 」 悠一「違うんだ : : : お母さんはお前が必らずものがあるからって : : : 何だと思う ? 」 夏子「私も胸がドキンとしたわ : : : 悠一さん 帰って来ることをちゃんと知ってたんだよ悠一「どうせまた : : : 」 に見せたら混乱しちゃうだろうなあ」 ・ : 信じてたんだよ」 民子「そう : : : あなたにどうかしらって : : : 」徹「見せない方がいいんだろう ? 」 次郎「・ : 一枚の写真を渡す 夏子「そうね : : : あんな人を見たら、また、 悠一「その通り、お前はいつのまにかこっそ悠一「ふーん : : : ( と写真を見る ) 」 しばらくはほかの人と結婚する気なんかな りこの庭へ帰って来るんだ : : : その木の下民子「なかなか奇麗なお嬢さんでしょ ? くなっちゃうわね : ほんとにあん ー 106 ー